ヴェルズ・ケルキオン参戦 【ヴェルズ】環境上位へ

2019年11月5日

【前書き】

 【第8期の歴史11 【魔導書】が健全に強い環境デッキだった頃 神判被害者の会】の続きになります。ご注意ください。

 年末販売のレギュラーパックから【炎星】という新勢力が現れたほか、各種カテゴリサポートの収録によって【魔導書】を筆頭とする既存勢力が躍進を果たしました。特に【炎星】は2013年初頭環境を形作った有力デッキの1つであり、その次世代のデッキパワーによって次第にトーナメントシーンでも頭角を現していった勢力です。

 2012年も終わりが見える11月下旬の折、突如として姿を見せた有力ルーキーによって再び環境に激震が走ることになります。

 

【ヴェルズ】VS【セイクリッド】 結果は……

 2012年11月23日、デュエリストセット「Ver.ライトニングスター」「Ver.ダークリターナー」が同日販売されました。新たに2種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは5647種類に増加しています。

 それぞれ【セイクリッド】【ヴェルズ】を中心としたラインナップに仕上がっており、いわゆるカードプロテクターなどの特典を付属したスターターデッキのような商品です。実質的にはDTシリーズの再録商品に近い位置付けであり、新規カードもそれぞれ1枚ずつとオマケ的な扱いにとどまっていました。

 しかし、新規枠の少なさに反比例するように2枚ともが露骨に強力にデザインされていたため、これをきっかけとして両テーマが大きく強化されています。とりわけ【ヴェルズ】の躍進は著しいものがあり、遂にはメタゲームを大々的に揺るがすまでの影響力を持つに至ったほどです。

自分の墓地の「ヴェルズ」と名のついたモンスター1体をゲームから除外する事で、自分の墓地の「ヴェルズ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。「ヴェルズ・ケルキオン」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、この効果を適用したターンのメインフェイズ時に1度だけ発動できる。「ヴェルズ」と名のついたモンスター1体を召喚する。
このカードが墓地へ送られたターンに1度だけ、「ヴェルズ」と名のついたモンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体少なくする事ができる。

自分の墓地の「セイクリッド」と名のついたモンスター1体をゲームから除外する事で、自分の墓地の「セイクリッド」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。「セイクリッド・ソンブレス」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、この効果を適用したターンのメインフェイズ時に1度だけ発動できる。「セイクリッド」と名のついたモンスター1体を召喚する。
このカードが墓地へ送られたターンに1度だけ、「セイクリッド」と名のついたモンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体少なくする事ができる。

 上から順に、それぞれ「ヴェルズ・ケルキオン」「セイクリッド・ソンブレス」の当時のテキストとなっています。一見して見て取れる通り、お互いに対をなすカードデザインが取られており、DTシリーズの設定を反映した趣深いカードです。

 とはいえ、そうしたフレーバーとは別に効果そのものは実戦志向に纏まっており、サルベージ、召喚権増加、リリース軽減と両テーマに必要な効果を詰め込んだような印象を受けます。特にサルベージと召喚権増加のシナジーは抜群であり、実質的には墓地除外コストつきの蘇生効果のように機能する効果です。

 つまり、それぞれの専用エクシーズモンスターを実質1枚で出せるということであり、特に【ヴェルズ】は「ヴェルズ・オピオン」を安定して展開する術をようやく手にしたことになります。

 これまで【ヴェルズ】はヴェルズ・オピオン」の展開要員が「ヴェルズ・カストル」や「ヴェルズ・マンドラゴ」しか存在せず、展開の過程で否が応にもアドバンテージの損失を避けられない状況に置かれていました。結果として【ヴェルズ】は他デッキとの複合という選択肢を取らざるを得ない立場にあったのですが、2012年9月の改訂で「レスキューラビット」が準制限カード指定を受けたことでその複合先すら失ってしまい、この時期は環境デッキとしては事実上の行き詰まりを迎えていた(※)という経緯があります。

(※一応、【ガイド兎】にサブギミックとして組み込まれるケースはありました)

 そうした袋小路の状況に現れたヴェルズ・ケルキオン」の存在は極めて革命的で、根本的に【ヴェルズ】というカテゴリそのものに対する再調査が行われる結果に繋がっています。元々「ヴェルズ・オピオン」の強さは周知のものとなっており、それを専用テーマで運用できる可能性が生まれたというのは非常にセンセーショナルな話題だったからです。

 

