【暗黒界】デッキに「暗黒界の取引」が入らなかった環境

2019年7月9日

スポンサーリンク

【前書き】

 【第7期の歴史16 インヴェルズ・ローチ全盛期時代 2011年のシンクロキラー】の続きになります。ご注意ください。

 「ジェムナイト・パール」「インヴェルズ・ローチ」を筆頭とする優秀なランク4の参入により、【代償ガジェット】や【剣闘獣】などの4軸デッキがメタゲームに復権しました。とりわけ「インヴェルズ・ローチ」の存在は環境に対して大きな作用をもたらしており、【ジャンクドッペル】などのシンクロデッキは何らかの応じ手の用意を余儀なくされた形です。

 強力なシンクロキラーの誕生を受けてメタゲームが揺れ動く中、続く6月に現れたカード群によって更なる環境の変動が引き起こされることになります。

 

デビルズ・ゲート 最強ストラクの一角

 2011年6月18日、ストラクチャーデッキ「-デビルズ・ゲート-」が販売されました。新たに5種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは4909種類に増加しています。

 前タイトルである【代行天使】ストラクと同様、非常に優秀な新規カードを輩出したことで有名なストラクチャーデッキです。パッケージを飾る「暗黒界の龍神 グラファ」はもちろん、「暗黒界の門」「暗黒界の術師 スノウ」といった脇を固める強力なサポートカードも誕生しており、さながら「マシンナーズ・フォートレス」「竜の渓谷」「神秘の代行者 アース」が同時に1つのテーマに現れたかのような大盤振る舞いだったと言えるでしょう。

 また、単純に再録商品としても中々のラインナップに仕上がっており、これ3箱でデッキの基盤が完成するというメリットも前ストラクから引き継いでいます。カード資産の少ない新規プレイヤーには特にありがたい仕様であり、これだけ強烈なテコ入れがなされたストラクチャーデッキが販売されるというのはかつてのストラク冷遇時代からは想像もできない話です。

 実際、当ストラクの販売から間もなく【暗黒界】が環境入りを果たしており、更には1ヶ月後の選考会においても日本代表の一角を射止めるという快挙を成し遂げています。まさに彗星のように現れた大型ルーキーと言うほかなく、これ以降はメタゲームを牽引するデッキの一つとして名を馳せていくことになります。

 

暗黒界の龍神グラファ アドバンテージの塊

 こうした【暗黒界】の躍進を土台から支えたのは、やはり何と言っても「暗黒界の龍神 グラファ」の存在です。

このカードは「暗黒界の龍神 グラファ」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「暗黒界」と名のついたモンスター1体を手札に戻し、墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手の手札をランダムに1枚確認する。確認したカードがモンスターだった場合、そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 自分フィールドの【暗黒界】モンスターを手札に戻すことで特殊召喚できるルール効果に加え、効果で手札から捨てられた場合に相手フィールドのカード1枚を破壊する誘発効果を持っています。一方、【暗黒界】に共通するハンデスメタ効果は変則的なピーピングハンデス兼コントロール奪取と癖のある性能ですが、単純に素のスペックだけでも十分にパワーカードの部類に入ります。

 「暗黒界の龍神 グラファ」最大の強みはその高い自己再生能力にあり、「暗黒界の尖兵 ベージ」などをセルフバウンスすることで簡単に蘇生可能という抜群の軽さを誇ります。むしろノーコストどころか蘇生すると逆にアドバンテージになるという脅威のモンスターであり、当時の【暗黒界】はこれを最大限駆使する(※)ことをメインコンセプトに据えていたと言っても過言ではありません。

(※その筆頭が「魔のデッキ破壊ウイルス」採用型の【ウイルス暗黒界】です)

 もちろん、もう一つの効果である万能除去もシンプルに強く、これによって各種メタカードに対してメインから一定の耐性を付けることができます。流石に「次元の裂け目」や「暗闇を吸い込むマジック・ミラー」といったクリティカルな対策カードには無力ですが、それでも「王宮の弾圧」などを突破できる優位点は侮れません。

 いずれにしても、「暗黒界の龍神 グラファ」というカードが2011年当時の水準を大きく超えるパワーカードだったことは間違いなく、既存の環境デッキはこれにどう対処するかという問題に頭を悩ませることになります。

 

スポンサーリンク


【暗黒界】環境上位へ 墓地メタ・闇属性メタの流行

 「暗黒界の龍神 グラファ」を筆頭とする強力な新規サポートを獲得したことにより、【暗黒界】は当時の環境デッキの多くを追い抜いて環境上位に躍り出ました。以前までの課題であった事故率の高さも「暗黒界の術師 スノウ」「暗黒界の門」の2枚によってある程度は改善されており、トーナメント戦に耐えうるだけの安定性を手に入れていたことも大きな要因であったと言えます。

 さらに、「暗黒界の術師 スノウ」と「暗黒界の門」は2枚揃うことで毎ターン自動的に手札を増やす脅威のエンジンにもなり得ます。「暗黒界の狩人 ブラウ」を絡めれば最終的に4枚分のカード・アドバンテージを約束する強力なコンボギミックであり、それ自体が潤滑油でありながら自発的にアドバンテージを生み出せるというのは極めて破格と言うほかありません。

