光天使セプター+スローネの鬼畜出張 「塩試合量産機」大流行へ

2020年6月19日

【前書き】

 【第9期の歴史4 9期開幕のテラナイトショック 最強のエクシーズデッキの思い出】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

光天使セプター誕生 光天使スローネとのゴリラコンボ

 前記事、前々記事での解説の通り、レギュラーパック「ザ・デュエリスト・アドベント」は非常に驚異的なタイトルで、第8期以前の常識からは想像もできないような次世代兵器の数々を輩出しました。

 カテゴリ単位では【シャドール】や【テラナイト】がその筆頭に数えられますが、カード単位においても「鳥銃士カステル」などの規格外のパワーカード(※)が姿を見せており、まさに「ザ・9期」と言わんばかりの凶悪なラインナップに仕上がっています。

(※むしろそのカステルですら当初は影が薄れるほどに衝撃的なラインナップだったのですが……)

 ともあれ、カテゴリ単位、カード単位と来たのであれば最後に残るのはその中間的なカードです。

効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻撃力/守備力400
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「光天使セプター」以外の「光天使」モンスター1体を手札に加える。
②:フィールドのこのカードを含むモンスター3体以上を素材としてX召喚したモンスターは以下の効果を得る。
●このX召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、自分はデッキから1枚ドローできる。

効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻撃力800/守備力2000
このカードをX召喚の素材とする場合、モンスター3体以上を素材としたX召喚にしか使用できない。
①:自分が「光天使」モンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、自分はデッキから1枚ドローする。そのドローしたカードが「光天使」モンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚できる。

 上から順に、それぞれ「光天使セプター」及び「光天使スローネ」のテキストとなっています。カード名の通り【光天使】に属するモンスターですが、これを【光天使】の専用サポートカードと見なすことは率直に言って間違いです。

 そう考えられている理由はいくつかありますが、まずは上記2枚を利用した代表的な展開例を下記に示します。

・手札に「光天使セプター」「光天使スローネ」が存在する場合。

 

①:「光天使セプター」を召喚し、サーチ効果を発動する。

 

②:手順①に反応し、手札の「光天使スローネ」の特殊召喚効果を発動する。

 

③:チェーンの逆順処理により、「光天使スローネ」の特殊召喚→「光天使セプター」のサーチ効果の順に処理する。(※1ドロー)

 

④:1枚目の「光天使スローネ」の特殊召喚に反応し、2枚目の「光天使スローネ」を手札から特殊召喚する。(※1ドロー)

 

⑤:「光天使セプター」1体と「光天使スローネ」2体の計3体で「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」をエクシーズ召喚する。(※セプター効果は任意)

 

 ルール的な仕組みの解説は次項に回しますが、結論から言えば「3ドロー+万能除去」に加えて「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」まで設置できるという異次元すぎるコンボです。場合によっては「星輝士 デルタテロス」を置いてチェーン不可の除去を捻じ込むこともでき、2014年当時のゲームバランスにおいてはこれが決まった瞬間に半分ゲームが終わっていたと言っても過言ではありません。

 とはいえ、そんな【セプタースローネ】最大の恐ろしさはコンボが決まった時の威力ではなく、そもそもコンボ自体が異様に決まりやすかったことにあったのではないでしょうか。

 具体的には、下記のような特徴によって多くのプレイヤーにトラウマを植え付けています。

 

①:そもそも条件の緩い2枚コンボであること

 

②:「強制脱出装置」や「リビングデッドの呼び声」などによって手軽にコンボパーツを水増しできること

 

③:「召喚僧サモンプリースト」+「ラヴァルバル・チェイン」のセットによって実質1枚初動のコンボにもなること

 

 基盤となるコンボ始動条件が緩く、コンボパーツの代用が効き、おまけにその代用カードも汎用級の性能を持っているなど、いわゆる強いコンボの条件を一通り満たしていることが分かります。中でも③はある意味非常に凶悪で、次のターンにセプスロコンボを宣告(※)することで対戦相手に精神攻撃を仕掛けることもできました。

(※「召喚僧サモンプリースト」で「光天使セプター」をリクルートしつつ「光天使スローネ」をサーチし、「ラヴァルバル・チェイン」で2枚目の「光天使セプター」をデッキトップに置くという流れです)

 要するに「決まれば勝ち」のコンボがそれなりの確率で決まってしまう環境が組み上がってしまっていたということであり、カードゲームとしては明らかに不健全であると言わざるを得ません。世に言う「セプスロゴリラ環境(※)」の始まりであり、この頃に囁かれた「塩試合量産機」という言葉こそが当時の惨状を物語っていたのかもしれません。

