レスキューラビット全盛期 【エヴォル】環境上位へ(大嘘)

2019年7月10日

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【前書き】

 【第7期の歴史17 【暗黒界】デッキに「暗黒界の取引」が入らなかった環境】の続きになります。ご注意ください。

 ストラクチャーデッキによって大幅に強化された【暗黒界】の環境入りを受け、以降のメタゲームはこれまで以上に群雄割拠の様相を呈していくことになりました。当の【暗黒界】がミラーマッチ対策に苦慮していたことも環境の更なる複雑化を招き、まさに戦国時代さながらの多様化を迎えていった形です。

 環境後期に入りながらも一向にメタが固まらない激動の時代が展開される折、7月販売のレギュラーパックによって三度環境の勢力図が変動を見せることになります。

 

脱獄囚レスキューラビット(人違い) 4軸の王者

 2011年7月16日、レギュラーパック「PHOTON SHOCKWAVE」が販売されました。新たに80種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは4989種類に増加しています。

 エクシーズ世代第2弾となるタイトルであり、環境レベルで実績を残した数々の名カードを輩出したパックです。4軸デッキを中心に活躍した「カゲトカゲ」といった健全なタイプのカードはもちろん、コンボデッキのお供「一時休戦」、また将来的に【ゼンマイハンデス】を成立させる「ゼンマイハンター」など、危険性の高いカードも収録されていました。

 しかし、そうしたカード群の中でも最も多くの注目を浴びていたのは、まず間違いなく「レスキューラビット」だったのではないでしょうか。

このカードはデッキから特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをゲームから除外して発動する。自分のデッキからレベル4以下の同名通常モンスター2体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。
レスキューラビット」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 カード名から分かる通り「レスキューキャット(エラッタ前)」の派生シリーズの一種であり、実質的にはその調整版とも言えるモンスターです。モンスター2体をリクルートするという特徴は共通していますが、元ネタの反省点を踏まえて多くの制約が設けられています。

 具体的な差異は下記の通りです。

 

①:デッキから特殊召喚できないため、「召喚僧サモンプリースト」などのリクルーターに対応しなくなった。

 

②:リクルート範囲が「レベル4以下の通常モンスターかつ同名カード」とかなり限定されているため、

・モンスター効果でアドバンテージを取れず、単体ではシンクロ召喚にも繋げなくなった。

・デッキ構築面で自由度がなくなり、出張ギミックとしても使いにくくなった。

・リクルート先となる同名カードがデッキに2体以上揃っていないと効果を使用できず、単純に腐りやすくなった。

 

③:効果の発動コストとして自身を除外するため、再利用が難しくなった。

 

④:効果に同名ターン1制限がついたため、コンボに悪用するのがほぼ不可能になった。

 

 いずれも「レスキューキャット(エラッタ前)」の強さを支えていた重要なポイントであり、それらを丁寧に潰すことでカードパワーの調整を図っていたことが分かります。逆に言えば、これらの制約を全て破っていたのが「レスキューキャット(エラッタ前)」というカードだったということでもあり、その凶悪さは【レスキューシンクロ】の数々の実績から窺い知ることができます。

 ともあれ、「レスキューラビット」が開発段階から慎重にデザインされていたことは恐らく間違いないのですが、レスキューラビット」は驚くべきことにこれほどの良調整をもってしてもなおパワーカードと言って差し支えない強さを保っていました。なぜなら、「レスキューラビット」は同レベルのモンスターを並べる分には「レスキューキャット(エラッタ前)」と遜色ない能力を持っており、エクシーズ召喚のサポートとして考えれば極めて有用なカードだったからです。

 何より、「レスキューラビット」にはレベル4のモンスターにも対応するという「レスキューキャット(エラッタ前)」ですら持ちえなかった固有の強みが存在するため、特に4軸デッキのサポートとしてはこれ以上ない適性を発揮します。

