アーティファクト-モラルタ+神智がぶっ壊れと言われた時代

2019年11月26日

【前書き】

 【第8期の歴史26 制限改訂2014/2 【征竜】準制限へ 大幅弱体化(環境トップ)】の続きになります。ご注意ください。

 制限改訂によって【征竜】が更なる弱体化を余儀なくされ、これ以降は単なる環境トップにまで勢力を後退させました。分かりやすく言えば相変わらずの【征竜】環境であり、文字通り最後の最後まで第8期環境を支配し続けた存在です。

 厳しい規制を物ともせずに独走を続ける【征竜】の脅威が広がる最中、そうした状況に待ったをかけるカードプール更新が入ることになります。

 

【アーティファクト】カテゴリの成立 第9期の香り

 2014年2月15日、レギュラーパック「PRIMAL ORIGIN」が販売されました。新たに90種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは6312種類に増加しています。

 第8期の最後を飾るレギュラーパックにふさわしく、全体的にカードパワーが高めに調整されたカードが多く見受けられたパックです。流石に「励輝士 ヴェルズビュート」の衝撃には及びませんが、それでも「No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ」「No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク」「暗遷士 カンゴルゴーム」など、従来の水準を明らかに逸脱したランク4エクシーズが一斉に誕生しています。

 一方で、「ティオの蟲惑魔」や「銀河戦士」といった「第8期以上第9期未満」の性能を持ったカードも現れており、世代交代の気配が随所に見られたパックでもありました。

 しかし、そんな面々の中でも特に大きな注目を集めていたのは、やはり新カテゴリである【アーティファクト】の存在だったのではないでしょうか。

このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠カードゾーンにセットできる。
魔法&罠カードゾーンにセットされたこのカードが相手ターンに破壊され墓地へ送られた時、このカードを特殊召喚する。
相手ターン中にこのカードが特殊召喚に成功した場合、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選んで破壊できる。

 上記は【アーティファクト】の中核、「アーティファクト-モラルタ」の当時のテキストとなります。

 第8期までのOCG知識を前提とする場合、パッと見て謎のカードであり、テキストを読み返しても効果を把握し切れないタイプのカードです。一応、過去には「トイ・マジシャン」などの類似効果を持ったカードも現れていますが、いずれにしても特異な性質を持ったカード群であることは間違いありません。

 とはいえ、そうした特性はさておきスペックそのものは非常に優秀であり、むしろ2014年当時の水準においては明らかにパワーカードの部類に入ります。このカード単体では強さが分かりにくいですが、【アーティファクト】の各種サポートと組み合わせることで非常に凶悪なカードに変貌するからです。

 実際、僅か5ヶ月後の制限改訂では早々に制限カードに収まっており、第8期終盤~第9期初期の基準においてこのカードがいかに危険な存在であったかを実績として物語っています。

 

「強いことしか書いてないカード」という異質な概念

 「アーティファクト-モラルタ」を環境屈指の危険物にまで押し上げたのは、「アーティファクトの神智」を筆頭とする次世代兵器の面々でした。

デッキから「アーティファクト」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
アーティファクトの神智」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。
また、このカードが相手によって破壊された場合、フィールド上のカード1枚を選択して破壊できる。

 結論から言ってしまえば、第9期特有の「強いことしか書いてないカード」の一種にして、その草分け的な存在です。これまでの常識で考えれば目を疑うようなパワーカードであり、下手をするとテキストの誤読を疑ってもおかしくはない強さがあります。

 最も分かりやすいところでは上記の「アーティファクト-モラルタ」と併用したケースであり、これにより事実上フリーチェーンの表側万能除去に変わるため、この時点で並の除去カードを遥かに上回る強さです。もちろん、他の【アーティファクト】モンスターにも対応するため実際の汎用性はそれ以上ですが、ある意味一番恐ろしいのが後半の破壊時誘発効果です。

 単純な話、発動に成功した場合はもちろん、発動できなかったとしても0:1交換が成立するため、どう転んでもアドバンテージを取ることができます。この「どう転んでも」というのが重要なポイントで、実質的には「手札に来た時点で既にアドを取っている」に等しいわけです。

 恐らく現代のプレイヤーにこの感覚を理解してもらうのは不可能だろうとは思うのですが、こうした「絶対にアドを取れるカード」という概念は当時としては相当に意味不明でした。具体的に言語化すれば「フリーチェーンでサイドラ打点を展開し、同時に除去を行い、しかも伏せ除去耐性まであるカード」という表現になるわけですが、これは明らかに「ぶっ壊れ」と言って差し支えない性能です。

 従来の遊戯王OCGのゲームバランスでは到底あり得ないデザインのカードであり、この「絶対にアドを取れるカード」という概念の有無こそが第9期とそれ以前(※)を分ける最大の違いであると言えるでしょう。

(※とはいえ、一応「神智モラルタ」は厳密には第8期出身ですが……)

 

「神智モラルタ」出張セットの脅威 【AF】系デッキの流行

 当然のことながら、「アーティファクトの神智」を含む【アーティファクト】カテゴリの参戦は当時の環境に多大な影響をもたらしました。

 上記の「神智モラルタ」のセットはもちろんですが、他にも「アーティファクト・ムーブメント」のような「露骨に強すぎるパワーカード(※)」がカテゴリ内に属していたため、これらを出張ギミックとしてデッキに搭載するという考え方が一気に流行したからです。

