2006年下半期のインフレ環境 【ガジェット】の脱落

2018年11月9日

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【前書き】

 【第5期の歴史7 制限改訂2006/9/1 カオスソーサラー禁止カード化 【カオス】完全崩壊】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【当時の環境 2006年9月1日】

 制限改訂によってカードプールに大規模な調整が入り、前期環境を支配していたデッキのいくつかが衰退、あるいは完全に解体されることになりました。

 当然、その中でも最も深刻なダメージを負ったのは、【カオス】と【暗黒界】の複合デッキ【ダークカオス】です。

 

【ダークカオス】から【ダークゴーズ】へ

 これまでデッキの主柱を務めていた「カオス・ソーサラー」の喪失は、【ダークカオス】にとっては額面以上に重い打撃として直撃しました。

 というのも、元々【ダークカオス】は【リクルーターカオス】の後継デッキとしての側面も内包していたため、そのメインコンセプトは「カオス・ソーサラー」の安定運用にこそあると言っても過言ではなかったからです。【暗黒界】ギミックはそのサブパーツであり、また逆に【暗黒界】の抱える不安定さを【カオス】がカバーしていたとも言えます。

 【ダークカオス】はこれら2種のギミックを上手く噛み合わせることを意図して組まれており、例えば「サンダー・ドラゴン」や「魔のデッキ破壊ウイルス」の複数枚採用といった結論は【ダークカオス】ならではの選択に他なりません。

 逆に言えば、【カオス】ギミックを抜いた【ダークカオス】はそもそもコンセプトが成り立たないということであり、これ以降は純正の【暗黒界】としてしか生存の見込みがなくなったということでもあります。そしてそれを環境レベルにおいて実現させるのは、当時のカードプールでは実質的に不可能なことでした。

 その末の結論が【グッドスタッフ】軸への変遷、ひいては【エアゴーズ】との融合であったというのがおおよその事態の全容です。直前に現れていた「封印の黄金櫃」の存在もこの助けとなり、やがては【ダークゴーズ】として環境で存在感を示していくことになります。

 

【未来オーバー】弱体化 最後の現役時代

 同様に、キーカードの規制によって弱体化したデッキとしては、【未来オーバー】や【バブーン】が挙げられます。

 このうち、【バブーン】に関しては前記事の通り目立った動きはありませんでしたが、【未来オーバー】は引き続きメタゲームに顔を出していくことになります。その直接の原因となったのはやはり「封印の黄金櫃」の存在で、制限カード指定を受けた「未来融合-フューチャー・フュージョン(エラッタ前)」の代用パーツとしての役割を見出された形です。

 とはいえ、もちろん前期そのままの姿でメタに食い込んできたわけではありません。

 【未来オーバー】における理想の動きは当然「後攻1キル」であり、次善の動きが「場を整えてからのワンショットキル」となります。このうち、後攻1キルを決めるにはコンボパーツを初手に握る必要があるため、タイムラグのある「封印の黄金櫃」は明らかに代用カードとしての役割を果たせません。

 かと言って、コンボ成立のために制限カードの素引きを期待することはギャンブルに近く、トーナメント向けにこれを組むのはほとんど愚策です。つまり、従来同様のコンセプトはもはや維持できなくなったということであり、【未来オーバー】は何らかの形で新しい構成を探し出すことを求められていったのです。

 その結果、間もなく【未来オーバー】「ワンショットギミックを内蔵した中速デッキ」へと生まれ変わり、一種の地雷としてメタゲームに影響を及ぼしていくことになりました。

 元々【未来オーバー】にはワンキル特化型と安定型の2種類が存在していたため、単にその片方が生き残ったという話だったとも言えます。【ガジェット】との複合である【キメラガジェ】などは特に有名なのではないでしょうか。

 

【チェーンバーン】全盛期 地雷代表

 しかし、これ以降の環境で地雷として最も強い存在感を示したのは、【未来オーバー】ではなく【チェーンバーン】と呼ばれる速攻バーンデッキでした。

 「連鎖爆撃」を筆頭に、各種チェーンカードを中核ギミックに据えたバーンデッキの一種であり、弱体化した【ロックバーン】に代わり新たに浮上したアーキタイプです。詳しくは関連記事にある通りですが、この改訂以降は【未来オーバー】を上回る脅威として環境に浸透していくことになります。

 それを裏付けるように時間経過とともに「和睦の使者」などの防御カードは採用率を落としていき、逆に「デス・ウォンバット」に始まる各種バーンメタがサイドの常連を務めるに至っています。最終的には戦闘系のメタカードは採用候補に名前が挙がることすら稀になり、2007年に入る頃には【未来オーバー】の存在はほとんど意識されなくなってしまったほどです。

