【炎星】カテゴリ黎明期 【ユウシビート】が強かった時代

2019年11月1日

【前書き】

 【第8期の歴史9 地雷デッキ【チェーンビート】爆誕 別名【逃げ逃げビート】の闇】の続きになります。ご注意ください。

 「EXTRA PACK 2012」という強力パックの参戦によって【ゼンマイ】や【暗黒界】が大きく強化され、間もなく主流デッキの一角として頭角を現していくことになりました。これまでの環境トップであった【海皇水精鱗】【代償ガジェット】は2強の権威を維持できなくなり、まさに群雄割拠さながらの環境が訪れた格好です。

 中堅~環境上位を含めた勢力図の入れ替わりが著しく発生する中、続く11月に販売されたレギュラーパックによって更なる環境の変動が引き起こされることになります。

 

【炎星】環境入り 3軸がまだ存在しなかった頃

 2012年11月17日、レギュラーパック「COSMO BLAZER」が販売されました。新たに80種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは5645種類に増加しています。

 パック全体の傾向としてカテゴリ単位での収録が目立ったタイトルであり、いわゆる汎用カードの枠はほとんど設けられていません。しかし、恐牙狼 ダイヤウルフ」や「ブレイクスルー・スキル」のようなトーナメント級のカードパワーを持った優良カードも輩出しており、総じて少数精鋭のラインナップに仕上がっていたパックだったと言えます。

 とはいえ、上述の通り当パックがデザイナーズデッキを推していたことは間違いなく、中でも新規カテゴリである【炎星】の参戦は大きな話題を集めていたのではないでしょうか。

1ターンに1度、このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、デッキから「炎舞」と名のついた魔法カード1枚を選んで自分フィールド上にセットできる。
また、1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。

このカードの発動時に、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加える事ができる。
また、このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上の獣戦士族モンスターの攻撃力は100ポイントアップする。
炎舞-「天璣」」は1ターンに1枚しか発動できない。

 上から順に、それぞれ「暗炎星-ユウシ」「炎舞-「天璣」」の当時のテキストとなっています。いずれも【炎星】カテゴリにおいては非常に重要なポジションを占めるカードであり、前者はいわゆる【4軸炎星】の中核として、後者は【炎星】のみならず【獣戦士族】全体のサポート(※)としても有名なカードです。

(※一時期は制限カード指定を受けていたこともありました)

 この時に現れていた【炎星】関連カードについては下記の通りです。

英炎星-ホークエイ
捷炎星-セイヴン
勇炎星-エンショウ
暗炎星-ユウシ
微炎星-リュウシシン
雄炎星-スネイリン
威炎星-ヒエンシャク
魁炎星王-ソウコ
炎舞-「天枢」
炎舞-「天璣」
炎舞-「天璇」
炎舞-「天権」
極炎舞-「星斗」

 「勇炎星-エンショウ」「暗炎星-ユウシ」「微炎星-リュウシシン」の三銃士に加え、エースモンスターである「魁炎星王-ソウコ」まで獲得しているなど、【4軸炎星】の基本的なパーツが出揃っていることが分かります。実際に11月中の時点から早々に環境入りを果たしているため、実質的にはカテゴリ成立当初からほぼ完成されていたと言っていい型です。

 一方、【3軸炎星】に関しては明らかにパーツが足りておらず、アーキタイプとしては赤子同然の状況に置かれていました。厳密には、当パックの販売以前から「炎星侯-ホウシン」「炎星師-チョウテン」「炎星皇-チョウライオ」の3種が現れていましたが、いずれにしてもデッキとしての体裁を成していたとは言えません。

 そのため、この時期は【炎星】と言えば事実上【4軸炎星】のことを指しており、下記で触れている【兎炎星】についても基本的には【4軸炎星】の派生型という扱いを受けていました。いわゆる【3軸炎星】がトーナメントシーンに姿を見せ始めるのは「立炎星-トウケイ」が誕生する2013年初頭頃からの話であり、それまでは「名前は【炎星】なのに効果が噛み合わない謎のカード群」として沈黙を保つことになります。

