【ゼンマイハンデス】全盛期到来 先攻全ハンデスの恐怖

2019年7月18日

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【前書き】

 【第7期の歴史23 壊れテーマ【インゼクター】参戦 甲虫装機ダンセル無制限時代】の続きになります。特に、この記事では前中後編の中編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

発条空母ゼンマイティ誕生 エクシーズ初の禁止カード

 レギュラーパック「ORDER OF CHAOS」から現れた禁止カード級の大型ルーキー、それは「発条空母ゼンマイティ」と呼ばれるエクシーズモンスターでした。

レベル3モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、手札・デッキから「ゼンマイ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
また、フィールド上に表側表示で存在する「ゼンマイ」と名のついたモンスターが破壊され自分の墓地へ送られた時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、そのモンスター1体を選択して手札に戻す。

 言わずと知れた【ゼンマイ】最強のエンジンであり、遊戯王全体を見渡しても屈指の強さを誇るリクルート効果持ちモンスターです。主力となるのは任意の【ゼンマイ】モンスターをリクルートする効果であり、エクシーズ召喚のディスアドバンテージを即座に回復しつつ更なる展開を行えるというのはシンプルに強力と言わざるを得ません。

 一方、後半のサルベージ効果はリクルート効果と比べると若干見劣りする性能ですが、こちらも効果そのものは決して弱くはなく、むしろ他のカテゴリであれば十分に実用圏内のサポート効果です。特に「発条空母ゼンマイティ」が複数体並んだ場合には疑似的な自己回収効果のようにも機能するため、気休めながら弾切れ防止の保険になるという利点もあります。

 結論としては、「発条空母ゼンマイティ」は総じて高水準なスペックにまとまったパワーカードであり、【ゼンマイ】というカテゴリはこのカードなくして成り立たないと言っても過言ではないでしょう。

 というより、当時の【ゼンマイ】が環境入りを果たしたのは間違いなく「発条空母ゼンマイティ」の功績であり、ポジション的にはかつての【六武衆】にとっての「六武の門」のようなカードだったのではないでしょうか。

 実際、「発条空母ゼンマイティ」は10ヶ月後の改訂で早々に制限カードとなり、更には2013年3月にはエクシーズモンスターとしては初の禁止カード入りを果たしています。「発条空母ゼンマイティ」のカードパワー設定が第7期当時の水準を明らかに超えていたということの証左であり、まさに第7期終盤のインフレ(※)を体現していたカードです。

(※現在は無制限カードに釈放されています)

 

ゼンマイネズミとの疑似ループ マイティ3連打

 とはいえ、「発条空母ゼンマイティ」が禁止カードに至った理由は単純なカードパワーの高さによるものだけではありません。

 もちろん、「発条空母ゼンマイティ」それ自体が強かったことも決して間違いないのですが、やはり最大の理由はこれと凶悪なシナジーを形成するカードが【ゼンマイ】カテゴリの中に複数存在していたことにあったのではないでしょうか。

自分のメインフェイズ時に発動できる。自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードを表側守備表示に変更し、自分の墓地の「ゼンマイ」と名のついたモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚する。この効果はこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度しか使用できない。

 上記は【ゼンマイ】に属するモンスターの1体、「ゼンマイネズミ」の当時のテキストです。「発条空母ゼンマイティ」と同じく「ORDER OF CHAOS」出身の新規カードであり、自身を守備表示にすることで【ゼンマイ】モンスターを守備表示限定で蘇生するという、下級モンスターとしては非常に使い勝手に優れた効果を持っています。

 レベルが3であるために「発条空母ゼンマイティ」のエクシーズ素材となれる点も噛み合っており、間もなく【ゼンマイ】における重要な展開要員としてのポジションに収まることになりました。

 ちなみに、この効果はフィールドに存在する限り一度しか使用できないという制約が設けられていますが、これは同名カードではなくカード単体のみにかかっているため、一旦フィールドを離れれば問題なく効果を使用可能です。自身以外の「ゼンマイネズミ」についても同様であり、今日の主流にあたる同名ターン1制限とは明確に扱いが異なります。

 つまり、「ゼンマイネズミ」の問題点はここにあり、このカードを含む【ゼンマイ】モンスターの全般的な調整ミスこそが第8期以降の同名ターン1制限の浸透を決定付けたと言っても過言ではないでしょう。

 具体的には、下記のようなコンボが成立します。

 

①:墓地にレベル3の【ゼンマイ】モンスターが存在する状態で、レベル3モンスター2体をフィールドに揃える。

 

②:「発条空母ゼンマイティ」をエクシーズ召喚し、効果で「ゼンマイネズミ」をリクルートする。

 

③:「ゼンマイネズミ」の効果で墓地のレベル3の【ゼンマイ】を蘇生する。

 

④:②に戻る。

 