 また、当時の環境において強い支配力を持っていたインヴェルズ・ローチ」をすみやかに作り出せたことも「レスキューラビット」の有用性を後押しし、次第に環境屈指のパワーカードとして認知されていくことになります。

 

エヴォルカイザー・ラギアと赤い糸で結ばれた関係

 そんな「レスキューラビット」の最高のパートナーとして持ち上がったのは、同パックから現れていた「エヴォルカイザー・ラギア」でした。

恐竜族レベル4モンスター×2
このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動する。魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし破壊する。

 魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・特殊召喚のいずれかを無効にする効果を持ったランク4エクシーズであり、まさに生きる「神の宣告」とも言うべき強力なパーミッションモンスターです。ただし、その代償として恐竜族モンスター2体という重い素材縛りが設けられているため、通常の4軸デッキではまず採用できない専用デッキ向けのモンスターでもあります。

 しかし、この縛りは「レスキューラビット」と併用することである程度は無視できるようになるため、その場合は一転して4軸のエースとして活躍できるカードに化けます。単純にカード1枚で召喚できるという消費の軽さはもちろん、万能カウンターによって質の高い1:1交換を取った上で2400打点が残るというのは破格と言うほかありません。

 もちろん、「レスキューラビット」に対する「エフェクト・ヴェーラー」や「連鎖除外」、あるいはそのリクルート先に対する「奈落の落とし穴」、さらには「エヴォルカイザー・ラギア」に対する「神の警告」など、複数の妨害が刺さってしまう弱点は存在します。しかし、それを乗り越えれば事実上の1:2交換が約束されるということでもあり、当時のゲームバランスにおいては非常に強力なコンボです。

 レスキューラビット」のリクルート先に「セイバーザウルス」という打ってつけのカードが存在したことも追い風となり、間もなくこのコンボを軸にした専用デッキの開発が進んでいくことになります。

 

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【兎ラギア】の成立 海外環境では最強だが……

 こうした経緯を辿って成立したのが【兎ラギア】と呼ばれるデッキであり、これ以降は環境を代表する強アーキタイプとして名を馳せていくことになります。

 そのコンセプトの中核はおおむね2つに分かれており、これらを同時に有していることが【兎ラギア】の強さを支えていたと言っても過言ではありません。

 一つは上述の通り、「レスキューラビット」と「エヴォルカイザー・ラギア」を軸にした4軸デッキとしての側面です。ざっくり言えば「レスキューラビット」3枚とバニラ2種6枚の計9枠からなるパッケージを指し、ここに何らかの味付けをしていくというのが【兎ラギア】の基本となります。

 代表的なのは「ジュラック・グアイバ」を搭載した【兎ジュラック】型であり、2011年当時においてはこの型が【兎ラギア】の基盤を担っていました。というより、元々【兎ラギア】は「エヴォルカイザー・ラギア」の召喚に特化するというコンセプトからスタートしているため、それをサポートできる「ジュラック・グアイバ」は初期型においては事実上必須カード扱いを受けていたという背景が存在します。

 まとめると、成立当初の【兎ラギア】は「レスキューラビット」「ジュラック・グアイバ」の2種から安定して「エヴォルカイザー・ラギア」を作り出すことに特化していたということであり、究極的には【ラギアビート】という表現がふさわしいデッキだったと言えるでしょう。

 しかし、逆に言えば【ラギアビート】以外には特別な展開ギミックは用意されておらず、それに頼れない局面においては【バニラ罠ビート】として振る舞うしかなかったということでもあります。海外環境においては「魔界発現世行きデスガイド」からの「虚空海竜リヴァイエール」によって「レスキューラビット」を再利用する強力なギミックが存在しましたが、日本国内においては良くも悪くも「ラギアを立てるしかすることがない」という極端にプレーンなデッキだったのです。

 

