「疫病」が禁止カードになった理由
【前書き】
「疫病」というカードが存在します。
疫病(えきびょう)
装備魔法
戦士族・獣戦士族・魔法使い族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は0になる。また、自分のスタンバイフェイズ毎に、装備モンスターのコントローラーに500ポイントダメージを与える。
パッと見る限り何とも評価し辛い類のカードであり、強い弱い以前にそもそも何に使えばいいのかすらよく分からない微妙すぎる効果を持っています。一応、「装備魔法」「攻撃力を0にする」「継続バーン効果」とカタログスペック的には唯一無二の性能を持つカードではあるのですが、はっきり言ってしまうと文字通り毒にも薬にもならないようなマイナーカードの一種です。
ところが、このたび「疫病」に対して臨時リミットレギュレーションが適用され、2021年2月20日から同年3月31日までの間、特例で禁止カード指定を受けることになりました。一見すると意味不明な決定ですが、どことなく悪さができそうなテキストに見えないこともないため、何らかのコンボに悪用された末の禁止指定を疑ってもおかしくはありません。
しかしながら、今回の改訂は通常のリミットレギュレーションとは根本的に毛色が異なり、OCG的な事情とは一切無関係な形での規制となっています。
この記事では、そんな「疫病」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。
「あまびえさん」配布 疫病退散の願いを込めて
一言に理由と言っても、実際どう説明するべきなのか今一つ判断しかねる部分もあるため、ひとまず公式サイトの文章をそのまま引用します。
延期となっておりました「あまびえさん」プレゼントキャンペーンの開始が、2021年2月20日(土)に決まりましたのでお知らせします。
また、「疫病退散」の願いを込めたこのキャンペーン実施に合わせて、以下のカードについて臨時リミットレギュレーションを適用します。
臨時適用リミットレギュレーション
■ 禁止カード:「疫病」
■ 適用期間: 2021年2月20日(土)~2021年3月31日(水)なお、プロモーションカード「あまびえさん」は、多くの方に手にしていただけるよう生産しておりますが、在庫状況は各店舗で異なりますのでご了承ください。
配布枚数:全国10万枚
こういった場で触れるべきか分からないため具体的な単語は出しませんが、いわゆる例の騒動と関連した企画に伴う特例的な禁止カード指定となっており、一種の願掛け的な規制であることが見て取れます。それだけと言ってしまえばそれだけの話であり、何らかのデリケートな背景(※)が存在するというわけではありません。
(※別TCGで言うゴジラのような事例ではないためご安心ください)
しかし、個人的にあと一歩掘り下げて考察するのであれば、「あまびえさん」による疫病退散の効能をフレーバーではなく現実のものとするための規制ではないかと考えています。
分かりやすく噛み砕いてまとめると下記の通りです。
①:「あまびえさん」が配布されることで「疫病」が禁止カードになる。
②:「あまびえさん」の配布が終わると「疫病」が制限解除される。
③:①、②により、「あまびえさん」に疫病退散の効能があることが証明される。
これにより「あまびえさん」があたかも実際に「疫病」を封じ込めていたかのような状況が成り立つため、何となく本当に「あまびえさん」というカードそのものに疫病退散のご利益がありそうな気がしてくるという寸法です。単に「疫病」を禁止行きにして疫病退散を祈願するのではなく、「あまびえさん」の御力によって「疫病」が禁止カードになったのだ、という逸話を「現実に」作り出すことで疫病退散の祈願効果をより高めているということであり、単なる言葉遊びでは終わらない一捻り効いた秀逸な企画であると言えます。
加えて、大本のプレゼントキャンペーン自体が元ネタであるアマビエ妖怪の逸話(※)とも綺麗に絡んでいる点を含め、非常にユニークかつ粋な計らいであることは間違いありません。
(※詳しくはWikipedia等をご覧ください)
要するに結論としては「あまびえさん」に箔付けを施すためのパフォーマンスの一種であり、これをどう解釈するかは人によって意見が分かれるところではないかと思います。
個人的には「まあそういうのもアリか」という感じでユーモアの一種として解釈していますが、どちらにせよOCG的な実害は無いに等しい以上、こういった企画は変に斜に構えず素直に受け取っておくのが良いのかもしれません。
【まとめ】
