【征竜魔導】環境の幕開け 2013年の暗黒期

2019年11月13日

【前書き】

 【第8期の歴史17 制限改訂2013/3 発条空母ゼンマイティ禁止行き、しかし……】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【征竜】か【魔導】か ミラーマッチか

 実際のところ、2013年3月環境におけるマッチアップの大半はおおむね3つのパターンに集約されていたと言っても過言ではありません。

 【征竜】対【魔導】、【征竜】ミラー、【魔導】ミラーの三種類です。

 もちろん、【ヴェルズ】を筆頭に各種メタデッキの存在が多少なりとも許されていたことは事実ですが、それ以上に2強との遭遇が圧倒的に多数を占める以上、この両者への対処に特化してしまうのが最も合理的な選択(※)だったことも否定できません。現実問題、当時は対戦運によっては【征竜魔導】以外のデッキに全く当たらないというケースも珍しくなかったほどで、メタゲームを生き残る上ではどう足掻いても【征竜魔導】に意識を向けざるを得ない状況だったのです。

(※中堅に対する勝率を8割から9割に上げるより、【征竜魔導】への勝率を5割から6割に上げる方が遥かに重要であると言われていました)

 世に言う【征竜魔導】環境の幕開けであり、遊戯王OCGは数年ぶりに暗黒期らしい暗黒期へと突入を果たすことになります。

 

【魔導】VS【ワンキル】系の時代

 とはいえ、3月当初から環境が【征竜魔導】2強の構図で固まっていたわけではありません。

 この頃は【征竜】が完成し切っていなかったことはもちろん、【魔導】も「一時休戦」を失ったことで防御面の不安が再燃し、初期に試されていたアグロ戦法が再び通用するようになったからです。

 これにより改訂を無傷で乗り切った【3軸炎星】を筆頭に、2~3ターン以内の素早い決着を狙えるデッキがメタゲームに浮上しています。裏を返せばその基準に届かないデッキは無条件で絶滅してしまったとも言えますが、少なくともこの時点では辛うじて暗黒期指定には至っていなかった印象があります。

 その他、「瀑征竜-タイダル」によって大きく強化された【海皇水精鱗】、さらには【ドラグニティ】などのワンキル搭載デッキも侮れないポテンシャルを示しており、【魔導】の脅威に晒されながらもある程度はバランスの取れた環境が成立していたのではないでしょうか。

 ちなみに、【征竜魔導】環境初期に当たるこの頃は【魔導】を見据えた様々なメタカードが試されていた時期でもあります。「ライオウ」や「マインドクラッシュ」など、将来的にはあまり使われなくなるカードもしばらくはサイドの常連を務めており、ここで定まった評価(※)が後のメタゲームの流れを少なからず左右したことは間違いないでしょう。

(※ちなみに、ドロール&ロックバード」はこの頃から既に流行していました

 一方、【魔導】側もこうした環境の推移に対応を見せており、代表的なところでは「和睦の使者」のメイン投入が増加したことなどが挙げられます。

 単純ながらも効果的な対策で、上記のワンキル戦法を1枚で否定できることから流行が進んだ格好です。一旦ワンキルをやり過ごしてしまえば自然と勝利が転がり込んでくるため、主に格下への有利をより盤石にするためのカード(※)として重宝されていました。

(※そのため、最終的に【征竜魔導】環境で固まるにつれて使われなくなっていくカードでもあります)

 

【征竜】の完成 間もなく【征竜魔導】環境へ

 ところが、こうした環境は【征竜】の台頭とともにあえなく崩れ去ることになります。

 【魔導】と同様、従来の常識を超えた圧倒的なデッキパワーによって各種中堅勢力を駆逐し、間もなく【征竜】対【魔導】というシンプルな構図にメタゲームを塗り替えてしまっています。先述の通り、【征竜魔導】以外の勢力が完全に消え去っていたというわけではありませんが、少なくとも全体の流れがそれに向かっていたことは否定できない現実でした。

