儀式魔人リリーサーが禁止カードになった理由
【前書き】
「儀式魔人リリーサー」というモンスターが存在します。
効果モンスター
星3/闇属性/悪魔族/攻撃力1200/守備力2000
①:儀式召喚を行う場合、その儀式召喚に必要なレベル分のモンスター1体として、墓地のこのカードを除外できる。
②:このカードを使用して儀式召喚したプレイヤーから見て相手は、儀式召喚したそのモンスターがモンスターゾーンに表側表示で存在する限り、モンスターを特殊召喚できない。
言わずと知れた【儀式召喚】界隈におけるリーサルウェポンであり、このカードの存在が儀式デッキを組む理由になるとまで言われる非常に強力な儀式サポートです。誕生時点では【儀式召喚】自体が弱すぎたせいで日の目を見ることはありませんでしたが、【影霊衣】などが現れる第9期頃から環境レベルで活躍し始め、結果として周辺カードの多くを規制に追い込んだ実績(※)を持ちます。
(※海外では「儀式魔人リリーサー」本体が禁止カード指定を受けました)
その一方で、あくまでも【儀式召喚】の専用サポートにとどまるという免罪符によって長らく規制を免れていましたが、このたび2020年4月改訂をもって遂に禁止カード行きを宣告されることになりました。
この記事では、そんな「儀式魔人リリーサー」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。
リリーサークラウソラス「相手だけ特殊召喚封じ」
結論から申し上げれば、「儀式魔人リリーサー」の禁止カード化は上記の免罪符が通じなくなったこと、要するに【儀式召喚】の専用サポートの域を超えて脅威を振り撒くようになったことが引き起こしたと言えるでしょう。
その主因となったのは、やはりと言うべきか「リリーサークラウソラス」ギミックの存在です。
「リリーサークラウソラス」とはその名の通り、「儀式魔人リリーサー」と「クラウソラスの影霊衣」を組み合わせた特殊召喚封じコンボを指します。このページでは詳しい仕組みにまでは触れませんが、簡単に言えば「儀式魔人リリーサー」をあらかじめ墓地に落としておき、「クラウソラスの影霊衣」でサーチした「影霊衣の反魂術」によってその捨てた「クラウソラスの影霊衣」を儀式召喚することで「儀式魔人リリーサー」の効果の適用を狙うコンボです。
具体的な展開ルートについてはいくつかのパターンが存在するため、ここでは雛形にあたるハリファイバールートを例として取り上げます。
①:「水晶機巧-ハリファイバー」をリンク召喚し、効果で「幻獣機オライオン」をリクルートする。
②:「水晶機巧-ハリファイバー」を素材に「リンクロス」をリンク召喚し、効果でリンクトークン2体を特殊召喚する。
③:「幻獣機オライオン」とリンクトークン(1体目)を素材に「武力の軍奏」をシンクロ召喚する。(※蘇生効果は不使用推奨。理由は後述)
④:「幻獣機オライオン」の効果で幻獣機トークンを特殊召喚する。
⑤:「武力の軍奏」とリンクトークン(2体目)を素材に「虹光の宣告者」をシンクロ召喚する。(※「虹光の宣告者」はチューナー扱いとなる)
⑥:「虹光の宣告者」と幻獣機トークンを素材に「シューティング・ライザー・ドラゴン」をシンクロ召喚する。
⑦:「シューティング・ライザー・ドラゴン」のシンクロ召喚時の効果で「儀式魔人リリーサー」を墓地へ送り、「虹光の宣告者」の効果で「クラウソラスの影霊衣」をサーチする。
⑧:「クラウソラスの影霊衣」の効果で「影霊衣の反魂術」をサーチする。
解説のために一旦ここで展開を止めますが、手札に「影霊衣の反魂術」、墓地に「儀式魔人リリーサー」及び「クラウソラスの影霊衣」が存在する状況を作れるため、この時点で「リリーサークラウソラス」が成立することが分かります。
つまり実質的には「水晶機巧-ハリファイバー」1枚から「リリーサークラウソラス」に繋がるようになってしまったということであり、コンボ成立条件の緩さ、また出張適性の高さはかつての比ではありません。分かりやすく言えば「クリッター.」が「虚無空間」を内蔵するようになったため、もはやこれが儀式サポートという枠組みを完全に逸脱していることは明らかでしょう。
【リリーサードラグーン】 【ドラグーンビート】最終形態
そして、そんなリリクラギミックを最も有効活用できるデッキこそが【リリーサードラグーン】だったわけです。
⑨:「リンクロス」「シューティング・ライザー・ドラゴン」を素材に「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」をリンク召喚する。
⑩:「影霊衣の反魂術」を発動し、墓地の「儀式魔人リリーサー」を除外して「クラウソラスの影霊衣」を儀式召喚する。
⑪:「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」の効果で「真紅眼融合」をコピーし、「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」を融合召喚する。
