ソウルチャージがほぼ全てのデッキに2~3枚積まれる世紀末環境

2020年6月26日

【前書き】

 【第9期の歴史5 光天使セプター+スローネの鬼畜出張 「塩試合量産機」大流行へ】の続きとなります。ご注意ください。

 第9期初弾を飾るレギュラーパック「ザ・デュエリスト・アドベント」の参入により、当時のOCG環境に激震が走ることになりました。【シャドール】を筆頭とする次世代兵器が一斉に姿を見せたパックであり、文字通り当時の現役プレイヤーの度肝を抜いています。

 非常にダイナミックな世代交代が行われた第9期初頭の折、続く5月に追い打ちをかけるように大きな余震が到来することになります。

 

ソウル・チャージ無制限時代 OCG最強の蘇生カード

 2014年5月17日、コレクターズパック「伝説の決闘者編」が販売されました。新たに48種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは6474種類に増加しています。

 第9期出身パックの例に漏れず、非常に多くのパワーカードを輩出したことで知られます。この記事でメインに取り上げている「ソウル・チャージ」はその筆頭ですが、他にもクリバンデット」や「マスマティシャン」といった制限級のパワーカード、あるいは将来的に禁止カード行きとなる「BF-隠れ蓑のスチーム」など、OCGを代表する有名カードが現れています。

 他方では、2014年代を中心に活躍した「ファイヤー・ハンド」「アイス・ハンド」といった優良カードの存在も見逃せません。これらは海外環境で【HAT】のキーカードとして名を馳せたことで有名ですが、日本国内においても使い勝手の良い出張セットとして活躍し、またサイドカードとしても一定の採用実績を残しました。

 とはいえ、こうした粒揃いの面々の中でも一際輝きを放っていたのは、やはり前置きの通り「ソウル・チャージ」に他ならなかったのではないでしょうか。

通常魔法
ソウル・チャージ」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。
①:自分の墓地のモンスターを任意の数だけ対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの数×1000LPを失う。

 言わずと知れたOCG最強の蘇生カードであり、「死者蘇生」と並んで高い知名度を誇る遊戯王屈指の有名カードです。蘇生数に比例して重いライフコストがかかること、また発動ターンにバトルフェイズを行えなくなるといったデメリットはありますが、それを補って余りある絶大なカードパワーを秘めていることは疑いようもありません。

 分かりやすく言えば「ライフコスト1000につき最大5枚まで死者蘇生をサーチする」というテキストが書いてあるに等しく、そのポテンシャルは数あるパワーカードの中でも更に頭一つ抜けています。むしろ現在ですら「ソウル・チャージ」に匹敵するカードパワーを持つカードの方が珍しいほどであり、いわんや2014年当時の基準においては規格外のオーパーツそのものです。

 もちろん、単純にライフコスト1000で撃てる汎用蘇生カードと考えるだけでも普通に強く、大振りな外見に反して比較的小回りが利くカードでもあります。総じて高いパフォーマンスを発揮できる安定したパワーカードであり、まさに「ほぼ全てのデッキに積める万能蘇生カード」の位置付けにあると言っても過言ではないでしょう。

 実際、このカードの理不尽な強さは直後の実績が証明するところであり、これ以降は2014年初頭環境における最強のパワーカードとして猛威を振るっていくことになります。

 

ソルチャルーラー環境の幕開け 何もさせなくした方が勝ち

 加えて、こうした「ソウル・チャージ」大流行の強烈な後押しとなったのが当時の環境トップである【シャドール】の存在でした。

 上記関連記事でも解説している通り、【シャドール】は「影依融合」による強烈なエクストラメタ能力を標準搭載しているデッキです。そのため、エクストラに依存する各デッキはそれぞれ何らかの対策を取ることを余儀なくされており、代表的なところでは「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」が事実上の必須枠と見なされるほどにメタゲームを歪めていました。

