【青眼】ストラクの悲劇 【征竜魔導】の養分に

2019年11月14日

【前書き】

 【第8期の歴史18 【征竜魔導】環境の幕開け 2013年の暗黒期】の続きになります。ご注意ください。

 2013年3月をもって遂に始まりを告げた【征竜魔導】環境により、遊戯王OCGは幾度目かの暗黒期へと突入することになりました。単に暗黒期という意味では既に何度も通り過ぎた道ですが、これが第8期という近代において発生してしまったことは率直に言って致命的です。

 2強かつ暗黒期という特殊な環境の到来によってメタゲームが異色の挙動を覗かせる中、その折り返しとなる5~6月中に環境に更なる影響を及ぼすカードプール更新が入ることになります。

 

「青き眼の乙女」誕生 【青眼】大幅強化?

 2013年6月15日、ストラクチャーデッキ「-青眼龍轟臨-」が販売されました。新たに6種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは5925種類に増加しています。

 近代ストラクの例に漏れず、新規、再録ともに有名どころを輩出した優良タイトルです。メインテーマとなる【青眼】の関連サポートはもちろん、「竜の霊廟」などの【ドラゴン族】全体を支える強力な新規カードも収録されています。

 中でも青き眼の乙女」の誕生は非常に驚異的な出来事であったと言うほかありません。

このカードが攻撃対象に選択された時に発動できる。その攻撃を無効にし、このカードの表示形式を変更する。その後、自分の手札・デッキ・墓地から「青眼の白龍」1体を選んで特殊召喚できる。
また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードがカードの効果の対象になった時に発動できる。自分の手札・デッキ・墓地から「青眼の白龍」1体を選んで特殊召喚する。
青き眼の乙女」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 一見して見て取れる通り「青眼の白龍」の専用サポートカードであり、数ある【青眼】サポートの中でも特に知名度の高いカードです。これ自体は攻守0という最下級のステータスですが、自身が攻撃・効果の対象となった時に「青眼の白龍」をリクルートする強力な効果を持っています。

 実際のところ、受動的とはいえ下級モンスターから最上級打点が飛び出てくるというのは2013年当時においても破格の性能で、情報判明当初から期待のルーキーとして注目を集めていました。流石に【征竜魔導】環境に一石を投じる存在になるとは考えられていませんでしたが、少なくとも実戦級の新テーマとして大いに盛り上がっていたことは間違いありません。

 問題があったとすれば、それは青き眼の乙女」が魔法使い族という種族に属してしまっていたという事実でしょう。

 

【青眼魔導】の成立 【青眼】とは何だったのか

 2013年当時の環境において、「青き眼の乙女」、ひいては「青眼の白龍」を最も有効に使いこなしていたのは【青眼】ではなく【魔導】でした。

 「魔導書の神判」の新たなリクルート候補としての起用であり、その防御的な外見に反し、多くの面で【魔導】のパワー向上に貢献したカードです。上述したように【青眼】自体も優秀なギミックではありますが、それ以上に【魔導】の弱点であった初動の脆さをある程度克服できたことが大きく、【青眼】ギミックの存在が【魔導】の強さを一段階引き上げたことは間違いありません。

 具体的には、これまでの【魔導】は「昇霊術師 ジョウゲン」を筆頭にレベル3以上の層が厚い一方、それ未満の魔法使い族が極めて貧弱であるという問題を抱えていました。よって魔導書の神判」が3カウントに届かない場合は展開が急激に弱くなってしまう弊害があり、このことが【魔導】の敗因の多くを占めていたことは疑いようもありません。

 ところが、「青き眼の乙女」であればこうした隙を非常にスマートに埋めることができます。流石に自分ターン中の1カウントから呼び出すのでは弱すぎますが、2カウントからの立て直しを図る際には十分な中継ぎ要員となるため、初動面の改善という意味ではこれ以上の逸材はなかったと言っても過言ではないでしょう。

 もちろん、「昇霊術師 ジョウゲン」を置けていない以上は赤点の展開であることに変わりはないのですが、少なくとも事故に近い形でゲームを落とすことがなくなったというだけでも非常に大きな進歩です。単純にワンキルから身を守りやすくなったことに加え、チューナーであることも相まって返しの反撃の起点となりやすく、多くのシチュエーションにおいて標準以上の働きをこなすことができました。

