マジックテンペスターが禁止カードになった理由
【前書き】
「マジックテンペスター」というモンスターが存在します。
マジックテンペスター
シンクロ・効果モンスター
星6/闇属性/魔法使い族/攻撃力2200/守備力1400
チューナー+チューナー以外の魔法使い族モンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、このカードに魔力カウンターを1つ置く。
1ターンに1度、自分の手札を任意の枚数墓地へ送る事で、その枚数分だけ魔力カウンターを自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターに置く。
また、フィールド上に存在する魔力カウンターを全て取り除く事で、その個数×500ポイントダメージを相手ライフに与える。
いわゆる射出カードの亜種であり、手札を魔力カウンターに変換する効果、及びフィールドの魔力カウンターを全て取り除いてバーンダメージに変換する効果を持っています。カタログスペックだけを見るならエクストラに置いておける「キャノン・ソルジャー」とも言えるモンスターですが、効果の性質上これ単体では機能しにくいこと、また「マジックテンペスター」自体がそこそこ出しにくいモンスターであることなどの理由からこれまで規制を免れていたと思われるカードです。
しかし、その危険性は以前から指摘され続けており(※)、案の定2021年4月の制限改訂をもって遂に禁止カード行きを宣告されることとなりました。
(※ちなみに、海外では1年以上前に禁止行きになっていました)
これに関しては妥当と言って差し支えない規制ではありますが、実際に「マジックテンペスター」の脅威に直面したことのない方にとっては具体的な規制理由が見えてこないということもあるかと思います。
この記事では、そんな「マジックテンペスター」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。
【マジテンワンキル】ギミック 【未界域】での濫用
先に結論を言ってしまうと、周知の通り「神聖魔皇后セレーネ」を絡めた先攻ワンキルギミックのパーツとして濫用されていたことが主な規制理由であると言えます。
①:「神聖魔皇后セレーネ」を1~2体リンク召喚して魔力カウンターを合計15個以上乗せる。
②:「マジックテンペスター」をシンクロ召喚し、自身の効果で魔力カウンターを1個乗せる。(※足りない場合は手札を切って魔力カウンターを水増し)
③:500×16個で8000バーン。(※2回に分けるパターンもある)
このコンボが成立したのは2019年のことであり、どちらかというと今更感のある話ではありますが、上記コンボを先攻1ターン目に決めることで先攻ワンキルが成立します。最大の特徴はエクストラデッキだけでワンキルギミックが完結しているという点で、相性のいいデッキではもちろん、パーツがある程度共通していれば比較的無理なくデッキに組み込めてしまう(※)ことも少なくありません。
(※もちろん実際には制約も多く、額面ほど汎用性のあるギミックではありません)
また、「神聖魔皇后セレーネ」の名称ターン1制限がないことに着目した無限ループギミックも実用レベルで開発されており、それに釣られる形でもワンキルパーツとして危険な兆候を見せていたことは事実です。
実際に【マジテンワンキル】の本場である【未界域】を筆頭に、【ライトロード】などの中堅デッキにおいても同型のギミックが採用される傾向にあり、環境、非環境を問わずワンキルゲームをしばしば発生させていたことは否定できません。
環境では地雷 セレーネ2体+αという厳しいコンボ条件
もっとも、そんな【マジテンワンキル】ギミックが大々的に環境を荒らしていたかというとそんなことはなく、おおむね地雷の域を出ないポジションに収まっていたことは確かです。
単純な話、魔法カードを大量に墓地に溜めた状態で「神聖魔皇后セレーネ」2体と「マジックテンペスター」を並べるというだけでも既に一仕事ですが、例えば【未界域】のようにメインギミックに魔法使い族が絡まないデッキを土台とする場合、「見習い魔嬢」「アカシック・マジシャン」「妖精伝姫-シラユキ」などの下敷きモンスターを経由しつつ展開しなければなりません。
また、実戦においては相手の妨害もケアする必要がある以上、実際にはその上で「召命の神弓-アポロウーサ」「ライトロード・ドミニオン キュリオス」、あるいは「暗遷士 カンゴルゴーム」といった対処札を同時に立てることも要求されます。
