トラゴエディアが強かった時代 最強のワンキル対策カード
【前書き】
【第6期の歴史7 ゾンビキャリアが壊れカードだった時代 僅か半年強で制限行き】の続きとなります。ご注意ください。
第6期を代表するチューナー「ゾンビキャリア」の誕生を受け、【シンクロアンデット】を筆頭とするシンクロデッキがいくつも開発されました。成立直後こそ【レスキューシンクロ】に押され気味の立ち位置でしたが、それらが後退する2008年9月以降の環境を「ゾンビ地獄」へと染め上げています。
第6期突入を境に加速し続けるゲームスピードにプレイヤーが翻弄される中、そうした流れに待ったをかける期待の新人が現れたのは8月下旬のことでした。
トラゴエディア 2枚目以降のゴーズ
2008年8月21日、Vジャンプ付録カードから新たに1種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは3370種類に増加しています。
ここで現れた有力プロモカード、それこそが「トラゴエディア」です。
自分が戦闘ダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力・守備力は自分の手札の枚数×600ポイントアップする。
1ターンに1度、手札のモンスター1体を墓地へ送る事で、そのモンスターと同じレベルの相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体のコントロールを得る。
また、1ターンに1度、自分の墓地に存在するモンスター1体を選択し、そのターンのエンドフェイズ時までこのカードは選択したモンスターと同じレベルにする事ができる。
非常に長い効果テキストを持っていますが、こうした長文系カードにありがちな無駄な効果は一切存在せず、4つの効果全てが有用という非常に稀有なカードです。
効果を分かりやすく分解すると下記の通りとなります。
①:戦闘ダメージを受けた時、手札から自身を特殊召喚する効果
②:手札の枚数×600の永続ステータス強化効果
③:手札のモンスターカードを捨て、そのレベルに等しい相手モンスター1体をコントロール奪取する効果
④:自分の墓地のモンスター1体を対象に取り、そのレベルをコピーする効果
特に強力なのが①の特殊召喚効果であり、当時の最上級モンスターとしては破格の出しやすさを誇ります。その分ステータスが安定しないという弱みもありますが、分類的には「冥府の使者ゴーズ」に近い働きをするモンスターと言えるでしょう。
ただし、やはり手札の枚数によってステータスが変動する以上、防御カードとしての信頼性は決して高いとは言えません。特にゲーム中盤以降は大抵下級モンスター並の数値にしかならないため、効果の発動条件の緩さを考慮しても「冥府の使者ゴーズ」ほどの安定感は持っていないと考えるべきです。
しかし、「トラゴエディア」は後半の2つの効果により別軸の役割を持てるという点において優れており、その部分においては「冥府の使者ゴーズ」を上回る汎用性を発揮します。
具体的には④のレベル変動効果によって柔軟なレベル調整が行えるため、5~7シンクロの範囲であれば安定してシンクロ召喚のサポートをこなせます。もちろん、状況によっては8シンクロを狙えないこともなく、チューナーさえ用意できれば大抵のシンクロモンスターは呼び出せると言っても過言ではありません。
また、現在では扱いにくいと言われる③のコントロール奪取効果ですが、こちらも当時はそれなりに使用機会に恵まれていました。遭遇率の高いレベル4はもちろん、「D-HERO ディアボリックガイ」を捨てて「ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)」や「氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前)」を奪い取るなど、シンクロ全盛期ならではの活躍ぶりを見せていた「いぶし銀の効果」です。
総評としては、条件の緩い特殊召喚効果によって最低でも一度限りの壁になりつつ、生き残ればシンクロ素材に、さらに運が良ければコントロール奪取も狙えるという、非常に多方面に渡って活躍が期待できるパワーカードだったと言えるでしょう。
その一方で、後述のワンキル対策として使われていた側面もあったためにしばらくは規制を免れていましたが、それを踏まえてもやはり放置していいカードではない(※)と考えられたためか、結果として2010年3月の改訂で制限カードに指定されることになりました。
(※ただし、どちらかというと主流デッキとメタデッキの差を埋めるカードとしての性質が強かったため、不当な規制ではないかという意見もありました)
その後は環境の変化もあって2011年9月には準制限カードに、2015年1月には無制限カードに規制解除が進んでいます。よって全盛期としては第6期~第7期前半辺りがピークだったカードであり、これもまた形を変えた「シンクロ時代を代表する1枚」と言えるのではないでしょうか。
なぜ当時のトラゴエディアは硬いと言われたか
このように、参入直後からパワーカードとして脚光を浴びていた「トラゴエディア」でしたが、特に当時はワンキルゲーム発生装置である「大寒波」が大流行していたため、その対策としても注目を受けるに至っています。
突然ですが、先攻1ターン目に「大寒波」を撃たれたプレイヤーが返しのターンにそのままドローゴーするという光景に思い当たる節があるという方はいらっしゃるでしょうか?