 また、従来の【魔導】は高打点を超える手段に乏しく、現実的にはこの解決を「ヒュグロの魔導書」に一任する状況が続いていたため、それを解消するという意味でも画期的なギミックです。ゲームの成熟が進んだ第8期においても3000打点の信頼性は不変であり、大型同士のぶつかり合いでは「青眼の白龍」は非常にストレートな解決策となり得ます。

 

【魔導】ミラーの変遷 相手ターン神判が主流プランに

 しかしながら、当時の【魔導】が「青き眼の乙女」を得たことによる最大のメリットは、やはり相手ターンに「魔導書の神判」を構えるプレイに明確な意味を持たせられるようになったことにあったのではないでしょうか。

 正確には、「青き眼の乙女」の獲得以前にも「相手ターン神判」の有用性は既に見出されていたのですが、相手の動きだけでなく自分の動きも弱くなってしまうリスクがあり、ゲームプランとしてはやや不安定であると言われていました。実際、無理に「魔導書の神判」を構えるよりも「魔導教士 システィ」によってアドバンテージ・ゲームに持っていく方が強いケースも少なくなく、あくまでも選択肢の1つに過ぎなかったことは確かです。

 しかし、ここに「青き眼の乙女」を含めて考えた場合、上記の前提は根本から覆ります。

 例えば、下記のような初手を握っているケースのことを考えます。

グリモの魔導書
ゲーテの魔導書
霊滅術師 カイクウ
魔導書士 バテル
ヒュグロの魔導書
エフェクト・ヴェーラー

 一見すると「魔導書士 バテル」から「魔導書の神判」を回すことが最適解に見えるハンドですが、【魔導】ミラーにおいては下記のように動くことによってそれ以上に有利な盤面を築けます。

 

①:「霊滅術師 カイクウ」を召喚する。

 

②:「グリモの魔導書」で「セフェルの魔導書」をサーチし、「セフェルの魔導書」で「魔導書の神判」をサーチする。

 

③:「魔導書の神判」と「ゲーテの魔導書」をセットし、相手スタンバイに「魔導書の神判」を発動する。

 

 このプランの最も優れているところはゲーテの魔導書」によって自分は1カウントが保証されていることであり、相手がどう動くにせよ「青き眼の乙女」を置くことができる強みがあります。相手視点では身動きを取らずにターンを返すか、大量にアドバンテージを取られる覚悟で無理矢理動くかの2択を迫られるわけですが、ここに「青き眼の乙女」が追加でカウントされるというのは率直に言って絶望的です。

 具体的には、前者を選べば「青き眼の乙女」からワンキルを仕掛けられ、後者を選べば潤沢な手札で圧殺されるという苦渋の選択を強いられることになります。どちらに転んでも非常に苦しい展開であり、手札によっては何もできずにゲームを落とす(※)ことすら少なくありません。

(※「霊滅術師 カイクウ」を握れていない場合は大抵この状況に陥ります)

 一方、自分は相手ターン神判に徹しているだけで容易にマウントを維持することができ、準備が整い次第「青き眼の乙女」からキルに向かうことが可能です。ジャンケンの結果がミラーマッチにおいてここまで致命的な有利不利を生み出すというのも中々珍しい話であり、いわゆる「ジャンケンゲー」の誹りを受けても否定はできません。

 いずれにしても、「青き眼の乙女」の参入によって「相手ターン神判」が従来とは比較にならないほど強い動きに変わったことは間違いなく、これ以降は一気に【魔導】ミラーの主流プランとして定着していくことになりました。

 

【征竜】にライボルが採用されていた理由

 当然のことながら、【青眼魔導】の成立は【征竜】にとっても無視できない出来事でした。

 実際のところ、「青き眼の乙女」そのものは大きな脅威となるカードではありませんが、その横に「昇霊術師 ジョウゲン」「霊滅術師 カイクウ」などが並んでいると途端に危険度が増す性質があります。これはある意味非常に厄介な状況で、「直接のメタカードを用意するほどではないがノーマークも危険」という中途半端に面倒な仮想敵だったのです。

