交響魔人マエストローク全盛期 最強のランク4と言われた時代

2019年10月21日

【前書き】

 【第7期の歴史32 【甲虫装機】1強時代 ワンキル地獄環境の訪れ】の続きになります。ご注意ください。

 2010年3月2012年3月のおよそ2年間続いた第7期が終了し、新たに第8期がスタートしました。新召喚法の実装などの大きなルール変更こそありませんでしたが、【甲虫装機】を筆頭に次世代のパワーデッキが次々と姿を見せていた時代であり、まさに第7期以前とは別世界と言える環境が訪れていたと言えるでしょう。

 ゲームバランスのインフレの気配が色濃く漂い始める新時代の折、その突入早々にとある大型ルーキーが参入を決めることになります。

 

交響魔人マエストローク誕生 禁止級との噂も

 2012年3月17日、「スターターデッキ2012」が販売されました。新たに5種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは5324種類に増加しています。

 この時に現れた強力なランク4エクシーズ、それは「交響魔人マエストローク」と呼ばれるモンスターでした。

レベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを裏側守備表示にする。
また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の「魔人」と名のついたエクシーズモンスターが破壊される場合、代わりにそのモンスターのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。

 素材縛りのない汎用ランク4の1体にして、エクシーズ第2世代を代表すると言っても過言ではない非常に有名なモンスターです。現在の価値観ではやや物足りない性能にも見えますが、2012年当時においては飛び抜けたカードパワーを誇っており、年単位に渡って環境で活躍した過去を持つことで知られます。

 単純にエクシーズ効果を2つ持っているというだけでもこの時期のランク4としては優秀ですが、「交響魔人マエストローク」の場合はその両方が極めて実用的な効果であったことが上記のような華々しい実績に繋がったと言えるでしょう。

 1つ目の効果は「相手の攻撃表示モンスター1体を裏側守備表示にする」というもので、分類上は「月の書」や「月読命」などと系統を同じくする疑似除去の一種に当たります。

 つまり、それらと同様の強み(と弱み)を持っていたということであり、この時点で既に当時の汎用ランク4の域を超えたスペックを秘めていました。一応、効果範囲の関係でコンボ利用は難しいという欠点はありますが、純粋に疑似除去として見るだけでも破格の利便性を誇ります。

 特に当時は「月読命」がまだ禁止カード指定を受けている状況だったため、これを根拠として「マエストは禁止級」理論(※)なるものが一部で囁かれていたこともありました。

(※しかし、この半年後の2012年9月の改訂で「月読命」が現役復帰したため、この風潮は間もなく自然消滅しています)

 

「破壊されない1800打点の月読命」という怪物

 ともあれ、当時の「交響魔人マエストローク」は前半の効果だけを見てもパワーカードの部類にあったことが窺えますが、前述したようにこのカードにはもう1つ強力な効果が存在します。

 「交響魔人マエストローク」の2つ目の効果は、「自分の【魔人】エクシーズが破壊される場合、代わりにその素材を1つ取り除く事ができる」という効果を付与する永続効果です。一見すると若干ややこしいテキストですが、要するに【魔人】カテゴリのエクシーズモンスターに回数制限付きの破壊耐性を与える効果であり、その意味では【魔人】デッキの専用サポートのような立ち位置にある効果です。

 しかし、この耐性付与効果は当然「交響魔人マエストローク」自身にも対応するため、単純に破壊耐性持ちアタッカーとして運用することもできます。というより、現役時代の「交響魔人マエストローク」の耐性付与効果は99%がこの使い方だった(※)と言っても過言ではありません。

(※ちなみに、残りの1%は「竜魔人 クィーンドラグーン」を守る使い方です)

 カードプールの増加によって破壊以外の除去が増えていたとはいえ、やはり除去の基本が破壊効果であったことは間違いなく、「交響魔人マエストローク」の耐性効果も非常に強力に作用します。「交響魔人マエストローク」そのものがアタッカーを牽制する効果を持っていたことも相乗効果を生み出し、汎用ランク4とは思えないほどの場持ちの良さを誇っていました。

 そのため、「月の書」効果を当てる先がない状況で出しても損はせず(※)、先置き、後出しの両方で戦果を出せる強カードという評価を受けるに至っています。

(※とはいえ、やはり「月の書」効果を活かせる場面で出す方が強いため、安易な先置きはなるべく控えるべきとも言われていました)

 これらを総括すると、「交響魔人マエストローク」というカードは「破壊されない1800打点の月読命」というシンプルに強すぎる怪物だったことが分かります。当時の汎用ランク4の中では明らかにカードパワーが頭一つ抜けており(※)、エクシーズ期におけるインフレが「交響魔人マエストローク」をきっかけに始まったことは恐らく間違いないでしょう。

(※参考までに、この頃は「ジェムナイト・パール」がランク4の筆頭アタッカーとして活躍していた時代です)

 

守備1800未満の壁 「マエストライン」の成立

 当然のことながら、「交響魔人マエストローク」の誕生は当時の環境に対しても大きな影響を及ぼしました。汎用ランク4エクシーズというカードの性質上、非常に多くの局面においてこれと遭遇する可能性を考慮しなければならなくなったからです。

 なおかつ、上述の通り交響魔人マエストローク」には「奈落の落とし穴」などの破壊系除去が効かないため、伏せカードがあったとしてもこれをケアできないケースは決して少なくありません。そのため、素の守備力が1800を下回るモンスターはそれだけで自動的に弱点が1つ増えることになり、結果として守備力1800を境目に「マエストライン」と呼ばれる基準が新たに成立したという経緯です。

 具体的には、「ヴェルズ・オピオン」や「インヴェルズ・ローチ」などのメタモンスターを筆頭に、「A・O・J カタストル」や「始祖の守護者ティラス」といった疑似耐性持ちのアタッカーに至るまでが相対的に弱体化し、少なからず信頼性を落とす結果に繋がっています。

 一方で、交響魔人マエストローク」に突破されないという点で評価を上げたカードも多く、中でも「No.12 機甲忍者クリムゾン・シャドー」の躍進は一際目を引くものがありました。丁度【甲虫装機】というランク5を多用するデッキが存在していたこともあり、これ以降は環境の常連モンスターとして一気に流行が進んでいます。

 その他、変わったところでは【HEROビート】の「デュアルスパーク」を釣り出すことにも使えるなど、非常に幅広い範囲で活躍を見せていました。当時の汎用ランク4エクシーズとしてはとにかく使い勝手の良さが抜群に優れており、ランク4が入るデッキであれば100%に近い採用率を叩き出していたと言っても過言ではありません。

 いずれにしても、「交響魔人マエストローク」の存在が当時のOCG環境を大きく左右していたことは間違いなく、2012年代における最強のランク4エクシーズとして名を馳せていくことになりました。

 

【まとめ】

 「交響魔人マエストローク」についての話は以上です。

 2012年当時のランク4エクシーズとしては露骨に強すぎるデザインがなされていたパワーカードであり、実際に参入直後からランク4の筆頭カードとしての地位を確立しています。スターターデッキ出身というポピュラーな生まれだったことも使用率の高さを後押ししており、まさに第8期という時代の始まりをこれ以上なく明確な形で示していたカードだったのではないでしょうか。

 ……と言っても、将来的には「交響魔人マエストローク」ですら太刀打ちできないほどの強力なランク4がバーゲンセールのように大量発生することになるのですが、それまではエクストラの必須カードとして多くのプレイヤーに愛用され続けていたカードです。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。