バーンデッキの革命 【チェーンバーン】の成立

2018年10月22日

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【前書き】

 【第5期の歴史2 スナイプストーカー参入 何でも割れる万能カード(不確定)】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

【フルバーン】の芽吹き ビートダウンよりも早いバーン

 レギュラーパック「CYBERDARK IMPACT」が生み出した新たなアーキタイプ、それは【チェーンバーン】と呼ばれるバーンデッキの概念でした。

 その成立のきっかけとなったのは、俗に「チェーンカード」と呼ばれるカード群の存在です。

このカードの発動時に積まれているチェーン数×400ポイントダメージを相手ライフに与える。同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動されている場合、このカードは発動できない。

チェーン4以降に発動する事ができる。自分のデッキからカードを2枚ドローする。同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動されている場合、このカードは発動できない。

相手ライフに500ポイントダメージを与える。このカードがチェーン2またはチェーン3で発動した場合、このカードをデッキに加えてシャッフルする。このカードがチェーン4以降に発動した場合、このカードを手札に戻す。

 上から順に、「連鎖爆撃」「積み上げる幸福」「チェーン・ブラスト」の当時のテキストを取り上げています。いずれもチェーンの回数を参照する独特な性質を持っており、その画期的なデザインから多くのプレイヤーの注目を集めました。

 しかし、一見して分かるようにいずれも発動条件が厳しく、普通に使っても実用レベルの性能は期待できません。これらを活用することを考える場合、専用デッキの用意は半ば必須となります。

 この答えとして最初に名前が示されたのは、やはりと言うべきか【ロックバーン】でした。

 【ロックバーン】というのはその名前の通り、「レベル制限B地区」に始まるロックカードで守りを固めつつ、「ステルスバード」などの継続的なダメージソースによってライフを削り切る、というコンセプトで組まれたデッキです。古参プレイヤーの間では非常にメジャーなアーキタイプであり、主流には乗らないまでも常に環境の一角に顔を覗かせていたことで知られます。

 そんな【ロックバーン】の新戦力として上記のチェーンカード群が注目されたという経緯ですが、残念ながらこの時点ではその努力が実を結ぶことはありませんでした。

 というのも、元々【ロックバーン】自体が低速コントロールに分類されるデッキであったため、1発のダメージの大きさよりも安定火力源として機能することの方が重視されていたからです。例外は「自業自得」「仕込みマシンガン」などの引導火力級のバーンカードですが、これらは相手がカードを溜め込むほどダメージが上がる性質を持つため、これも俯瞰視点においては「ゲームが長引くことを想定したカード選択」に該当していたとも言えます。

 ただし、【ロックバーン】のコンセプトに噛み合わないというだけで、チェーンカード自体のポテンシャルの高さが見過ごされていたわけではありません。

 試行錯誤の末、導き出された結論は「ロック関連パーツをデッキから全て抜き、完全に速度に特化することで強引にチェーン数を水増しする」というものでした。

 一見無謀にも思えるこの試みは意外にも成功裏に終わり、ビートダウン以上の速度を持つバーンデッキとして新たに生まれ変わることになります。遊戯王OCGに【チェーンバーン】の概念が根付いた瞬間であり、まさに革命的と言うほかない出来事です。

 もっとも、一応これまでにも概念上の話として、いわゆる【フルバーン】と呼ばれるアーキタイプが存在しなかったわけではありません。

 しかし、多分に机上の空論的な要素(具体的には「自業自得」や「仕込みマシンガン」でカード2枚分以上のダメージを稼ぐことを前提条件とするなど)を含んでおり、単刀直入に言って実戦レベルの強さを持っているとは見なされていないデッキでした。

 そのため、この時まではバーンと言えば【ロックバーン】を指すことがほとんどでしたが、以降は明確に【チェーンバーン】へと型の派生が進んでいくことになります。特にこの時期は【ロックバーン】自体が下火の状況となっていたため、その反動も手伝ってか最終的には有力デッキの一角に至るまでに勢力を拡大したほどです。

 