⑫:適当なモンスターを対象に「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」の①の効果を発動し、それを「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」で無効にして破壊する。
これにより、相手の特殊召喚だけを一方的に封じつつ万能カウンターを構えられる布陣が整います。通常の【ドラグーンビート】の弱点である「超融合」や【壊獣】などが一切通じず、更には「冥王結界波」を受けても「儀式魔人リリーサー」の特殊召喚メタ効果は消えないため、その凶悪さは数ある制圧布陣の中でもトップクラスです。
なお、手順⑫のアナコンダ自滅展開は一見すると意味不明ですが、これは「ラーの翼神竜-球体形」をケアした動きとなります。モンスターが3体以上存在する状況ではリリース除去によって布陣を突破されてしまうリスクがあるため、そうした数少ない抜け道を潰すための変則展開として定着しました。
もっとも、上記の理不尽鬼畜布陣にも弱点がないわけではなく、例えば「時械神カミオン」や「ナイト・ドラゴリッチ」といったカードには1枚で崩される危険があります。
しかし、これも「彼岸の黒天使 ケルビーニ」を経由できるルートであれば「シューティング・ライザー・ドラゴン」から「妖精伝姫-シラユキ」を墓地に落とすだけでケアできてしまうため、十分な回答になっているとは言えない面もありました。そもそも「無限泡影」などの適当な妨害を足されるだけで呆気なく希望が潰える以上、根本的にカード1枚でどうにかできるレベルを超えています。
とはいえ、曲がりなりにも手札が6枚存在する以上、抵抗の術が少なからず残されていることは確かです。
つまり、物理的に回答を潰してくる往年の「トポロジック・ガンブラー・ドラゴン」のハンデスギミックと比べればまだしも救いがあると言えなくはないでしょう。
しかし、どちらかというと五十歩百歩の議論であり、健全か不健全かで言えばどう考えても不健全です。
いずれにしても、「儀式魔人リリーサー」の存在が【リリーサードラグーン】という怪物を世に憚らせる元凶の1つとなっていたことは間違いありません。
よって結論としては、今回の「儀式魔人リリーサー」に対する規制は否定の余地なく妥当な措置だったと言えるのではないでしょうか。
【まとめ】
「儀式魔人リリーサー」についての話は以上です。
かつての「王宮の弾圧」や「虚無空間」がそうであったように、一方的に特殊召喚を封殺するカードの存在はゲームバランスの劣悪化を招きやすく、多くの場合その存在自体が環境に悪影響を及ぼします。これまでは曲がりなりにも【儀式召喚】の専用サポートであるという免罪符から規制を免れていましたが、第10期終盤のこの時をもって遂に現役を終えることとなりました。
個人的には、「儀式魔人リリーサー」だけでなくそもそもの元凶をどうにかするべきではないかとも思っていますが……。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
リリーサー禁止になったのか….。
リリーサー自体は出たときから効果は強いって有名だったけど、
リチュアやデミスくらいしかまともな儀式テーマがなかったし、それらでも採用されてるのは見たことなかった。
キャノンソルジャーみたいに周りのインフレが根本的な問題な気がする。
コメントありがとうございます。
リリーサーは「どうせ儀式だから大丈夫だろう」みたいな感じで印刷されたのではないかと思えるほど、書いてあることだけは強いカードだったように思います。しかしインフレの影響で悪用方法が増えすぎた結果、遂に御用となりました。
個人的には【影霊衣】時代に少しお世話になった恩もあり、若干の物寂しさを感じる改訂でもありました。
正直神光の宣告者が出た時点でリリーサーは禁止になると思っていたので10年遅かったなと思っていましたが、この頃はまだ儀式魔法そのものが弱めで手札の確保が難しいのもあって許されていたのでしょうね。
リリーサーをサーチ・墓地送りの手段も増え続けましたし流石に許されなくなったのは仕方ないと思います。
コメントありがとうございます。
リリーサーは当初は効果自体の強さはともかく実用性はあまりなく、基本的にはファンデッキ向けのカードと言われていましたが、カードプールが広がった現代では流石に許される性能ではなくなってしまったと感じます。今となってはサーチできる虚無空間に近いカードと化してしまっていますし、今後現役復帰することも恐らくは無いだろうというのが個人的な見解です。
シンクロ時代以降から特殊召喚系のモンスターカードが増えたからそれも含めて禁止にされたんだろうけど やはり一番の影響はネクロかな
コメントありがとうございます。
リリーサーは当初はあくまでも儀式専用のサポートカードという扱いでしたが、今となっては実質どこからでもサーチ可能な虚無空間と化してしまっていますし、もはや禁止から動かすのは困難な存在になってしまっているように思います。