H-C エクスカリバー参戦 【アライブHERO】の成立

2019年10月23日

【前書き】

 【第8期の歴史2 ギアギガントX誕生 【代償マシンガジェ】環境上位へ】の続きになります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

攻撃力4000 ランク4版オベリスクの衝撃

 レギュラーパック「RETURN OF THE DUELIST」から現れたもう1人の大型ルーキー、それは「H-C エクスカリバー」と呼ばれるランク4エクシーズでした。

戦士族レベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動できる。このカードの攻撃力は、次の相手のエンドフェイズ時まで元々の攻撃力の倍になる。

 当パックのパッケージイラストを飾るトップレアにして、長らく【戦士族】関連デッキのエースモンスターを務めた往年の名カードです。自身の攻撃力を倍化するというシンプルに強烈な打点強化効果を持っており、素の打点と合わせて攻撃力4000の大台に自力で到達することができます。

 現在では「SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング」や「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」の後塵を拝している印象は拭えませんが、やはり攻撃力4000というステータスは2012当時のゲームバランスにおいては衝撃であり、さながら「ランク4版オベリスク」とでも言うべきカードとして多大な期待を受けていました。

 実際、この時期の環境には「H-C エクスカリバー」を打点で上回るモンスターはほぼ存在しなかったため、純粋なアタッカーとしては盤石の信頼性を築いていたと言っても過言ではありません。一応、「交響魔人マエストローク」などの破壊耐性持ちモンスターを突破できず、「エフェクト・ヴェーラー」にも妨害されるといった弱点はありましたが、それでも戦士族2体が無敵の戦闘要員に早変わりするというのはやはり破格です。

 もちろん、これほどのカードが当時の環境で注目されないはずがなく、参入早々に【戦士族】関連デッキを中心にエクストラの必須枠へと収まることになります。

 

【HEROビート】の伝家の宝刀 ライフ4000は即死圏内

 当然のことながら、この時期に「H-C エクスカリバー」の採用先として持ち上がった筆頭デッキは【HEROビート】でした。

 元々戦士族主体の【HEROビート】では素材縛りもほぼ気にならず、なおかつ【HEROビート】自体が4軸の土台として一定の適性を持っていたことがその理由として挙げられます。また、当時のトップデッキであった【甲虫装機】に素で有利を取ることができたというメタゲーム面の優位性もあり、【HEROビート】そのものが勢いを増していた背景も無関係ではありません。

 いずれにしても、これ以降の環境で「H-C エクスカリバー」との遭遇率が無視できないものになったことは間違いなく、多くのデッキは常にこれを警戒した立ち回りが求められるようになりました。同じく高火力アタッカーとしては「機甲忍者ブレード・ハート」が既に存在しましたが、こちらは冥府の使者ゴーズ」や「トラゴエディア」ですら防げない完全ワンショットであり、ライフを4000に減らした瞬間に危険域に入ってしまうことは避けられなかったからです。

 一方、【HEROビート】側にとっても「H-C エクスカリバー」の存在が与えた影響は大きく、具体的には相手のライフを4000以下に減らすことが一種の王手として働くようになっています。これまで「ミラクル・フュージョン」と「E・HERO The シャイニング」による実質3200打点が最高火力だったことを考えれば非常に大きな進歩であり、これ以降は【メタビート】でありながら疑似的なワンショットデッキとしても振る舞えるようになりました。

 また、エクシーズ素材を瞬時に2つ取り除けることもメリットとして機能しており、ミラクル・フュージョン」との併用によって6000~7000前後のライフを取れるようになったのも大きな変化です。これも「機甲忍者ブレード・ハート」にはこなせなかった芸当であり、当時の【HEROビート】にとって「H-C エクスカリバー」の誕生が如何に大きな意味を持っていたかが窺えます。

 事実上、従来よりも遥かに緩い条件で従来以上の瞬間火力を出せるようになった格好であり、これを受けて【HEROビート】はメタゲームにおける支配圏を一気に拡大させていくことになりました。

 

バブルマン急浮上 パワーカードの仲間入り

 こうした【HEROビート】界隈の盛り上がりの中で起こった出来事として特に有名なのは、これに前後してE・HERO バブルマン」の評価が急上昇したことだったのではないでしょうか。

手札がこのカード1枚だけの場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に自分のフィールド上と手札に他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローする事ができる。

 現在では名の知れた【HERO】モンスターの1体であり、一時期は制限カードに指定されていたこともあるほどのパワーカードですが、これ以前の環境では全くと言っていいほど注目されておらず、単刀直入に言って弱小カード扱い(※)を受けていたことは否めません。

(※とはいえ、従来の融合召喚主体の【HEROビート】界隈では評価が低かったのも無理はありませんが……)

 しかし、「H-C エクスカリバー」の誕生によって4軸の重要性が急激に上昇した結果、その戦法に高い適性を発揮する「E・HERO バブルマン」の評価が見直され、次第に【HEROビート】界隈では欠かせない存在になっていったというのが大まかな流れです。