これがいわゆる「トラゴ待ち」と呼ばれるプレイングであり、あるいはそのブラフとなります。なぜなら、何もせずにターンを返せば手札が6枚になるため、「トラゴエディア」のステータスを3000の大台に乗せることができたからです。
これにより「ダーク・アームド・ドラゴン」「ゴヨウ・ガーディアン(エラッタ前)」「裁きの龍」といった当時を代表するアタッカーをまとめて受け流すことができます。この時期のカードプールで3000の壁をバトルフェイズ中に突破する現実的な手段は「レッド・デーモンズ・ドラゴン」や「ギガンテック・ファイター」程度(※)しかなく、またこれらをシンクロ召喚する過程でリソースを余計に消費させることが狙えたため、いずれの場合でも安定して1ターンを生き残ることができました。
(※それ以外の方法としては、「メンタルスフィア・デーモン」+「サイコ・コマンダー」による突破などが有名でした)
もちろん、それだけでは時間稼ぎにしかなりませんが、重要なのは「相手にトラゴケアを強要することで展開を遅らせる」という部分で、これにより結果的に「大寒波」をやり過ごせる可能性が高まります。なおかつ、相手としては「トラゴエディア」をケアしつつ展開せざるを得ないため、たとえブラフによるドローゴーであっても先攻寒波を生き残れることは少なくありません。
そのため、「トラゴエディア」の参入以降は「先攻寒波はむしろ悪手なのではないか」という認識すら広まったほどであり、「トラゴエディア」はデッキを選ばないワンキル対策カードとして名を馳せていくことになりました。
というより、高レベルの闇属性という二重の意味で【スーパードローライダー】と相性の良いステータスにより、当のワンキル系デッキにおいてすらミラーマッチ対策を兼ねた潤滑油として使われていた始末です。上述の通りシンクロ素材としても有用なカードだったことから、構築によってはメインから3積みされることさえありました。
とはいえ、2008年末に「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」が現れると「トラゴエディア」の上から削り切られてしまうケースも増えたため、上記のドローゴー戦法も次第に通用しなくなっていったことは確かです。
例えば、「ダーク・グレファー」+「緊急テレポート」の2枚、「D-HERO ディアボリックガイ」もしくは「ゾンビキャリア」の合計3枚スタートだけでも8000ライフが消し飛びます。
具体的な手順は下記の通りです。
①:「ダーク・グレファー」を召喚する。
②:「D-HERO ディアボリックガイ」か「ゾンビキャリア」をコストにもう一方を墓地に落とす。
③:「D-HERO ディアボリックガイ」(2体目)と「ゾンビキャリア」で「メンタルスフィア・デーモン」をシンクロ召喚する。
④:「D-HERO ディアボリックガイ」(3体目)をリクルートし、総攻撃を仕掛ける。
⑤:「トラゴエディア」が出てきた場合、「緊急テレポート」で「サイコ・コマンダー」をリクルートする。
⑥:「メンタルスフィア・デーモン」で「トラゴエディア」を戦闘破壊する。(「サイコ・コマンダー」の効果で弱体化)
⑦:メイン2に「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」をシンクロ召喚し、戦闘ダメージ3900+バーンダメージ4200で計8100ダメージ。
上記のワンキルパターンはあくまでも一例に過ぎず、これ以外にも「ジャンク・シンクロン」を絡めた展開、あるいは「ダーク・グレファー」を特殊召喚するパターンなど、「トラゴエディア」の上からワンキルに持ち込むルートがいくつも開拓されていました。ワンキル対策カードを握っていてもワンキルされるという意味不明の状況であり、第6期以前のワンキル環境とは明らかに一線を画しています。
もちろん、必ずしも「トラゴエディア」を突破される塩試合ばかりだったわけではありませんが、結局のところワンキル側が明らかに有利なゲームバランスが成立していたことは否定できないのではないでしょうか。
【まとめ】
「トラゴエディア」についての話は以上です。
その性質から2枚目以降の「冥府の使者ゴーズ」として期待を受けて参戦し、それを裏切ることなく有力なワンキル対策カードという立ち位置を築き上げています。さらにはレベル調整によるシンクロサポートやコントロール奪取能力など、その有用性は単なる防御カードにとどまりません。
しかし、そんな「トラゴエディア」ですら高速化したゲームスピードを抑えることはできず、遊戯王OCGは次第にインフレの波へと飲み込まれていくことになりました。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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