血の代償騒動 上級モンスターを生け贄なしで召喚

2017年11月23日

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【前書き】

 【第1期の歴史8 ゲーム同梱ランダム収録 なかなか手に入らない超レアカード】の続きになります。ご注意ください。

 希少価値の高いレアカードとしても、ゲームで有用なパワーカードとしても需要を満たすカードが誕生し、遊戯王OCGは高価格コンテンツとしての側面を併せ持つようになりました。

 とはいえ、当時はまだ一部の例外にとどまり、またこの頃からショップ側の設備も充実し始めていたため、一定金額の投資で実用に耐えうるデッキを組むことができるカードゲームであったと記憶しています。

 

【当時の環境 1999年7月17日】

 1999年7月17日、新たに40種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは317種類となり、徐々にそのカードプールの全容は窺い知れないものとなっていきます。

 しかし、この時に誕生したカード群は、残念ながらそのほとんどが性能の低いカード、いわゆる塩カードによって占められていました。

 モンスターカード、魔法カード共にめぼしいカードはなく、辛うじて「勇気の砂時計」がその珍しい効果から人目を集めた程度です。

強そうで弱い 勇気の砂時計

・このカードが表になった時から3ターンの間、このカードの攻撃・守備力は半分に、4ターン目以降は倍になる。

 「勇気の砂時計」の素のステータスが攻撃力1100、守備力1200だったことから、倍化が成立すれば攻撃力2200、守備力2400と「カース・オブ・ドラゴン」を上回る戦闘力を得られます。

 また、このカウントはお互いのターンを数えるため、このカードを召喚した1ターン目、次の相手ターンで2ターン目、返しの自分ターンで3ターン目と、実質1ターンだけ相手から守り切れば倍化が成立します。

 しかし、その1ターンを乗り切るのが至難の業であり、「光の護封剣」や「鎖付きブーメラン」と合わせて使わない限り、まず生き残らせることはできませんでした。

 相手がリソースを使い切っている状況では単体でも生存が期待できますが、そもそもそれだけ有利であれば普通の下級アタッカーを出して攻め込む方が動きとしては強いでしょう。

 総じて、一定のリターンは期待できるものの扱いにくさが目立ち、積極的にデッキに採用されるカードではありませんでした。

 とはいえ、倍化を成功させれば場がそこそこ盛り上がるということもあり、デッキに1枚忍ばせておくのも悪くない選択ではありました。

 ……ちなみに、当時の私の周りでは「光の護封剣」で守って倍化させるのは「何となく反則扱い」という謎の空気があり、これを破るとギャラリーが相手プレイヤーの味方になってしまう、というよく分からないデメリットを抱えていました。

 以上のことから分かるように、この時期はモンスターカードでは「勇気の砂時計」のみ、魔法カードに至っては収穫無しという不作の状況となっていました。

コンバットトリックの概念 攻撃力500アップ

 しかし、ここまであえて触れてこなかった分類のカードが残っています。

 罠カードです。

 見るべき部分に乏しかった上記のカード群とは一転して、罠カードには実用性の高いカードが集中していました。

 まずは「援軍」というカードです。

・モンスター1体の攻撃力は、発動ターンのみ500ポイントアップ! このカードはターン終了後破壊される。

 任意のモンスター1体の攻撃力を、ターン終了時まで500上昇させる効果を持っています。1ターン限りの単体強化カードであり、前回の「鎖付きブーメラン」の下位互換に近いカードですが、当時はこれですら十分に優秀な効果となっていました。

 このカードの修整値は「岩石の巨兵」などの壁モンスターが「ホーリー・ドール」などのアタッカーを返り討ちにできる数値であり、更には「ホーリー・ドール」が「カース・オブ・ドラゴン」を戦闘破壊できる数値でもあります。

 まさに絶妙な強化値と言う他なく、このカードの存在は当時の環境に多大な影響を及ぼしました。「鎖付きブーメラン」よりも遥かに入手しやすかったという都合もあり、多くのプレイヤーがこれを使用し、また逆に相手に使われる形となりました。

