シューティング・クェーサー・ドラゴン爆誕 【ジャンド】環境トップへ

2019年7月3日

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【前書き】

 【第7期の歴史12 エクシーズ召喚システム実装 マスタールール2への移行】の続きになります。ご注意ください。

 アニメの世代交代に伴ってOCGの標準ルールがマスタールール2に移行し、新召喚法であるエクシーズ召喚が実装されました。同レベルのモンスターを揃えるだけで準備が整うという画期的なシステムであり、カードプールが充実するにつれて環境における存在感も次第に増していくことになる召喚法です。

 新たなモンスター群の参戦によってメタゲームが沸き立つ中、そうした時代の流れに逆行するようにシンクロ界隈に強大な新戦力が現れることになります。

 

通称クエン酸 シンクロ召喚の極致

 2011年3月25日、遊戯王関連書籍である「MASTER GUIDE3」が販売されました。新たに2種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは4787種類に増加しています。

 ここで誕生した書籍同梱カードのうち、特に注目を集めていたのは「シューティング・クェーサー・ドラゴン」と呼ばれる大型シンクロモンスターでした。

星12/光属性/ドラゴン族/攻撃力4000/守備力4000
シンクロモンスターのチューナー1体+チューナー以外のシンクロモンスター2体以上
このカードはシンクロ召喚でしか特殊召喚できない。
このカードはこのカードのシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。
1ターンに1度、魔法・罠・効果モンスターの効果の発動を無効にし、破壊する事ができる。
このカードがフィールド上から離れた時、「シューティング・スター・ドラゴン」1体をエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。

 レベル12、攻守4000という重量級のステータスに加え、チューナーを含めてシンクロ素材として最低3体のシンクロモンスターを要求されるという極めて重い召喚条件を与えられたカードです。さらに、シンクロ召喚以外の方法では特殊召喚できない制約も設けられているため、生半可なシンクロデッキでは召喚すらままなりません。

 しかし、その重さに見合うだけのカードパワーは持っており、3つの効果全てが水準以上の性能となるようにデザインされています。というより、当時から数世代が経過した今現在においてすら12シンクロの筆頭カードとして知れ渡っている存在であり、まさに遊戯王OCGにおけるシンクロの極致(※)とも言えるカードでしょう。

(※実際、アニメにおいても最終決戦で勝利の決め手となった重要なモンスターです)

 そんな「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の最大の特徴にして強みとなるのは、何と言っても「あらゆる効果の発動を毎ターンノーコストで無効にする効果」に他なりません。

 「真六武衆-シエン」などと違い、既に発動されている魔法・罠カードの効果の発動にも対処できるため、カウンター罠を除けば大半のカードに睨みを利かせることができます。1ターンに1度限りとはいえ制圧力は相当であり、打点の高さも相まってデッキによってはこれ1枚で詰んでしまいかねないカードです。

 特に2011年環境においては除去手段を「氷結界の龍 トリシューラ」や「スクラップ・ドラゴン」、あるいは「ブラック・ローズ・ドラゴン」などのシンクロモンスターに頼ったデッキも少なくなく、結果としてメインデッキの除去カードは枠を削られやすい傾向にあったという時代背景が存在します。

 さらに、当時の筆頭除去カードであった「月の書」も2011年3月の改訂で制限カード行きになったばかりであり、代わりのカードも発見に至っていないという状況にありました。そのため、シューティング・クェーサー・ドラゴン」の効果を上手く使わせた上で更にそのターン中に除去を狙うというのは、当時のゲームバランス・カードプールにおいては見た目以上に難しいことだったのです。

 逆に言えば、除去効果持ちのシンクロモンスターを2体呼び出すだけのリソース消費を覚悟すれば突破は可能ということでもありますが、それがデュエルにおいて相当厳しい出費となるのは言うまでもない話でしょう。