 このコンボそのものは実用性がある動きとは言えませんが、それはそれとして何かがおかしい動きであることも間違いありません。カテゴリ内で完結するギミックだけでループじみた動きが成立するというのは往年の「ガンループ」を彷彿とさせ、強い弱い以前に明らかに調整ミスの気配が漂っています。

 仮に百歩譲って調整ミスであったとしても、上記2枚が同パック出身というのは流石に何かの冗談としか言いようがありません。むしろ当パック出身の【ゼンマイ】モンスターはこれらを含めて僅か3種類しか存在しないため、逆に何をどうすれば見落とすのか分からないレベルの失態です。

 前記事で取り上げた【甲虫装機】と同じかそれ以上に酷い有様であり、これもまた「作る時に何かおかしいと思わなかったのか」系のカードに該当することは間違いない存在でしょう。

 

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【ゼンマイハンデス】の成立 「先攻を取られたら即死」

 そして、上記コンボに「ゼンマイハンター」を絡めるという発見により、【ゼンマイ】は【ゼンマイハンデス】として世に解き放たれることになります。

自分のメインフェイズ時、「ゼンマイハンター」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「ゼンマイ」と名のついたモンスター1体をリリースして発動する事ができる。相手の手札をランダムに1枚墓地へ送る。この効果はこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度しか使用できない。

 これ自体は4ヶ月前に誕生していたカードですが、自身と他の【ゼンマイ】を揃えることを要求した上での1:1交換のハンデスは効率が悪く、当初は光るものはありつつも実用化は難しいという状況に置かれていました。

 しかし、これを上記ループに組み込めば展開の過程で3枚分のハンデスを実質ノーコストで行えるため、一転して凶悪なハンデスカードに変貌します。「ダイガスタ・エメラル」を絡めれば5ハンデスも難しくなく、「ゼンマイマジシャン」の存在から「ダイガスタ・エメラル」の展開自体も比較的容易です。

 具体的な展開パターンについては下記の通りとなります。

・レベル3×3体……3ハンデス+任意のランク3

 

①:レベル3モンスター2体で「発条空母ゼンマイティ」をエクシーズ召喚し、効果で「ゼンマイハンター」をリクルートする。

 

②:「ゼンマイハンター」で「発条空母ゼンマイティ」をコストにハンデスする。

 

③:「ゼンマイハンター」とレベル3モンスターで「発条空母ゼンマイティ」をエクシーズ召喚し、効果で「ゼンマイネズミ」をリクルートする。(コストは「ゼンマイハンター」)

 

④:「ゼンマイネズミ」で「ゼンマイハンター」を蘇生する。

 

⑤:②に戻る。

 

 上記は【ゼンマイハンデス】における基本展開の一つであり、効果を使い終わった「発条空母ゼンマイティ」を次々とハンデスに変換していくという仕組みのコンボです。【ゼンマイハンデス】はこの状況を1ターン目から確実に整えること、つまり「レベル3モンスターを3体用意すること(※)」に特化したデッキであったとも言えます。

(※「ゼンマイハンター」を素引きしている場合は2体だけでコンボスタート可能です)

 ちなみに、ここにレベル3がもう1体増えると一気に展開が強くなります。

・レベル3×4体……5ハンデス+エメラル+任意のランク3

 

①:レベル3モンスター2体で「発条空母ゼンマイティ」をエクシーズ召喚し、効果で「ゼンマイマジシャン」をリクルートする。

 

②:レベル3モンスター2体で「発条空母ゼンマイティ」をエクシーズ召喚し、効果で「ゼンマイハンター」をリクルートする。

 

③:②に反応し、「ゼンマイマジシャン」の効果で「ゼンマイマジシャン」をリクルートする。

 

④:「ゼンマイハンター」で「発条空母ゼンマイティ」をコストにハンデスする。

 

⑤:④に反応し、「ゼンマイマジシャン」の効果で「ゼンマイハンター」をリクルートする。

 

⑥:④に同じ。

 

⑦:「ゼンマイハンター」2体で「発条空母ゼンマイティ」をエクシーズ召喚し、効果で「ゼンマイネズミ」をリクルートする。

 

⑧:「ゼンマイネズミ」で「ゼンマイハンター」を蘇生する。

 

⑨:④に同じ。

 

⑩:「ゼンマイマジシャン」2体で「ダイガスタ・エメラル」をエクシーズ召喚し、効果で「発条空母ゼンマイティ」3体をデッキに回収する。(2体以上回収できれば可)

 

⑪:「ゼンマイネズミ」と「ゼンマイハンター」で「発条空母ゼンマイティ」をエクシーズ召喚し、効果で「ゼンマイネズミ」をリクルートする。

 

⑫:⑧、⑨、⑪を繰り返す。

 

 相手をハンドレスにした上で自分フィールドには「ダイガスタ・エメラル」と任意のランク3が残るという凶悪な展開ルートであり、先攻1ターン目に決まれば事実上のワンキルと言って差し支えない威力を発揮します。その分レベル3モンスター4体を揃えるという厳しめの条件を課されますが、要するに「ゼンマイマジシャン」が存在する状態で「発条空母ゼンマイティ」の効果発動に成功すれば同様のルートに入れるため、コンボ成立条件は見た目ほど厳しくはありません。

