「魔導書の神判」降臨 頭のおかしいぶっ壊れカード

2019年11月11日

【前書き】

 【第8期の歴史15 【征竜】全盛期 子征竜時代の無法地帯】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

魔導書の神判 「遊戯王版ストーム」の狂気

 レギュラーパック「LORD OF THE TACHYON GALAXY」が産み落とした最悪の怪物、それは「魔導書の神判」と呼ばれるカードでした。

このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、このカードの発動後に自分または相手が発動した魔法カードの枚数分まで、自分のデッキから「魔導書の神判」以外の「魔導書」と名のついた魔法カードを手札に加える。その後、この効果で手札に加えたカードの数以下のレベルを持つ魔法使い族モンスター1体をデッキから特殊召喚できる。
魔導書の神判」は1ターンに1枚しか発動できない。

 言わずと知れた【魔導書】最凶のサポートカードであり、【征竜】と並んで第8期出身カードの中では飛び抜けて凶悪なカードです。やや煩雑なテキストゆえに初見では恐ろしさの全貌を把握しにくいですが、パッと目を通すだけでも書いてあることが何もかもおかしく、遊戯王OCGにおける壊れカードと言えばまず間違いなく名前が挙がると断言していいカードなのではないでしょうか。

 その凶悪さは具体的に解説するのも億劫になるほどで、一言で言えば「なんで印刷されちゃったんだか全然分からないカード」です。これ自体のカードパワーは言うに及ばず、効果の性質が【魔導書】カテゴリとあまりにも噛み合いすぎていること、あるいはそもそも遊戯王OCGのゲームシステム的に許されてはいけないタイプの効果であることなど、もはや調整ミスという言葉では片付けられないほど常軌を逸した壊れカードであったと言わざるを得ません。

 「魔導書の神判」を最悪の壊れカード足らしめているのは、何と言っても前半の疑似ストーム効果です。

 別TCGの用語を持ち出してしまい恐縮ですが、「ストーム」というのは大雑把に言えば「カードの発動枚数に応じて効果が累積されていくシステム(※)」のことであり、「魔導書の神判」の大量サーチ効果はまさにこのメカニズムを元にしていると言えます。

(※元ネタでは「発動後」ではなく「発動前」の回数を参照するという違いはあります)

 しかし、これはカードの発動にマナ・コストなどの行動回数制限がかかること、つまり1ターン中に発動できるカードの枚数に限りがあることを前提にデザインされたメカニズムであり、この概念が存在しない遊戯王OCGのゲームシステムには明らかに不適切な仕組みです。言ってしまえば遊戯王の魔法カードはその全てが「0マナのインスタント・ソーサリー」のようなものであるため、「ストーム」というメカニズムがもたらす危険性は本家の比ではありません。

 加えて、元々【魔導書】自体がサーチに長けたカテゴリであることも問題を深刻化させています。

 具体的には、「グリモの魔導書」などによって手札を減らさないまま魔法カードの発動カウントを稼げるため、文字通りカードを使えば使うほど手札が増えるという意味不明の状況を成立させることができます。「グリモの魔導書」から「セフェルの魔導書」をサーチし、そこから「ヒュグロの魔導書」や「アルマの魔導書」に繋げば3~5枚の大量サーチが約束される始末であり、この時点で中々に気が狂った話です。

 また、同様の理由により「魔導書の神判」そのもののサーチも極めて容易であるため、非常に安定して上記のコンボを決めることもできます。コンボの成功率とその見返りが逆の意味で釣り合っておらず、例によって「作る時に何かおかしいと思わなかったのか」と言わざるを得ない惨状です。

 

「システィ+ジュノン」パッケージの理不尽シナジー

 ところが、恐ろしいことに「魔導書の神判」の凶悪さはそれのみのカードパワーにはとどまりません。

 当時の「魔導書の神判」の悪名を決定付けたのは、魔導教士 システィ」「魔導法士 ジュノン」らとの理不尽なまでのシナジーです。

 上述の通り、「魔導書の神判」は疑似ストーム効果のインパクトが目につきやすいカードですが、後半のリクルート効果もそれに負けず劣らずの狂気を孕んでいます。効果の性質上、上級以上のモンスターを呼び出すのは簡単なことではないとはいえ、実質的な縛りが種族のみというのは明らかに何かが狂っており、【魔法使い族】に限って言えば「遺言状」並に緩すぎるリクルート条件です。

