【シンクロン】系デッキの台頭 【クイックダンディ】ほか

2019年6月21日

【前書き】

 【第7期の歴史4 制限改訂2010/9 インフェルニティガン+トリシュの制限入り】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【シンクロン】系デッキ環境上位へ 期待の新勢力

 当時の制限改訂を最も強い追い風として受けたのは、いわゆる【シンクロン】系に属する各種シンクロデッキ達でした。

このカードは手札のモンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚する事ができる。
このカードは「シンクロン」と名のついたチューナーの代わりにシンクロ素材とする事ができる。
このカードをシンクロ素材とする場合、「シンクロン」と名のついたチューナーをシンクロ素材とするモンスターのシンクロ召喚にしか使用できない。

 上記は「クイック・シンクロン」の当時のテキストとなります。

 手札のモンスターを捨てて自身を特殊召喚する効果に加え、「シンクロン」チューナーの代わりになれる効果外テキストを持ったモンスターです。本来はそれぞれに専用チューナーを要求される各種【シンクロン】系シンクロモンスターの素材をこれ1枚で賄えるため、カードプールの充実に伴いこの頃から既に注目を集めていました。

 そのタイミングで制限改訂による環境のリセットが起こり、一気に新勢力として期待を受けるに至ったというのが大まかな事の経緯となります。直前に現れていた「調律」の存在、また【植物シンクロ】ギミックの発見もこの流れの後押しとなり、間もなく環境における有力デッキの一角にまでのし上がることに成功しています。

 こうした【シンクロン】系デッキの中でも最も早い段階で固まったのが【クイックダンディ】と呼ばれる型です。

 その名の通り、上記の「クイック・シンクロン」と「ダンディライオン」をメインエンジンに据えたシンクロデッキの一種であり、なおかつ「ドリル・ウォリアー」のサルベージ効果を軸にした中速コントロールデッキでもあります。具体的には、「ダンディライオン」をコストに「ダンディライオン」をサルベージするという動きを繰り返すことで毎ターンのトークン生成が狙えるため、非常に安定したボード・コントロールを行えることが最大の魅力と言われていました。

 また、「ジャンク・デストロイヤー」を筆頭とする【ジャンク】系のシンクロモンスターや、「フルール・ド・シュヴァリエ」などの通常のシンクロデッキではまず採用できない専用モンスターを自由に使えるという強みもあります。むしろそのせいでエクストラの枠争いが熾烈になりやすいという嬉しいデメリット(※)もあり、他のシンクロデッキ以上に「15枠では全然足りない」という悲鳴が絶えないデッキでした。

(※ジャンク・アーチャー」を採用するかどうかで何日も悩むというのは【クイックダンディ】使いの誰もが通る道と言われていました)

 

結局は【旋風BF】が強かった時代 相性最悪の敵

 しかし、この【クイックダンディ】と呼ばれる型が当時の環境で長生きすることはなく、時間経過とともに次第に数を減らしていくという運命を辿っています。流石に完全に淘汰されてしまったわけではありませんが、メタゲームにおいては先細りの状況にあったことは否めません。

 理由は非常にシンプルで、単純に【旋風BF】に勝つことができなかったからです。

 「黒い旋風」の制限カード指定により弱体化を受けた【旋風BF】でしたが、それでもなお当時のデッキの中ではトップクラスの強さを誇っており、制限改訂以降も何事もなく環境上位に居座っていました。その対策として【光デュアル】を筆頭に様々なメタデッキが試されていたことも事実ですが、やはり全体の割合としては【旋風BF】が圧倒的に強い環境が成り立っていたことは確かです。

 これは【クイックダンディ】にとっては非常に都合の悪い状況でした。

 というのも、【クイックダンディ】は「クイック・シンクロン」による選択的な展開を行える強みを持ちますが、その代償に手札コストによるディスアドバンテージが重く伸しかかる弱点を抱えていたからです。それを補うために「ダンディライオン」や「ドリル・ウォリアー」を併用している側面もあったのですが、いずれにしても他のシンクロデッキと比べて妨害を苦手としていたことは間違いありません。

 翻って当時の【旋風BF】は弱体化をカバーするために各種罠カードで相手を妨害し、相対的に速度面で優位に立つことを狙う【メタビート】寄りの構成にシフトしていました。具体的には「ゴッドバードアタック」「奈落の落とし穴」「神の宣告」「神の警告」「王宮の弾圧」など、ものの見事に【クイックダンディ】に刺さるカード(※)が大量に積まれるようになっていたのです。