「疫病」についての話は以上です。
一見すると何に使うのか分からないカードでありながら、実際本当に何に使えばいいのか分からないカードであり、しかも何に使うか分からないまま禁止カード行きになるという偉業を成し遂げてしまったカードです。実際には記事の通りゲームバランス的な観点とは無関係な形での規制ですが、何にせよ遊戯王の歴史に名を残すカードの1枚となったことは間違いないのではないでしょうか。
ちなみに、折角の機会ということで個人的に「疫病」をキーカードにしたデッキを組もうと思い立ったところ、あまりにも取っ掛かりが無さすぎて匙を投げてしまいました。一体何に使えばいいのか、専門家の研究が待たれるところです。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
おそらくサプライズ的に登場するはずだったあまびえさんの配布が延期になったため、改めて盛り上げるための話題作りの一環でしょうかね
こういう形の禁止指定は前代未聞なので面白いとは思いますが、何で疫病だけ禁止に?とも思いますね。
同族感染ウイルスや疫病ウイルスブラックダストとかは無事なのがなんとも言えない気持ちに…
コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、メタ的な事情で言うと延期で企画がコケるのを防ぐための話題作りという印象が強いように思います。記事に載せてしまうとご利益が薄れてしまいそうなので言及は避けましたが……。
他の疫病系カードが見過ごされていることについては、あくまでも「疫病」退散祈願である以上は「疫病」以外を規制してしまうと言葉遊びが崩れてしまい、面白みがなくなってしまうと考えております。遊戯王的に言うと「融合」指定か「融合」魔法カード指定かの違いみたいなニュアンスです。
ひねくれた話ですが、これを機にネタで疫病でなんかコンボできないかと考えた人は多そうですね
自分にバーンを入れて動けないかとか、攻撃力0にすることで無理やり何かできないかとか個人的にも考えてみたのですが、何をやろうとしても上位互換のカードが見つかってしまい……中々難しい
コメントありがとうございます。
個人的に考察した結果としては、バーン効果は流石に悠長すぎるため無いものと考え、「イゾルデでサーチ可能な攻撃力0にする系のカード」という線で攻めてみようと考えました。
しかし、やはり攻撃力を0にすることをメリットに変換する方法がなく、少なくともイゾルデと絡めるコンボは全く思いつかなかったため、最終的には匙を投げた次第です。せめて「遺言の札」が使用可能カードなら少しだけ面白いことができたのですが……。
そら攻撃力0にしてさらに500バーンまで毎ターンついてる壊れカードやしそら禁止になるわな。
コメントありがとうございます。
攻撃力を100にして毎ターン500ダメージ与える「魔界の足枷」ならまだギリギリ許せた面もありましたが、やはり攻撃力を0にして毎ターン500ダメージとなると流石に強すぎたのかもしれません。
攻撃力を0にする能力が、すごく可能性を感じさせますが、難しい…
ただ単体では何使えばいいのか分からないようなカードも将来的には活躍する(かもしれない)ところが遊戯王の楽しいところですよね。
コメントありがとうございます。
実際の例で言うと「ライフチェンジャー」などがそうですが、明確な上位互換カードが存在しないカードはどのようなものであれ日の目を見る可能性を秘めているように思います。それでも「疫病」に関しては流石に苦しすぎる感は否めないですが、いつか禁止行きとまでは言わないまでも何かのコンボで使われる日が来るかもしれません。
かつて無くガバガバな内容で笑いました
情報知らなかったんで、タイトルだけ見て何かループコンボでも見つかったか!?とか思っちゃいました
コメントありがとうございます。
禁止行きの経緯が経緯ということでOCG的な観点から語れることがほぼなく、かといって文字稼ぎに元ネタ側の解説を取り上げるのも何か違うという感はあり、結局内容が薄い記事になってしまいました。力不足で申し訳ありません。
【不謹慎】ってどう組んでもファンデッキにしかなりませんよね
【フルバーン】寄りでも【天変地異コントロール】寄りでも
コメントありがとうございます。
疫病に関しては当時以降あまり動向を追えていなかったのですが、【不謹慎】なる謎のアーキタイプが成立していることに軽く衝撃を受けています。しかも何やら型が複数あるらしく……記事の最後でも(半ば冗談寄りに)述べましたが、どんなカードにも本当に専門家が出てきてしまう辺りに遊戯王の奥深さを垣間見た次第です。