【六武衆】全盛期到来 六武の門が3枚積めた時代

2019年6月24日

【前書き】

 【第7期の歴史5 【シンクロン】系デッキの台頭 【クイックダンディ】ほか】の続きになります。ご注意ください。

 2010年9月の改訂で環境の勢力図が大きく塗り替わり、【クイックダンディ】を筆頭とする新勢力がメタ上位に浮上しました。一方で、前環境からの続投組である【旋風BF】は引き続きトップメタを独占しているなど、一部においては固形化したメタゲームが展開されていたことも事実です。

 しかし、それから2ヶ月後の11月中旬において、そうした停滞を打ち破る強力な新勢力が突如として台頭することになります。

 

【真六武衆】誕生 【六武衆】とは何だったのか

 2010年11月13日、レギュラーパック「STORM OF RAGNAROK」が販売されました。新たに80種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは4607種類に増加しています。

 全体的な傾向としてカテゴリカードの収録枠が多く取られていたほか、「特定のデッキでキーカードを務めたカード」の存在が目を引くパックです。具体的には、【ジャンクドッペル】の中核をなす「ドッペル・ウォリアー」を筆頭に、一時期【神風1キル】のキーカードとして悪名を馳せた「霞の谷の神風」や、【活路エクゾディア】を成立させた「活路への希望」など、遊戯王OCGでもよく知られる著名なカードが参入を決めています。

 もちろん、禁じられた聖槍」などの単純に使い勝手が良い汎用カードも輩出しており、総じて見どころが多い優良パックだったと言えるでしょう。

 とはいえ、そうしたカード群の中でも最も注目を集めていたのは、まず間違いなく【真六武衆】シリーズの存在だったのではないでしょうか。

自分フィールド上に「真六武衆-キザン」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
自分フィールド上にこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で2体以上存在する場合、このカードの攻撃力・守備力は300ポイントアップする。

 上記は【真六武衆】の筆頭カード、「真六武衆-キザン」の当時のテキストとなります。条件を満たすことで打点を2100ラインに乗せる自己強化効果に加え、同名カード以外の【六武衆】が存在する場合に手札から特殊召喚できるなど、どことなく「六武衆の師範」を彷彿とさせるモンスター(※)です。

(※実際、設定的には「六武衆の師範」の若い頃の姿であるとされています)

 つまり、その時点で既に【六武衆】のエースアタッカーを張れる器を備えていることは間違いなく、実際【六武衆】デッキでは現在においてすら必須カードの立ち位置にある重要なモンスターです。「六武衆の師範」と違って複数体並べられる点、また下級モンスターゆえに普通に通常召喚できる点などでも差別化ができており、第7期当時においても期待の新戦力として注目を受けることになります。

 

真六武衆-シエン 【六武衆】の新たな切り札

 もちろん、当パック出身の有望株は「真六武衆-キザン」だけではありません。

 この時に現れていた【六武衆】の関連カードは下記の通りです。

真六武衆-キザン
真六武衆-エニシ
真六武衆-カゲキ
真六武衆-シナイ
真六武衆-ミズホ
六武衆の影武者
紫炎の寄子
真六武衆-シエン
紫炎の狼煙
六武式三段衝
六武衆の荒行
六武院
六尺瓊勾玉
紫炎の計略

 モンスター8種類、魔法3種類、罠3種類の計14種類と多めに収録枠が取られていますが、そうした単純な枚数以上に「ほぼ全ての新規カードが実用レベルの性能を持っている」という点で優遇が図られていることが分かります。実際、このパックだけで第7期環境における【六武衆】の基本的なサポートが出揃っていたと言っても過言ではなく、その意味でも当時の【六武衆】に対して開発側からの強いプッシュがあったことは疑いようもありません。

 中でも「真六武衆-シエン」のカードパワーの高さは群を抜いており、このカードの存在が【六武衆】躍進の大きな後押しにもなっています。

戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」と名のついたモンスター1体以上
1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動する事ができる。その発動を無効にし、破壊する。
また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体を破壊する事ができる。

 1ターンに1度、ノーコストで魔法・罠カードの発動を無効にする強力な制圧効果に加え、身代わり効果による疑似的な破壊耐性すら備えているなど、明らかに当時の水準を超えている「露骨に強すぎるパワーカード」です。カード名やイラストの通り「大将軍 紫炎」のリメイクカードにあたるモンスターですが、単純に性能だけを見るのであればそのカードパワー格差は比べものになりません。

 その上、シンクロ素材の調達についても同期である「真六武衆-カゲキ」「六武衆の影武者」らによってカバーされている行き届きぶりであり、さらには「紫炎の狼煙」「六武衆の荒行」によるサーチ・リクルート体制すら完備されているなど、この時の【六武衆】へのテコ入れはかなり露骨なものがありました。

