【3軸炎星】環境トップへ 1ヶ月天下の悲しみ

2019年11月7日

【前書き】

 【第8期の歴史13 遊戯王の歴史 2012年の総括】の続きになります。ご注意ください。

 2012年が終わりを告げ、遊戯王OCGは14度目の新年を迎えることとなりました。【甲虫装機】を筆頭に、従来のゲームバランスを無視したテーマの脅威が著しかった時代であり、とりわけ上半期環境におけるインフレに関しては一部危険な兆候も見られます。

 やや不穏な空気に包まれながらも第8期が折り返しを迎える中、新年度早々にVジャンプ配送パックから大型ルーキーが参入を決めることになります。

 

立炎星-トウケイ参戦 【3軸炎星】立身出世

 2013年1月中旬、「V JUMP EDITION 8」の配送が開始されました。新たに5種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは5680種類に増加しています。

 数は少ないながらも収録内容は非常に豪華であり、トーナメントレベルで実績を残した有望株を一気に輩出しています。【4軸炎星】を完成させた「熱血獣士ウルフバーク」はその筆頭ですが、前年末に現れていた【炎王】を実戦レベルに強化した「炎王獣 ヤクシャ」の存在も見逃せません。

 しかし、新星揃いの当パックの中でも一番の注目を受けていたのは、やはり「立炎星-トウケイ」をおいて他になかったのではないでしょうか。

このカードが「炎星」と名のついたモンスターの効果によって特殊召喚に成功した時、デッキから「炎星」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。「立炎星-トウケイ」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。デッキから「炎舞」と名のついた魔法・罠カード1枚を選んで自分フィールド上にセットする。

 言わずと知れた【3軸炎星】のキーカードであり、このカードなくして【3軸炎星】を語ることはできません。カタログスペックそのものも水準以上に高いカードではありますが、重要なのはレベル3かつ守備力100というステータスです。

 つまり、炎星師-チョウテン」の蘇生効果に対応しつつ「炎星侯-ホウシン」「炎星皇-チョウライオ」の素材になれる当時唯一の【炎星】であったため、文字通りこのカードの参入をきっかけに【3軸炎星】が成立しています。というより、「立炎星-トウケイ」の情報そのものは【4軸炎星】が現れた頃から既に判明していたため、【3軸炎星】使用者にとっては今か今かと誕生を待ち望んでいたカードだったと言っても過言ではないでしょう。

 実際のところ、「立炎星-トウケイ」は非常にパワフルなカードで、当初予想されていた以上に【3軸炎星】を強力なデッキに仕上げました。その勢いは往年の【甲虫装機】を彷彿とさせるほどであり、ひとたび回り始めれば莫大なアドバンテージによって相手を圧倒できるだけの展開力を開花させるに至ったのです。

 

回り始めたら最強 「チョウテンショウカン」の恐怖?

 当時の【3軸炎星】の高い爆発力の基盤となったのは、「炎星師-チョウテン」「立炎星-トウケイ」「炎星侯-ホウシン」らによる強固なシナジーに他なりません。

・手札に「立炎星-トウケイ」「炎舞-「天璣」」の2枚(※)が存在する場合。(※「立炎星-トウケイ」+「炎舞-「天枢」」などの組み合わせでも可)

 

①:「炎舞-「天璣」」で「炎星師-チョウテン」をサーチする。

 

②:「立炎星-トウケイ」を召喚し、その効果で「炎舞-「天璣」」を「炎舞-「天枢」」に交換する。

 

③:「炎舞-「天枢」」の追加召喚権で「炎星師-チョウテン」を召喚する。

 

④:「炎星師-チョウテン」「立炎星-トウケイ」の2体で「炎星侯-ホウシン」をシンクロ召喚する。

 

⑤:「炎星侯-ホウシン」で「立炎星-トウケイ」をリクルートする。

 

⑥:「立炎星-トウケイ」で任意の【炎星】をサーチする。

 

⑦:「立炎星-トウケイ」で「炎舞-「天枢」」を「炎舞-「天璣」」に交換する。

 

 上記は【3軸炎星】における基本的な初動展開の一例となります。手札消費は2枚ですが、最終的に「立炎星-トウケイ」のサーチと「炎舞-「天璣」」の予約によって2枚分の後続を確保できるため、実質ノーコストで盤面を構築できる優秀な展開ルートです。

 しかし、この展開で最も重要なのは「墓地にトウケイを置きつつチョウテンを確保できる」という部分であり、次ターン以降は「炎星師-チョウテン」で「立炎星-トウケイ」を蘇生するという動きを容易に繰り返せるようになります。要するに6シンクロもしくはランク3エクシーズで攻め込みつつ「炎星師-チョウテン」を確保し続けられるということに等しく、まさに「ダンセルショウカン」ならぬ「チョウテンショウカン」の恐怖(※)を再現することができるわけです。

(※流石に万能除去を乱発する【甲虫装機】には見劣りしますが、比べる相手が悪いだけで【3軸炎星】の展開力も十分に凶悪です)

 一応、種族縛りのデメリットが存在する以上は自由自在に展開とまではいきませんが、この直前に獣神ヴァルカン」という狙いすましたようなサポートが現れていたことも追い風となり、間もなく【3軸炎星】は新進気鋭のアーキタイプとして環境上位に躍り出ました。最終的にはトップメタの一角に名を連ねるまでに勢力を拡大させており、【4軸炎星】とともに2013年初頭環境の【炎星】全盛期を築き上げた存在です。

 