 そんな【征竜】の構築は実に多様的で、ある程度テンプレートが定まっている【魔導】と異なり、型によってその振る舞いを大きく変化させるアーキタイプでもあります。「光と闇の竜」を軸に制圧のプランを用いる型や、「ガード・オブ・フレムベル」などの各色のドラゴンを取り入れて動きに幅を持たせた型、あるいはこれらを切り捨てて空きスペースに各種メタカードを敷き詰めた型まで、チューンナップ次第でどのようなデッキにも化けると言っても過言ではありません。

 中でも高い知名度を誇るのが光と闇の竜」と「エクリプス・ワイバーン」のギミックを搭載した型であり、いわゆる「サックライダー」の布陣をメインに据えていることで知られます。簡単に言えば「幻獣機ドラゴサック」のトークンをアドバンス召喚のコストとすることで「ライダー+2600打点」という盤面を作るのが目的で、実質的にはかつての【ライダー】系のコンセプトを現代に復元させた型であったとも言えるでしょう。

 こうした【ライダー】型の流行には当時のメタゲーム事情も密接に絡んでおり、具体的には【征竜】と【魔導】のどちらにも効果が見込めるカードであったことが大きく関係していました。元々「光と闇の竜」そのものが高い制圧力を備えたモンスターであることはもちろんですが、両デッキともに先出しされた「光と闇の竜」に対処できるカードが非常に限られており(※)、先攻で置ければ実質押し切りに近い形で勝利が狙える可能性を持っていたからです。

(※代表的な突破方法としては、【征竜】はチェーン2「超再生能力」によるゴリ押し、【魔導】は「魔導法士 ジュノン」のチラ見せなどが挙げられます)

 もちろん、【征竜】にとって「光と闇の竜」はあくまでもサブウェポンに過ぎませんが、僅か2~3枠のスロットを割くだけでイージーウィンが視野に入るというのはやはり破格です。その結果、最終的にこの【ライダー】ギミックは【征竜】の代表的な武器として知られるまでになり、【征竜】を相手取る上では(実際に採用されているかどうかにかかわらず)常にその存在を意識した戦い(※)を求められるようになりました。

(※当時の【征竜】で「ブレイクスルー・スキル」が流行したのもこれが理由の1つです)

 一方で、【魔導】は徐々に苦しい状況に追い込まれていっています。

 実際のところ、当時の【魔導】が苦手としていたのは「光と闇の竜」というよりも【征竜】というアーキタイプそのもので、実質的にはマッチアップの段階から不利がついていたことは否めません。ゲーム最序盤の動き出しが脆い【魔導】にとって、初動から高いパフォーマンスを発揮する【征竜】相手では後手後手の対応となることが多く、いざ「魔導書の神判」が回り始めた時にはもはや手遅れというシチュエーションに遭遇することが少なくなかったからです。

 つまるところ、全盛期の【征竜】は【魔導】ですら真っ向勝負を挑むのは分が悪く、単純にデッキパワーをぶつけ合うだけでは対抗し切れないほどに強大な相手だったのです。

 

【坊主メタビ】への変遷 【魔導書】とは何だったのか

 結果として、これ以降の【魔導】は「昇霊術師 ジョウゲン」や「霊滅術師 カイクウ」などの各種メタモンスターを取り入れ、事実上の【メタビート】へとコンセプトを寄せていくことになります。

手札をランダムに1枚墓地へ捨てて発動できる。フィールド上の特殊召喚されたモンスターを全て破壊する。
また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いにモンスターを特殊召喚できない。

このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、相手の墓地のモンスターを2体まで選択してゲームから除外できる。
また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手はお互いの墓地のカードをゲームから除外できない。

 いずれも【征竜】を仮想敵に見据えたカード選択であり、これらをメインから搭載することで【征竜】との相性差を逆転させることを狙った格好です。これまでは「魔導教士 システィ」をゴール地点としていた「魔導書の神判」の3カウントは「昇霊術師 ジョウゲン」へと取って代わり、それに反比例して「魔導教士 システィ」そのものの採用率も次第に低下(※)していきました。

(※最終的にはサイドにすら入らないケースが大半となっています)