 そのため、【真六武衆】の情報判明時には【六武衆】使いの間ですら「これまでと別物になりすぎて素直に強化を喜べない」という声が噴出したほどであり、結果として「六武衆とは何だったのか」といった揶揄が一部で囁かれるという事態にも繋がっています。

 

六武の門 全てを台無しにした壊れカード

 しかし、こうした【六武衆】辟易の風潮を決定的にしたのは、何よりも「六武の門」の存在に他ならなかったのではないでしょうか。

「六武衆」と名のついたモンスターが召喚・特殊召喚される度に、このカードに武士道カウンターを2つ置く。
自分フィールド上の武士道カウンターを任意の個数取り除く事で、以下の効果を適用する。
●2つ:フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」または「紫炎」と名のついた効果モンスター1体の攻撃力は、このターンのエンドフェイズ時まで500ポイントアップする。
●4つ:自分のデッキ・墓地から「六武衆」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
●6つ:自分の墓地に存在する「紫炎」と名のついた効果モンスター1体を特殊召喚する。

 言わずと知れた【六武衆】カテゴリの心臓であり、そして2010年9月2011年3月環境において【六武衆】をトップメタに導いた立役者と言える存在です。【六武衆】モンスターが召喚・特殊召喚されるたびに自身にカウンターを乗せ、それを消費することで様々なメリットを享受できるという永続魔法カードですが、これが大量展開に長けた【真六武衆】と抜群のシナジーを形成することは言うまでもありません。

 単純に考えても【六武衆】モンスターを2体出すだけで後続の【六武衆】モンスターをサーチできるため、真六武衆-カゲキ」「真六武衆-キザン」などと組み合わせれば一瞬で【六武衆】モンスターを並べることができます。もちろん、上記で触れた「真六武衆-シエン」も【六武衆】モンスターに属しているため、「真六武衆-カゲキ」と「六武衆の影武者」の2枚が揃えば「真六武衆-カゲキ」→「六武衆の影武者」→「真六武衆-シエン」→「六武衆の師範」→「真六武衆-キザン」と連鎖的に展開を繋げていくことも可能です。

 しかし、やはり「六武の門」最大の恐ろしさはこれが2枚以上張られてしまった場合の話であり、こうなるとカウンターの獲得と消費が釣り合うため手札が全く減らなくなります。これはアドバンテージ面だけで言えば「黒い旋風」と同等の効率ですが、こちらは特殊召喚に対応する関係で1ターン中に「真六武衆-キザン」などを全展開できてしまうのが問題です。

 分かりやすく言い換えれば総攻撃力が容易に8000を超えるため、「六武の門」自体が持つ打点強化効果も含めれば簡単にワンキルを狙うことができます。また、ここに「六武衆の露払い」を絡めれば無限ループによって相手モンスターを全滅させることもでき、マスドライバー」があれば先攻1キル(※)すら不可能ではありません。

(※実際、このループの影響もあってか直後の2011年3月の改訂では「マスドライバー」が禁止カード行きになっています)

 いずれにしても、六武の門」の存在が【六武衆】というデッキのバランスを完全に崩壊させていたことは間違いなく、結果として2011年3月の改訂で早々に制限カード指定を下されるという結末を辿っています。【六武衆】が環境に現れてから僅か3ヶ月半の出来事であり、その素早い対応からも当時の環境における「六武の門」の恐ろしさを垣間見ることができるでしょう。

 

当時の環境 2010年11月

 当然のことながら、【六武衆】の参戦は当時のメタゲームに多大な影響をもたらしました。これまでトップメタをほぼ完全に独占していた【旋風BF】を横合いから思い切り殴りつけた格好であり、これ以降は【旋風BF】【六武衆】の2強に加え、やや遅れて【デブリダンディ】が後ろに続くという環境が成立することになります。

 【六武衆】は単純なデッキパワーの高さもさることながら、状況が整えば一瞬の隙を突いてワンキルを決めてくるという脅威の展開力を備えたデッキです。そのため、「六武の門」を止める「サイクロン」や、【六武衆】モンスターを止める「神の警告」など、ワンキルの起点となるカードへの対処札を構えていなければ安泰は得られなくなりました。

 しかし、恐ろしいことに【六武衆】は単なるワンキルデッキというわけではなく、「真六武衆-シエン」を軸にしたコントロールデッキとしての顔も併せ持っています。単純に「真六武衆-シエン」の後ろに伏せ1枚という状況が整うだけでも非常に強固な布陣であり、往年の「猫ナチュビ」ギミックに近い動きを安定して決めてくるというのは非常に凶悪と言わざるを得ません。

 つまり当時の【六武衆】は「門を引ければ最強だが、引けなくても普通に強い」というデッキでもあったため、ただ「六武の門」を止めるだけでは対抗策としては不十分でした。

 事実上、ワンキルとコントロールという別軸の攻め手を同時にぶつけてくる厳しい強敵であり、このことが【六武衆】への対処をより一層困難にしていたことは間違いないでしょう。