 おまけに、「シューティング・クェーサー・ドラゴン」はフィールドを離れた時に「シューティング・スター・ドラゴン」をエクストラデッキから呼び出す効果を持っているため、これを処理する段階でリソースが尽きると結局詰んでしまうことになります。つけ入る隙があるとすれば時の任意効果ゆえにタイミングを逃す可能性があること、あるいはエクストラ枠の関係で「シューティング・スター・ドラゴン」が採用されていないケースが存在することくらいですが、どちらも意識して狙えるようなことではありません。

 つまり、「シューティング・クェーサー・ドラゴン」を無理なく突破する方法としては「無効化効果を反応させない範囲で少しずつ対処の手を進め、囮に釣られたところに除去を通す」というようなものが挙げられますが、そうした悠長な逃げ道すら許さないのが「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の恐ろしいところです。

 「シューティング・クェーサー・ドラゴン」はシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数に応じて攻撃回数を増やす効果を持っているため、最低でも2回の攻撃が可能という強みがあります。よって総火力は少なくとも8000という絶大なワンキル能力を誇っており、上記のように時間をかけて突破を狙うような余裕は大抵存在しません。

 これらをまとめると、当時のカードプールにおける「シューティング・クェーサー・ドラゴン」は「すみやかに処理しなければワンキルされるが、無理に処理しようとすると多大な消耗は避けられない」という鬼のようなモンスターだったということになります。要するに「出された時点で半分負け」という類のカードであり、実質的には特殊勝利カードに近い位置付けにあったと言っても過言ではありません。

 もちろん、これほどのカードが当時の環境で注目されないはずがなく、情報判明当初から早々に専用デッキの研究が進められていくことになります。

 

【ジャンクドッペル】大幅強化 2011年の環境トップ

 こうした動きの中で最初に「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の専用デッキの土台として持ち上がったのは、当時のシンクロデッキの筆頭である【ジャンクドッペル】と呼ばれるアーキタイプでした。

 「TG ハイパー・ライブラリアン」の誕生によって成立の兆しが現れていた新世代のシンクロデッキであり、分類上は【デブリダンディ】あるいは【クイックダンディ】からの派生にあたるデッキとなります。そのコンセプトの中核は「TG ハイパー・ライブラリアン」の運用に特化している点にあるというのは以前の記事で取り上げた通りですが、これが「シューティング・クェーサー・ドラゴン」のシンクロ召喚をも得意としていることは言うまでもありません。

 実際、当時においてもその事実が発見されるのに然程時間はかかっておらず、3月中の時点から早々に「シューティング・クェーサー・ドラゴン」採用型の【ジャンクドッペル】が実績を残していました。

 というより、「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の誕生直後から急激に【ジャンクドッペル】のシェアが拡大に向かっているため、実質的には「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の存在が【ジャンクドッペル】環境トップ入りの決め手になったと言っても過言ではないでしょう。

 

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クェーサーの出し方 主なルートなど

 ちなみに、当時の【ジャンクドッペル】における「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の主な展開ルートは下記の通りです。

・ジャンドスポーアルート

 

①:墓地に「スポーア」とレベル3の植物族モンスター、手札に「ジャンク・シンクロン」「ドッペル・ウォリアー」を揃える。

 

②:「ジャンク・シンクロン」を召喚し、「スポーア」を蘇生する。

 

③:墓地蘇生に反応して「ドッペル・ウォリアー」を特殊召喚する。

 

④:「ジャンク・シンクロン」「ドッペル・ウォリアー」の2体で「TG ハイパー・ライブラリアン」をシンクロ召喚する。

 

⑤:「ドッペル・ウォリアー」の効果でトークン2体を特殊召喚する。

 

⑥:「スポーア」とトークンの2体で「フォーミュラ・シンクロン」をシンクロ召喚する。(効果で2枚ドロー)

 

⑦:レベル3の植物族モンスターを除外して「スポーア」を蘇生する。

 

⑧:レベル4になった「スポーア」とトークンの2体で「A・O・J カタストル」をシンクロ召喚する。(効果で1枚ドロー)

 

⑨:「フォーミュラ・シンクロン」「TG ハイパー・ライブラリアン」「A・O・J カタストル」の3体で「シューティング・クェーサー・ドラゴン」をシンクロ召喚する。

 

