新種族「サイキック族」誕生 緊急テレポート出張セットの大流行

2019年2月28日

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【前書き】

 【第6期の歴史3 レスキューキャット(エラッタ前) シンクロ全盛期の引き金】の続きになります。ご注意ください。

 シンクロ召喚の導入、そして基本的なサポートカードがひとまず出揃ったことにより、レスキューキャット(エラッタ前)」を筆頭に一部のマイナーカードが大躍進を遂げました。その結果、間もなく【レスキューシンクロ】として環境に顔を出すまでになり、これ以降は加速度的に勢力を拡大していくことになります。

 強大な新勢力の台頭の気配にメタゲームがざわめく中、続く4月にそうしたシンクロ全盛期の流れを決定付けるカードプール更新が行われました。

 

緊テレ無制限時代 サイキック全盛期(大嘘)

 2008年4月19日、レギュラーパック「THE DUELIST GENESIS」が販売されました。新たに79種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは3246種類に増加しています。

 第6期の初弾を飾るパックにふさわしく、全体的に【シンクロ召喚】に関連したカードの収録が多かったことで有名です。アニメ主人公のエースモンスター「スターダスト・ドラゴン」を筆頭に、強力なシンクロモンスターを多数輩出しています。

 それ以外にも、「剣闘獣エクイテ」「剣闘獣の戦車」の参戦を受けて【剣闘獣】が更なる追い風を受けるなど、多方面にテコ入れがあった優良パックとなっていました。

 とはいえ、当パックがもたらした最大の出来事は新種族である【サイキック族】の誕生だったのではないでしょうか。

自分フィールド上に存在するサイキック族モンスターが戦闘を行う場合、そのダメージステップ時に100の倍数のライフポイントを払って発動する事ができる(最大500まで)。このターンのエンドフェイズ時まで戦闘を行う相手モンスター1体の攻撃力・守備力は払った数値分ダウンする。

 上記は【サイキック族】最古参の1体、「サイコ・コマンダー」の当時のテキストです。若干ややこしい効果を持っていますが、当時の【サイキック族】としては一、二を争う使用率(※)を誇っており、まさに【サイキック族】を代表するモンスターの1体と言っても過言ではありません。

(※理由については後述します)

 「サイコ・コマンダー」以外にも優秀な【サイキック族】は多く、また種族間のサポートの繋がり自体も多種族に比べてかなり密接です。言うなれば種族全体が【サイキック族】というカテゴリのような扱いを受けており、これまでの種族とは一線を画したカード群だったことは間違いないでしょう。

 しかし、話の腰を折るようで恐縮ですが、いわゆる純構築の【サイキック族】が第6期環境で目立った実績を残したことはありませんでした。

 これは新種族ゆえのカードプール自体の狭さも理由の一つでしたが、そもそもデッキ単位ではなく出張セット単位での運用の方が遥かに効率的だったからです。

 具体的には、「緊急テレポート」の存在がそうした事態の引き金となっています。

自分の手札またはデッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時にゲームから除外される。

 言わずと知れた【サイキック族】最強のリクルートカードであり、このカードの存在が【サイキック族】の屋台骨を支えているとさえ言われるパワーカードです。もちろん、第6期当時であってもパワーカードと見なされていたことは変わらず、むしろ展開札が今よりも貴重だった分、現代以上に高い評価を受けていたことは間違いありません。

 上記の「サイコ・コマンダー」が高い採用率をキープしていたことにも「緊急テレポート」が関係しており、当時唯一のレベル3サイキック族チューナーという形で価値を見出された格好です。これと同じ理由で「クレボンス」にも注目が向かっていますが、こちらは非チューナー側のレベルが低いと上手く機能しない弱み(※)があるため、この時期に限って言えば若干評価が振るわない状況でした。

(※逆に2008年9月2009年3月環境では【シンクロアンデット】【SDL】の全盛期に伴って環境全体にレベル4モンスターが増えたため、評価を盛り返しています)

 いずれにしても、「緊急テレポート」というカードが参入直後から大きな期待を集めていたというのは事実です。

 しかし、これが単純に【シンクロ召喚】の汎用サポートとしても極めて有用であることが判明するにつれ、本来の使い道である【サイキック族】サポートとしての側面は徐々に失われていくことになります。

 発動条件が一切なく、デメリットも実質無視できるチューナー展開カードというのは単純に考えてもかなり強く、少なくとも2008年時点の基準では大半のデッキで採用を検討できる性能でした。おまけに速攻魔法であるがゆえに「大寒波」ともある程度は共存できるなど、まさに当時の環境で活躍するために生まれてきたカードと言っても過言ではないでしょう。

 なおかつ、「カバリスト」「メンタルマスター」などの各種【サイキック族】サポートを使わないのであれば、デッキからサイキック族モンスターが枯渇するリスクを恐れる必要もなくなります。つまり「緊急テレポート」のリクルート先は余裕を持っても3~5枚で十分であり、手札に素引きした場合にも対応することを踏まえれば2~3枚程度でも事故を起こすことはありません。

 よって「緊急テレポート」を使うためにデッキ単位で【サイキック族】に特化する必要はないということになり、極端な話「元々強いデッキに雑に投入する」のが一番効率が良いという結論が出てしまうのです。

 こうした流れで【サイキック族】を純構築で組む理由が消滅した結果、サポートであるはずの「緊急テレポート」1枚だけが環境最前線を独走するという状況が成立してしまっています。これでは【サイキック族】というよりむしろ【緊テレ族】であり、種族としては何とも不健全な姿です。

 そして年月が経過し、ようやく【サイキック族】のカードプールが充実し始めた頃には既に「緊急テレポート」が制限カードになっており、まさに踏んだり蹴ったりの状況と言うほかありません。