(※ここで言うゴリラとはニュアンス的な単語で、特に深い意味合いなどはありません)

 

謎裁定? セプタースローネの正しい原理について

 ちなみに、上記の【セプタースローネ】はこうしたゲーム上の知名度とは別に、いわゆるルール的な処理の複雑さにおいてもよく知られています。

 実際、一見すると明らかに直感に反する処理であり、OCGに散見される謎裁定を疑ってもおかしくない話ではあります。とはいえ、実際にはルール的な矛盾は一切存在せず、もちろんこのカード特有の特殊裁定というわけでもありません。

 しかし、そもそもなぜこのような裁定が成立するのかという理由をしっかり説明できている解説ページなどがあまり見当たらなかったため、ここでは【セプタースローネ】ギミックの正しい原理について解説していきます。

 よくある誤解としては「タイミングを逃さないルールに絡んだ裁定」あるいは「チェーンの逆順処理に絡んだ裁定」といったものがありますが、これらは実際には誤った理解(一応無関係ではないですが)であり、直接の関係はありません。

 ポイントとなるのは「条件を満たしたその瞬間に手札に存在しなくても、効果を発動するタイミングまでに手札に存在すればルール上条件を満たす」というOCGの基本ルールです。

 これは手札が非公開領域であることに関係しているルールであり、具体的には「条件を満たした瞬間に手札に存在しなかったことを証明できない」というカードゲーム特有の事情を根拠としています。

 これは手札が「光天使スローネ」1枚の場合、あるいは墓地に「光天使スローネ」が既に落ちている場合、つまり物理的に手札に存在することがあり得ない場合であっても例外ではありません。重要なのは「光天使スローネ」が公開領域に存在するかどうかという一点のみであり、よって例えば「真実の眼」などで手札が公開状態の場合、同じ状況でも「光天使スローネ」を特殊召喚できなくなる裁定(※)が出ていました。

(※しかし、現在では非公開領域のルール変更に伴い、手札が公開状態であっても特殊召喚できる裁定に変わっています)

 つまり、噛み砕いて言えば下記のような内部処理を行っているわけです。

・手札に「光天使セプター」1枚と「光天使スローネ」2枚が存在する場合。

 

①:「光天使セプター」を召喚する。

 

②:手順①に反応し、1枚目の「光天使スローネ」を特殊召喚する。

 

③:手順②に反応し、2枚目の「光天使スローネ」を特殊召喚する。

 

 見た目の処理は異なりますが、ルール上はこれとほぼ同じ処理を行っていると考えて差し支えありません。最初から全てを同時に理解しようとすると混乱してしまいそうになりますが、一つ一つ処理を分解していけば仕組み自体はシンプルであることが分かります。

 

【光天使】デッキ大幅強化 環境の片隅に

サンプルデッキレシピ(2014年5月17日)
モンスターカード(18枚)
×3枚 増殖するG
H・C 強襲のハルベルト
光天使スローネ
光天使セプター
×2枚 召喚僧サモンプリースト
トリオンの蟲惑魔
光天使スケール
×1枚  
魔法カード(13枚)
×3枚 禁じられた聖杯
強欲で謙虚な壺
サイクロン
×2枚 ソウル・チャージ
×1枚 大嵐
死者蘇生
罠カード(9枚)
×3枚 強制脱出装置
×2枚 奈落の落とし穴
リビングデッドの呼び声
×1枚 神の警告
神の宣告
エクストラデッキ(15枚)
×3枚    
×2枚 星輝士 デルタテロス
×1枚 ヴェルズ・ウロボロス
ガガガガンマン
恐牙狼 ダイヤウルフ
深淵に潜む者
ダイガスタ・エメラル
鳥銃士カステル
No.16 色の支配者ショック・ルーラー
No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク
No.101 S・H・Ark Knight
No.102 光天使グローリアス・ヘイロー
No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド
ラヴァルバル・チェイン
励輝士 ヴェルズビュート

 

 いずれにしても、【セプタースローネ】の参戦が当時のOCG環境に多大な衝撃をもたらしたことは間違いありません。

 こうした流れの中でいち早く反応を見せたのは、もちろん本場である【光天使】界隈です。

効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻撃力1600/守備力1400
1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を墓地へ送って発動できる。手札から「光天使」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

 上記は【光天使】モンスターの1体、「光天使ブックス」のテキストとなります。見ての通り想像を絶する弱さのカードですが、なんとこれまではメインデッキの【光天使】モンスターは「光天使ブックス」を含めて僅か3種類しか存在せず、ファンデッキとしても相当苦しい立場に置かれていました。