 

・ジャンドリミリバロンファルート

 

①:墓地に「ローンファイア・ブロッサム」「ドッペル・ウォリアー」、手札に「ジャンク・シンクロン」、フィールドに既に伏せてある「リミット・リバース」を揃える。(「死者蘇生」などでも可)

 

②:「ジャンク・シンクロン」を召喚し、「ドッペル・ウォリアー」を蘇生する。

 

③:「ジャンク・シンクロン」と「ドッペル・ウォリアー」の2体で「TG ハイパー・ライブラリアン」をシンクロ召喚する。

 

④:「ドッペル・ウォリアー」の効果でトークン2体を特殊召喚する。

 

⑤:「リミット・リバース」で「ローンファイア・ブロッサム」を蘇生する。

 

⑥:「ローンファイア・ブロッサム」で「スポーア」をリクルートする。

 

⑦:「スポーア」とトークンの2体で「フォーミュラ・シンクロン」をシンクロ召喚する。(効果で2枚ドロー)

 

⑧:「ローンファイア・ブロッサム」を除外して「スポーア」を蘇生する。

 

⑨:レベル4になった「スポーア」とトークンの2体で「A・O・J カタストル」をシンクロ召喚する。(効果で1枚ドロー)

 

⑩:「フォーミュラ・シンクロン」「TG ハイパー・ライブラリアン」「A・O・J カタストル」の3体で「シューティング・クェーサー・ドラゴン」をシンクロ召喚する。

 

 いずれも3ドローによって差し引き1枚分のハンド・アドバンテージを得た上で「シューティング・クェーサー・ドラゴン」をシンクロ召喚できる強力な展開ルートであり、当時の環境においてはこれが決まった瞬間にゲームが終わっていたと言っても過言ではありません。そのため、「カードガンナー」や「ライトロード・ハンター ライコウ(エラッタ前)」を駆使して墓地を肥やし、この状況をいち早く作り出すことこそが【ジャンクドッペル】の大きなゴール地点にあたると言われていました。

 とはいえ、展開途中で何らかの妨害を受けるリスク、とりわけ最後の最後に「神の警告」を踏んでしまう最悪の裏目(※)を考慮する場合、アーカナイト・マジシャン」などを小出しにしていく方が丸いプレイングであると考えられていたことも確かです。

(※この場合、エクストラの「TG ハイパー・ライブラリアン」「フォーミュラ・シンクロン」がほぼ枯渇してしまうため、「貪欲な壺」などがない限りまともに動けなくなってしまいます)

 実際、当時の【ジャンクドッペル】は「TG ハイパー・ライブラリアン」「フォーミュラ・シンクロン」らによってアド差を付けて圧倒するという勝ちパターンが多く、シューティング・クェーサー・ドラゴン」で勝負を決める大振りなゲーム展開は中々起こりにくかったという背景もあります。

 というより、むしろ「シューティング・クェーサー・ドラゴン」を見せ札にして相手の選択肢を狭めるというような使い方が主流であり、そもそも積極的に召喚を狙うタイプのカードではないと言われていました。

 例えば、「TG ハイパー・ライブラリアン」と「フォーミュラ・シンクロン」が揃っている盤面においては「ブラック・ローズ・ドラゴン」や「アーカナイト・マジシャン」を警戒しなければなりませんが、そのためにセットカードを出し渋ると「シューティング・クェーサー・ドラゴン」に繋がってしまいかねないというジレンマが生まれ、結果的に相手の行動を大きく縛る(※)ことができます。

(※こうしたジレンマによる「妥協の1伏せ」をエンドサイクで撃ち抜けるというのも【ジャンクドッペル】の強みでした)

 事実上、シューティング・クェーサー・ドラゴン」というカードがOCG環境に存在していること自体が抑止力のように機能している格好であり、潜在的な部分で【ジャンクドッペル】の強さに貢献していたカードです。ちょうどこの頃から伏せ環境が到来するというメタゲーム的な事情もあり、少なからず妨害をケアできるというのは非常に信頼のおける強みとなり、最終的に既存のシンクロデッキが【ジャンクドッペル】に収束したのもこれが理由だったのではないでしょうか。