 

パペット・プラントの流行 サイファー・スカウターも

 こうした【六武衆】全盛期の最中に浮上した筆頭メタカードが「パペット・プラント」です。

このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。相手フィールド上の戦士族・魔法使い族モンスター1体を選択し、エンドフェイズ時までコントロールを得る。

 種族メタカードの一種であり、これまでは特に注目を受けていなかったマイナーカードですが、【六武衆】を仮想敵に見据える上では非常に有用な1枚です。実質的には真六武衆-シエン」で無効にできない「心変わり」とでも言うべきメタカードであり、【六武衆】側はメインからこれを防ぐ現実的な手段をほぼ持ちません。

 コントロールを奪った後はシンクロ素材などにしてしまえば無駄がなく、実際にこの動きを取り入れやすい【デブリダンディ】などのシンクロデッキではサイドの常連メンバーにもなっています。場合によってはメインから複数枚積まれることすらあり、過去のマイナーカードが環境の変化で大躍進を遂げた好例とも言えるでしょう。

 ただし、性質上「パペット・プラント」はそれ単体では除去として機能せず、シンクロ召喚ギミックを用いないデッキでは採用が難しいという欠点もあります。

 そのため、そうしたデッキでは次善のメタカードとして「サイファー・スカウター」に声がかかることになります。

このカードが戦士族モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に発動する。このカードの攻撃力・守備力は、そのダメージ計算時のみ2000ポイントアップする。

 戦士族モンスターと戦闘する場合に攻守が2000上昇するという大雑把すぎるメタ効果を持っており、実質のステータスは攻撃力が3350、守備力が3800と最上級モンスター以上の数値です。他のメタカードのように直接的な妨害能力こそありませんが、流石にここまでのステータスがあれば十分に対策カードとして機能します。

 とはいえ、こちらは「パペット・プラント」と違って「戦闘」と「破壊」という二重の壁に引っかかるため、真六武衆-シエン」を除去するカードとしては思うように機能しにくいという弱点を抱えていました。実際、「真六武衆-シエン」の横に【六武衆】モンスターが立っているだけで戦闘破壊が通らなくなる以上、「パペット・プラント」ほどの即効性には期待できないのは確かです。

 一方で、【六武衆】側から見た場合の「サイファー・スカウター」は非常に厄介なカードでもあり、考えようによってはパペット・プラント」以上に面倒な仮想敵だったと言っても過言ではありません。

 というのも、【六武衆】はメインアタッカーの大半が戦士族モンスターで固められているため、これを処理しようとすると六武衆の露払い」による直接の除去、もしくは「A・O・J カタストル」などのシンクロモンスターに頼らざるを得なくなります。どちらもカード・アドバンテージ及びテンポ・アドバンテージを著しく失ってしまうプレイであり、ただの下級モンスター1体にこれだけの足止めを強いられるというのは非常に損な取引です。

 さらに、裏側表示の「サイファー・スカウター」を踏むだけで2000近い戦闘ダメージを貰ってしまう以上、迂闊にセットモンスターを攻撃できなくなるといった抑止効果をも生み出します。この場合「神の警告」などのカウンター罠をすり抜ける形で高打点アタッカーの着地を許してしまうことになるため、正体不明のセットモンスター1体を前に「真六武衆-キザン」らが立ち往生するといったシチュエーションに遭遇することも決して珍しくありません。

 このように、【六武衆】相手における「サイファー・スカウター」は即効性を犠牲に時間稼ぎに特化した働きが期待でき、非常に信頼のおけるメタカードとして機能していました。最終的には「パペット・プラント」を追い抜いて【六武衆】対策カードの代表格としての地位を築いており、ほとんどのデッキがこれをサイドに用意するようになっていたほどです。

 逆に言えば、こうしたピンポイントメタカードが環境で大流行する程度には【六武衆】が猛威を振るっていたということでもあり、この時代が【六武衆】最大の全盛期にあたることは間違いないのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 2010年9月2011年3月頃の【六武衆】についての話は以上です。

 成立当初はファンデッキ扱いを受けていたマイナーカテゴリの一種でしたが、【真六武衆】及び「六武の門」を獲得したことで飛躍的に強化され、間もなくトップデッキの仲間入りを果たしています。過去テーマ救済の域を超えた強烈すぎるテコ入れであり、これが開発側の調整ミスと囁かれるのも無理はない話です。

 ただし、「六武の門」そのものは来日時期こそ遅かったものの、海外では1年前には既に誕生していたカードでもあります。そのため、厳密には調整ミスとは言えない面もあり、むしろ「六武の門」があるにもかかわらず【真六武衆】をデザインしてしまったことが最大の過ちだったと言えるでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。