9期開幕のテラナイトショック 最強のエクシーズデッキの思い出
・前書き
・【テラナイト】全盛期伝説 次世代【ガジェット】の到来
・テラナイト三銃士 ベガ・デネブ・アルタイルの狂気
・星輝士デルタテロス 雑に強い万能除去
・神星なる因子 なぜかアドになるカウンター罠
・【シャドール】が最強最悪の天敵だった時代
・【デネブビート】の悲劇 エクシーズとは何だったのか
・虚無空間メイン投入の浸透 「王宮の弾圧」の二の舞に
・光属性メタ+墓地メタの流行 「D.D.クロウ」ほか
・「A・O・J サイクルリーダー」の侮れない活躍
・テラナイトの歴史・年表まとめ(デッキレシピあり)
・2014年 何だかんだ強かった時代
・4月19日 【テラナイト】カテゴリの成立
・5月17日 「ソウル・チャージ」獲得+【光天使テラナイト】への派生
・7月19日 「星輝士 トライヴェール」獲得
・10月1日 【光天使テラナイト】完全解体 環境上位からの脱落
・11月15日 「星輝士 セイクリッド・ダイヤ」+「星因士 リゲル」獲得
・2015年 世界大会優勝の栄光
・2月14日 「星守の騎士プトレマイオス」獲得 デッキパワー大幅強化
・4月1日 制限改訂+中速環境による復権 再び環境へ
・8月15日~16日 世界大会二冠達成 ジュニア・一般の部同時優勝
・10月1日 プトレマイオス禁止行き 壊滅寸前の大打撃
・2016年 冬の時代
・7月9日 「煉獄の騎士 ヴァトライムス」獲得 しかし……
・2017年 リンク世代から置き去りに
・イゾルデだけが傍にいてくれた頃
・後編に続く
【前書き】
【第9期の歴史3 壊れテーマ【シャドール】爆誕 全盛期の「デッキ融合」地獄】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の中編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
【テラナイト】全盛期伝説 次世代【ガジェット】の到来
第9期初弾タイトルとなる「ザ・デュエリスト・アドベント」から現れたもう一人の刺客、それは【テラナイト】と呼ばれるテーマでした。
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻撃力1500/守備力1000
「星因士 デネブ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「星因士 デネブ」以外の「テラナイト」モンスター1体を手札に加える。
上記は【テラナイト】の中核をなすメインエンジン、「星因士 デネブ」のテキストとなります。一言で言えば「E・HERO エアーマン」と系統を同じくするカテゴリ専用のサーチャーであり、これ単体であれば凡庸なカードに落ち着く程度の性能です。
しかし、このカードは他の【テラナイト】モンスターと組み合わさることによって極めて驚異的なポテンシャルを発揮します。
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻撃力1200/守備力1600
「星因士 ベガ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。手札から「星因士 ベガ」以外の「テラナイト」モンスター1体を特殊召喚する。
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻撃力1700/守備力1300
「星因士 アルタイル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、「星因士 アルタイル」以外の自分の墓地の「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
この効果の発動後、ターン終了時まで「テラナイト」モンスター以外の自分フィールドのモンスターは攻撃できない。
上から順に、それぞれ「星因士 ベガ」「星因士 アルタイル」のテキストとなります。手札・墓地から【テラナイト】を特殊召喚する効果を持っており、実質的にはカテゴリ専用の「二重召喚」及び「死者蘇生」を内蔵しているモンスターです。
現代の水準においては比較的あり触れたカタログスペックであり、一見すると取り立てて目を引くカードではないようにも思えます。
しかし、これは2014年においては非常に驚くべきカードで、まさしく従来の4軸デッキに革命をもたらしたと言っても過言ではありません。
具体的には、「星因士 ベガ」は【代償マシンガジェ】における「ブリキンギョ」と同等の効率を持った展開札であり、エクシーズ召喚のサポートとしては一級品の性能を誇ります。特殊召喚にも対応すること、またカテゴリサポートを受けられることなどを考慮すればそれ以上のポテンシャルであり、まさに「ブリキンギョ」系カードの完成形とも言えるデザインです。
一方、「星因士 アルタイル」は「星因士 ベガ」以上に優れた存在で、さながら【ヴェルズ】における「ヴェルズ・ケルキオン」から除外コストを取り除いたかのようなカードであることが見て取れます。一応のデメリットとして限定的な攻撃不可の制約もかかりますが、それを補って余りあるカードパワーを秘めていることは疑いようもありません。
つまり、かつてメタゲームを大きく揺るがした往年のパワーカードが9期仕様にリメイクされた上で同一のテーマに共存しているようなものであり、この時点で既に【テラナイト】は次世代テーマの水準に到達していると言えるわけです。流石に前記事で取り上げた【シャドール】ほどのインパクトはありませんが、第8期以前の常識からは明らかに逸脱したカテゴリでしょう。
ところが、ここで一つ忘れていることがあります。
先に挙げた「星因士 デネブ」の存在です。
テラナイト三銃士 ベガ・デネブ・アルタイルの狂気
話を分かりやすく整理するため、まずは例として【代償マシンガジェ】における代表的な展開を下記に示します。
①:「ブリキンギョ」を召喚し、効果で「グリーン・ガジェット」を特殊召喚する。(※「イエロー・ガジェット」をサーチ)
②:「二重召喚」を発動し、「イエロー・ガジェット」を召喚する。(※「レッド・ガジェット」をサーチ)
③:上記3体を素材に「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」などの3体エクシーズを立てる。
簡単に言えば、カード消費2枚で「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」を瞬時に設置できるというコンボです。弱点として「ギアギガント X」を経由できないこと、つまり2枚目の「ブリキンギョ」を確保できないという問題もありますが、それを踏まえても非常に強力な動き(※)であることは間違いありません。
(※というより、第8期世代においてはこれが最強の動きの一つと言われていたわけですが……)
翻って【テラナイト】に目を向ければ、このテーマがいかに異様なパワーを持っているかが克明に浮かび上がってきます。
①:「星因士 ベガ」を召喚し、効果で「星因士 アルタイル」を特殊召喚する。
②:「星因士 アルタイル」で墓地の「星因士 デネブ」を蘇生する。
③:「星因士 デネブ」で2枚目の「星因士 アルタイル」をサーチする。
④:上記3体を素材に3体エクシーズを立てる。