 なおかつ、「発条空母ゼンマイティ」のリクルート効果が手札にも対応していることもあり、この手のコンボデッキにありがちな「手札に引きたくないカードを引いてコンボスタートできない」という状況に陥る心配がないという強みがありました。

 加えて、安定して決まる3~5枚ハンデスによって相手の反撃をほぼ考慮する必要がなくなるため、通常のデッキでは準必須カードとなる「神の警告」などの妨害札にスペースを割かずに済むメリットも見逃せません。これによりデッキ構築の時点から自分の展開力に完全特化することができ、結果として事故率もより低下するという好循環が成り立ちます。

 言うなれば現在における「展開系デッキ」と趣を同じくするコンセプトであり、逆に数世代先で形となるはずの概念が2011年末に成立してしまったというのはあまりにも理解不能な話です。【ゼンマイハンデス】がコンボデッキでありながら一定の成績を残していた理由はこの辺りにあり、まさに二重の意味で生まれてくる時代を間違えていたデッキだったのではないでしょうか。

 

後攻スタートは苦手 マッチ向きではなかったデッキ

 とはいえ、そんな【ゼンマイハンデス】もコンボデッキである以上、相手の妨害に弱いという共通の弱点から逃れることはできません。

 単純に考えても、発条空母ゼンマイティ」を1回止められるたびに追加でレベル3モンスター2体を用意しなければならないため、相手の妨害札1枚がこちらの展開札2枚に相当するという不平等な取引が成立してしまいます。つまり、相手の妨害込みのコンボ成立条件はレベル3×5体もしくは6体という非常にギリギリのラインであり、これが2回分になればそもそも物理的にコンボが瓦解してしまうのです。

 そして、コンボに失敗すれば再び動けるハンドが揃うまでドローゴーするか、コンボを切り捨ててランク3ビートに移行するかの2択を迫られることは避けられません。しかし、どちらの場合でも妨害札なしのストレート構成では勝てる見込みはあまりなく、大抵は逆転できずにゲームを落とすことになります。

 こうした事態を防ぐために最低限の罠カードを取っておくということも考えられなくはないですが、その場合罠を積まずに済むという【ゼンマイハンデス】の強みが完全に死んでしまい、明らかに本末転倒です。結局のところ、【ゼンマイ】を【ゼンマイハンデス】として組む以上はコンボに特化する以外の選択肢はなく、根本的にマッチ向きではないデッキ(※)と言われていました。

(※逆に言えば、マッチ向きでないにもかかわらずある程度は結果を残せていたほど凶悪なデッキだったということでもあります)

 こうした背景もあり、【ゼンマイハンデス】は将来的にはナイト・ショット」を加えての「伏せ剥がし全振り構築」へと行き着くことになるのですが、丁度同じタイミングで【甲虫装機】が完成に至っていたという時期の悪さが重なり、やはり大々的な活躍は叶わなかったというのが実情です。

 また、【甲虫装機】の流行に伴う誘発環境の到来も厳しい向かい風となり、次第に先攻スタートの場合ですら安泰が得られなくなっていきました。ほとんどのデッキに標準搭載されていた「エフェクト・ヴェーラー」はもちろん、「増殖するG」や「D.D.クロウ」なども軒並み刺さってしまうため、メタゲームにおいてはかなり苦しい立場にあったことは否定できません。

 結局、最終的には「発条空母ゼンマイティ」への規制と「ゼンマイシャーク」の来日が相乗効果的に噛み合い、【ゼンマイハンデス】としては事実上の完全消滅を迎えています。その後は【ゼンマイ】そのものを主軸としたビートダウン型に姿を変えて多くの実績を残していますが、やはり【ゼンマイハンデス】とは全くの別物と切り分けて考えた方が適切です。

 ちなみに、現在では「ゼンマイハンター」そのものが禁止カード指定を受けているため、ハンデス軸は完全に構築不能となっています。当然と言えば当然の話であり、恐らくは今後も現役復帰の見込みはない永久禁止カードの1枚です。

 

【後編に続く】

 【ゼンマイハンデス】についての話は以上です。

 何と言っても先攻5ハンデスの衝撃は凄まじいの一言であり、参入早々から環境「最凶」のコンボデッキとして猛威を振るっていくことになります。その一方で、コンボに完全特化している関係でマッチ戦には適性がなく、見た目の凶悪さとは裏腹に意外な脆さを抱えていたデッキでもありました。

 このように、【甲虫装機】と【ゼンマイハンデス】という方向性の異なるパワーデッキを輩出した「ORDER OF CHAOS」の悪名はもはや明らかですが、実はそんな極悪パックにも健全な新勢力が含まれていたことには触れておく必要があるでしょう。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。