 つまり、この時期の環境では「レベル4モンスター3体を揃えること」が1つの指標となっていたわけですが、実際のところこれを安定して達成するのは簡単なことではありません。そのことは当時の【テラナイト】の苦境を見れば明らかであり、結局は【シャドール】側に有利なゲームバランスが成立していたことは事実です。

 ところが、ここで話を戻して「ソウル・チャージ」に目を向ければ、このカードがこうした諸問題の多くを1枚で解決する可能性を秘めていることが分かります。

 単純に盤面回復カードとして強すぎることはもちろんですが、墓地さえ肥えていれば「ライフコスト3000でショックルーラーを設置する魔法カード」に化けるため、極めて手軽に【シャドール】の強みを封殺することができます。言うなれば「メインデッキに自然と入る疑似シャドールメタ」に近い存在であり、これまで【シャドール】に苦しんでいた各デッキにとっては待ち望んでいたカードです。

 というより、むしろ当の【シャドール】においてもミラー対策を兼ねて積まれていたほどであり、文字通り当時の主流デッキほぼ全てに入る勢いだったと言っても過言ではありません。

 また、こうした流れは中堅勢力の間でも活発に表れており、これによって【インフェルニティ】が突然の浮上を果たすといった興味深い出来事も引き起こされています。

 流石に主流デッキと対等に戦えるほどのパワーはありませんでしたが、上手く噛み合った時の威力は絶大であり、一種の地雷デッキとして環境の一角に姿を見せていた時代です。

 

「ソルチャはやらない」 【青眼征竜】【ヴェルズ】訴え

 一方で、「ソウル・チャージ」に頼らずに戦うことを選んだデッキも少数ながら存在します。

 その筆頭が【青眼征竜】であり、No.16 色の支配者ショック・ルーラー」に依存せずに戦線を維持できる優位点によって「ソウル・チャージ」からの脱却を図った格好です。元々メインデッキのモンスターだけで戦えるプランを取っていること、また「コアキメイル・ドラゴ」という秘密兵器を標準搭載していることもあり、最終的には不採用もしくはピン挿しにとどまる構築が浸透しました。

 その他、マイナーどころでは「ヴェルズ・オピオン」を擁する【ヴェルズ】なども同様の結論を導き出しており、必ずしも「ソウル・チャージ」のバーゲンセール状態に陥っていたわけではないことが窺えます。

 もっとも、やはり環境全体の流れとしては「ソルチャ天国」への移行は抗えないものとなっており、実質的には「使うしかないカード」と化している面があったことは否定できません。

 世に言う「ソルチャルーラー環境」の幕開けであり、身も蓋もない表現をすれば「何もさせなくした方が勝ち」とでも言うべきゲームバランスが組み上がっていたのではないでしょうか。

 

世界大会のソルチャ天国 八面六臂の活躍

 ちなみに、こうした「ソルチャ天国」の惨状は同年の世界大会においても遺憾なく発揮されており、上位入賞者を筆頭に多くのプレイヤーがこれを積んでいたことでも知られます。

 具体的な投入率は下記の通りです。

 

一般の部
順位 枚数 使用デッキ
優勝 3枚 【インフェルニティ】
準優勝 2枚 【AF蟲惑魔】
3位 3枚 【インフェルニティ】
4位 0枚 【武神】
ジュニアの部
順位 枚数 使用デッキ
優勝 1枚 【武神】
準優勝 0枚 【マドルチェ】
3位 3枚 【インフェルニティ】
4位 3枚 【インフェルニティ】

 

 世界大会特有のカードプールによって国内環境では見慣れない顔触れが並んでいますが、それはさておき見れば見るほど驚異的な投入率であると言うほかありません。いわゆる展開系デッキに位置する【インフェルニティ】は当然として、どちらかというと【メタビート】寄りのコンセプトであるはずの【AF蟲惑魔】ですら2枚積みされており、不採用を選んでいるのは【武神】や【マドルチェ】など明らかにアンチシナジーなデッキだけです。