初動2枚かつ別パターン可、おまけに展開の過程で確保した「星因士 アルタイル」によって次ターン以降もエクシーズ召喚を行えるなど、ほぼ全てにおいて【代償マシンガジェ】の上位互換となる動きを取っていることが分かります。
これを上記の【代償マシンガジェ】の展開例に置き換えた場合、「二重召喚なしで3体エクシーズを展開しつつ後続のブリキンギョまで確保できる動き」ということになり、率直に言って狂気的です。これまで【4軸】系が多くのサポートを駆使して行っていたはずのことをメインギミックだけで賄えるどころか、あまつさえその上位互換の動きを容易に、かつ何度でも繰り返せてしまうということであり、まさにインフレここに極まれりと感嘆するほかありません。
星輝士デルタテロス 雑に強い万能除去
加えて、上記のテラナイト三銃士の強さを強烈に引き出していたのが「星輝士 デルタテロス」の存在です。
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻撃力2500/守備力2100
レベル4モンスター×3
①:X素材を持ったこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分がモンスターの召喚・特殊召喚に成功した時には、相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
②:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
③:このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。手札・デッキから「テラナイト」モンスター1体を特殊召喚する。
【テラナイト】を代表する専用エクシーズの1体であり、「星輝士 トライヴェール」と並んで全盛期【テラナイト】の実績を形作ったカードの1枚です。特に2014年4月時点では【テラナイト】唯一のエクシーズ体でもあったため、文字通りのエースモンスターとして名を馳せていたカードでもあります。
性能を見る場合、注目すべきはやはり何と言っても②の万能除去効果でしょう。カードの種類を問わない除去の強さは時代が進んだ第9期においても不変であり、3体エクシーズであることを考慮しても相当パワフルな性能(※)です。
(※参考までに、当時は「ヴェルズ・ウロボロス」が3体エクシーズ最強格と言われている時代でした)
一方、③のリクルート効果も万能除去に負けず劣らずのスペックで、「タイミングを逃さない墓地送り」という極めて条件の緩い後続展開能力を持っています。なおかつ、上述のようにリクルート先の【テラナイト】モンスターはそれぞれがアドバンテージを取る効果を備えているため、内部的には2~3枚分のカード・アドバンテージを内蔵していると言っても過言ではない効果です。
実際、将来的には自分自身を破壊することで能動的にリクルート効果を使用する動き(※)なども確立されているほどであり、被破壊時の保険という言葉では片付けられないポテンシャルを秘めていました。
(※詳しくは記事後半部分で解説していますが、簡単に言うと「ソウル・チャージ」と【セプタースローネ】ギミックを組み合わせた展開ルートの一種です)
その他、地味と言われやすい①の効果についても実際は見た目以上に厄介であり、代表的なところではエクシーズ召喚の前段階で「奈落の落とし穴」を切らざるを得なくなるなど、潜在的な影響力は決して侮れません。とりわけ【セプタースローネ】ギミックと組んだ時の威力は抜群で、実質的にはチェーン不可の万能除去を撃てる効果に変貌します。
まとめると、3つの効果全てが当然のように強力という「雑に強いパワーカード」です。流石に「エルシャドール・ネフィリム」のような禁止級の壊れカードと肩を並べるほどではありませんが、それでも2014年当時の水準を大きく超えたカードパワー調整がなされていたことは明白でしょう。
神星なる因子 なぜかアドになるカウンター罠
一方、こうした各種【テラナイト】モンスターとは別に、「神星なる因子」などの脇を固める強力なサポートカードの存在も見逃せません。
カウンター罠
①:モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時、自分フィールドの表側表示の「テラナイト」モンスター1体を墓地へ送って発動できる。その発動を無効にし破壊する。
その後、自分はデッキから1枚ドローする。
【テラナイト】が誇る最強のカウンター罠であり、モンスター効果・魔法・罠カード全てに対応する上にドローのおまけまで付いてくるという「露骨に強すぎるパワーカード」です。発動コストとして【テラナイト】モンスター1体の墓地送りを要求される制約もありますが、逆にゲーム序盤は棒立ちになりやすい「星因士 デネブ」を能動的に墓地に送り込める手段と捉えることもでき、見た目の重さとは裏腹に抜群の取り回しの良さ(※)を誇ります。
(※実際、適当に使ってもなぜか結果的には1:2交換になっているということも少なくありません)
そのため、これ以降の環境では「神星なる因子」ケアの一環として「初動前に下級アタッカーで【テラナイト】モンスターを戦闘破壊し、メインフェイズ2で改めて動くようにする」といった定石が浸透していくことになります。かつての【剣闘獣】における「剣闘獣の戦車」ケアを彷彿とさせる定石ですが、そのカードパワー格差は歴然であり、この2枚を見比べた時のギャップこそが時代の変化を物語っているのかもしれません。
【シャドール】が最強最悪の天敵だった時代
このように、2014年という時代において【テラナイト】の強さは圧倒的で、間もなく環境有数のパワーデッキとして頭角を現すことになります。
しかしながら、そんな【テラナイト】ですら当時のメタゲームでは苦しいポジションにあったことは否めません。
【テラナイト】の前に立ち塞がった最大の障害、それは同期である【シャドール】でした。
これまでの解説の通り、【テラナイト】は間違いなく次世代テーマの水準を満たしているデッキでしたが、【シャドール】はさらにその上を行くポテンシャルを秘めた怪物です。「エルシャドール・ネフィリム」を筆頭に禁止・制限級の壊れカードを複数抱えた凶悪なテーマであり、これに真っ向勝負を挑むのは賢明とは言えません。
加えて、事態をより深刻にするのがデッキ相性そのものの悪さです。
中でも【シャドール】のエースモンスターである「エルシャドール・ミドラーシュ」の存在は【テラナイト】にとって非常に致命的だったと言うほかありません。
これに関しては見たままの話ではありますが、エクシーズ召喚を基盤に戦う【テラナイト】はその性質上、展開の過程で最低2回の特殊召喚を経由することを要求されます。つまり「エルシャドール・ミドラーシュ」の影響下では素材を展開したところで動きが止まってしまい、どうしようもなくなるわけです。
また、この時期は【テラナイト】のサポートもまだ出揃っておらず、「エルシャドール・ミドラーシュ」への回答自体が非常に狭い状況にありました。将来的には「星因士 リゲル」を手に入れることで少なからず免疫を獲得していますが、第9期初頭環境においては絵に描いた餅であり、この突破には「強制脱出装置」などの各種汎用カードに頼るほかなかったのです。