 一応、エンドフェイズという悪用が難しいタイミングでのリクルートであるという点で調整が図られていると言えなくもないですが、ここで絡んでくるのが「魔導教士 システィ」の存在です。

自分が「魔導書」と名のついた魔法カードを発動した自分のターンのエンドフェイズ時、フィールド上のこのカードをゲームから除外して発動できる。デッキから光属性または闇属性の魔法使い族・レベル5以上のモンスター1体と、「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える。
魔導教士 システィ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 上記テキストの通り、「魔導教士 システィ」はエンドフェイズに発動するサーチ効果を持っており、これが「魔導書の神判」のリクルート効果と抜群に噛み合うことは言うまでもありません。本来はデメリットであったはずのタイムラグがむしろメリットに転じているほか、「魔導法士 ジュノン」の特殊召喚条件を自然と満たせること、あまつさえ2枚目の「魔導書の神判」をサーチできてしまうことなど、いっそ意図的にデザインしたのではないか(※)と思えるほどに完成しているコンボです。

(※特に何も考えずにこうなった場合、それはそれで逆に凄いとも言えますが……)

 実際、このコンボが決まれば手札枚数制限を超過する大量のカードが手に入るため、もはやアドバンテージ・ゲームで押し負ける心配はほぼなくなります。むしろデッキリソースを節約するためにあえてサーチ枚数を抑えることすら視野に入るほどであり、このギミックの存在が「魔導書の神判」の凶悪さに拍車をかけていた(※)ことは疑いようもありません。

(※とはいえ、最終的にはこの凶悪ギミックですら使われなくなるほどに環境が煮詰まってしまうことになります)

 結論としては、「魔導書の神判」はあらゆる角度から見て異常なパワーを秘めた最悪の怪物であり、文字通り従来の遊戯王OCGの常識を完膚なきまでに叩き潰したカードです。同期である【征竜】と違い、見るからに壊れていると分かるテキストであることもあり、本当になぜこのようなカードがデザインされてしまったのか皆目見当もつきません。

 単体のスペックに限れば間違いなく【征竜】をも上回る壊れカードであり、現存する禁止カードの中でも指折りの極悪囚人です。

 

【神判魔導】の成立 被害者筆頭は【魔導書】?

 当然のことながら、「魔導書の神判」の存在は当時の【魔導書】に対して極めて深刻な作用をもたらしました。

 詳しくは上記リンク記事にある通りですが、これまで【魔導書】は純正のコントロールデッキとして身を立てており、古くは【ヒュグロビート】時代から地道に研究が続いていました。当初はサポート不足からやや勢いが振るわなかったものの、2012年7月頃からは少しずつトーナメントシーンにも姿を見せるようになり、年末には遂に環境上位へと浮上を果たしたという経緯があります。

 しかし、そうした熱心な試行錯誤も「魔導書の神判」の前には全くの徒労であったと結論付けざるを得ません。

 実際のところ、「魔導書の神判」の誕生によって最も迷惑を被ったのは恐らく当の【魔導書】使用者でしょう。従来のコントロールデッキとしてのコンセプトは鳴りを潜め、とにかく「魔導書の神判」を機能させることに全てを費やすデッキに成り果ててしまったため、【魔導書】本来の特色や魅力は完全に滅茶苦茶になってしまったと言うほかありません。

 例えるならば、RPGを中盤辺りまで進めたところに突然チートコードをぶち込まれたかのような感覚(※)であり、流石にこれでモチベーションを維持しろというのは土台無理な話です。百歩譲って【神判】の存在は許容するとしても、せめて【魔導書】とは関係ないところでやって欲しかったというのが多くの【魔導書】愛好家の率直な意見だったのではないでしょうか。