 よって「青き眼の乙女」が絡んだ盤面に対処でき、なおかつそれ以外のシチュエーションにおいても一定の仕事をこなせる汎用的な対策カードが必要になっていたという経緯があり、【征竜】はこの「緩すぎて逆に狭い条件」にしばらく頭を悩ませることになります。

 当初は「地割れ」などの急ごしらえの対策カードが試されていましたが、最終的に浸透した結論は「ライトニング・ボルテックス」でした。

 単純なカードパワーという意味では少々場違い感の漂うカードチョイスであり、一見するとあまり良い選択肢には見えませんが、実際には良い意味で実に丸いカードです。見た目から受ける印象通り、これ1枚で盤面を完全に解決できることはそれほど多くはありませんが、逆に崩しの一手としては非常に上手く機能します。

 本来はネックとなる手札コストも【征竜】ではほぼ問題にならないため、上記で取り上げた「緩すぎて逆に狭い条件」をおおむね満たしていることが分かります。総じて環境的な背景とカード自体のシナジー(※)に着目したスマートな選択であり、これを早期に発見できたことは【征竜】にとって大きな朗報だったのではないでしょうか。

(※しばしば誤解されがちですが、ただ相性が良いという理由で採用されていたわけではありません)

 ちなみに、当時の「ライトニング・ボルテックス」は【青眼魔導】だけではなく【征竜】ミラーにおいても少なからず活躍していました。具体的には、【征竜】が稀に持ち出してくる「オベリスクの巨神兵」の回答にもなるという地味ながら侮れない強みを持っており、とにかく環境的な追い風を受けていたカードだったと言えるでしょう。

 

「パペット・プラント」の更なる流行 サイドの必需品に

 その他、【青眼魔導】の成立に関連して起こった出来事としては「パペット・プラント」の更なる流行が挙げられます。

このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。相手フィールド上の戦士族・魔法使い族モンスター1体を選択し、エンドフェイズ時までコントロールを得る。

 元々【魔導】対策として既に注目を集めていたカードですが、青き眼の乙女」の影響で【魔導】ミラーにおける「霊滅術師 カイクウ」の重要度が一気に跳ね上がったため、結果的に【征竜】もその煽りを受けたという経緯です。「月読命」では対処し切れない横並びの盤面を崩せることが最大の強みで、特に「霊滅術師 カイクウ」を対象に取ればどう転んでも「ゲーテの魔導書」を無力化することができます。

 また、昇霊術師 ジョウゲン」に対してもコントロール奪取からの自爆が狙えるため、見た目に反してかなり広い範囲に対応していたメタカードです。手札で発動するモンスター効果という妨害困難な除去(※)であることもあり、瞬間的な対応力に限れば「月読命」以上の盤面解決能力を備えていました。

(※当時の【魔導】で「メンタルドレイン」が使われるようになったのもこれが理由の1つです)

 

【征竜】の「DNA改造手術」はなぜ戦士族指定が主流だったのか?

 ちなみに、当時【魔導】メタとして【征竜】で使われていた「DNA改造手術」で戦士族指定が主流だったのも「パペット・プラント」の存在が理由です。

種族を1つ宣言して発動する。このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターは宣言した種族になる。

 仮に「パペット・プラント」を採用していない場合でもとりあえず戦士族を指定しておくだけでケアを意識させられるため、特に裏目がない状況ではほぼ決め打ちしていい(※)と言われていました。

(※別のケースとしては、「群雄割拠」が絡んだ際の機械族指定などがあります)

 いずれにしても、【青眼魔導】成立以降の環境で「パペット・プラント」の存在感が一気に高まったことは間違いなく、このカードもまた【征竜魔導】後期環境を代表するメタカードの1枚であったと言えるでしょう。

 

【まとめ】

 【青眼魔導】、もとい【青眼】ストラクについての話は以上です。

 アニメでも主役級のテーマということもあって鳴り物入りで参入したストラクでしたが、蓋を開けてみれば完全に【魔導】にコンセプトを食われてしまい、余計な風評被害だけを被るという散々な目に遭っています。将来的には【征竜】の養分となってしまうこともあり、何かとネタにされがちな扱いを受けていたことは否めません。

 しかし、第9期には新たなサポートカードを武器に世界大会を制覇するなどの華々しい実績も残しており、開発側から愛されていたことは間違いないテーマです。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。