これは要するに除去の有る無しだけで全てが決着してしまいかねないということで、究極的にはゲームの行方を素引きに委ねるしかないということでもあります。これにより多少デッキの回転率を犠牲にしてでも「ブレイクスルー・スキル」などの対策カードをメインから積まざるを得なくなり、本来負う必要がないはずの手札事故のリスクを抱え込むことを強要されていました。
もちろん、カードゲームである以上は勝敗に運が絡むことは至極当然の話ではあるのですが、片方のデッキだけがそのリスクを負うというのは非常に理不尽かつ不健全であると言わざるを得ないでしょう。
【デネブビート】の悲劇 エクシーズとは何だったのか
駄目押しとなったのが、【シャドール】を象徴するキーカードである「影依融合」の存在です。
2014年当時のゲームスピードにおいて、「影依融合」によるデッキ融合の威力は絶大で、早い話これが通った瞬間にそのゲームは終わります。よってメインアタッカーの用意をエクストラに依存する各デッキはその煽りを受けざるを得ない立場にあったわけですが、【テラナイト】は明らかにこのグループに該当するデッキです。
つまり、「影依融合」を止められる状況でもなければ実質的にエクシーズ召喚そのものを封じられてしまうということであり、これは【テラナイト】のコンセプトを全面否定する状況と言えます。例外となるのは「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」などの一部の制圧モンスターに限られ、なおかつ【テラナイト】であっても3体エクシーズをコンスタントに展開できるわけではない以上、多くの局面でプレイングの束縛を受けることは避けられません。
一応、「深淵に潜む者」や「恐牙狼 ダイヤウルフ」など「影依融合」の被害を軽減できる軽量エクシーズモンスターが存在しなかったわけではありませんが、エクシーズ召喚の消費に釣り合うリターンが得られるケースは稀です。というより、そもそも「エルシャドール・ミドラーシュ」を消費無しで置かれるだけでも根本的に苦しいため、大抵は素材のまま立たせておいた方が有用(※)であると言われていました。
(※「神星なる因子」との兼ね合いもあります)
そのため、当初は4軸デッキにもかかわらずエクシーズ召喚をほぼ行わない、さながら【デネブビート】とでも呼ぶべき謎のデッキと化している面があったことは否めません。【テラナイト】本来の特色からは完全に逸脱した姿であり、裏を返せばそれだけ【シャドール】の存在が当時のOCG環境を歪ませていたということでもあります。
もっとも、最終的にはそんな【テラナイト】も例によって「ソウル・チャージ」や【セプタースローネ】ギミックを駆使しての盤面制圧、具体的には「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」「No.86 H-C ロンゴミアント」らによる完封戦法に行き着いてしまうことになるのですが……。
虚無空間メイン投入の浸透 「王宮の弾圧」の二の舞に
いずれにしても、当時の環境において【テラナイト】が強い逆風を受けていたことは間違いありません。
苦しい状況の中、【テラナイト】が持ち出した秘密兵器は「虚無空間」でした。
永続罠
①:このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、お互いにモンスターを特殊召喚できない。
②:デッキまたはフィールドから自分の墓地へカードが送られた場合に発動する。このカードを破壊する。
言わずと知れたOCG最強クラスの特殊召喚メタカードであり、お互いの特殊召喚を封じるというシンプルに強烈なメタ効果を持っています。むしろ強すぎて現在では制限カードにもなっているほどですが、この時点では無制限カードであり、厚めに枚数を取ることで【シャドール】対策のメインプランとして機能させることができました。
もちろん、自壊デメリットがある以上は長時間維持することは難しく、例えば「シャドール・リザード」や「シャドール・ドラゴン」、及びそれをサーチできるカードによって比較的楽に処理されてしまうカードではあります。よってこれ1枚では精々時間稼ぎにしかならないことがほとんどですが、逆に「影依融合」と1:1交換を取りつつ時間稼ぎもできると考えれば十分な働きです。
また、当然ながら「虚無空間」のメタ効果は【シャドール】以外に対しても効力が見込めるため、「暗闇を吸い込むマジック・ミラー」などの局所的なメタカードと違いメインデッキからの投入も無理なく行える利点があります。
実際、将来的には【テラナイト】どころか【ヴェルズ】などの各種メタデッキ、そして最後には当の【シャドール】ですらメイン採用が浸透してしまったほどであり、近年でも屈指の虚無環境が組み上がっていたと言うほかありません。こうした状況は2014年にとどまらず2015年以降も続いており、その結果2015年4月には「虚無空間」自体が規制されるという本末転倒の結末を迎えています。
往年の「王宮の弾圧」を彷彿とさせる惨状であり、まさに歴史は繰り返すと言わざるを得ない話でしょう。
光属性メタ+墓地メタの流行 「D.D.クロウ」ほか
以上のように、「虚無空間」を筆頭とする各種メタの発見によって【テラナイト】は辛くも環境に居場所を見出すことに成功しました。
「辛くも」とは言うものの、これはあくまでも大局的な視点に限った話です。
【シャドール】のインパクトのせいで忘れてしまいそうになりますが、そもそも【テラナイト】も9期勢の筆頭テーマであり、第8期世代の続投組から見れば異次元の強さを持っています。例えば【AF先史遺産】などと比較すればそのデッキパワー格差は歴然で、まともにぶつかれば(※)まず勝ち目はありません。
(※正確には、まともにぶつからなくても結局勝てずに環境から消えてしまうのですが……)
そのため、今後は【シャドール】に加えて【テラナイト】への対策を講じる必要性が生まれ、「閃光を吸い込むマジック・ミラー」などの各種光属性メタカードが試されていくことになります。
しかしながら、現実問題としてサイド枠は有限であり、【テラナイト】にばかり意識を向けている余裕があるとは限りません。例えば「コアキメイル・ドラゴ」を標準搭載できる【青眼征竜】などであれば重複分のサイド枠を節約するといったこともできますが、そうでない場合はいわゆる板挟みの状況に陥ってしまうわけです。
その結果、中間的なメタカードとして「D.D.クロウ」にスポットライトが当たっています。
効果モンスター
星1/闇属性/鳥獣族/攻撃力100/守備力100
①:このカードを手札から墓地へ捨て、相手の墓地のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
厳密に言えば、以前から【シャドール】及び【青眼征竜】対策として注目を受けていたカードですが、フリーチェーンの墓地除外は【テラナイト】に対しても有効です。これまでの解説の通り、【テラナイト】は「星因士 デネブ」を何度も再利用することによって全てが成り立つデッキであるため、「星因士 アルタイル」の蘇生などに合わせて除外することで展開を妨害しつつリソースの元を断つことができます。
また、【テラナイト】側は「D.D.クロウ」を防ぐ現実的な手段をほぼ持っておらず、メインギミックにおいては「神星なる因子」もしくは後出しの「リビングデッドの呼び声」程度しか用意がありません。なおかつ、特に「神星なる因子」の場合は展開が止まる上に後半のドローも消滅(※)してしまうなど、どちらかと言うと対策としては消極的かつ苦肉の策です。