 また、「昇霊術師 ジョウゲン」の特殊召喚封殺効果は【征竜】以外のデッキに対しても有効に働くため、上記で取り上げたワンキル戦法が事実上効かなくなるという副次効果も生まれています。「ゲーテの魔導書」を構えている場合はもちろん、そうでなくとも単にバトルフェイズを1回潰すだけで十分な減速効果が見込めるため、否が応にも「魔導書の神判」とのアドバンテージ・ゲームを相手に強要できるようになったわけです。

 これは非常に理不尽な話で、この「昇霊術師 ジョウゲン」の存在が【征竜魔導】環境成立の決定打となったことは疑いようもありません。ワンキルというデッキパワーの格差を埋める最後の手段を喪失してしまった以上、もはやメタカードによる封殺もしくは【魔導】側の事故によってしか勝利を拾えなくなったに等しく、これを契機に多くの中堅勢力は衰退の道を辿ることになりました。

 

【征竜】から見た「ゴッドジョウゲンシステム」の恐怖

 当然のことながら、「昇霊術師 ジョウゲン」は【征竜】にとっても非常に致命的な相手で、これを安定して無力化するのは簡単なことではありません。

 メインギミックの段階では「焔征竜-ブラスター」による直接の除去、あるいは「水征竜-ストリーム」「地征竜-リアクタン」らによる戦闘破壊などが現実的な突破手段となりますが、いずれも取引としてはかなり損な部類に入ります。前者は展開の線が細くなる関係で十分な攻め手を確保できなくなるリスクがあり、後者に至っては「ゲーテの魔導書」などで容易に潰される上、成否はどうあれ【征竜】の色が実質1つ潰されることになるからです。

 加えて、返しのターンでの「ネクロの魔導書」がほぼ確定していることも苦しく、こうした単発の除去では根本的な解決には至りません。結局のところ、【征竜】側がここから逆転を狙うには「闇のデッキ破壊ウイルス」などのメタカードに望みを託すほかありません(※)が、現実問題こうした手段を毎ゲーム用意するのは不可能です。

(※これにより、1戦目から勝率を上げるために闇デッキのメイン投入が急増しました)

 また、【魔導】側も駄目押しとして「神の警告」と「神の宣告」を取り揃える構築、いわゆる「ゴッドジョウゲンシステム」の搭載によって勝ち筋をさらに潰してくるようになったため、その意味でも半端なカウンターは容易に刈り取られてしまいます。

 もちろん、【魔導】が抱える初動の脆さそのものが解消されたわけではない以上、【魔導】側が必ずしも「昇霊術師 ジョウゲン」の展開に成功するとは限らないのですが、相手の展開が失敗することに勝機を見出している時点で半分負けを認めているようなものです。

 事実上、「魔導書の神判」の3カウントが決まった瞬間にゲームの流れが【魔導】側に傾くという図式が成立してしまった格好であり、これ以降【征竜】は環境末期に至るまで「昇霊術師 ジョウゲン」の存在に苦しみ続けることになります。

 

ミラーでも最強 「霊滅術師 カイクウ」の流行

 一方、「霊滅術師 カイクウ」に関しては「昇霊術師 ジョウゲン」と比べてメタ効果は限定的で、おおよそのデッキに対しては中途半端な効果しか及ぼさないケースが大半です。

 しかし、【征竜】に対するメタカードとしては実に有用な1枚で、準アタッカークラスの打点も相まって非常に厄介な障害として機能します。「昇霊術師 ジョウゲン」と違い子征竜からの展開には対応できないこと、とりわけ「超再生能力」の前には無力を晒してしまうことなど欠点も少なくないカードですが、やはり当時の【征竜魔導】環境においてこれ以上の選択肢は他に存在しなかった(※)と言っても過言ではないでしょう。

(※実際、最終的にはミラー対策も兼ねてメインからの3積みが主流になっています)

 また、【魔導】の天敵である「ドロール&ロックバード」と友情コンボを決められる可能性があるのも見逃せないメリットです。

 具体的には、親征竜のサーチ効果を封印した状態でこれを除外してしまえるため、最大で2色の【征竜】を一気に潰すことができます。こうなってしまえば流石の【征竜】と言えども成す術はなく、半ば交通事故のような形で白星を拾える(※)ことも珍しくありません。