【当時の環境 2006年8月10日】

 【チェーンバーン】という新しいタイプのバーンデッキの台頭は、当然のことながら当時のメタゲームに多大な影響をもたらすことになりました。

 最大の脅威は何よりもその速度で、純粋なダメージレース勝負では普通のデッキでは到底太刀打ちできません。特に「連鎖爆撃」が絡んだ場合は2~3ターンで決着がついてしまうことも珍しくなく、バーンデッキとしてはもちろん当時のあらゆるデッキの中でもトップクラスの速さです。

 性質上、魔法・罠の除去がほとんど意味を成さない点も対処の幅を狭めます。これまでバーン対策の定石とされていた「砂塵の大竜巻」などのベターなサイドカードはほぼ効力を発揮しなくなり、その結果かなりピンポイントな対策カードを用意する必要性が生まれました。

 具体的には、罠メタの「王宮のお触れ」や、さらに尖ったところでは「デス・ウォンバット」などのバーンメタが挙げられます。特に後者は定着させれば勝利確定と言えるベストなカード選択であり、汎用性を犠牲にしてでも投入価値のあるサイドカードと評価されました。

 とはいえ、現実的には汎用性で勝る「王宮のお触れ」が比較的優先される傾向にあり、枠の問題から「デス・ウォンバット」の採用が見送られるケースも少なくなかったのは確かです。

 そこにつけ込む【チェーンバーン】側の手段として、同パックから誕生していた「一陣の風」に声がかかっています。

チェーン3以降に発動する事ができる。フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動されている場合、このカードは発動できない。

 発動条件のついた「サイクロン」であり、その完全下位互換となるカードですが、当時の基準としては及第点の性能です。さらに、【チェーンバーン】にとっては発動条件もそれほど苦にはならず、事実上3積みできる「サイクロン」として使える強みがありました。

 その使い勝手の良さからサイドには確実に、場合によってはメインから複数枚積まれることもあり、【チェーンバーン】と戦う上ではこの存在を意識しないわけにはいきません。

 結果として、時間経過とともに「デス・ウォンバット」の採用率は次第に上昇していき、最終的には「王宮のお触れ」に匹敵する支持を受けるに至っています。【チェーンバーン】側にとっては苦しい展開であり、また、これといって合致する回答もなかったため、素直に除去カードを用意するしか応手がありませんでした。

 しかし、【チェーンバーン】が速攻デッキである以上、ゲーム中に使用できるカードの枚数には当然限りが存在します。例えば3ターンで決着をつけることを目標に据える場合、物理的に8枚分のカードしか確保することができないのです。

 (こうした問題を一部解消するための手段として、「積み上げる幸福」が注目されていた側面もあります。)

 つまり、その限られたダメージソースで8000のライフを削り切らなければならないため、そのノイズとなるメタカードの採用枚数は限界まで切り詰めなければなりません。これに関してはいわゆる「正解が存在しない問題」で、プレイヤーの考え方次第で答えが変わる話です。

 とはいえ、逆に言えばこうした専用の対策が講じられる程度には、【チェーンバーン】の存在が環境レベルで意識されていたということでもあります。上述の通り、様々な弱点から全体の戦績としては黒星が多いデッキでしたが、プレイヤーの間で大きな脅威として認識されていたことは間違いありません。

 実際、2007年3月の改訂では最大のキーカードである「連鎖爆撃」を制限カードに指定されるなど、開発側からも直々に対処の手が下されています。これには当時の開発側がバーンカードに厳しい姿勢を取る傾向にあったことも影響していたものと思われますが、それでもこの時代を【チェーンバーン】の全盛期として数えることに不足はないのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 前記事と合わせて、レギュラーパック「CYBERDARK IMPACT」の販売によって起こった出来事は以上となります。

 「スナイプストーカー」を筆頭に優秀なカードを多数輩出したほか、バーンデッキ界隈の新生児である【チェーンバーン】の成立を招くなど、非常に大きな影響を環境に及ぼしたパックです。

 ちなみに、ここで生まれた【チェーンバーン】というアーキタイプは現在でも廃れたわけではなく、10年単位の時間をかけてひっそりと微強化を重ね続けています。実際に2017年には世界大会という大舞台(小学生部門)に地雷的に参戦し、そして優勝の栄光をもぎ取っていったことは記憶に新しい出来事でしょう。

 もちろん、環境目線では完全なメタ外との位置付けでしたが、今なおトーナメントレベルでも通用する地力を備えているということを大々的に証明した快挙ではあったのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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