【兎ヴェルズ】環境入り オピオンゲー再び

 こうした【ヴェルズ】界隈の盛り上がりの中、最終的に主流型として浮上したのが【兎ヴェルズ】と呼ばれる型です。

 名前から分かるように「レスキューラビット」と「ヴェルズ・ヘリオロープ」の4軸ギミックを併用した【ヴェルズ】の一種ですが、【ヴェルズラギア】のようにバニラ2種を取ることはなく、ほぼ上記の2枚+3枚の計5枠のみで固定化されています。直前に現れていた【炎星】然り、各種ランク4エクシーズと【兎】ギミックの親和性の高さはもはや共通認識と化しており、半ば自動的に複合がなされたというのが大まかな経緯です。

 これにより、【兎ヴェルズ】は「通常召喚できるオピオン」を実質5枚積めるようになり、デッキパワーが格段に向上することになりました。従来の「ヴェルズ・カストル」「ヴェルズ・マンドラゴ」の2種が「手札のヴェルズ1体を捨てることで通常召喚できるオピオン」であったことを踏まえれば劇的な進化と言うほかなく、これまでとは比較にならないほど安定して「ヴェルズ・オピオン」を展開できるようになっています。

 加えて、「ヴェルズ・ケルキオン」は「侵略の侵喰感染」でサーチできる「ヴェルズ・オピオン」でもあるため、事実上ヴェルズ・オピオン」が更なる「ヴェルズ・オピオン」を呼び込むという構図が成り立つのも見逃せません。つまり、これまではアド損が足を引っ張っていた「ヴェルズ・カストル」らも間接的にその損失を取り返せる見込みが生まれたため、実質的なアドモンスターとしてカウントできるようになったのです。

 結果として、これ以降【ヴェルズ】は都合10枚前後の「通常召喚できるオピオン」を積んだ脅威のデッキへと変貌を遂げ、まさに【オピオンビート】さながらのメタデッキとして環境を塗り替えていくことになりました。

 

弱点は手札事故 アドバンテージ生成能力の乏しさ

 とはいえ、そんな【ヴェルズ】にも当然いくつかの弱点はあり、中でも手札事故の頻度の高さは深刻な問題の1つです。

 上述の通り、【ヴェルズ】は「ヴェルズ・ケルキオン」を獲得したことで飛躍的にデッキパワーが向上しましたが、そもそものアドバンテージ生成能力の乏しさは依然として解決できておらず、この埋め合わせを「ヴェルズ・ケルキオン」に依存している状況が続いていました。

 もちろん、一度「侵略の侵喰感染」で「ヴェルズ・ケルキオン」を持ってくることに成功すれば大抵そのまま圧倒できますが、逆にここを「サイクロン」などで潰されると一気に窮地に陥ります。特に「ヴェルズ・カストル」「ヴェルズ・マンドラゴ」始動のパターンでは「侵略の侵喰感染」を機能させるのに計3体のヴェルズが必要になるため、残った「ヴェルズ・オピオン」を処理されてしまえばもはや立て直しは不可能です。

 また、当然ながらヴェルズ・ケルキオン」そのものを止められるのも非常に苦しい展開で、そこから稼げるはずだった将来的なアドバンテージを一気に喪失してしまいます。

 これに関しては「奈落の落とし穴」などの汎用除去であれば「侵略の汎発感染」の対応圏内ですが、神の警告」などの各種カウンターや「エフェクト・ヴェーラー」には打つ手がありません。折悪く【ゼンマイ】の影響で「エフェクト・ヴェーラー」の採用率が急上昇していたことも【ヴェルズ】にとっては向かい風となり、とにかく展開の線の細さに泣かされることが少なくないデッキでした。

 

各種【闇属性】メタの流行 「聖なるあかり」ほか

 しかしながら、そもそも【ヴェルズ】はビートダウンの皮を被った【メタビート】に近いコンセプトで構成されているデッキです。補給線を断ったところで肝心の「ヴェルズ・オピオン」が盤面に居座っている以上、デッキ相性によっては結局成す術もなく制圧されることは避けられません。

 なおかつ、上記でも触れた「侵略の汎発感染」という強力な防御札が睨みを利かせていたことも回答の幅を狭めており、次第に【ヴェルズ】を名指しした対策カードが必要になっていったという経緯があります。

 これには【闇属性】メタの定番である「聖なるあかり」が早々に持ち上がることになりましたが、その裏で密かに活躍していた「A・ジェネクス・ドゥルダーク」の存在には触れておく必要があるでしょう。

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。このカードと同じ属性を持つ、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。この効果を発動するターンこのカードは攻撃する事ができない。

 実質的には「闇属性モンスター1体を除去する効果」を持った下級モンスターであり、一応のメタにはなるものの「聖なるあかり」ほどのクリティカルな対策カードにはなり得ません。しかし、特筆すべきはこれ自体がレベル4の機械族モンスターであるということで、特に【代償マシンガジェ】では「ヴェルズ・オピオン」を処理しつつ「ギアギガント X」の素材になれる有力なサイドカードとして機能します。