 

ライバルは【六武衆】 墓地メタも苦しかった時代

 このように、「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の存在は【ジャンクドッペル】の躍進の強烈な後押しとなりましたが、メタゲームにおいては順風満帆の状況にあったわけではありません。

 勢いに乗っていた【ジャンクドッペル】の前に立ち塞がった最大のライバルは、前期環境の覇者を務めた【六武衆】でした。

 「六武の門」の規制によって失速を余儀なくされていたアーキタイプですが、弱体化してなお当時最強クラスのデッキパワーを誇っていた強力なテーマであり、2011年3月環境もこれを頂点とするところからスタートを切っています。なおかつ、様々な形でメタを張られながらも環境終盤に至るまでその位置をキープし続けていた脅威のデッキでもあり、当時のメタゲームを生き残る上では避けては通れない相手でした。

 翻って【ジャンクドッペル】はデッキパワーの高さそのものは【六武衆】に比肩するものもありましたが、その代償として各種墓地メタが全面的に刺さってしまうという明確な弱点を抱えていたデッキでもあります。デッキコンセプトの中核をなす「ジャンク・シンクロン」「ドッペル・ウォリアー」の2枚はもちろん、【植物シンクロ】ギミックや「デブリ・ドラゴン」「リミット・リバース」といった蘇生カード、また【クイックジャンド】型の場合は「レベル・スティーラー」などに至るまでがこの餌食となることは避けられません。

 しかし、【ジャンクドッペル】というデッキは構造上スロットの余裕がそれほどなく、こうした「対策の対策」を安定して取ることが難しいという課題を抱えていました。実際、次元の裂け目」1枚で大半の動きが封殺されてしまうというのは、環境デッキとしてはあまりに致命的なウィークポイントです。

 もちろん、【ジャンクドッペル】側も「ライトロード・マジシャン ライラ」「ライトロード・ハンター ライコウ(エラッタ前)」といったカードを取り入れることで改善を図ってはいましたが、それだけでは対応としては不十分な面もありました。

 駄目押しとなったのが、ライバルである【六武衆】が墓地依存度の低いデッキであったという事実です。

 基本的に【六武衆】はサーチ及び手札・デッキからのリクルートに展開の起点を置いており、墓地からの動きを生み出すカードは「諸刃の活人剣術」程度しかありません。場合によっては「六武の門」によるサルベージも墓地利用と言えなくもないですが、サルベージ体制が整うほど有利な状況であれば墓地メタが問題になることはほぼないと言えます。

 つまり、【六武衆】側は「次元の裂け目」などのクリティカルな対策カードを負担なくサイドに用意できたということであり、これは当然【ジャンクドッペル】にとっては非常に都合の悪い状況でした。ただでさえ強い相手が特効武器を振り回してくるというのはまさに鬼に金棒と言うほかなく、当時の【ジャンクドッペル】が【六武衆】に遂に勝つことができなかったのもこれが大きな障害となっていたためだったのではないでしょうか。

 

【後編に続く】

 「シューティング・クェーサー・ドラゴン」についての話は以上です。

 その圧倒的なカタログスペックによって多くのプレイヤーから注目を集め、間もなく【ジャンクドッペル】の切り札としてのポジションに収まっています。当の【ジャンクドッペル】はデッキパワーの高さに反してメタゲームにおいてはやや苦しい立場に置かれていましたが、その向かい風の中で使用率2位の実績を残したことは大きな快挙であったと言えます。

 しかし、この時期に「シューティング・クェーサー・ドラゴン」に着目していたアーキタイプは【ジャンクドッペル】だけではありません。これまで環境の一角にありながらも目立った成績を残せていなかったある中堅勢力が、「シューティング・クェーサー・ドラゴン」の誕生を受けて突如浮上を果たしていたのです。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。