万能サーチカード封印の黄金櫃 禁止行きが囁かれた時代

2018年10月29日

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【前書き】

 【第5期の歴史4 E・HERO エアーマン誕生 トップデッキ【エアブレード】の台頭】の続きになります。ご注意ください。

 「E・HERO エアーマン」という第5期を代表する最強格の下級アタッカーの誕生は、当時のプレイヤーに多大な衝撃をもって受け入れられました。その凄まじい強さからほとんどのデッキに3積みされるまでになり、またたく間に環境を席巻しています。

 同時に専用デッキである【エアブレード】の影も徐々に立ち上がり、次第にその脅威が浸透していくことになります。

 次期トップメタ有力候補の台頭にメタゲームがざわめく中、再び環境に激震が走ったのはその数日後の出来事でした。

 

ヴァリュアブルブック9 3冊購入確定

 2006年8月24日、「ザ・ヴァリュアブル・ブック9」が販売されました。書籍同梱カードとして新たに2種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは2517種類に増加しています。

 方向性は異なれど、どちらも非常に強力なカードです。実際に2枚とも何らかの形で規制を経験していることからもその危険性が窺えます。

 しかし、特に環境レベルの視点でプレイヤーの注目を集めていたのは、間違いなく「封印の黄金櫃」の方だったのではないでしょうか。

自分のデッキからカードを1枚選択し、ゲームから除外する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。

 ルール面では少々煩雑なカードですが、効果は実に単純で、簡単に言えば「デッキの好きなカード1枚を2ターン後に手札に加える」というものです。もしくは、除外ゾーンを経由することから除外アドバンテージを稼ぐ目的で使われることもあり、現在では主にこちらの使用法がメインとされています。

 一方、サーチカードとして性能を判断する場合、どんなカードでも無制限にサーチできる反面、2ターンというタイムラグが存在するのが大きなネックと言えるでしょう。実際、封印が解ける頃にはデュエルが終わっているということも珍しくなく、現在の価値観では悠長なカードという評価を付けないわけにはいきません。

 しかし、これは第5期当時の価値観においては、まさしく革命的とすら言えるほどに驚異的なカードでした。

 なぜなら、1ターンでゲームの大勢が決まってしまう現代のデュエルとは違い、この頃は基本的にゲームスピードが遅く、複数ターンに渡って攻防が繰り広げられるのが常識とされていたからです。これは【エアブレード】などの環境トップ級のデッキですら例外ではなく、またこの価値観こそが【チェーンバーン】や【未来オーバー】を大きな脅威として認識させていたとも言えます。

 つまり、当時の「封印の黄金櫃」というカードは、ほぼノーリスクで好きなカードをサーチできる反則一歩手前のパワーカードに他ならなかったのです。

 「天使の施し」を筆頭とする、一部の凶悪なパワーカードが現役を務めていたこともこのカードの評価を高めていました。これは言い換えれば制限カードを4枚積めることに等しく、すなわち「制限カードが制限カードである意味を失わせてしまう」という危険極まりない状況を作り出してしまうことになります。

 同様の理屈から来る話として、コンボデッキとの親和性の高さも見過ごすことはできません。文字通り2枚目以降のコンボパーツとしてカウントすることができるため、ありとあらゆるコンボの成功率を大幅に、かつ安易に高めることができてしまうのです。

 

天使の施し4枚体制の恐怖 【ダークゴーズ】の台頭

 「封印の黄金櫃」の恩恵を最も強く受けたのは、【暗黒界】の派生デッキである【ダークカオス】、そしてその後継デッキ【ダークゴーズ】でした。

 手札から捨てられた時に効果を発動する【暗黒界】と、ドローとディスカードを兼ねる「天使の施し」が強烈にシナジーすることは誰の目にも明らかです。というより、元々このシナジーのために【ダークカオス】が組まれたと言っても過言ではなく、実際にそれが正しかったことは当時の多くの実績が証明しています。