(※墓地に行った「D.D.クロウ」は破壊することができないため、ルール上ドロー処理が行われなくなります)
こうした背景もあり、これ以降「D.D.クロウ」はサイドデッキの必需品となり、第9期初頭環境を代表するメタカードとしての地位を確立していくことになりました。むしろ後期にはメインから2~3枚積まれることも珍しくなくなってしまうなど、まさに往年の【インフェルニティ】全盛期に匹敵する投入率を誇っていた時代です。
「A・O・J サイクルリーダー」の侮れない活躍
とはいえ、そんな「D.D.クロウ」であっても常に完璧な仕事ができるわけではありません。
実際、「星因士 デネブ」が重なり始めるゲーム中盤以降は「星因士 アルタイル」の残機を1つ減らすカードにしかならないことも多く、実質的には単体除去と同等の効率にまで落ち込みます。それでも手札から奇襲的に撃てることを鑑みれば悪い働きではありませんが、メタカードとして十分な威力があるかどうかはまた別の話です。
そのため、後詰めのカードとして次第に「A・O・J サイクルリーダー」へと注目が向かうことになります。
チューナー
星3/闇属性/機械族/攻撃力1000/守備力1000
このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。相手の墓地の光属性モンスターを2体まで選択し、ゲームから除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
汎用性においては「D.D.クロウ」に遠く及ばない性能ですが、【テラナイト】を仮想敵に見据える上では実に有用な1枚です。単純に上位互換カードとして機能することはもちろん、何より「ソウル・チャージ」に当てた時の威力が段違い(※)であるため、役割が被ることを考慮しても特別に枠を割く価値があります。
(※除外されなかったモンスターは普通に蘇生されるため、「D.D.クロウ」では中途半端になるケースが多いです)
そのため、例えば墓地メタを3枠取る場合は「D.D.クロウ」と「A・O・J サイクルリーダー」を1~2枚ずつ散らすようにするなど、やや独特なサイドプランが広まっていくことになりました。
ちなみに、地味ながら重要なポイントとして、種族的に「ギアギガント X」のサーチに対応するという強みも見逃せません。例えば「ギアギガント X」を標準搭載する【AF先史遺産】においては1枠取っておくだけでも安定的に確保できたため、他のデッキ以上に【テラナイト】に対して強く出ることができました。
逆に言えば、こうした細かな優位点を持ちながらも環境に食い下がれないほど、【AF先史遺産】と9期勢との間には高い壁が生じていたということでもありますが……。
テラナイトの歴史・年表まとめ(デッキレシピあり)
第9期初頭当時の【テラナイト】については以上ですが、ここからは【テラナイト】の大まかな歴史(※)についても簡単に解説していきます。
(※かなり長くなる上に2014年当時の話からも離れるため、興味のない方は飛ばしてください)
サンプルレシピ(2014年4月) | 初期形態 |
---|---|
サンプルレシピ(2014年5月) | 全盛期 |
サンプルレシピ(2015年2月) | 環境上位 |
サンプルレシピ(2016年7月) | 衰退期 |
サンプルレシピ(2017年11月) | カジュアル |
2014年 何だかんだ強かった時代
2014年において、【テラナイト】は第9期を象徴する次世代テーマの位置付けにあり、浮き沈みはあれど年間を通して高い存在感を示し続けていました。
もちろん、メタゲームにおいては【シャドール】に主役の座を食われてしまった印象が否めない立場にありましたが、やはりデザイナーズデッキとしてのポテンシャルは当時屈指であり、総合的には2014年こそが【テラナイト】にとっての全盛期であったことは間違いありません。
4月19日 【テラナイト】カテゴリの成立
モンスターカード(17枚) |
||
---|---|---|
×3枚 | 星因士 アルタイル | |
星因士 ウヌク | ||
星因士 デネブ | ||
H・C 強襲のハルベルト | ||
×2枚 | 星因士 ベガ | |
D.D.クロウ | ||
×1枚 | 星因士 シャム | |
魔法カード(5枚) |
||
×3枚 | ||
×2枚 | 強欲で謙虚な壺 | |
×1枚 | 大嵐 | |
死者蘇生 | ||
増援 | ||
罠カード(18枚) |
||
×3枚 | 虚無空間 | |
強制脱出装置 | ||
神星なる因子 | ||
リビングデッドの呼び声 | ||
×2枚 | 奈落の落とし穴 | |
ブレイクスルー・スキル | ||
×1枚 | 神の警告 | |
神の宣告 | ||
エクストラデッキ(15枚) |
||
×3枚 | ||
×2枚 | 星輝士 デルタテロス | X |
×1枚 | ガガガガンマン | X |
恐牙狼 ダイヤウルフ | X | |
深淵に潜む者 | X | |
セイクリッド・オメガ | X | |
セイクリッド・トレミスM7 | X | |
ダイガスタ・エメラル | X | |
鳥銃士カステル | X | |
No.16 色の支配者ショック・ルーラー | X | |
No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク | X | |
No.86 H-C ロンゴミアント | X | |
No.101 S・H・Ark Knight | X | |
No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド | X | |
励輝士 ヴェルズビュート | X |
そうした勢いはカテゴリ成立当初においても現れており、4月時点から早々にトーナメントシーンで結果を出していくことになります。
上記サンプルレシピの通り、この頃は純構築の【テラナイト】が主流の型となっており、後世のように【セプタースローネ】ギミックが出張されるケースは稀でした。これは単純に【光天使テラナイト】の研究が進んでいなかったことも理由ですが、それ以上に「ソウル・チャージ」が誕生していなかったことが大きな要因であったと言えます。
一方、代わりのスペースに入っていたのが同パック出身の「H・C 強襲のハルベルト」です。
効果モンスター
星4/地属性/戦士族/攻撃力1800/守備力200
①:相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
③:このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。デッキから「ヒロイック」カード1枚を手札に加える。
最大の役割はもちろんエクシーズ召喚の補助ですが、そもそも純粋にカードパワーが9期仕様であるため、普通にビートダウン要員として使うだけでも十分な強さを発揮します。
また、いわゆる「奈落チェッカー」としての使い方も悪くはなく、本命の「星因士 デネブ」を安全に通す役割も担っていた非常に器用なカードです。
5月17日 「ソウル・チャージ」獲得+【光天使テラナイト】への派生
モンスターカード(17枚) |
||
---|---|---|
×3枚 | 星因士 アルタイル | |
星因士 デネブ | ||
光天使スローネ | ||
光天使セプター | ||
×2枚 | 星因士 ウヌク | |
D.D.クロウ | ||