(※逆に【征竜】側はこの状況に陥らないよう常に警戒する必要がありました)

 とはいえ、やはり霊滅術師 カイクウ」の真価はむしろミラーマッチにおいて発揮されていたと考えるべきです。

 自分自身には何ら悪影響を及ぼさない一方、相手側の「ゲーテの魔導書」や「ネクロの魔導書」を一方的に封殺できるため、実質的に【魔導】の攻め手の大半をこれ1枚で削ぐことができます。ここに「昇霊術師 ジョウゲン」が加われば打点による解決すら困難となるため、最悪この「カイクウジョウゲン」の構えだけでゲームを落とす危険があるとも言われていたほどです。

 いずれにしても、【魔導】側がメタの精度を上げるにつれて【征竜】の立場が悪化の一途を辿っていったことは間違いなく、これに対して何らかの回答が必要になっているのは明らかなことでした。

 

最終兵器「月読命」の発見 【魔導】最大の天敵

 こうした環境の変遷の結果、【征竜】が目を付けたカードこそが「月読命」だったわけです。

 かつてパワーカードとして名を馳せたものの、時代の変化により陳腐化してしまったと考えられていたカードですが、【魔導】のメタ戦略に対するカウンターとしては抜群の威力を発揮します。召喚誘発という妨害困難な疑似除去であることに加え、スピリットモンスターゆえにノーリスクで繰り返し使えることが大きく、「ネクロの魔導書」による再利用を苦にしない強みがありました。

 また、たとえ「ゲーテの魔導書」を受けてもその後の展開は自由となるため、幻獣機ドラゴサック」などの脅威を置くことで容易に有利をキープできます。【魔導】視点では「幻獣機ドラゴサック」に対処しない限り盤面に蓋をできない以上、実質的には2枚目の「ゲーテの魔導書」を引きずり出されることになりますが、その上で「昇霊術師 ジョウゲン」を再展開しつつそれを守る手段を用意するのは簡単なことではありません。

 仮に可能であったとしても【魔導】の構造的にかなり無理のある動きを強要されるため、立て直しの猶予を与えないままゲームを進めるだけで勝手に自滅することがほとんどです。なおかつ、【征竜】側の差し出すチップがどこまで行っても「月読命」1枚に過ぎない以上、どう転んでも【魔導】側が一方的に損をすることは避けられません。

 もちろん、「月読命」だけでなく「闇のデッキ破壊ウイルス」などにも対処しなければならないため、「月読命」の処理に手間取りすぎるのもそれはそれで危険です。事実上、「月読命」の存在が相乗効果的に他のメタカードの脅威を引き上げている格好であり、これまで【魔導】の拠り所であった「時間を稼げば勝てる」という理屈が通じなくなった瞬間でもあります。

 要するに対【魔導】における「月読命」は「とりあえず召喚するだけで有利になれるカード」だったということであり、このマッチアップにおいては使わない理由がないほどのキラーカードになり得ます。流石にミラーマッチを考慮するとメイン投入はリスキーですが、少なくともサイドには絶対に取るべき枠と言われていました。

 実際、最終的に【魔導】が【征竜】に勝ちきれなかったのも恐らくはこのカードの存在が理由であり、直前の2013年3月改訂で「月読命」が規制緩和されていたことは実に見事な伏線回収であったと言うほかないでしょう。

 

「群雄割拠」(大嘘) 実質友情コンボ

 単刀直入に言って、「月読命」は【魔導】にとって非常に苦しい仮想敵でした。

 【魔導】が無理なく用意できるという条件下において、昇霊術師 ジョウゲン」の防御と「月読命」への対処を両立できるカードはごく少数に限られます。最も現実的かつ有効な対策は「神の警告」「神の宣告」の2枚ですが、これらはいずれも制限カードであり、確率の兼ね合いから十分な信頼を置くことはできません。

 一応、「エフェクト・ヴェーラー」であればバウンスも同時に止められる(※)こともあり、比較的後腐れなく「月読命」を処理できる可能性があったのは確かです。しかし、そもそも対【征竜】における「エフェクト・ヴェーラー」の用途は限定的で、月読命」のためだけにこれを残すのは中々に綱渡りな選択でもあります。