 実際、E・HERO エアーマン」からこれをサーチすることで即座にランク4エクシーズを展開できることの意味は大きく、下記で解説している【アライブHERO】では必須カードの立ち位置を確立したほか、従来の【HEROビート】でも1~2枚の採用が検討されるほどの大躍進を遂げています。これまで「E・HERO アナザー・ネオス」1択という状況(※)にあった【HEROビート】界隈においては革命的な出来事であり、カードプールの変化によってカードの評価が激変する好例と言えるエピソードです。

(※一応、過去には「E・HERO オーシャン」が【オーシャンビート】のキーカードとして脚光を浴びています)

 また、メインギミックの段階から高い瞬間火力を出せるというのは当時のワンキル環境にも噛み合っており、実質的には「使うしかないカード」と化している部分も少なからずありました。

 

【アライブHERO】の成立 ワンキル搭載の【メタビート】

 しかし、この時に【HEROビート】界隈に起こった出来事は「E・HERO バブルマン」の再評価だけではありません。

 とりわけ【HEROビート】界隈を動かしたのはワンキル御用達カードである「ヒーローアライブ」の発見、そしてそれに伴う【アライブHERO】の台頭に他ならなかったのではないでしょうか。

自分フィールド上にモンスターが表側表示で存在しない場合、ライフポイントを半分払って発動する事ができる。自分のデッキからレベル4以下の「E・HERO」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

 元々「ヒーローアライブ」そのものは【アライブ剣闘獣】などを中心に既に実績を残していたカードですが、この時点までの【HEROビート】ではデッキコンセプトの関係上わざわざこれに頼る利点が薄く、採用実績をほとんど残していない状況に置かれていました。

 しかし、ワンキル戦術の補助としてこれを取り入れるのであれば話は別であり、膨大なライフコストや発動条件の噛み合わなさといった各種デメリットを実質的に無視してしまえるようになります。さながら「ライフコストが重いなら反撃される前に倒せばいい」とでも言うべき踏み倒し志向はまさに逆転の発想に他ならず、これを発見したことが【HEROビート】全体の活性化に大きく寄与していたことは間違いありません。

 その結果、次第にメタビ戦術とワンキル戦術の優先度が逆転していき、遂には「ヒーローアライブ」をメインに据えた型として【アライブHERO】の成立に至ったというのが大まかな事の経緯です。従来の【メタビート】要素を軸にした【HEROビート】とは根元からコンセプトを異にするアーキタイプ(※)であり、これ以降は似て非なる勢力としてメタゲームに再参入を決めています。

(※とはいえ、完全にメタビ戦術を切り捨てたわけではなく、むしろ総合的には「ワンキルを搭載した【メタビート】」に近いデッキでした)

 一方で、発動に際し膨大なライフを消耗することに変わりはないため、ワンキルを防がれると一転して窮地に陥ってしまうことは避けられません。

 よってワンキルできる算段がなければ基本的には使用してはならないタイプのカードなのですが、それはつまり「ゲーム序盤では事実上の死に札となるカード」ということでもあります。言い換えれば手札が1枚少ない状態でゲームが始まるようなものであり、ヒーローアライブ」を初手に握ることは必ずしも有利にはならないという落とし穴(※)が存在するのです。

(※現在のゲームスピードではあまりピンとこない話ですが、当時は「アライブは温存するもの」という考え方が主流でした)

 この落とし穴を認識していないとおかしなことになるため、ワンキルという派手な外見に反して「メタビ戦術からワンキル戦術にシフトするタイミングの見極め」が重要になる中上級者向けのデッキでもありました。もちろん、手札によっては「E・HERO エアーマン」のサーチカードとして使ってしまった方がいいケースもありますが、その状況においても1ターン待った方がいい場合も多く、細かな択ミスが敗因になり得る気難しさを抱えていたことは否めません。

 しかし、そうした扱いにくさを補って余りあるデッキパワーを秘めていたことは間違いなく、2012年3月環境における有力デッキとして大々的に活躍しています。実際に当時の選考会でも代表の一角を射止めるという華々しい実績を残しており、この時代こそが【アライブHERO】最大の全盛期であったと言えるのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「H-C エクスカリバー」及び【アライブHERO】についての話は以上です。

 攻撃力4000という目に見えて明らかな強みを持っていたカードであり、今一歩及ばない立ち位置にあった【HEROビート】を再び環境上位に押し上げたほか、新たなアーキタイプとして【アライブHERO】を成立させるといった大きな実績を残しています。また、これ以降はライフ4000が即死圏内と認識されるようになるなど、このカードの参入による環境への影響は決して小さなものではありません。

 現在では時代の流れによって第一線からは退いてしまっているカードですが、やはり年単位に渡って【戦士族】のエースを務めた功績は大きく、今なお「ランク4版オベリスク」の強さと恐ろしさが印象に残っているという方は少なくないのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。