×1枚 | 星因士 ベガ | |
魔法カード(6枚) |
||
×3枚 | ソウル・チャージ | |
×2枚 | ||
×1枚 | 大嵐 | |
死者蘇生 | ||
増援 | ||
罠カード(17枚) |
||
×3枚 | 強制脱出装置 | |
ブレイクスルー・スキル | ||
リビングデッドの呼び声 | ||
×2枚 | 虚無空間 | |
神星なる因子 | ||
鳳翼の爆風 | ||
×1枚 | 神の警告 | |
神の宣告 | ||
エクストラデッキ(15枚) |
||
×3枚 | ||
×2枚 | 星輝士 デルタテロス | X |
No.16 色の支配者ショック・ルーラー | X | |
×1枚 | ヴェルズ・ウロボロス | X |
ガガガガンマン | X | |
恐牙狼 ダイヤウルフ | X | |
ダイガスタ・エメラル | X | |
鳥銃士カステル | X | |
No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク | X | |
No.86 H-C ロンゴミアント | X | |
No.101 S・H・Ark Knight | X | |
武神帝-ツクヨミ | X | |
ラヴァルバル・チェイン | X | |
励輝士 ヴェルズビュート | X |
その後、コレクターズパック「-伝説の決闘者編-」から「ソウル・チャージ」を獲得するとともに、【テラナイト】は【セプタースローネ】ギミックを取り入れて【光天使テラナイト】へと派生することになります。
ここでは【セプタースローネ】ギミックの仕組みについては触れませんが、結論から言えば【光天使テラナイト】は純構築以上に高いパワーを備えており、なおかつ当時の環境にも噛み合った型であったため、間もなくこちらが主流型として定着しています。
ちなみに、【光天使テラナイト】の代表的な展開例である「セプスロデルタ展開」については下記の通りです。
①:「光天使セプター」を召喚し、サーチ効果を発動する。
②:手順①に反応し、手札の「光天使スローネ」の特殊召喚効果を発動する。
③:チェーンの逆順処理により、「光天使スローネ」の特殊召喚→「光天使セプター」のサーチ効果の順に処理する。(※1ドロー)
④:1枚目の「光天使スローネ」の特殊召喚に反応し、2枚目の「光天使スローネ」を手札から特殊召喚する。(※1ドロー)
⑤:「光天使セプター」1体と「光天使スローネ」2体の計3体で「星輝士 デルタテロス」をエクシーズ召喚する。(※セプター効果は任意)
⑥:「星輝士 デルタテロス」の効果で自身を破壊する。
⑦:「星輝士 デルタテロス」の効果で「星因士 デネブ」をリクルートし、効果で「星因士 アルタイル」をサーチする。
⑧:「ソウル・チャージ」を発動し、「光天使セプター」1体と「光天使スローネ」2体と「星輝士 デルタテロス」1体の計4体を蘇生する。(※ライフ4000ロス)
⑨:「光天使セプター」の効果で「光天使スローネ」をサーチする。
⑩:「光天使セプター」1体と「光天使スローネ」2体の計3体で「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」をエクシーズ召喚する。
⑪:セプター効果で「星輝士 デルタテロス」を破壊し、1ドロー。
⑫:「星輝士 デルタテロス」の効果で「星因士 ベガ」をリクルートし、効果で手札の「星因士 アルタイル」を特殊召喚する。
⑬:「星因士 アルタイル」の効果で「星輝士 デルタテロス」を蘇生する。
⑭:「星因士 ベガ」「星因士 デネブ」「星因士 アルタイル」の3体で「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」をエクシーズ召喚する。
⑮:「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」2体でそれぞれ魔法宣言・モンスター宣言を行う。
これにより、次の相手ターン終了時まで魔法カード及びモンスター効果を一切使用できなくなるため、これが先攻1ターン目に決まれば事実上のゲームエンドに持ち込めます。
一応、「強制脱出装置」などの罠カードによって盤面を崩される可能性もあるにはありますが、そもそも展開の過程で大量にアドバンテージを稼いでいる以上、よほど運が悪くない限りはそのまま物量で圧倒できるケースがほとんどでしょう。
7月19日 「星輝士 トライヴェール」獲得
7月19日、レギュラーパック「ネクスト・チャレンジャーズ」から「星輝士 トライヴェール」を獲得しています。
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻撃力2100/守備力2500
レベル4「テラナイト」モンスター×3
このカードをX召喚するターン、自分は「テラナイト」モンスターしか特殊召喚できない。
①:このカードがX召喚に成功した場合に発動する。このカード以外のフィールドのカードを全て持ち主の手札に戻す。
②:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。相手の手札をランダムに1枚選んで墓地へ送る。
③:X素材を持ったこのカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
言わずと知れた【テラナイト】最強のエースモンスターであり、【テラナイト】というテーマはこのカードのためにあると言っても過言ではない存在です。エクシーズ召喚時の全体バウンス効果は説明不要の強さですが、②のランダムハンデス効果もシンプルに強力であり、被破壊時の蘇生効果も堅実な働きが期待できる性能です。
とはいえ、実はこの時点では「星輝士 トライヴェール」の採用率はさほど高くはなく、むしろ姿を見かける方が珍しいという立場にあったことは否めません。
というのも、「星輝士 トライヴェール」をエクシーズ召喚するターンは【テラナイト】モンスターしか特殊召喚できなくなるため、当然【セプタースローネ】ギミックとはアンチシナジーを形成します。よって【光天使テラナイト】では貴重なエクストラ枠を割いてまで採用する価値は薄いと言われており、実質的には純構築専用のカードという扱いに甘んじていました。
加えて、【テラナイト】そのものが環境的に逆風のポジションに追いやられていた背景も無視できません。
具体的には、同パックから現れていた「神の写し身との接触」や「エルシャドール・シェキナーガ」によって【シャドール】が完成体に至っていたこと、また新勢力である【クリフォート】に対して不利を付けられていたことなど、多くの面で向かい風に晒される立場に置かれていました。
もちろん、それでも環境デッキと言って差し支えない程度の実績は残していましたが、前期と比較して急激に勢いが衰えつつあったことは否定できないのではないでしょうか。
10月1日 【光天使テラナイト】完全解体 環境上位からの脱落
こうした【テラナイト】衰退の流れは2014年10月の制限改訂を境に一気に表面化していくことになります。
【セプタースローネ】ギミックの中核をなしていた「光天使スローネ」「ソウル・チャージ」が同時に制限カード指定を受け、【光天使テラナイト】の構築が不可能になりました。これによって「No.16 色の支配者ショック・ルーラー」を安定して立てることが難しくなり、結果的に【シャドール】に対する抵抗力を喪失してしまった形です。