(※個人的な話にはなりますが、当時はこうした背景もあって【征竜】に乗り換えた過去があります)

 結局、これ以降【魔導書】は事実上【神判魔導】とでも呼ぶべきデッキに変貌を遂げ、【征竜】とともに2013年上半期環境を荒廃させていくことになります。前回の「DDB合戦」環境から実に2世代ぶりの暗黒期の到来であり、かの悪名高き【征竜魔導】環境が世に訪れた瞬間です。

 

【神判魔導】全盛期到来 一瞬で環境トップに

 とはいえ、【神判魔導】の成立からすぐに【征竜魔導】環境が組み上がったというわけではありません。厳密にはその直前に【神判魔導】を中心とする環境変遷が起こっているのですが、これについて詳しく言及しているところがあまり見当たらないため、ここではその時期に焦点を当てて(※)解説していきます。

(※【征竜魔導】環境の解説は後の記事に回す予定です)

 上述の通り、【神判魔導】は2013年当時の常識を超えた凶悪な力を秘めていたデッキです。当然、その狂気的なデッキパワーによって周囲のライバルをことごとく蹴散らし、間もなく環境トップに君臨することになります。

 ほぼ毎ターン撃ち込まれる「ゲーテの魔導書」を筆頭に、「魔導教士 システィ」から間断なく供給される「魔導法士 ジュノン」の暴力、さらには「お注射天使リリー」などの軸をずらした攻め手の全てに耐え切れるデッキは存在しません。一旦回り始めれば【征竜】ですら容易に飲み込まれる怒涛の侵略はもはや狂気の沙汰であり、理論上のカタログスペックに関しては間違いなく環境最強のポテンシャルを備えていました。

 とはいえ、理論上という言葉を用いている通り、実際にはいくつかの無視できない弱点を抱えていたことも事実です。

 最大の弱点は何と言っても手札事故のリスクであり、これこそが【神判魔導】がついぞ解決し切れなかった最も致命的なボトルネックであったと言えます。【神判魔導】はその性質上、「魔導書の神判」とそれ以外の魔法カードが揃わなければギミックが回り始めないため、同格である【征竜】とは異なり「動けない時は本当に全く動けない」デッキだったのです。

 実際、当時の世界大会でもこれが【神判魔導】の間接的な敗因となっており、こうした事故のリスクが【神判魔導】にとって如何に大きな問題であったのかが窺えます。

 とはいえ、これに関してはどんなデッキにも言えることであり、そもそも事故をほぼ起こさない【征竜】の方がおかしかっただけの話です。というより、どちらかと言うと【神判魔導】も2013年当時としては事故率が低い(※)部類のデッキだったため、他のデッキから見ればまともに太刀打ちできないほどの格差が生じていたことは否めません。

(※この頃は現在と違い、手札事故はむしろ起きて当然というゲームバランスでした)

 

ワンキル系デッキが意外に苦手だった時代

 もっとも、これは言い換えれば「まともに立ち向かわなければ少なからず勝機はあった」ということでもあります。

 確かに「魔導書の神判」のアドバンテージ生成能力は極めて脅威的であり、これが回り始めれば真っ当なアドバンテージ・ゲームはもはや成立しなくなります。しかし、大量のカードが入ってくるのがあくまでもエンドフェイズである以上、実際に攻め込めるのは次のターンからであるということも事実です。

 加えて、この頃はまだ「魔導書庫クレッセン」などの初動を安定させるカードが揃い切っていなかったこともあり、ストームカウントが3回に届かないケースも珍しくなかったという事情があります。その場合は最短でも丸々2ターン、状況によってはそれ以上の準備期間を要することになるなど、当時のゲームスピードにおいてもかなり悠長な隙を晒してしまうことは避けられません。

 おまけに、初期の【神判魔導】はデッキスロットの関係で妨害札をあまり多く取っておらず、防御面に関しても少なくない不安を抱えていました。もちろん、「ゲーテの魔導書」などを構えられればその限りではありませんが、現実的には「エフェクト・ヴェーラー」などを手札に握るのが精一杯です。