 

【兎炎星】の成立 ブラッド・ヴォルス+魔デッキのセットも

 このように、「COSMO BLAZER」の看板テーマとしてOCG環境に参入を果たした【4軸炎星】でしたが、実際には純構築のまま環境入りを迎えたわけではありません。アーキタイプの雛形そのものは完成に至っていたとはいえ、やはり「熱血獣士ウルフバーク」が不在の当時は「魁炎星王-ソウコ」を安定して展開することが難しく、純粋なビートダウンとしては強度にやや不安が残るデッキだったからです。

 そのため、当初は「雄炎星-スネイリン」や「幻獣の角」を絡めて【準メタビート】的に戦うコンセプトなどが試されていたのですが、やがてはレスキューラビット」によるランク4展開ギミックが発見されることになります。

 直前の2012年9月改訂では準制限カード指定を受けてしまったカードですが、元々相性の良いデッキにサブギミックとして仕込むのであれば2枚でも十分な働きが期待できたため、その流れで【4軸炎星】の補助パーツとして声がかかった格好です。「魁炎星王-ソウコ」の展開要員としてはもちろん、単純にランク4を1枚で作れるというだけでも非常に強力であり、最終的には当時の【4軸炎星】における主流型として定着しています。

 こうした【兎炎星】の隆盛が起こる中、地味ながらも見逃せないのがブラッド・ヴォルス」の意外な活躍です。

星4/闇属性/獣戦士族/攻撃力1900/守備力1200

 一見する限り、「レスキューラビット」のリクルート候補としては「ジェネティック・ワーウルフ」の後塵を拝しているようにも思える性能ですが、こと【炎星】というカテゴリに限って言えばその限りではなく、絶妙な部分で相互互換の関係を築いています。

 具体的には、【炎舞】カードの強化によって攻撃力が2000の大台に乗るため、魔のデッキ破壊ウイルス」の媒体として機能するという強みがありました。元々この時期は【代償マシンガジェ】や【ゼンマイ】に刺さるメタカードとして注目を受けていた背景がある以上、それをメインギミックに組み込めるようになるというのは攻撃力100の格差を補って余りある優位点です。

 この「ヴォルス+魔デッキ」パッケージは後々の【炎星】にもオプションとして受け継がれており、環境によってはウイルスの媒体として「ブラッド・ヴォルス」がサイドにピン挿しされるケースもありました。「炎舞-「天璣」」のサーチに対応するという強みを活かした独特なカードチョイスであり、いざとなれば「魁炎星王-ソウコ」のエクシーズ素材になれるという点でも融通が利く1枚です。

 ちなみに、2012年11月当時においては上述の通り「ブラッド・ヴォルス」を使用する型が主流でしたが、時間経過とともに「ジェネティック・ワーウルフ」と使用率が逆転していくという経緯を辿っています。これは【炎星】そのもののシェアが拡大したことでミラーマッチの機会が増え、結果として攻撃力100の差が大きな不利を生むようになったからです。

 ちょうど採用率が一周して元の位置に戻ったという構図であり、メタゲームがカード選択に及ぼす影響が如何に大きいかが窺い知れるエピソードです。

 

「プライドの咆哮」まさかの流行 ピンポイントメタの好例

 ともあれ、【4軸炎星】の環境入りは当時のメタゲームを大きく左右し、既存の主流デッキは何らかの対策を取ることを余儀なくされました。流石に11月中の時点では環境の一角に籍を置くのみにとどまっていましたが、この直後に現れる【ヴェルズ】に有利を取れることが判明するにつれ、次第に環境における一大勢力として頭角を現していくことになります。

 実際のところ、【4軸炎星】は別名【ユウシビート】と言われるほどに「暗炎星-ユウシ」を前面に押し出したデッキであり、なおかつそれが通じるほどに強烈なパワーを備えたデッキです。一度でも「暗炎星-ユウシ」の攻撃を通してしまったが最後、「炎舞-「天璣」」によってずるずるとアドバンテージを稼がれ、遂には「激流葬」ですら1枚では返せないほどのアド差をつけられてしまいます。