(※詳しくは下記の記事で触れていますが、この時期のルールでもバウンス効果発動時まで無効化効果を持続できる扱いでした)

 こうした背景を踏まえて「群雄割拠」に目を向ければ、これが上記の問題をおおむね解決可能なカードであることが見えてきます。

お互いのプレイヤーはそれぞれ種族が1種類になるように、フィールド上の自分モンスターを墓地へ送る。
このカードがフィールド上で存在する限り、お互いに自分のフィールド上に出せるモンスターの種族はそれぞれ1種類だけになる。

 見た目の上では「昇霊術師 ジョウゲン」の防御も「月読命」への対処も行えていないように見えますが、場に残った「月読命」がそのまま「群雄割拠」とのロックを形成するため、実質的に友情コンボのような状況に持ち込むことができます。

 実際、召喚権を消費した上での種族縛りは【征竜】視点では絶望的で、ほとんどターンスキップに等しい威力を発揮するコンボです。もちろん、それ以降のターンも「月読命」の召喚は事実上不可能となるため、群雄割拠」に対処できない限り一向に身動きが取れません。

 また、「群雄割拠」は単体でも【征竜】の動きを少なからず阻害できるため、シンプルにそれ自体がサイドカードとして機能するメリットもあります。【征竜】そのものの展開を縛れない以上は遠からず「焔征竜-ブラスター」に繋がってしまうのも事実ですが、その間に「魔導書の神判」が回り始める時間を稼げると考えれば十分な働きです。

 

シンプルイズベスト「サイクロン」 基本に帰れ(BtB)

 これに対し、【征竜】が持ち出したのは「サイクロン」でした。

フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。

 これ以上ないほどに単純明快な回答ですが、単純ゆえに欠点らしい欠点がなく、腐るということがまずありません。「群雄割拠」の突破はもちろん、「昇霊術師 ジョウゲン」のバックを剥がす前方確認要員、またキルに向かう際の露払い役などをこれ1枚でこなせるため、「月読命」とともにサイドから投入することで【魔導】のプランを真正面からぶち抜けます。

 さらに、「ソウルドレイン」や「王宮の鉄壁」などの永続メタを同時に意識できるのも利点で、【魔導】だけでなく【ヴェルズ】を筆頭とする各種メタデッキ対策としても流用可能です。これは【征竜魔導】環境における評価点としてはささやかな期待値ですが、ゼロではない以上は多少なりとも勝率の向上に貢献してくれます。

 その他、これに関連して「妖精の風」や「氷帝メビウス」、あるいは「王宮のお触れ」といったカードが試され続けていましたが、やはり「サイクロン」を超えるカードの発見には至っていません。将来的には「ツイスター」や「トルネード」などの4枚目以降の「サイクロン」にも声がかかるようになったほどであり、まさにシンプルイズベストと言える簡潔なカードチョイスだったのではないでしょうか。

 

徐々に強まる【征竜】の支配 6:4の相性?

 【征竜】が選択したサイク系のプランは非常に「太い」回答で、この流行に伴って永続メタに頼った封殺は徐々に信頼性を落としていきました。

 もちろん、封殺そのものが【征竜】に有効な戦法であることは間違いない、というより封殺以外に対策らしい対策がそもそも存在しなかったわけですが、それはそれとしてプラン自体に少なからず穴があったことも否定はできません。これに関しては永続メタの更なる増量、つまりはシンプルに物量による解決を目指すしかありませんが、「妖精の風」や「大嵐」の存在がその障害として立ち塞がります。

 つまり、もはや直接的な対処だけでは【征竜】に追い縋れなくなりつつあったということで、これ以降は間接的な方法による【征竜】対策が浸透していくことになりました。具体的には、「増殖するG」のメイン投入や「霊滅術師 カイクウ」の増量などといった軸をずらした対策が講じられていましたが、やはり直接の回答でない以上は十分な成果を残せていたとまでは言えません。