 もちろん、実際のゲームにおいても「ソウル・チャージ」の暴虐はとどまるところを知らず、決勝戦を含む数々のゲームを一瞬で台無しにした実績を持ちます。

 国内環境におけるそれとはまた別の形での「ソルチャゲー」であり、色々な意味で問題児すぎるカードだったと言わざるを得ないでしょう。

 

間もなく制限カードに 僅か4ヶ月半で規制

 そして案の定、「ソウル・チャージ」は世界大会直後の2014年10月改訂において即座に制限カード指定を下されるという結末を迎えています。

 誕生から僅か4ヶ月半という短い寿命ですが、上述のように多数の問題を噴出させていた惨状を鑑みる限りでは無理もなく、極めて妥当な規制です。それどころか制限カード指定だけでは不十分との声も上がっていたほどであり、これ以降しばらくの間は禁止カード行きの噂がまことしやかに囁かれていました。

 もっとも、そのように危険性を指摘されながらも長年に渡って制限カードに踏みとどまり続けていた背景を踏まえるのであれば、少なくとも第9期環境のゲームバランスにおいては「制限以上禁止未満のパワーカード」という位置付けに収まっていたカードではあったのかもしれません。

 

ソウルチャージが禁止カードになった理由

 要するに、第9期以降のゲームバランスにおいてはその許容範囲を逸脱してしまっていたということでもあります。

 その結果、「ソウル・チャージ」は2019年10月の制限改訂において遂に禁止カード行きを宣告されており、およそ5年半の生涯に終止符を打つことになります。

 具体的な規制理由に関しては記事前半部で語ったこと全てが当てはまりますが、それでもあえて1つ挙げるのであれば「極めて手軽に制圧盤面を構築できてしまうこと」こそが決定打になったと言えるでしょう。

 この「手軽」という表現は非常に広義に渡る意味合いを持ち、単純な展開札としての働きはもちろん、相手の妨害を疑似的に相殺する妨害貫通札(※)としても高いパフォーマンスを発揮します。これは日常的に手札誘発が飛び交う現代遊戯王においては大いに役立つ武器であり、そのため各種展開系デッキのリーサルウェポンとして時期を問わず暴れ回っていました。

(※例えば、妨害の積み重ねによって相手の攻め手を捌き切ったと思った次の瞬間、手札の最後の1枚が「ソウル・チャージ」だったせいで全てが徒労になってしまうといった現象が頻発します)

 なおかつ、こうした「ソウル・チャージ」のゲーム破壊能力は今後も時間経過によって高まっていくであろうことを鑑みるに、恐らくは永久禁止カードの仲間入りを果たしてしまったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「ソウル・チャージ」についての話は以上です。

 もはや解説すら億劫になるほどの凶悪蘇生カードであり、その異常とも言えるカードパワーによって間もなく環境を席巻しています。結果として誕生から僅か4ヶ月半で制限カード行きとなっていますが、その後もゲームクラッシャーとして散発的に脅威を振り撒き続けていたため、最終的には禁止カード指定を下されてしまうことになりました。

 ちなみに、この「ソウル・チャージ」はアニメDM出身のカードなのですが、過去シリーズのカードとしては珍しくほぼ原作そのままの性能でOCG化されたカードでもあります。

 具体的なテキストは下記の通りです。

通常魔法
自分の墓地のモンスターを任意の数だけ選択して発動できる。そのモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚し、自分は特殊召喚したモンスターの数×500ライフポイントを失う。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃する事はできない。

 流石に召喚条件無視のテキストは削除されていますが、ライフコストは2倍(※)という形で、攻撃不可の制約はバトルフェイズのスキップという形でそれぞれ調整されており、多少の手直しを加えながらも忠実なデザインで再現されていることが窺えます。

(※アニメの初期ライフは4000であるため、相対的には同じコストです)

 つまり、残念ながらこの「原作アニメに忠実すぎた」こと、言い換えればアニメ栄え重視の大味なデザインのまま印刷してしまったことこそが根本的な失敗だったのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

著者情報:遊史

Posted by 遊史