 しかし、当パックから「光天使セプター」「光天使スローネ」「光天使スケール」の3枚を獲得したことでようやくデッキとしての体裁が整うようになり、新進気鋭のアーキタイプとして環境の片隅に参入を決めています。

 単純にデッキ自体の地力が向上したことはもちろんですが、No.16 色の支配者ショック・ルーラー」などの3体エクシーズを多用する戦法も当時の【シャドール】環境には噛み合っていたため、実際に小型大会などでは散発的に結果を出すこともあった時代です。

 

【光天使シャドール】【光天使テラナイト】【光天使etc.】

 ところで、ここで1つの疑問点が浮かび上がってきます。

 「【光天使】要素は別にセプスロだけで良いのではないか」という禁断の果実的な発想です。

 これまでの解説の通り、【光天使】というテーマの強みはほぼほぼ【セプタースローネ】ギミックの存在に集約されています。そして【セプタースローネ】を成立させるために必要な要素は「光天使セプター」と「光天使スローネ」の2枚だけであり、それ以外の【光天使】サポートは特に必須というわけではありません。

 この「必須ではない」というのは文字通りの意味で、例えばかつての【TG】出張ギミックのように「出張が一番強い」という状況ですらなく、本当に【セプタースローネ】だけで全てが完結してしまっています。シナジーらしいシナジーは「光天使スケール」を絡めた展開ルートを搭載できること程度しかなく、カテゴリとしての繋がりは極めて乏しいことが分かります。

 要するに【セプタースローネ】は【光天使】とはほぼ無関係な「出張単位」のカード群であり、誤解を恐れずに言えば【光天使】という名前がついていることにすら深い意味はない(※)わけです。

(※つまり、「ただのセプター」「ただのスローネ」というカード名で生まれてきていたとしても影響は無いに等しいと言えます)

 なおかつ、既に何度も述べた通り【セプタースローネ】ギミックの威力は極めて絶大で、これを僅か6枠のスロットで搭載できるとなれば出張しない理由はありません。

 これが一体どのような状況を生み出すのかは直近の環境を見れば明らかで、具体的には【光天使シャドール】や【光天使テラナイト】、あるいは【光天使HERO】といった【光天使】系列デッキの大流行という結果に現れています。もちろん、ここで言う【光天使】とは当然【セプタースローネ】のことを指し、【光天使】とは名前が被るだけの別人です。

 よって当時の環境における純構築の【光天使】を厳密に分類する場合、実質的には【光天使】という名の単なるエクシーズデッキに【セプタースローネ】を出張しただけのデッキにしかならず、上記の命名法則に従うのであれば【光天使光天使】などという謎すぎるアーキタイプと化してしまうわけです。

 というより、そもそも当時の入賞リストですら【光天使】要素は「光天使スケール」1~2枚だけ(※)であることが多く、カテゴリとしては何とも残念な姿であると言うほかないでしょう。

(※むしろ「光天使スケール」すら採用されないことさえありました)

 

そして「光天使スローネ」制限行きに 僅か半年の寿命

 結局、それから半年後の2014年10月改訂で「光天使スローネ」が制限カード行きとなり、短くも長いセプスロ地獄に終止符が打たれることになります。

 これにより【セプタースローネ】ギミックそのものが成立しなくなったため、【光天使シャドール】を筆頭とする各種【光天使】系列デッキも一斉に解体されました。純構築の【光天使】にとってはとばっちりも良いところですが、だからと言って【セプタースローネ】の存在を見逃せるはずもなく、以後2年間に渡って制限カードのポジションにとどまり続ける(※)という経緯を辿っています。

(※2016年10月改訂で準制限カードに、2017年1月改訂で無制限カードに釈放されました)

 もっとも、先述の通り実質的な定義においては【セプタースローネ】はそもそも【光天使】の一員ですらない以上、実のところ【光天使】にとっては悪い夢を見ていたような話だったのかもしれません。

 

【まとめ】

 【セプタースローネ】及び【光天使】についての話は以上です。

 カテゴリそのものは第8期中頃に成立していたものの、その後は一向にサポートカードを貰えないまま第9期を迎えてしまった不遇テーマの一種ですが、【セプタースローネ】を手に入れたことで遂に中堅の一角として花開いています。

 しかし、蓋を開けてみれば【セプタースローネ】だけが一人歩きしているような状況に陥ってしまい、結局【光天使】としてはさっぱり大成できていません。【セプタースローネ】の強さと【光天使】の弱さが同時に噛み合った結果であり、これほど色々な意味で恵まれないカテゴリというのも中々珍しい話でしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

著者情報:遊史

Posted by 遊史