(※場合によっては「魔のデッキ破壊ウイルス」が積まれていることすらありました)

 その上、デッキコンセプトの根幹を成す【ダンディウォリアー】ギミックは「BF-黒槍のブラスト」「BF-アームズ・ウィング」らに容易に狩られてしまい、ボード・コントロールの基盤としては明らかに機能しません。どの角度から見ても明確に不利がついてしまっている格好であり、結局は【クイックダンディ】の強み以上に弱みが足を引っ張る状況にあったことは確かです。

 

サンブレとリミリバの発見 そして【デブリダンディ】へ

 こうした苦境の中に見出されたデッキ、それこそが【デブリダンディ】と呼ばれる型でした。

 その名の通り「デブリ・ドラゴン」を中心としたシンクロデッキの一種であり、事実上は【クイックダンディ】の派生型にあたるデッキとなります。大雑把に言えば【クイックダンディ】から「クイック・シンクロン」などのコンボ要素の強いカードを抜き、代わりに「カオス・ソーサラー」などの単体のカードパワーが高いカードを詰め込むという、ある種の【グッドスタッフ】的な構成が取られる傾向にあったアーキタイプです。

 中でも特徴的なのは「サンダー・ブレイク」と「リミット・リバース」の採用であり、これこそが当時の【クイックダンディ】と【デブリダンディ】を分ける最大の違いだったと言っても過言ではないでしょう。

 具体的には、「サンダー・ブレイク」は手札に素引きした「ダンディライオン」「グローアップ・バルブ」「スポーア」を効率的に捌く手段(※)として、「リミット・リバース」は召喚権を浮かせつつシンクロ素材を調達する手段としての起用です。いずれも【クイックダンディ】では「クイック・シンクロン」が一人二役で担っていた役割であり、これを2枚のカードに分担することで取り回しの改善を図った型であったとも言えます。

(※型によっては「サンダー・ブレイク」の代わりに「鳳翼の爆風」が採用されるケースもありました)

 これらのカードは単純に「クイック・シンクロン」よりも汎用性が高く、どのような状況でも一定の仕事が見込めるという優位点を持っています。特に「サンダー・ブレイク」は将来的に参入してくる【六武衆】に対して有効に働く利点もあり、実質的には必須カード級の扱いを受けていました。

 

それでも【旋風BF】には勝てない 主流メタビの壁

 とはいえ、こうして成立した【デブリダンディ】ですら【旋風BF】には今一歩及ばない立ち位置にあったことは否めません。

 もちろん、当時の環境においてはトップデッキと言っていい程度には広いシェアを誇っていたことは確かです。しかし、そもそもシンクロデッキ共通の弱点である「妨害耐性のなさ」という問題が解決されたわけではなかったため、やはり【旋風BF】と対等に渡り合うのは容易なことではありませんでした。

 なおかつ、【六武衆】のようにメタを捻じ伏せるほどの圧倒的なデッキパワーを持ち合わせていたわけでもなく、根本的な部分で環境に適応できていないと言われることも少なくなかったデッキです。現実問題として、【旋風BF】のような「主流メタビ」が環境トップにあるゲームバランスではシンクロデッキ自体が逆風のポジションであり、それを元々の地力の高さと汎用カードの選択で何とか補っていたというのが実情だったのではないでしょうか。

 しかし、逆に言えばそうした不利を抱えた上で環境終盤まで主流デッキの一角として走り抜けたということでもあり、第7期環境を代表するシンクロデッキとの肩書きにも決して不足はありません。

 実際、来期にあたる2011年3月環境では【ジャンクドッペル】に姿を変えてトップメタの一角に名を連ねており、特定のカードに頼り切らない高い生存力を備えたアーキタイプであったと言えるでしょう。

 

【まとめ】

 前記事と合わせて、2010年9月の改訂で起こった大まかな出来事は以上です。

 「インフェルニティガン」と「氷結界の龍 トリシューラ」の規制によって【インフェルニティ】が環境上位から姿を消し、代わりに【クイックダンディ】に始まるシンクロデッキが頭角を現すことになります。しかし、全体の割合としては【旋風BF】がトップを独占する状況にあり、他のデッキはその後ろを追いかけるしかないという環境が成立していました。

 とはいえ、それに対抗して【デブリダンディ】などの派生構築の研究が進むなど、多くの面でメタの変動が誘発された良改訂だったのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。