こうした事情から、たとえ初動に成功していても何らかの理由で展開が止まってしまうケースは少なくなく、「マジックテンペスター」に辿り着くにはかなり上手くデッキを回し切る必要がありました。なおかつ、【未界域】特有のババ抜き事故などの土台側のリスクもあり、これまでの先攻ワンキルギミックと比較してもかなりムラがあるコンボだったことは否めません。
というより、そもそも【未界域】は「マジックテンペスター」の先攻ワンキルを闇雲に狙っていくような単純なデッキではないため、厳密に言えば【マジテンワンキル】が暴れていたという言い方そのものにも若干語弊があるような状況です。
もっと言えば、その【未界域】自体もメタゲームで特筆する地位を築いていたわけではなく、あくまでも数ある環境デッキの1つ(※)という位置付けに収まっていたという背景もあります。要するに他の禁止カードほど顕著に問題を引き起こしていたカードではないため、ゲームバランス的な観点においては禁止カード相当の強さは無かったと考えるべきでしょう。
(※というより、今期は環境的に不利要素が多く、あまり姿を見かけなくなっていました)
とはいえ、根本的に先攻ワンキルという概念そのものに問題があると言ってしまえばその通りの話ではあります。
実際、いざ踏んでしまった時の心境は従来の先攻ワンキルコンボと大差ないため、結論としては前書きで述べた通り「マジックテンペスター」の禁止カード指定は妥当な決定だったのではないでしょうか。
【まとめ】
「マジックテンペスター」についての話は以上です。
誕生時点ではそれほど目立たなかったカードですが、条件付きとはいえエクストラに置いておける疑似射出カードであり、近年に入ってからはいずれ禁止行きになってもおかしくないと言われ続けていました。実際、海外環境では既に禁止カード指定を受けていた背景もあり、このカードの禁止行きに関しては遅いか早いかの話でしかなかった印象はあります。
もっとも、【マジテンワンキル】関連アーキタイプ視点ではワンキルパーツが別のカードに変わるか、そうでなければ制圧軸にシフトするだけではないかとも思えるため、個人的にはそこまで影響のある規制ではないだろう、というのが正直な感想ではあります。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
マジテンワンキルとは何度か大会で当たったので、ようやくか……という感じでした。
基本的には地雷デッキですが、ワンキルに失敗してもある程度の制圧盤面を敷いてビートダウンにシフトできる印象もあるので、そういう意味では一芸に終わらない現代基準のワンキルデッキでした。
対面すると独特の楽しさがあるにはあるのですが、この手のデッキはやはり他対面と比べて別ゲー感が強く規制されて一安心してはおります。
コメントありがとうございます。
個人的な意見で恐縮ですが、マジテンに関してはこれのためだけにドロバを用意しておかなければならないという点で精神的な負担があったように思います。(トーチがいた前期は特に)
そういう意味では今期は自然とドロバをサイドに積んでいたこともあって大船に乗った気持ちではありましたが、今度は逆にマジテンを見かけなくなり、肩透かしに終わってしまった次第です。妥当と言えば妥当な流れではあるのですが……。
先行ワンキルカードももう殆ど始末されてしまいましたね。
あとは明らかに危なそうなのは、プリーステスオームやサクリファイスロータスなんかでしょうか。
とはいっても、また名称ターン1制限をつけ忘れておかしなループをしだすカードやコンボが登場する可能性は0ではありませんが。
全てのカードが使用可能な遊戯王ならではのロマンでもあり問題点でもありますね。
コメントありがとうございます。
どのようなカードゲームでもワンキルは厳しい目で見られがちですが、遊戯王においては特にその傾向が強いのではないかと感じます。今となってはコンボパーツ自体が希少になってしまった印象はあり、もはや先攻ワンキルという概念の時代は終わりつつあるのかもしれません。
このリングカード以外にも言えますが リング系のカードって効果が凄く強いカードが多いから強いコンボとかかなりできてしまいますね場合によっては簡単にワンキルされてしまいますね
コメントありがとうございます。
マジテンは誕生時点ではそこまで凶悪なカードというわけではありませんでしたが、現代のカードプールでは非常に危険なカードになってしまったように思います。おっしゃる通りワンキルも実用レベルで狙えてしまいますし、今後禁止カードから復帰することも恐らくは無いのかもしれません。