(※というより、個人的には神智よりも「アーティファクト・ムーブメント」の方が色々と衝撃的でした)

 代表的なのは下記で取り上げている【AF先史遺産】ですが、それ以外にも【AFセイクリッド】や【AF蟲惑魔】、【AFギャラクシー】など、相性の良いデッキでは準必須級パーツに近い扱いを受けるに至っています。将来的には【AFテラナイト】や【AFシャドール】といった型も生み出されており、とりあえず入れようと思えばどんなデッキにも入る勢いだったと言っても過言ではありません。

 実際、枠の消費にさえ目を瞑れば疑似的な汎用除去カードのように取り回せるため、その気になれば「奈落の落とし穴」などの除去枠の代わりに【AF】を出張することすらできます。「アーティファクトの神智」の発動条件に縛りを設けなかったことが招いた事態であり、「カテゴリに依存せず使えるカテゴリカード」がいかに危険であるかを物語るエピソードの1つです。

 とはいえ、流石の「神智モラルタ」も本当にどんなデッキでも使われていたわけではありません。

 単純に考えてもデッキの10枠前後が【アーティファクト】関連カードだけで潰れてしまうため、デッキスロットに一定の自由枠がない限り採用が難しいという制約が存在します。例えば【征竜】がこれを搭載するのはほぼ不可能であり、その意味では「デッキの枠に空きがある≒サポートカードをあまり貰えていない」デッキほど恩恵を受けやすいという形でバランスが取れていたとも言えるでしょう。

 

【AF先史遺産】全盛期到来 2014年初頭環境トップ

 一方で、「神智モラルタ」の存在が【AF先史遺産】のような巨大勢力をメタゲームに生み出してしまったことも事実です。

 元々は純構築メインの中堅勢力という扱いに甘んじていたテーマですが、【AF】とはデッキコンセプトの面で噛み合う点が多く、他の【AF】系列デッキ以上にすんなりと出張できる強みがありました。むしろ「神智モラルタ」を搭載することで初めてデッキが完成に至った(※)と言っても過言ではなく、これ以降【AF先史遺産】は間もなく環境屈指のトップデッキとして名を馳せていくことになります。

(※詳しくは上記リンク記事で解説しています)

 実際のところ、当時の【AF先史遺産】の瞬間風速は凄まじいものがあり、部分的にはあの【征竜】をも上回る勢いを誇っていたと言っても過言ではありません。流石に総合的なデッキパワーでは【征竜】には敵いませんが、高い継戦能力にワンキル展開、さらには【AF】による妨害能力と伏せ除去耐性まで完備しているなど、2014年初頭環境においては破格のデッキパワーを持っていたからです。

 

「コアキメイル・ドラゴ」急浮上 【征竜】の相棒に

 こうした【AF先史遺産】全盛期の到来を前に、これ以降の環境では【AF先史遺産】を見据えた様々なメタカードが試されていくことになります。

 最も早い段階で定着したのは「閃光を吸い込むマジック・ミラー」などの各種【光属性】メタですが、その中でも特筆すべきは「コアキメイル・ドラゴ」の急浮上でしょう。

このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に、手札から「コアキメイルの鋼核」1枚を墓地へ送るか、手札のドラゴン族モンスター1体を相手に見せる。または、どちらも行わずにこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いのプレイヤーは光属性及び闇属性モンスターを特殊召喚できない。

 維持コストの関係で【コアキメイル】もしくは【ドラゴン族】関連のデッキでしか運用できないメタカードですが、それに見合うだけの強さはあり、光属性及び闇属性モンスターの展開をシャットアウトしつつ1900打点のアタッカーをこなせます。特に【征竜】においては「嵐征竜-テンペスト」からサーチすることもできるため、数あるメタカードの中でも限りなく噛み合った1枚です。

 また、細かいところでは【AF先史遺産】のアタッカーである「先史遺産ネブラ・ディスク」を一方的に討ち取れる点でも優れており、とにかく【AF先史遺産】の強みを潰すことにかけては抜群の威力を発揮します。【AF】の出張が逆に災いして汎用除去枠が薄くなっていたことも重なり、ゲーム展開によってはこれを維持しているだけで勝ててしまうことも珍しくありません。

 さらに、将来的には【シャドール】や【テラナイト】といった面々にも効力が見込めることが評価され、最終的にはメインから3積みされるほどの重要ポジションを獲得していました。というより、2014年4月以降の【征竜】が曲がりなりにも環境上位に踏みとどまっていたのは間違いなく「コアキメイル・ドラゴ」の功績によるものだったのではないでしょうか。

 【AF先史遺産】時代はもちろん、末期の苦しい【征竜】をも裏から支えた相棒とも言えるカードです。

 

【後編に続く】

 【アーティファクト】カテゴリについての話は以上です。

 手札から魔法カード扱いでセットできるという異質な共通効果もさることながら、何と言っても「神智モラルタ」のインパクトは凄まじいものがあり、実際に【AF】系列デッキの流行という形でトーナメントシーンを席巻しています。次世代にあたる第9期の気配を露骨に匂わせるパワーカードであり、来たるインフレの予感を感じさせるようなカード群だったと言えるでしょう。

 とはいえ、当パック出身カードは「神智モラルタ」のようなパワーカードだけではありません。冒頭でも触れた通り、いわゆる「第8期以上第9期未満」のカードも少なからず現れており、中でも【マドルチェ】はこうした中間的なテーマを語る上では理想的な題材です。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。