全盛期僅か1ヶ月 【征竜魔導】直前の奮闘

 とはいえ、2013年初頭と言えば悪名高い【征竜魔導】環境を目前に控えた時期でもあり、残念ながら【3軸炎星】の天下もそれほど長続きはしていません。なおかつ、その後の2013年9月改訂で「立炎星-トウケイ」「炎舞-「天璣」」の2枚を同時に規制されるという結末を迎えることになるため、実質的には僅か1ヶ月ほどしか全盛期が続かなかった悲劇のアーキタイプでもあります。

 もっとも、上記項目で解説した通り【3軸炎星】そのものは極めて高い水準のデッキパワーを持っており、短期間ながらメタゲームを緋色に染め上げたことも間違いありません。

 なぜなら、「炎星師-チョウテン」「立炎星-トウケイ」「炎星侯-ホウシン」のシナジーは言うに及ばず、「炎星皇-チョウライオ」「炎星師-チョウテン」のループがもたらす盤石な継戦能力、「捷炎星-セイヴン」「炎王の急襲」による潰しのきく展開サポート、「獣神ヴァルカン」「リビングデッドの呼び声」「デモンズ・チェーン」らを組み合わせたセルフ・バウンスギミック、「暗炎星-ユウシ」のタッチによる軸をずらした攻め手の用意、そしてそれらを包括することによる高いワンショット能力など、【3軸炎星】は当時としてはあり得ないほど多彩な強みを併せ持つ驚異のアーキタイプだったからです。

 何より、これらの強みが相乗効果的に噛み合ってデッキ全体のパワーを底上げしている以上、どれか1つを止めるだけでは十分なメタ効果は得られません。言い換えれば、これまで【4軸炎星】に通じていた対ビートダウン仕様の対処法では到底カバーし切れなかったということであり、より根本的かつ広範囲に対応するような質の高いメタカードが必要になっていたという背景が存在します。

 

出る杭は打たれる 「オーバースペック」の流行

 結果として、これ以降【3軸炎星】対策として流行したのが「オーバースペック」と呼ばれるカードです。

元々の攻撃力よりも高い攻撃力を持つフィールド上のモンスターを全て破壊する。

 一見すると使い道すら分からないレベルの微妙カードに見えてもおかしくありませんが、こと【炎星】対策として見るのであればこれ以上ないほどクリティカルなメタカードです。実質的にはフリーチェーンの「サンダー・ボルト」に近い威力を発揮するため、とりあえず何処で使ってもメタとして機能する抜群の取り回しを誇ります。

 特に初動展開における「炎星侯-ホウシン」直前のタイミング(※)で撃てれば絶大な効果が見込め、場合によってはそのままゲームが終わりかねないほどの高いダメージが期待できます。

(※上記展開ルートの③の手順です)

 とはいえ、性質上【3軸炎星】は一旦初動を許してしまうとその後の展開全てがアドバンテージに繋がるようになるため、現実的には「オーバースペック」ですら1枚では止まらないケースは少なくありません。例えば上記展開例では「炎星師-チョウテン」「炎舞-「天璣」」の両方に対処しなければ後続を断つことができず、結局は1ターン動きを止めただけで盤面を立て直されてしまうからです。

 そのため、最上の対策はそもそも初動を許さないこと、つまり「エフェクト・ヴェーラー」などの各種手札誘発に声がかかることになります。

 というより、正確には【ゼンマイ】環境の頃から既に流行していたカードなのですが、【3軸炎星】の環境入り以降はほぼメイン固定と言って差し支えないポジションに収まっています。初動を止めるカードとしてはもちろん、中盤以降も「炎星師-チョウテン」の残機を1つ減らせると考えれば悪い働きではなく、元々【3軸炎星】そのものが比較的事故を起こしやすいこともあって妨害枠として定着したという流れです。

 一方、逆に当初は使われたものの定着しなかったメタカードも多く、中でも「連鎖除外」の絶妙な噛み合わなさについては言及しておくべきでしょう。

攻撃力1000以下のモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。その攻撃力1000以下のモンスターをゲームから除外し、さらに除外したカードと同名カードを相手の手札・デッキから全て除外する。

 一見すると「炎星師-チョウテン」を根絶できることから有効に思えるカードですが、蘇生効果を止められない関係で「立炎星-トウケイ」のサーチを許してしまうため、「炎舞-「天枢」」によってランク3エクシーズの展開に繋がってしまいます。

 つまり、1枚でも「炎星師-チョウテン」が墓地に残っている場合は「炎星皇-チョウライオ」に、そうでない場合も「虚空海竜リヴァイエール」によって容易に体勢を立て直されてしまうため、見た目の印象に反してメタとしての威力はかなり中途半端と言わざるを得ません。もちろん、初動の段階に限れば大きなダメージが期待できるのも確かですが、その役割であれば「エフェクト・ヴェーラー」や「オーバースペック」だけで十分です。

 もっとも、逆に言えばこうした試行錯誤が行われる程度には【3軸炎星】が当時の環境で存在感を放っていたということでもあり、まさに太く短い生涯を送ったアーキタイプだったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 【3軸炎星】についての話は以上です。

 「炎星師-チョウテン」を筆頭に、デッキの中核的なパーツそのものは2012年7月~8月頃から既に現れていましたが、肝心の「立炎星-トウケイ」が存在しなかった関係で半年近く日陰の時代を過ごしています。なおかつ、その後の全盛期も僅か1ヶ月ほどしか続かないなど、何かとタイミングの悪さが足を引っ張っていたアーキタイプです。

 しかし、そうした不遇さを補って余りある華々しい実績を残したことも間違いなく、名実ともに2013年環境のスタートを担った重要な存在だったと言えるでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。