加えて、この改訂直後に現れた【影霊衣】に対して厳しい相性差がついていたことも致命的でした。
【影霊衣】は「ユニコールの影霊衣」を筆頭にエクストラメタ能力を多角的に持ち合わせたテーマであり、例によって【テラナイト】はこの直撃を避けられません。流石に【シャドール】ほどクリティカルな被害を被るわけではありませんが、それが気休めになるかというと難しいところもあります。
案の定、それを裏付けるようにこれ以降【テラナイト】のシェアは急激に縮小に向かい、トーナメントレベルではほとんど結果を残せないまでに凋落してしまっています。
11月15日 「星輝士 セイクリッド・ダイヤ」+「星因士 リゲル」獲得
11月15日、レギュラーパック「ザ・シークレット・オブ・エボリューション」から「星輝士 セイクリッド・ダイヤ」及び「星因士 リゲル」を手に入れ、辛うじて【テラナイト】にも希望の光が灯っています。
エクシーズ・効果モンスター
ランク5/光属性/幻竜族/攻撃力2700/守備力2000
光属性レベル5モンスター×3体以上
このカードは自分メインフェイズ2に、「星輝士 セイクリッド・ダイヤ」以外の自分フィールドの「テラナイト」Xモンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事もできる。
①:X素材を持ったこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いにデッキからカードを墓地へ送る事はできず、墓地から手札に戻るカードは手札に戻らず除外される。
②:相手の闇属性モンスターの効果が発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。その発動を無効にし破壊する。
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻撃力1900/守備力700
「星因士 リゲル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、フィールドの「テラナイト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターは、攻撃力が500アップし、エンドフェイズに墓地へ送られる。
特筆すべきは「星輝士 セイクリッド・ダイヤ」の強烈なメタ能力です。
デッキからの墓地送りとサルベージを永続的に封印し、おまけに闇属性モンスターの効果を無効にするカウンター効果を与えられているなど、もはや露骨すぎるほど【シャドール】を意識したデザインが取られています。召喚条件の関係で先攻1ターン目には設置できないこと、また実質的に3体分のエクシーズ素材を要求される(※)ことなど欠点は少なくありませんが、それでも有ると無いとでは大違いのカードです。
(※この頃は【テラナイト】のエクシーズ体が「星輝士 デルタテロス」と「星輝士 トライヴェール」の2種類しか存在しませんでした)
一方、「星因士 リゲル」は一見すると地味なカタログスペックですが、実際には【テラナイト】の天敵である「エルシャドール・ミドラーシュ」や「ユニコールの影霊衣」を単独で戦闘破壊できる貴重な下級モンスターであり、1枚挿しておくだけでも格段に対応力が広がります。
もちろん、単に攻撃力2400のアタッカーとして運用するだけでもよく、実際「星因士 デネブ」でサーチできる「光神機-桜火」と考えればそう悪いカードではないことが分かります。
いずれにしても、上記2枚を獲得したことで絶望的だった状況が少なからず改善に向かったことは間違いありません。
しかし、流石にマイナスをプラスに押し返すほどの作用はなく、結局目立った成績を残せないまま2014年を終えることとなりました。
2015年 世界大会優勝の栄光
【テラナイト】の苦境は2015年に入っても終わることはなく、環境デッキとしての権威は次第に失われつつありました。
しかし、蓋を開けてみれば複数の追い風によって勢いを盛り返しており、遂には大々的にメタゲームに復権を果たすまでに勢力を回復させています。流石に前年ほどの勢いはありませんでしたが、それでも同年の世界大会で二冠達成の実績を残すなど、環境屈指の強テーマとして存在感を放っていた時代だったのではないでしょうか。
2月14日 「星守の騎士プトレマイオス」獲得 デッキパワー大幅強化
モンスターカード(17枚) |
||
---|---|---|
×3枚 | 星因士 アルタイル | |
星因士 ウヌク | ||
星因士 デネブ | ||
×2枚 | エフェクト・ヴェーラー | |
オネスト | ||
星因士 ベガ | ||
×1枚 | 星因士 シリウス | |
星因士 リゲル | ||
魔法カード(7枚) |
||
×3枚 | 天架ける星因士 | |
×2枚 | ||
×1枚 | 死者蘇生 | |
増援 | ||
ソウル・チャージ | ||
ハーピィの羽根帚 | ||
罠カード(16枚) |
||
×3枚 | 神星なる因子 | |
デモンズ・チェーン | ||
リビングデッドの呼び声 | ||
×2枚 | ブレイクスルー・スキル | |
竜魂の幻泉 | ||
×1枚 | 神の警告 | |
神の宣告 | ||
破壊輪. | ||
エクストラデッキ(15枚) |
||
×3枚 | ||
×2枚 | 星輝士 トライヴェール | X |
星守の騎士 プトレマイオス | X | |
×1枚 | サイバー・ドラゴン・インフィニティ | X |
サイバー・ドラゴン・ノヴァ | X | |
深淵に潜む者 | X | |
星輝士 セイクリッド・ダイヤ | X | |
星輝士 デルタテロス | X | |
セイクリッド・プレアデス | X | |
鳥銃士カステル | X | |
No.16 色の支配者ショック・ルーラー | X | |
No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク | X | |
No.86 H-C ロンゴミアント | X | |
励輝士 ヴェルズビュート | X |
躍進の契機となったのは、何と言っても「星守の騎士 プトレマイオス」の存在です。
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻撃力550/守備力2600
レベル4モンスター×2体以上
①:このカードのX素材を3つまたは7つ取り除いて発動できる。
●3つ:「No.」モンスター以外の、このカードよりランクが1つ高いXモンスター1体を、自分フィールドのこのカードの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。
●7つ:次の相手ターンをスキップする。
②:お互いのエンドフェイズ毎に発動できる。自分のエクストラデッキの「ステラナイト」カード1枚を選び、このカードの下に重ねてX素材とする。
いわゆる「プトレノヴァインフィニティ」の呪文で一時代を築いたカードであり、汎用ランク4エクシーズとしてはOCGでも最強クラスのカードパワーを誇ります。ギミックの中核は「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」から「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」を立てることにありますが、状況に応じて「セイクリッド・プレアデス」などを自在に使い分けられる対応力の高さも尋常ではありません。