 つまるところ、当時の【神判魔導】は回り始めれば最強である反面、ゲーム最序盤に限れば比較的脆いデッキでもあったのです。

 よってゲーム最序盤からテンポよく動いてくるデッキ、とりわけ【3軸炎星】のような安定性と速度を兼ね備えたデッキとのマッチアップはやや苦手(※)としており、勝率は五分以上ではあるものの常に一定数の黒星を付けられていました。

(※実際、【炎星】メタである「オーバースペック」がほぼサイドに2~3枠取られる程度には警戒されていました)

 同様の理由により、【海皇水精鱗】や【ドラグニティ】などのワンキルギミックを内蔵したデッキとの対戦にも少なからず苦手意識を持っていたことは否めません。ドローゴー状態でターンを渡した直後にワンキルを仕掛けられ、真価を発揮する前に押し切られてしまうというのは当時の【神判魔導】の典型的な負けパターンの1つだったのではないでしょうか。

 

「一時休戦」の発見 ほぼ無敵状態に

 ところが、この問題は思いのほか早い段階で解決されることになります。

 防御カード兼ドローソースである「一時休戦」の発見です。

お互いに自分のデッキからカードを1枚ドローする。次の相手ターン終了時まで、お互いが受ける全てのダメージは0になる。

 上述の通り、この頃の【神判魔導】はカードプール不足もあって初動面に不安を抱えており、このリスクを軽減するために各種ドローソースの搭載を余儀なくされていました。代表的なところでは「トゥーンのもくじ」や「成金ゴブリン」などの発動条件のないカードが挙げられますが、その1つに「一時休戦」があったというのが事の始まりです。

 当初は相手にアドバンテージを与えてしまうことから優先度は低めのカードと言われていたのですが、この認識は僅か数日にして覆ることになります。

 なぜなら、「発動に成功すればほぼ確実に1ターンを生き残れる」という事実が【神判魔導】にとって想像の何倍も強いことが明らかになっていったからです。

 これまでの解説の通り、【神判魔導】は一旦デッキが回り始めれば何物も寄せ付けない圧倒的なパワーを発揮することができます。アドバンテージ・ゲームが成り立たないという表現は誇張でも何でもなく、実際のところ本当に同じゲームで遊んでいるのか分からなくなる(※)レベルの格差です。

(※これに真正面から対抗できるのは「超再生能力」を発動できた【征竜】だけと言われていました)

 よってカード1枚分の損失などはっきり言って誤差の範疇であり、唯一これが問題になるのは「魔導書の神判」が機能するまでの1ターンの間に限られます。ところが、その「一時休戦」自体によって1ターンの生存を確実なものにできるため、実質的には「一時休戦」の損失を「一時休戦」で取り返せるという意味不明な状況が成立してしまうのです。

 事実上、初動の遅さという数少ない弱点が埋まってしまった格好であり、この発見(※)によって本格的に【神判魔導】につけ入る隙がなくなっています。この頃はまだ【征竜】が完成し切っていなかったという背景も重なり、相対的なデッキパワーそのものは議論の余地なく最強の権威を誇っていたと言っても過言ではありません。

(※ちなみに、直近の改訂では「一時休戦」が一気に制限カード行きとなっています)

 

「闇のデッキ破壊ウイルス」の流行 しかし……

 結果として、これ以降の環境では強烈な魔法メタである「闇のデッキ破壊ウイルス」の流行が一気に進んでいくことになります。

自分フィールド上に存在する攻撃力2500以上の闇属性モンスター1体をリリースし、魔法カードまたは罠カードのどちらかの種類を宣言して発動する。相手フィールド上に存在する魔法・罠カード、相手の手札、相手のターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、宣言した種類のカードを破壊する。

 「魔のデッキ破壊ウイルス」などと系統を同じくするウイルスカードの一種であり、従来のものと違い魔法・罠に対応する点で差別化が図られているカードです。一方で、効果の強さに合わせてコストも相応に重く設定されており、他のウイルスカード以上にデッキを選ぶピンポイントなメタカードでもあります。