 何より、【炎星】というカテゴリそのものが戦闘を非常に得意としているため、単純な高打点による処理は基本的に狙えません。「ギアギガント X」のような中途半端なアタッカーはもちろん、場合によっては暗黒界の龍神 グラファ」のような大型モンスターですら容易に討ち取られてしまうからです。

 加えて、上記のやり取りがダメージステップに行われるというルール面の優位性も【炎星】への対処をより困難にしていました。相手からの攻撃は言うに及ばず、こちらからの攻撃であってもコンバット・トリックによって返り討ちにされる危険が存在する以上、「次元幽閉」などの従来通りのビートダウンメタは対策としてはやや心もとないと言わざるを得ません。

 結果として、これ以降は【炎星】対策として「プライドの咆哮」にスポットライトが当たることになります。

戦闘ダメージ計算時、自分のモンスターの攻撃力が相手モンスターより低い場合、その攻撃力の差分のライフポイントを払って発動する。ダメージ計算時のみ、自分のモンスターの攻撃力は相手モンスターとの攻撃力の差の数値+300ポイントアップする。

 単純なカードパワーを見る場合、コンバット・トリックカードとしては落第点のスペックであり、「収縮」などを差し置いてこれを使う利点はほぼ無いに等しいカードです。しかし、ダメージ計算時に発動できるという唯一無二の強みを持っているため、対【炎星】においては戦闘に後出しジャンケンで勝てるカードに変貌します。

 つまり、「炎舞-「天璇」」などを無駄撃ちさせつつ確実に戦闘破壊を通せるということであり、類似のメタカードの中でもその利便性は圧倒的です。【炎星】側は攻めの起点となるカードを同時に2枚失ってしまうため、これをまともに貰ってしまうと最悪そのままゲームを落としかねないほどの致命的な遅れが発生します。

 とはいえ、発動タイミングが限定される関係で伏せ除去に弱いというデメリットもあり、手放しで採用されるメタカードだったわけではありません。特に「勇炎星-エンショウ」に対しては実質0:1交換を取られてしまうことも多く、単体で運用するのはリスクが高い(※)とも言われていました。

(※つまり、「奈落の落とし穴」などの妨害札とセットで運用すべきカードです)

 その他、局所的なメタとしては「オーバースペック」なども有力なサイドカードとして流行しています。こちらはどちらかと言うと【3軸炎星】全盛期に流行したメタカードですが、いずれにしても【炎星】に対して有効であることに変わりはなく、数は少ないながらも2012年の時点からメタカードとして使われていました。

 ちなみに、「プライドの咆哮」が最も輝くのは【炎星】同士のミラーマッチであり、【炎星】ミラーにおいてはこれを先に通した方が勝つとまで言われます。極端な話、【炎星】モンスター同士の戦闘1回ごとに都合2~3枚分のアド差が発生する余地があるため、その勝敗を確実に決定するカードの存在はまさしく「ボム」に他ならないからです。

 【炎星】メタでありながら【炎星】の武器にもなるという稀有なメタカードであり、二重の意味で【炎星】環境を形作ったと言えるカードだったのではないでしょうか。

 

【後編に続く】

 成立当初の【炎星】についての話は以上です。

 現在では【3軸】と【4軸】に分かれているアーキタイプですが、この時点では【3軸】はまだ成立しておらず、事実上は【4軸炎星】として環境入りを果たしています。別名【ユウシビート】とも言われる脅威のビートダウン性能はまさに強烈の一言であり、2012年末~2013年初頭環境を代表するビートダウンデッキとして名を馳せていくことになりました。

 このように、【炎星】という大型ルーキーを輩出した「COSMO BLAZER」でしたが、当パックによるプッシュが入ったカテゴリは【炎星】だけではありません。むしろ純粋な知名度ではOCG屈指のビッグネームが参入を決めていたのです。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。