実際、そうした包括的な凶悪さによって誕生後僅か229日(※)で禁止カード行きになるという偉業を達成しており、名実ともにOCG屈指の極悪カードであると言えるでしょう。
(※ちなみに、OCG全体としては第10位となる記録です)
何にせよ、「星守の騎士 プトレマイオス」の存在が当時のOCG環境を牛耳っていたことは間違いありませんが、もちろん「星守の騎士 プトレマイオス」を最も強力に使いこなせるのは当の【テラナイト】本人です。
元々【テラナイト】エクシーズモンスターを標準搭載する関係でエクストラ枠の負担が相対的に軽く済むこと、「天架ける星因士」を実質ノーコストで扱えるようになること、なおかつ逆にその「天架ける星因士」のデメリットを実質踏み倒せることなど、【プトレ】系デッキの土台としては抜群の適性(※)を発揮します。
(※というより、「星守の騎士 プトレマイオス」が【テラナイト】の一員である以上、相性が良いのはむしろ当然の話なのですが……)
また、「星輝士 セイクリッド・ダイヤ」を2体素材でエクシーズ召喚できるようになったことも朗報です。場合によっては「星守の騎士 プトレマイオス」自身の効果でフリーチェーンで特殊召喚することもできるため、特に【シャドール】に対する苦手意識が劇的に改善されています。
もっとも、こうした追い風を受けていても全体的なメタゲームの風向きまでは変わっておらず、やはり2015年初頭においても【テラナイト】の立場は依然として苦しいままでした。
4月1日 制限改訂+中速環境による復権 再び環境へ
事態が大きく動いたのは、その直後の2015年4月改訂の瞬間でした。
【シャドール】を筆頭に、【影霊衣】や【クリフォート】など直前の環境を牛耳っていた勢力が軒並み弱体化し、【テラナイト】を含む各種中堅デッキにもようやく呼吸の機会が訪れています。さらに、こうした環境のデフレによってゲームスピードが低速化したことも【テラナイト】にとっては追い風で、結果として半年ぶりにメタゲームに復権を果たした格好です。
とはいえ、既に前置きで述べた通り前年ほどの勢いを得ることはできず、新勢力の台頭あるいは周辺デッキの強化に反比例して相対的に弱体化し続けていた時期でもありました。
8月15日~16日 世界大会二冠達成 ジュニア・一般の部同時優勝
ところが、そんな【テラナイト】は同年の世界大会において例外的に大躍進を果たすことになります。
これは大会限定で特殊なカードプールが設定されていたためであり、具体的には【M・HERO】【海皇】【魔術師】【インフェルノイド】辺りのデッキはそれぞれ一部のキーカードを使用できず、【シャドール】は【列車ドール】を組むことができず、【クラウンブレード】や【マジェスペクター】に至ってはそもそもデッキ自体が構築不可能であるなど、当時の主流デッキの多くが弱体化を余儀なくされていました。
一方、【テラナイト】は逆にほぼフルパワーの状態で戦うことができたため、同じくダメージが少なかった【影霊衣】や【クリフォート】と激闘を繰り広げ、最終的には【テラナイト】が優勝の栄光を掴み取っています。それもジュニアの部・一般の部の両方で同時優勝を果たしており、これほど華々しい実績を残したテーマはOCG広しと言えども一握りでしょう。
10月1日 プトレマイオス禁止行き 壊滅寸前の大打撃
【テラナイト】の時代はその1ヶ月後に突然の最期を迎えました。
2015年10月の制限改訂で「星守の騎士 プトレマイオス」が禁止カード行きとなり、【テラナイト】を含む各種4軸デッキが一斉に弱体化しています。他の4軸デッキにとっては汎用エクシーズの選択肢を1つ失っただけの話に過ぎませんが、【テラナイト】にとってはデッキの屋台骨を取り上げられたに等しく、まさに「壊滅寸前の大打撃」を食らってしまった格好です。
元々この頃は環境のインフレに置いていかれつつあった時期ではありましたが、これほどの致命傷を受けては流石にどうにもならず、この瞬間をもって環境デッキとしての現役時代を終えることになりました。
2016年 冬の時代
「星守の騎士 プトレマイオス」を失って以降、【テラナイト】にはひたすら厳しい冬の時代が続くことになります。
2016年に入ったことで環境は更なるインフレを迎え、【テラナイト】は完全にメタゲームから取り残された立場にありました。実質的には数ある中堅テーマの一角に埋没している状況にあり、むしろ中堅テーマとしても大して強くはないという程度にまで凋落していたことは否めません。
7月9日 「煉獄の騎士 ヴァトライムス」獲得 しかし……
モンスターカード(16枚) |
||
---|---|---|
×3枚 | 星因士 アルタイル | |
星因士 ウヌク | ||
星因士 デネブ | ||
増殖するG | ||
×2枚 | 星因士 ベガ | |
×1枚 | 星因士 シリウス | |
星因士 リゲル | ||
魔法カード(7枚) |
||
×3枚 | 天架ける星因士 | |
×2枚 | ||
×1枚 | 死者蘇生 | |
増援 | ||
ソウル・チャージ | ||
ハーピィの羽根帚 | ||
罠カード(17枚) |
||
×3枚 | 神の通告 | |
強制脱出装置 | ||
神星なる因子 | ||
魔封じの芳香 | ||
リビングデッドの呼び声 | ||
×2枚 | ||
×1枚 | 神の警告 | |
神の宣告 | ||
エクストラデッキ(15枚) |
||
×3枚 | 星輝士 トライヴェール | X |
煉獄の騎士 ヴァトライムス | X | |
×2枚 | ||
×1枚 | CNo.39 希望皇ホープレイ | X |
深淵に潜む者 | X | |
星輝士 セイクリッド・ダイヤ | X | |
星輝士 デルタテロス | X | |
鳥銃士カステル | X | |
No.39 希望皇ホープ | X | |
SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング | X | |
No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク | X | |
No.86 H-C ロンゴミアント | X |
そんな折、レギュラーパック「インベイジョン・オブ・ヴェノム」から専用サポートカード「煉獄の騎士 ヴァトライムス」を獲得し、にわかに注目を浴びています。
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/闇属性/戦士族/攻撃力2600/守備力550
レベル4「テラナイト」モンスター×2
①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、フィールドの全ての表側表示モンスターは闇属性になる。
②:このカードのX素材を1つ取り除き、手札を1枚捨てて発動できる。光属性の「テラナイト」Xモンスター1体を、自分フィールドのこのカードの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分はモンスターをX召喚できない。
自分の墓地に「テラナイト」モンスターが7種類以上存在する場合、この効果は相手ターンでも発動できる。