 しかし、そうした運用上のリスクを踏まえてなお、闇のデッキ破壊ウイルス」は【神判魔導】対策としては非常に価値のあるメタカードです。

 デッキの大半が魔法カードで構成される【神判魔導】にとって、それを根こそぎ死滅させてくる「闇のデッキ破壊ウイルス」は極めて危険な仮想敵となります。まともに直撃すれば完全に手も足も出なくなるほどであり、上手く機能すれば疑似的な特殊勝利カードのように働くと言っても過言ではありません。

 つまり、これをメインギミックに組み込めるデッキであれば実力差を無視した決着を狙える可能性があったということであり、やがては「攻撃力2500以上の闇属性モンスター」を用意できる各デッキに注目が集まったという経緯です。

 こうした流れにいち早く対応してみせたのが上記でも触れた【3軸炎星】で、【炎舞】の打点強化によって「天狼王 ブルー・セイリオス」を媒体にできることから有力候補として持ち上がっています。かつての【4軸炎星】における「ブラッド・ヴォルス」を彷彿とさせるギミックであり、実質的にはその時の発想を流用した結果と言えるでしょう。

 もちろん、後攻1キルとまではいかずともゲーム最序盤の押し切りも状況次第では十分に狙えるため、【神判魔導】に対するメタデッキとしては中々の適性を発揮します。元々この時に「速炎星-タイヒョウ」を新たに獲得していたという追い風もあり、元環境トップの意地を大いに示していた時代です。

 その他、同じく「闇のデッキ破壊ウイルス」の土台としては【ヴェルズ】や【暗黒界】なども環境に食い込み、さながら夕立の如き空前のウイルスブームが訪れていました。特に【ヴェルズ】は特殊召喚メタによって自然と【征竜】を対策できることが大きく、やがては【征竜魔導】環境を語る上では欠かせない存在となったほどです。

 

効きそうで効かない闇デッキ メタを張っても勝てない狂気

 しかし、こうしたウイルス環境は残念ながら長続きはせず、これを強みとしていた各種メタデッキは次第に衰退していくことになります。

 理由は至ってシンプルで、【神判魔導】側が「闇のデッキ破壊ウイルス」の攻略を推し進めていった結果、最終的にはプレイングレベルの対策だけでケアできてしまうことが明らかになってしまったからです。

 具体的には、「魔導書の神判」と「魔導書士 バテル」の2枚を手札にキープし続けるなどの単純な方法によって実質被害を回避できる(※)ため、「神判が機能し始める≒闇デッキが効かなくなる」という理不尽な図式が成立してしまいます。これは要するに序盤の数ターンしかメタを刺す猶予がないということで、下手をすると「闇のデッキ破壊ウイルス」を準備する時間の方が長いということにもなりかねません。

(※ウイルスカード全般に言えることですが、ドロー以外の方法で手札に加わるカードには基本的に無力です)

 それ以外にも、「魔導法士 ジュノン」を先に置かれてしまい「闇のデッキ破壊ウイルス」だけでは勝ちきれなくなるケースや、「魔導書院ラメイソン」を複数枚握られ手を出せなくなるケース、あるいは「ゲーテの魔導書」を構え続けられてウイルス発動の見込みすらなくなってしまうケースなど、【神判魔導】側の「闇のデッキ破壊ウイルス」に対する抜け道は数多く存在します。

 事実上、あまりにも実力差がありすぎて弱点を突かせてもらえない、あるいは弱点を突いても勝ちきれないというどうしようもない状況であり、もはや従来のOCGのセオリーに則った真っ当な対抗策では太刀打ちできないことは明らかでした。

 唯一の例外が【征竜】(※)でしたが、元々【神判魔導】と同格の【征竜】がメタカードを通せば勝てるのは当たり前の話であり、他のデッキがこの真似をしても【神判魔導】に対抗するのは困難です。

(※闇デッキをケアして展開が鈍ると普通に速度負けするリスクがあります)

 結局のところ、メタカードを使っても勝てないというのはメタゲームが成立していないということに等しく、残酷な言い方をすればそもそも戦いの土俵にすら立てていない状態だったのです。