別名【次元ラギア】 墓地メタビの系譜

 結果として、【兎ラギア】は次元の裂け目」などの全体除外カードを取り込み、【次元ラギア】に姿を変えて羽化を果たすことになります。

 「レスキューラビット」「ジュラック・グアイバ」はいずれも墓地を経由しない展開ギミックであり、「次元の裂け目」とは共存が可能なカードです。なおかつ、「エヴォルカイザー・ラギア」によってそれを守ることもできるなど、【墓地メタビ】系の土台としては中々の適性を発揮します。

 加えて、次元の裂け目」の影響下では「セイバーザウルス」なども疑似「霊滅術師 カイクウ」として機能するため、上述の【バニラ罠ビート】状態であってもそれなりに強さを維持できるようになります。特にこの時期は【ジャンクドッペル】や【暗黒界】などの強力な墓地利用デッキが幅を利かせており、これらをメインから意識できる優位点は極めて大きなものでした。

 つまり、【兎ラギア】視点での「次元の裂け目」は自身と喧嘩をしない優秀なメタカードとなり、【墓地メタビ】視点での【ラギアビート】ギミックはメタカードを守るための防御札兼アタッカーとなります。お互いにウィンウィンの関係を築いている格好であり、このシナジーに着目した結果アーキタイプの複合がなされた(※)というのが大まかな事の経緯です。

(※実際にこれ以降の【次元メタビ】はほぼほぼ【次元ラギア】に統合されています)

 ちなみに、全体除外カードとしては「マクロコスモス」の方が優秀ですが、当時はほとんどの場合モンスターを除外できれば十分なメタ効果が期待できたため、エクシーズ素材を墓地に残せる「次元の裂け目」の方が優先される傾向にありました。ダイガスタ・エメラル」を使う際には特に重要になるポイントであり、素材として取り除いた「ジェネティック・ワーウルフ」をそのまま釣り上げる動きは【次元メタビ】としては胡散臭いの一言です。

 また、この時期の環境では「トラップ・スタン」や「盗賊の七つ道具」などの罠メタが流行していたため、それらに引っかかるか否かによっても格差が生じていた側面があります。同様に、「レスキューラビット」の弱点である「エフェクト・ヴェーラー」を初動前に潰せるかどうかがゲーム展開に影響することも多く、こうした微妙な使用感の差が両者の採用率の大幅な違いに現れた格好です。

 もっとも、将来的に【甲虫装機】が台頭すると「マクロコスモス」を積まざるを得ない環境になるのですが、それまでは全体除外カードとしての格付けは「次元の裂け目」が一歩リードする状況が続くことになりました。

 

【まとめ】

 「レスキューラビット」及び「エヴォルカイザー・ラギア」についての話は以上です。

 両者ともに優秀なカードでありながら、2枚を組み合わせることによって強固なシナジーを形成する最高のコンビであり、これに着目したデッキとして【兎ラギア】が生み出されることになります。最終的にはそこから転じて【次元ラギア】に至っており、以降は環境を代表する【墓地メタビ】の筆頭として名を馳せていくデッキです。

 ちなみに、「エヴォルカイザー・ラギア」はカード名の通り【エヴォル】カテゴリに属しているモンスターですが、本場である【エヴォル】ではほとんど活躍できなかったという悲しいエピソードも存在します。

 これは単純に【エヴォル】が弱すぎたことも理由の一つですが、それ以上に「エヴォルカイザー・ラギア」を【エヴォル】よりも上手く使えるデッキが多数存在していたことが大きな要因となっていました。上記の【兎ラギア】はもちろん、ファンデッキ界隈においてすら【ジュラック】に負けている状況だったため、「ラギアを使いたいならまずデッキから【エヴォル】を全部抜く」というあまりに不名誉なテンプレも生まれてしまったほどです。

 いわゆる「エースモンスターを他デッキに寝取られている」状況であり、エースの強さとテーマの弱さが噛み合ってしまったがゆえの悲劇だったと言えるでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。