 結局、【魔導】は【征竜】の単刀直入すぎる返球を上手く打ち返すことができず、環境前期に限って言えば6:4の相性で決着してしまった印象はあります。

 もっとも、前期と区別している通り環境後期に関してはまた別で、カードプールの変化もあって逆に【魔導】側が盛り返してくることになります。かなり話が長くなるため、これについては別の記事にまとめる予定です。

 

【征竜】ミラー意識の浸透 「エレクトリック・ワーム」ほか

 ともあれ、一時的とはいえ【征竜】と【魔導】の格付けが決まった以上、残るのは自分自身という天敵です。

 つまり、これ以降は【征竜】に勝てる【征竜】を組むことがメタゲームで重要な意味を持つようになったということであり、次第にミラーマッチ対策をしっかり固めた【征竜】が数を増やしていくことになりました。もちろん、あくまでも【魔導】対策が前提となる以上はミラーに割ける意識は限定的ですが、それだけに少ないスロットでの解決を図る必要があり、より質の高いサイドカードが求められていたという背景があります。

 と言っても、これに関しては時期により何度も答えが入れ替わっている話でもあったのですが、この時期においては「エレクトリック・ワーム」や「時械神メタイオン」といったカードに注目が集まっていました。

このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。相手フィールド上のドラゴン族・機械族モンスター1体を選択し、エンドフェイズ時までコントロールを得る。

このカードはデッキから特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードはリリースなしで召喚する事ができる。
このカードは戦闘及びカードの効果では破壊されない。
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカード以外のフィールド上に存在するモンスターを全て持ち主の手札に戻し、戻した数×300ポイントダメージを相手ライフに与える。
自分のスタンバイフェイズ時、このカードはデッキに戻る。

 方向性は異なれど、2枚とも「幻獣機ドラゴサック」を強く意識したメタカードであり、【征竜】ミラーにおける「幻獣機ドラゴサック」の攻略がいかに大きな意味を持っていたかが窺えます。これは【征竜】ミラーにおいて「No.11 ビッグ・アイ」を盤面に残すリスクが大きすぎたこと(※)が主な理由で、結果的に幻獣機ドラゴサック」を起点に展開せざるを得ないゲームバランスが成立していたからです。

(※「No.11 ビッグ・アイ」を「No.11 ビッグ・アイ」で奪われた挙句、その奪われた「No.11 ビッグ・アイ」で更なるコントロール奪取を受けるという最悪の裏目が存在します)

 また、「エレクトリック・ワーム」によるコントロール奪取は【征竜】そのものにも通じるため、状況次第ではそのままエクシーズ素材にしてしまうことで疑似的な色消しカードとして機能する強みもありました。相手の【征竜】を2色以下にできるケースがその代表例であり、上手く嵌れば想像以上の拘束力を発揮します。

 ちなみに、「エレクトリック・ワーム」「時械神メタイオン」の2枚はいずれも「ヴェルズ・オピオン」に対するメタとしても機能するため、ミラー対策のついでに【ヴェルズ】を意識できるメリットも存在していました。例によって【征竜魔導】環境においては大きな武器にはなり得ません(※)が、それでもオマケの一言で済ませるのは少々勿体ない特典です。

(※ややオーバーキル気味ですが、コントロールを奪ったオピオンのサーチ先として「侵略の侵喰崩壊」がピン挿しされるケースもありました)

 

「クリムゾン・ブレーダー」が特殊勝利カードだった時代

 その他、【征竜】ミラーにおいて欠かせない要素となっていたのが「クリムゾン・ブレーダー」の存在です。

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、次の相手ターン、相手はレベル5以上のモンスターを召喚・特殊召喚する事ができない。

 戦闘破壊かつ墓地送りという条件により、次の相手ターン中の上級以上の展開を封殺できる効果を持っています。1ターン限りとはいえ「ヴェルズ・オピオン」と同等の制圧が行えるのは【征竜】メタとしては魅力的ですが、問題は「クリムゾン・ブレーダー」を最も上手く使いこなせるのが当の【征竜】であったことでしょう。