 結果的にゲーム中におけるセットカードへの警戒度が上昇し、駆け引きの重要性は更に高まっていくこととなります。

 また、「援軍」の対のカードとしてか、「城壁」という単体強化カードもこの時に誕生しました。

・モンスター1体の守備力は、発動ターンのみ500ポイントアップ! このカードはターン終了後破壊される。

 こちらは攻撃力ではなく、守備力を上昇させます。しかしながら、守備力を一時的に上げるだけでは有用な効果とは言い難く、「援軍」と比べて若干影の薄いカードとなっていました。

 

【ローカルルール 正しい使い方が分からないカード達】

 最後に挙げるのは「血の代償」という永続罠カードです。

・1体につき500ライフポイントを支払う事で、通常の召喚とは別にモンスターを召喚できる。

 一見して分かりにくいテキストですが、要するにライフを払って召喚権を増やすような効果です。もちろん、正確には全く違う処理ではありますが、分かりやすさを重視してこのような簡略な説明としております。

 永続罠カード故に何度でも効果を使用できるため、手札のモンスターをずらずらと並べていくことができます。一気に盤面の合計打点を増やせることから、相手のライフ計算を狂わせられる点で優秀なカードです。

 しかし、実際のゲームでは手札にモンスターが溜まることはあまりなく、誕生当時のカードプールでは真っ当な活躍は難しいカードとなっていました。

 言い換えれば、真っ当でない活躍の機会はあったということです。

 この「血の代償」というカードはテキストの曖昧さから大きな混乱を招いた存在であり、「500ライフを払えば上級モンスターも召喚できる」という勘違いをしたプレイヤーを一定数生み出してしまいました。当時はカードの裁定を知る手段がほとんどなく、多くの場合、ショップの中で浸透しているローカルルールが全てという状況にあったことがその原因です。

 これは「血の代償」に限らず、当時の全てのカードに当て嵌まっていたことでもあります。相手のデッキのモンスターも破壊する「サンダー・ボルト」などはその最もたる例でしょう。

 インターネットなどの情報網が今ほど普及していなかったこともあり、情報の入手手段は人づてに知る、あるいは書籍で知るなど、いずれもローカルなものに限られていました。

 しかし、当時は書籍ですら解釈を間違えているということも珍しくなく、むしろプレイヤーの混乱を助長している部分すらありました。

 そして、仮に正しい裁定を知っているプレイヤーが居たとしても、それが本当なのか嘘なのか判断できず、結局多数派の意見が優先されてしまいます。

 私の居たところでは運良く正確な裁定が浸透していましたが、この不安定な状況下ではそうではなかった場所も少なくなかったと推測できます。

 こういった事情から、「血の代償」が一部の場所で不当な高評価を受けてしまうという事態が発生してしまいました。私は実際にその光景を見た訳ではありませんが、場所によっては法外な値段でこのカードが取り扱われていたこともあったようです。

 環境に対しても非常に大きな影響を及ぼしていたと考えられます。実際に「血の代償」を使う場合、【血の代償最上級】とでも呼ぶべきデッキが生まれていたのではないでしょうか。

 この数ヶ月後、「血の代償」が再録されたスターターデッキ同梱のルールブックにこの勘違いを訂正する記述が存在したため、開発側もこの問題を重く見ていたことが分かります。

 ひょっとすると、このカードの再録自体がこの騒動に対する回答だったのかも知れません。

 

【まとめ】

 さて、今回の記事では「勇気の砂時計」「援軍」「血の代償」の3枚に絡んだ話を致しました。

 「勇気の砂時計」はネタを、「援軍」は警戒を、「血の代償」は騒動を、それぞれプレイヤーに提供しました。

 また、上では触れませんでしたが、実は攻撃力1600の下級モンスターが2体ほど収録されていたため、アタッカーラインが完全に1600まで塗り替えられるという変化もありました。

 もはや攻撃力1500では通用しなくなり、やはり緩やかに攻撃力インフレが起きていることが分かります。もっと言えば、モンスターのステータスだけでなく、様々な面においてカードパワーの上昇が感じられる時期でした。

 実際、ネタ扱いの「勇気の砂時計」も、二ヶ月前に誕生していればもっと使われていたことでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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