 もちろん、カードプールが充実した今現在では種族単位で不遇という状況ではなくなっていますが、それでも「世代を代表する新種族」という最も美味しいはずの時期を逃してしまった事実は率直に言ってかなり悲惨です。そのため、全体的な評価としては「始まる前に終わってしまった不遇種族」という印象が長年ついて回っていたことは否めないのではないでしょうか。

 

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【緊テレダムド】での活躍

 第6期当時の【サイキック族】については以上ですが、ここからは「緊急テレポート」について掘り下げていきます。

 緊急テレポート」出張セットを最初にギミックとして取り入れたのは、第5期終盤環境の王者【ダムドビート】でした。

 【レスキューシンクロ】と同様、「ダーク・アームド・ドラゴン」を【シンクロ召喚】のギミックと噛み合わせたデッキの一種であり、カード名を取って【緊テレダムド】と呼ばれていた型です。デッキコンセプトの都合上レベルよりも属性のシナジーがより重視されるため、サイコ・コマンダー」全盛期の当時としては珍しくリクルート先には「クレボンス」が優先される(※)傾向にありました。

(※これは「終末の騎士」などレベル4モンスターが比較的多かったことや、5シンクロしかできない状況でも「A・O・J カタストル」の属性を活かしやすかったことが関係しています)

 闇属性カウントを稼ぎつつシンクロ召喚に繋げるという意味では【シンクロダムド】と似たコンセプトですが、こちらはシンクロモンスターよりもメインデッキの戦力を重視しているのが最大の特徴です。具体的には、「邪帝ガイウス」「風帝ライザー」などの優秀な上級モンスターをメインアタッカーに据えており、【帝コントロール】の要素を取り入れつつも【ダムドビート】を順当強化したアーキタイプだったと言えるでしょう。

 とはいえ、【シンクロダムド】を抑え込めるほどの強さを持っていたかというと中々厳しい部分もあり、勢力としてはそれほど大きくは育たなかったというのが現実です。これについては「レスキューキャット(エラッタ前)」との格の違いが出た結果としか言いようがなく、流石の「緊急テレポート」であっても未来の禁止カードに対抗するのは難しかったということでしょう。

 その他、【緊テレダムド】からの更なる派生として、上記の【レスキューシンクロ】のギミックを混ぜ合わせた【緊テレ猫ダムド】と呼ばれる型も少数ながら実績を残しています。

 コンセプトに掲げられているのは「強いギミック同士を混ぜればもっと強くなる」というバトル漫画的な発想であり、実際(弱い要素がないという意味で)真っ当に強いデッキではありました。弱点はもちろん手札事故ですが、上手く回れば【シンクロダムド】と【緊テレダムド】のいいところ取りのような爆発力を発揮するため、密かに愛好家も多かった趣深いデッキです。

 

【シンクロアンデット】と赤い糸で結ばれた関係

 そんな「緊急テレポート」の全盛期は2008年9月以降の環境において訪れています。規制によって【レスキューシンクロ】ギミックが弱体化したことを受けての躍進であり、【レスキューシンクロ】ほどデッキスペースを要求しないというギミック的な軽さも手伝い、汎用シンクロサポートとしての価値が急激に増していった形です。

 その結果、【シンクロアンデット】を筆頭に様々なデッキで「緊急テレポート」ギミックが出張されるようになり、むしろ「緊急テレポート」を採用できないデッキはそれだけで評価を落としていたと言っても過言ではありません。【剣闘獣】など、元々高いデッキパワーを持つがゆえに生き残っていたデッキも存在しましたが、全体の割合としては「緊急テレポート」を最も上手く使える【シンクロアンデット】こそがメタゲームを支配していたと言えるでしょう。

 また、それに伴いこの頃には「クレボンス」の評価が完全に「サイコ・コマンダー」に追いついており、場合によっては「クレボンス」の方が優先されるケースも散見されるようになっています。

 しかし、「サイコ・コマンダー」の方も7シンクロ、具体的には「ブラック・ローズ・ドラゴン」や「ダーク・ダイブ・ボンバー(エラッタ前)」に繋げやすいという強みを新たに獲得していたため、基本的には両方が採用される傾向にありました。

 このように、「緊急テレポート」が汎用シンクロサポートギミックとして環境を席巻した結果、続く2009年3月の改訂で制限カードに指定されることになります。

 いくら「緊急テレポート」がパワーカードに該当するとはいえ、流石にピン挿しのカードのためだけにリクルート先を積むのは無理があり、出張セットとしての価値を失ってしまうのは避けられないことでした。

 そのため、これ以降は【サイキック族】の専用サポートカードという本来の立ち位置に戻ってきていますが、そもそも当の【サイキック族】が一番のダメージを負っていたというのは先述の通りであり、結果的にはこの瞬間をもって「緊急テレポート」の全盛期が終わりを迎えていたと言えるでしょう。

 

【後編に続く】

 【サイキック族】及び「緊急テレポート」についての話は以上となります。

 優秀な種族サポートとしての活躍が期待されていた「緊急テレポート」は実際には出張セットとして濫用される結果となり、肝心の【サイキック族】は鳴かず飛ばずという不遇の扱いを受けることになりました。それどころか最終的には「緊急テレポート」への規制によって種族全体が巻き添えを食らう状況になるなど、どこを切り取っても悲しいとしか言いようがない結末です。

 このように、【サイキック族】に関連した話題を提供した「THE DUELIST GENESIS」でしたが、当パックがもたらした出来事はこれだけではありません。むしろカード単体としては「緊急テレポート」以上に環境を荒らし尽くした恐るべきモンスターが産声を上げていたのです。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。