 つまり、【征竜】メタとして【征竜】を使うという理屈が部分的とはいえ成立してしまっていたということであり、当然これは酷い話としか言いようがありませんが、それはそれとしてこの考え方は上記の【征竜】ミラー意識の強化と綺麗に合致する理念です。少ないスロットどころかメインデッキの段階から自然とミラーを意識できるほか、「ガード・オブ・フレムベル」などのチューナー採用にも明確な意味を持たせることができます。

 実際、【征竜】ミラーではこれを先に通した方が勝つとまで言われていたほどで、このマッチアップにおいては事実上の特殊勝利カードのように機能していたと言っても過言ではありません。将来的には「クリムゾン・ブレーダー」の補助として「エネミーコントローラー」が使われるようになったことからもそれは明らかであり、このカードの存在が【征竜】界隈を大きく左右していたことは間違いないでしょう。

 ちなみに、この「クリムゾン・ブレーダー」に絡んだプレイングの定石もいくつか生まれており、代表的なところでは「戦闘破壊の的を残さないために「焔征竜-ブラスター」もしくは「巌征竜-レドックス」から入るべき」といったものが存在します。流石にこれを常に順守するのは現実的ではありませんが、特に裏目がない状況(※)であれば絶対に守るべき定石です。

(※ただし、クリブレケアよりもブラスター効果を残す方が強い場面などもあるため、一概に有効と言い切れる定石ではありません)

 

「速攻のかかし」準必須カードへ クリブレ対策の筆頭

 こうしたクリブレ環境の到来の結果、この対策として流行したのが「速攻のかかし」です。

相手モンスターの直接攻撃宣言時、このカードを手札から捨てて発動する。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。

 カタログスペックそのものは単純なワンキル対策カードに過ぎませんが、上記の「クリムゾン・ブレーダー」の封殺を実質やり過ごせる点が何よりも優れており、その一点だけでも採用を検討する価値があります。地属性ゆえに「巌征竜-レドックス」のコストになれることも地味ながら侮れないメリットで、終盤の詰め将棋ゲームにおいてはこの差が勝負を分けることも少なくありません。

 もちろん、「クリムゾン・ブレーダー」が絡まない展開であっても「速攻のかかし」は中々の抑止力を発揮します。見た目の上では勝っていても攻撃を防がれる可能性があるため、例えば「増殖するG」の影響下で無理矢理キルに向かうのは相当重い代償を支払わされるリスク(※)が存在するわけです。

(※特に2戦目以降はそもそも「速攻のかかし」を持たれている前提で動いた方がいいと言われていました)

 ちなみに、こうした各種ケアが複雑に絡み合った結果、【征竜】ミラーのスキルを身に着けると一周回って初心者に見えてしまうという弊害も生まれています。

 例として、「幻獣機ドラゴサック」のトークン生成に相手が「エフェクト・ヴェーラー」を当ててきたケースのことを考えます。

 これは一見すると「エフェクト・ヴェーラー」を無駄使いしている相手のミスに見えますが、実際には「クリムゾン・ブレーダー」の的を作り出そうとしている可能性が高く、このままターンを返すのは非常に危険です。よって他に応手がない場合は【征竜】の色を潰してでも2体目の「幻獣機ドラゴサック」に向かわなければならないのですが、これは【征竜】の定石においては悪手とされるプレイングに該当します。

 これにより、端から見ると「ヴェーラーの使用タイミングを理解していないプレイヤー」と「【征竜】の回し方を理解していないプレイヤー」の対戦に見えてしまう、というわけです。

 

【まとめ】

 【征竜魔導】環境の前半期についての話は以上です。

 文字通り【征竜】と【魔導】という2大勢力の台頭によって環境が真っ二つに割れてしまった時代であり、去年までの戦いは何だったのかと言いたくなるレベルのインフレ環境に突入しています。相対的なデッキパワー格差は往年の【カオス】時代並ですが、それが同時に2つ存在するというのは狂気の沙汰以外の何物でもありません。

 しかし、そうした末期環境であってもそれを前提としたメタゲームが組み上がっていたことは間違いなく、暗黒期なりの独特な面白さがあった時代でもありました。後期に入るとカードプールの変化もあって前半期とはまた別の展開も起こっており、実際のところ「訓練された決闘者」には特に問題のない環境が成立していたのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。