 そこに現れた「封印の黄金櫃」の存在は「天使の施し」4積みに等しい状況を生み出しました。これにより、いわゆる「施シルバ」コンボが以前と比べて遥かに安定して決まるようになり、やがては当デッキを【エアブレード】に次ぐ巨大勢力へと押し上げたほどです。

 もっとも、現在の【暗黒界】のようにカテゴリ間のシナジーを元にデッキが組まれることはほぼなく、【暗黒界】要素は「暗黒界の武神 ゴルド」「暗黒界の軍神 シルバ」の2種類のみ、それも計3~4枚程度であることがほとんどでした。そのため、見方によっては【サイカリエアゴーズ】の【サイカリバー】部分を【暗黒界】ギミックに差し替えたデッキであったとも言えます。

 その他、普通のデッキに比べて1枚挿しが比較的多めの、いわゆるハイランダー系デッキに属していたことも特徴の一つです。ハイランダー構成はデッキの軸がぶれやすいため、本来はあまり有効な構築方法ではありませんが、この問題は3積みされた「封印の黄金櫃」が容易く解消してくれます。

 このように、【ダークゴーズ】は「決まれば勝ち」のコンボを搭載した【グッドスタッフ】に他ならず、この成立以降は環境屈指の有力アーキタイプとして勢力を拡大していきました。

 

【当時の環境 2006年8月24日】

 「封印の黄金櫃」という史上稀に見る強力サーチカードの誕生により、当時のほとんどのデッキがこの影響に晒されることになりました。

 【チェーンバーン】など、コンセプト上これを全く使わないというデッキも一応は存在していましたが、それ以外のデッキではおおむね採用が検討できるパワーカードであったことは疑いようもありません。先に述べた通り、「聖なるバリア -ミラーフォース-」や「大嵐」などのパワーカードを予約しておくだけでも十二分に強い働きが期待できたため、【サイカリエアゴーズ】においてすら複数枚積まれることがあったほどです。

 もちろん、【エアブレード】などのコンボ内蔵型ビートダウンデッキでも3積みが基本とされ、足りないパーツを補完するためのカードとしても、あるいは手札事故を回避するためのカードとしても信頼されるようになりました。

 また同様の理由により、当時の代表的な後攻1キルデッキである【未来オーバー】の新たなサポートとしても注目が集まっています。

 特に、9月の制限改訂では「未来融合-フューチャー・フュージョン(エラッタ前)」の制限カード化が判明していたこともあり、その補完パーツとしての役割が求められた格好です。逆に言えば、このカードの存在こそが弱体化した【未来オーバー】をメタの一角に生き残らせていたとも言えるでしょう。

 こうしたサーチ多用環境の到来により、前記事でも取り上げた「マインドクラッシュ」に更なる期待が向かうことになります。

 元々「E・HERO エアーマン」の台頭によって採用率を上げていたカードですが、「封印の黄金櫃」の流行がその駄目押しとなった印象です。

 他方では、スタンバイフェイズにカードが手札に加わるという性質から、俗に言う「巻き戻しマイクラ」問題が表面化した時期でもあります。実際のところ、これは極端に騒がれるほど大きな問題ではなかったようにも思いますが、やはり全く騒動にならないということはなく、一部では事態が深刻化することもあったのではないでしょうか。

 

【後編に続く】

 「封印の黄金櫃」の参入によって起こった出来事は以上となります。

 現在の価値観では、少なくともサーチカードとしてはそれほど目を引く性能ではありませんが、当時のゲームスピードにおいてはまさに反則的な強さを誇ったカードです。プレイヤーの間では規制は確実、場合によっては禁止カード行きもあり得ると囁かれたほどであり、実際に半年後の改訂ではいきなりの制限カード指定を下されています。

 しかし、このカードの強みはサーチカードとしての優秀さだけではありませんでした。それどころか、ある意味ではサーチ以上に強力な運用方法として、「デッキのどんなカードでも無条件で除外できる」という事実に次第に注目が向かっていったのです。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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