 もちろん、機械族である以上は「ギアギガント X」のサーチにも対応するほか、「ブリキンギョ」や「二重召喚」などの4軸サポートも問題なく共有可能です。「A・ジェネクス・ドゥルダーク」そのものが準アタッカー級の打点を持っていることも扱いやすさを保証しており、一時期はこれをサイドに3枠取る構築が流行したこともありました。

 とはいえ、【ヴェルズ】側も環境の変化に応じて「禁じられた聖衣」を標準搭載してくるようになったため、次第に除去としての信頼性が低下していき、最終的にはあまり使われなくなっています。しかし、少なくともカード1枚を使わせている(※)以上は決して悪い働きではなく、【代償マシンガジェ】においては環境末期までサイドカードの選択肢の1つとして残り続けていました。

(※攻撃力マイナス修正によって「ヴェルズ・オピオン」の打点が「ギアギガント X」圏内に落ちるのもポイントです)

 

最大のライバルは【炎星】 打点で負ける苦しさ

 このように、次第に【ヴェルズ】が環境有数の【メタビート】としてのポジションを確立していく中、その障害として立ち塞がったのが【炎星】の存在です。

 この頃は【4軸炎星】、それも【兎炎星】というやや未完成な型が主流だった時代ですが、それでも環境デッキの一角に数えられるパワーを持っていたことは間違いありません。なおかつ、デッキ相性の段階から【ヴェルズ】に対して複数の優位点を持っていたことが追い風となり、これ以降は【ヴェルズ】メタとしてもシェアを拡大していっています。

 実際のところ、【ヴェルズ】にとって【炎星】は非常にやりにくい相手で、このマッチアップにおいて多くの面で不利がついてしまうことは避けられません。

 最も分かりやすいところでは炎舞-「天璣」」からの「暗炎星-ユウシ」によって容易く「ヴェルズ・オピオン」を処理されてしまうため、これをサーチできる各種【炎星】が疑似的に「ヴェルズ・オピオン」の対策カードとして機能することになります。

 さらに、下級【炎星】の基本打点は1600、つまり炎舞-「天璇」」のパンプアップが絶妙に「ヴェルズ・オピオン」の打点を超えてくるほか、「禁じられた聖槍」との併用によってこれを突破できる「微炎星-リュウシシン」の1800打点も侮れません。本来【ヴェルズ】は「侵略の汎発感染」によって魔法・罠に耐性を持っていますが、ダメージステップに発動できる「禁じられた聖槍」にはルール上割り込むことができないからです。

 他方では、下級同士の殴り合いにおいて全面的にハンデを抱えていることも【ヴェルズ】の立場を悪くします。

 上述の通り、【炎星】の下級打点は1600~1800と【ヴェルズ】を下回っていますが、これは各種【炎舞】カードの全体強化によって容易に覆ってしまう格差です。特に罠系【炎舞】の300ポイントの強化はそれ1枚で大半の下級【ヴェルズ】が戦力外になりかねず、ここに「炎舞-「天璣」」らが加われば「ヴェルズ・ヘリオロープ」ですら成す術がありません。

 そして【炎星】は戦闘を起点としてアドバンテージを発生させるカード群でもあるため、ひとたび戦闘で負けてしまえば後は坂道を転がり落ちるように打点差が広がっていきます。こうなればもはや「ヴェルズ・オピオン」に戦闘を一任するしかなくなりますが、先述の理由によりそれも有効なやり方とは言えません。

 そのため、【ヴェルズ】が【炎星】を相手取る場合、とにかく「暗炎星-ユウシ」らを場に定着させないプレイングを徹底しなければならず、それが崩された瞬間に敗北がちらつくという薄氷の戦いを強いられることになります。はっきり言ってビートダウン同士の対決としてはかなり無理のある相性差であり、当時の【ヴェルズ】にとって【炎星】の存在が相当大きなボトルネックになっていたことは間違いないでしょう。

 

【まとめ】

 2012年末頃の【ヴェルズ】についての話は以上です。

 これまではカテゴリ単独では中堅扱いを抜け出せない立場にありましたが、「ヴェルズ・ケルキオン」という強力なサポートを得たことで一転して環境デッキの仲間入りを果たしています。「ヴェルズ・オピオン」という強力なメタモンスターを軸にした「ビートダウンの皮を被った【メタビート】」であり、やがてはメタゲームを定義づけるデッキの一つとして名を馳せていくことになりました。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。