 つまり、「暗黒界の龍神 グラファ」「暗黒界の術師 スノウ」「暗黒界の門」の3枚はいずれも何らかの形でアドバンテージを生み出す力を持っていたということでもあり、これによる強固なアドバンテージ生成能力こそが【暗黒界】を環境上位に導いたと言っても過言ではないでしょう。従来の【暗黒界】が持つ強みはそのままに、それをさらに補強するパーツを複数同時に得たことは躍進に足る起爆剤を務め、【暗黒界】は対策なしでは勝つのが難しいほどのパワーデッキに変貌を遂げていたのです。

 なおかつ、これまで【ジャンクドッペル】などの墓地利用デッキ対策として多用されていた「D.D.クロウ」「連鎖除外」などのメタカードをそのまま流用することもできず、【暗黒界】を直接仮想的に見据えたメタカードが必要になっていたという背景があります。

 これには上記項目でも触れた次元の裂け目」や「暗闇を吸い込むマジック・ミラー」が筆頭メタとして持ち上がることとなり、6月以降の環境においてはこのどちらか、もしくは両方をサイドに用意しておくことが常套化しました。【暗黒界】側はこれを張られた場合の応手が「サイクロン」程度しかなく、デッキが回り始める前に設置されてしまえば成す術はありません。

 とはいえ、時間経過により【暗黒界】側も「砂塵の大竜巻」や「ライトロード・ハンター ライコウ(エラッタ前)」といった除去カードを積んでくるようになったため、メタカードだけでイージーウィンが狙えるという状況はそれほど長続きしていません。むしろ「スキルドレイン」搭載型の【スキドレ暗黒界】が流行し始めたことで逆にメタ側が苦しくなっていた面もあり、この影響で【ジャンクドッペル】や【代償ガジェット】などの効果モンスターに依存したデッキが打撃を被っています。

 一方で、当時のトップデッキであった【六武衆】は「スキルドレイン」にもある程度の耐性を持っていたため、【スキドレ暗黒界】に対しても対等以上に立ち回ることができました。むしろサイドから「次元の裂け目」を投入できる関係で逆に有利を取れていた面もあり、【暗黒界】の台頭もそれほど苦にしていなかった印象はあります。

 

暗黒界の取引ピン挿しの妙 ミラーマッチは地獄

 このように、【暗黒界】の参入は2011年環境のメタゲームに対して大きな影響を与えていましたが、その矛先は自分自身にも向いていたという事実には触れておかなければなりません。

 【暗黒界】モンスターには「相手によって捨てられた時に効果が凶悪化する」という性質があるため、相手のハンデス、特にディスカード系のカードが友情コンボになるという特徴を持っています。実際に過去の環境において【ダークゴーズ】が流行した際には「メタモルポット」のリバースだけでゲームが終了してしまうことも少なくなかったほどです。

 一方で、【暗黒界】というデッキはディスカードを起点に動くコンセプトで成り立っており、「暗黒界の取引」「墓穴の道連れ」といったカードで手札を回転させながら戦うことを求められます。よって基本的には相手にもディスカードを要求することになるのですが、これが【暗黒界】とのミラーマッチにおいて最悪の結果を生み出すことは言うまでもありません。

 つまり、【暗黒界】ミラーにおいては事実上お互いに手札交換カードを発動できない状況に陥るため、「暗黒界の取引」や「手札抹殺」はもちろん、「墓穴の道連れ」ですら迂闊に使用できなくなってしまいます。言い換えれば、本来はデッキコンセプトの中核を担うはずの手札交換カードがほぼ死に札となるということであり、多くの場合「暗黒界の門」によってしか動けない状況に陥ることは避けられません。

 おまけに当時はフィールド魔法に関するルールが現在と異なっており、お互いのフィールドに1枚しか存在できない上に張り替えによって前のフィールド魔法が破壊されるという「後出し有利」の法則が成り立っていました。これにより、暗黒界の門」でしか動けないにもかかわらず相手より先に張るわけにもいかないというジレンマに苦しむことになるなど、とにかく「やりたいことを何一つやれない」としか言いようがないミラーマッチでした。

 結果として、【暗黒界】はメインデッキの段階からミラーマッチを意識した構築を取らざるを得なくなり、次第に「暗黒界の取引」や「墓穴の道連れ」がデッキから抜けていくという経緯を辿ることになります。場合によっては「暗黒界の術師 スノウ」でサーチできる「暗黒界の取引」に限りピン挿しで残されるケースはありましたが、いずれにしても従来のディスカード特化型の【暗黒界】が徐々に淘汰されていったことは確かです。

 暗黒界の取引」がサイドデッキに積まれるという一見よく分からない構築が浸透したのもこれが理由であり、逆に言えばこうした対策を講じなければならない程度には【暗黒界】が当時の環境で幅を利かせていたということでもありました。

 

【まとめ】

 2011年環境における【暗黒界】についての話は以上です。

 これまではサポートの乏しさからファンデッキ級の強さに収まっていたテーマでしたが、ストラクチャーデッキによって大幅に強化されたことで一躍メタゲームに躍り出ています。純粋なデッキパワーの高さもさることながら、スキルドレイン」や「魔のデッキ破壊ウイルス」による優れたメタ性能も後押しとなり、飛び入り参入でありながら環境屈指の強アーキタイプにまで成長を遂げることになりました。

 かつての【ダークゴーズ】時代に勝るとも劣らない目覚ましい躍進ぶりであり、この時代こそが【暗黒界】最大の全盛期だったことは間違いないでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。