 こうした扱いの格差が生まれるに至った理由、それはそのまま上記2デッキの地雷としての適性の差にありました。

 【未来オーバー】のワンショットギミックはビートダウンを起点としているため、多くの汎用除去によってこれを潰されてしまう弱みを抱えています。それを補うための「ハリケーン」採用であったり、あるいは「人造人間-サイコ・ショッカー」タッチという選択だったのですが、現実問題としてメイン戦でも一定数のゲームを落としてしまうことは避けられません。

 一方、【チェーンバーン】は対策なしではまず太刀打ちできないタイプのデッキであり、基本的に手札事故以外では負けることがないアンフェアデッキに該当します。その分メタカード1枚でコンセプトが瓦解してしまう脆弱性も孕んでいますが、それを加味した上で地雷として使われる魅力があったのは確かです。

 つまり、この先の環境では「地雷を握るなら【チェーンバーン】の方が勝てる」という理屈が成立してしまうことになり、その事実が広まるにつれて【未来オーバー】は数を減らしていくという結末を辿っています。もちろん、プレイヤーの好みによっては【未来オーバー】があえて使われるということもありましたが、環境全体の流れとして逆風の状況にあったことは否定できなかったのではないでしょうか。

 

出オチの【ガジェット】 インフレ脱落勢

 とはいえ、この時の改訂を受けて最大の苦境に立たされたのは、やはり【ガジェット】で間違いありません。

 前期環境ではトップメタ筆頭として猛威を振るった実力を持ちながら、制限改訂でも実質ノーダメージという追い風を受けた有力なアーキタイプです。当然、これ以降も引き続きメタゲームを牛耳っていくものと見なされ、多くのプレイヤーに最大の仮想敵として認識されている状態でした。

 しかし、実際の環境では間もなく急激に勢いを落としていき、やがては数ある中堅デッキの一角にまで勢力を後退させてしまうことになります。

 【ガジェット】がこうした不遇の立ち位置に追いやられた理由はいくつかありますが、一言に集約すると「環境のインフレについていけなくなったこと」が最大の要因として挙げられるのではないでしょうか。

 もちろん、【ガジェット】がアーキタイプとして非常に大きなポテンシャルを秘めているというのは、これまでの実績の数々が示す通りです。しかし、【ガジェット】が準カテゴリデッキである以上、これを組む上ではデッキの構成がある程度固定されてしまうことは避けられません。

 つまり、カードプールの急激なインフレには対応しにくいという弱みがあり、言うなればシナジーの強さが逆に足を引っ張ってしまう構図へと陥ります。これは2年前の2004年頃の時代でも同じことが当てはまっていましたが、性質上【ガジェット】というデッキはデフレ環境でしかその真価を発揮し得ないのです。

 さらに、これ以降「マインドクラッシュ」「ダスト・シュート」といった凶悪なピーピング・ハンデスカードが大流行を始めたことも強い逆風として作用していました。

 【ガジェット】最大の強みはサーチ連鎖による継続的なリソース確保に他ならず、それを潰してくるハンデスカードは非常に苦手としています。それは元々「マインドクラッシュ」が対【ガジェット】のサイドカードとして使われていたことからも明らかですが、これがメインデッキに標準搭載されてくるようでは厳しいどころの話ではありません。

 事実上、全てのゲームがサイド戦からスタートするようなものであり、この不利を覆すには相当の実力、そして引き運が要求されます。逆に言うと、それでも勝てなくはないというのが【ガジェット】の恐ろしいところなのですが、トップメタ級のデッキパワーを持つ【ダークゴーズ】や【エアブレード】に対抗する上では、やはり苦しいウィークポイントとなってしまうことは否めません。

 結局、流石の【ガジェット】もこうした苦境を跳ね返すだけの何かを得ることはできず、この先の半年間を沈黙したまま過ごすことになりました。

 

【まとめ】

 前記事と合わせて、2006年9月1日の制限改訂で起こった出来事は以上となります。

 「カオス・ソーサラー禁止カード化による【ダークカオス】の解体に始まり、その直後に後継デッキとして成立した【ダークゴーズ】の台頭、さらには環境のインフレを受けての【ガジェット】の衰退など、様々な部分に変化が現れた動きの多い改訂です。

 地雷デッキ界隈にも【チェーンバーン】という魔物が生まれたほか、長生きはできなかったものの【未来オーバー】も形を変えて時代の流れに適応しています。

 とはいえ、上述の通り環境全体の流れとしてインフレに向かっていたことは否定できず、メタゲームを支配していたのも【エアブレード】【ダークゴーズ】、あるいは【サイカリエアゴーズ】などの【エアゴーズ】系デッキでした。一見すると多種多様なデッキがしのぎを削る群雄割拠の時代にも思える環境ですが、実質のところは強力な汎用ギミックが幅を利かせる硬直したゲームバランスが成立していたのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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