 

「ドロール&ロックバード」が当たり前のように使われる世界

 こうした苦しい局面の中、遂に持ち上がった希望こそが「ドロール&ロックバード」だったわけです。

相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた場合、このカードを手札から墓地へ送って発動する事ができる。このターン、お互いにデッキからカードを手札に加える事はできない。この効果は相手ターンでも発動する事ができる。

 現在では手札誘発の準レギュラー組として有名なカードですが、2013年当時はその扱いにくさからあまり評価されておらず、活躍らしい活躍をしないままマイナーカードとして埋もれていました。しかし、これを【神判魔導】のメタとして採点する場合、見れば見るほどに画期的なカードチョイスであることが分かります。

 実際、当時のカードプールにおける最適解と言って差し支えない発見で、これがあったからこそ辛うじて【征竜魔導】以外のデッキにも居場所が残されていたとさえ言えるでしょう。上記の「闇のデッキ破壊ウイルス」と異なり1枚で効力を発揮することはもちろん、何よりジャンケンの結果に左右されずに済むという点が大きく、これ以降の環境ではほとんど必須級のサイドカードとして大流行しています。

 それどころか、遂にはメインから複数枚積まれてもおかしくないほどに大々的に広まるなど、現代に至るまでを含め屈指のドロバ環境が組み上がっていました。「ドロール&ロックバード」の局所的すぎる性能を鑑みれば異様とも言える使用率であり、それだけ当時の環境における【神判魔導】の脅威が大きなものだったことが窺えます。

 問題があるとすれば、その「ドロール&ロックバード」を無理なく使いこなせるデッキがあろうことか他ならぬ【神判魔導】当人、あるいはそのライバルである【征竜】だったことでしょう。

 「ゲーテの魔導書」や「セフェルの魔導書」の補助になることはもちろん、場合によっては「ヒュグロの魔導書」や「トーラの魔導書」の的を作り出して強引に魔法カウントを稼ぐこともでき、墓地に行けば「ネクロの魔導書」のコストになるなど無駄がありません。

 将来的には「魔導書廊エトワール」からサーチできることも少なからずメリットとして働くようになり、本格的に一体どちらの味方なのか分からなくなってしまっています。もはや【神判魔導】メタというよりも【神判魔導】ミラーで使われることの方が圧倒的に多くなってしまった(※)ほどで、何がどうしてこうなったと言うほかない惨状です。

(※しかし、最終的には相手ターンに「魔導書の神判」を構えるプランが主流になったため、次第にミラー対策としては使われなくなっていきました)

 一方、これに負けず劣らずのドロバ適性を示していたのが【征竜】です。

 基本的には「嵐征竜-テンペスト」のコストになること以外にシナジーらしいシナジーはありませんが、これが意外に侮れないメリットとして働き、2色以下で詰まった際の有力な潤滑油にもなり得ます。実際、「封印の黄金櫃」などが実質2色カウントに化けるというのは相当大きな強みであり、感覚的には「条件次第でサーチカードにもなるメタカード」として取り回すことができました。

 いずれにしても、最後の希望であったはずの「ドロール&ロックバード」すら2強に取り上げられてしまっていたことは否定できず、こうした背景もまた【征竜魔導】環境の固定化を助長する一因となっていたのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「魔導書の神判」についての話は以上です。

 単刀直入に言って「頭のおかしいぶっ壊れカード」以外の何物でもなく、そもそも印刷されたこと自体が間違いだったと言わざるを得ない存在です。並居る禁止カードの中でも最上位に入る狂気を孕んだ怪物(※)であり、実際に禁止カード入りまで僅か197日という記録を打ち立てたことからもその凶悪さが窺えます。

(※近年激化するインフレにより、最近はそうでもなくなっているのではないかという声もあるにはあります)

 もっとも、「魔導書の神判」の存在がなければ間違いなく【征竜】1強環境に染まっていたであろうことを鑑みるに、いわゆる「ひどいレベルでバランスが取れている」状態だったと言えなくもないのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。