最大の特徴は何と言っても「自身に重ねて光属性の【テラナイト】エクシーズモンスターを疑似エクシーズ召喚する」効果でしょう。禁止行きになった「星守の騎士 プトレマイオス」の調整版のようなデザインであり、歯抜けテーマと化していた【テラナイト】救済の意図が見て取れるカードです。
ただし、こちらはコストとして手札1枚を要求されること、またターン終了時までエクシーズ召喚を一切行えなくなること、そして何より効果自体がスペルスピード1の起動効果である(※)ことなど、本家と比べて大幅に弱体化していることが分かります。
(※一応、条件を満たせばフリーチェーンで撃てるようにはなりますが、正直ロマン効果に近いです)
しかし、2体素材からでも即座に「星輝士 トライヴェール」に繋がるといった独自の強みも持っており、決して単純な下位互換カードというわけではありません。攻撃力2600というそこそこの打点も侮れず、全体的には悪くないスペック(※)にまとまったカードです。
(※その他、「超融合」と「スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン」による吸収コンボなどもあります)
加えて、「星因士 ベガ」からの展開が疑似的に「星因士 デネブ」に繋がるようになったことも地味ながら大きな変化です。
具体的なルートは下記の通りとなります。
①:「星因士 ベガ」を召喚し、効果で適当な【テラナイト】モンスターを手札から特殊召喚する。
②:上記2体を素材に「煉獄の騎士 ヴァトライムス」をエクシーズ召喚する。
③:「煉獄の騎士 ヴァトライムス」の効果で「星輝士 デルタテロス」を重ねてエクシーズ召喚する。
④:「星輝士 デルタテロス」の効果で自身を破壊し、「星因士 デネブ」をリクルートする。
⑤:「星因士 デネブ」の効果で「星因士 アルタイル」をサーチする。
差し引きで手札が2枚減ってしまいますが、それでも事故初手をある程度自力でケアできるというのは破格であり、デッキの潤滑油としては「星守の騎士 プトレマイオス」以上の働きが期待できます。もちろん、やはり総合的なカードパワーでは本家に遠く及ばないスペックですが、比べる相手が悪いだけで専用サポートとしては十分な性能でしょう。
とはいえ、流石に「煉獄の騎士 ヴァトライムス」1枚を得ただけで【テラナイト】が復活を果たすはずもなく、結局トーナメントレベルでは相変わらず鳴かず飛ばずの状況に置かれていました。
2017年 リンク世代から置き去りに
2017年、新マスタールールの導入に伴い【リンク召喚】システムが実装され、エクストラデッキを多用する数多くのデッキが打撃を受けました。
もちろん、【テラナイト】も例外ではありませんでしたが、元々死に体だった【テラナイト】が多少弱体化したところで痛くも痒くもありません。むしろ「星輝士 トライヴェール」を能動的に墓地に送って蘇生効果を活用するなど新たな動きも取れるようになっており、全体的にはプラスマイナスゼロの収支で済んでいます。
とはいえ、だからと言って何かが変わるというわけでもなく、やはり一部の愛好家を除けば眼中にないポジションにあったことは否めません。
もはや解説することはおろか語れることすらほとんど残っておらず、時代の流れからは完全に置き去りにされている状況だったのではないでしょうか。
イゾルデだけが傍にいてくれた頃
モンスターカード(枚) |
||
---|---|---|
×3枚 | 星因士 アルタイル | |
星因士 ウヌク | ||
星因士 デネブ | ||
星因士 ベガ | ||
灰流うらら | ||
×2枚 | 増殖するG | |
×1枚 | 星因士 シリウス | |
星因士 リゲル | ||
魔法カード(7枚) |
||
×3枚 | 天架ける星因士 | |
×2枚 | ||
×1枚 | 死者蘇生 | |
増援 | ||
ソウル・チャージ | ||
ハーピィの羽根帚 | ||
罠カード(14枚) |
||
×3枚 | 神星なる因子 | |
デモンズ・チェーン | ||
リビングデッドの呼び声 | ||
×2枚 | 神の通告 | |
×1枚 | 虚無空間 | |
神の警告 | ||
神の宣告 | ||
エクストラデッキ(15枚) |
||
×3枚 | ||
×2枚 | 星輝士 トライヴェール | X |
聖騎士の追想 イゾルデ | L | |
煉獄の騎士 ヴァトライムス | X | |
×1枚 | 星輝士 セイクリッド・ダイヤ | X |
星輝士 デルタテロス | X | |
ダイガスタ・エメラル | X | |
鳥銃士カステル | X | |
No.39 希望皇ホープ | X | |
SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング | X | |
No.41 泥睡魔獣バグースカ | X | |
No.86 H-C ロンゴミアント | X | |
励輝士 ヴェルズビュート | X |
数少ない例外が「聖騎士の追想 イゾルデ」であり、このカードの情報が出た瞬間こそが【テラナイト】界隈最後の動向らしい動向であったと言えます。
リンク・効果モンスター
リンク2/光属性/戦士族/攻撃力1600
【リンクマーカー:左下/右下】
戦士族モンスター2体
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。デッキから戦士族モンスター1体を手札に加える。このターン、自分はこの効果で手札に加えたモンスター及びその同名モンスターを通常召喚・特殊召喚できず、そのモンスター効果も発動できない。
②:デッキから装備魔法カードを任意の数だけ墓地へ送って発動できる(同名カードは1枚まで)。墓地へ送ったカードの数と同じレベルの戦士族モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
リンク召喚成功時に戦士族モンスターをサーチできるリンクモンスターであり、これにより事実上モンスター2体を並べるだけで「星因士 デネブ」に繋がるようになりました。手札コストと引き換えに「星因士 アルタイル」のサーチまで行える「煉獄の騎士 ヴァトライムス」とは相互互換の関係ですが、何にせよこれまで以上に安定して初動に成功するようになったことは間違いありません。
もっとも、誘発環境に突入した第10期において初動の安定性はもはや基礎スキルの一種と化しており、2枚初動のパターンをいくらか持つことが明確な強みになる時代は遥か昔に終わっています。そもそも根本的なデッキパワー不足はまるで解消されておらず、結局ファンデッキの扱いからは一向に抜け出せていません。
もちろん、いわゆる過去テーマの救済によって再び【テラナイト】が日の目を見る可能性は残されていますが、少なくとも今の時点では手の施しようがないというのが正直なところなのではないでしょうか。
【後編に続く】
【テラナイト】についての話は以上となります。
いわゆる「9期世代」の第一陣となる次世代テーマであり、【シャドール】とともに第9期初頭環境を形作った凶悪な尖兵です。浮き沈みはありつつも1年以上に渡って環境で戦い抜いた実績は大きく、第9期の歴史を語る上では欠かせない存在であると言えるでしょう。
とはいえ、当パックから現れた次世代兵器はこうしたデザイナーズデッキだけではありません。むしろある意味では上記2テーマ以上に凶悪な出張セットが参入を決めていたのです。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。