デーモンの召喚 上級打点の革命
【前書き】
【第1期の歴史9 血の代償騒動 上級モンスターを生け贄なしで召喚】の続きとなります。ご注意ください。
カードプールの増加により、遊戯王OCGのゲーム性は次第に拡大していく形となりました。
優秀な魔法・罠カード、強力な効果モンスター、双方が増加し始めたことにより、デッキの採用枠はそれらのカードで占められていくことになります。
対して、効果を持たない通常モンスター達の肩身は徐々に狭くなっていきました。特に生け贄が必要となる上級以上のモンスターの立場は悪くなる一方で、プレイヤーによっては全く採用しないということすらあったほどです。
不遇の立場に置かれていた通常モンスターでしたが、この時、あるカードの誕生により状況が一変します。
圧倒的に優遇されたステータスを持つ上級モンスター、「デーモンの召喚」の誕生です。
【当時の環境 1999年7月22日】
1999年7月22日、「Vol.4」が販売され、新たに50種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは367種類となり、前身のバンダイ版に対してトリプルスコアをつける形となりました。
ステータスの怪物 デーモンの召喚
さて、この時に誕生したカード群の中で、一番の目玉となっていたのはもちろん「デーモンの召喚」です。
星6/闇属性/悪魔族/攻撃力2500/守備力1200
何と言っても、目に付くのはその規格外とすら言える攻撃力でしょう。レベル6の上級モンスターにして「ブラック・マジシャン」と同等の打点を持ち、生け贄1体で召喚できるモンスターとしては破格のコスト・パフォーマンスを誇ります。
特に重要だったのが、「岩石の巨兵」などの壁モンスターを戦闘破壊できる点です。
これまでの上級モンスターの攻撃力は、「カース・オブ・ドラゴン」の2000が最高打点となっていました。下級モンスターには一方的に打ち勝てる反面、守備力2000の壁モンスターには打点不足であり、単体では攻撃を受け流されてしまうという問題を抱えていました。
しかし、「デーモンの召喚」であれば、これを難なく突破することができます。
事実上、「デーモンの召喚」に対しては壁が壁として機能しなくなり、壁モンスターを伏せていても安泰は得られなくなりました。
相手フィールドにモンスターを残すリスクが目に見えて上昇した瞬間でもあります。下級アタッカーの召喚に対応して壁モンスターを置くプレイングは、最善の行動とは呼べないものになりました。
しかし、壁モンスターは単純に弱体化した訳ではなく、ある意味では更に重要性が高まっていました。依然として下級モンスターには突破されない堅牢さを保持していたことから、「デーモンの召喚」の生け贄要因として極めて優秀だったからです。
後出しの壁モンスターが比較的脆くなってしまった一方で、先出しの壁モンスターへの対処が難しい事実は変わっていません。つまり、当時の壁モンスターは相手の「デーモンの召喚」とは相性最悪である反面、自分の「デーモンの召喚」とは相性最高である(※)という複雑な関係にありました。
(※しかし、やはり総合的には弱体化を受けてしまったことは否めず、次第に採用枠を削られていっています)
このように、「デーモンの召喚」の存在は当時の環境に大きな影響を与えました。
しかしながら、上級モンスターとしてあまりにも優秀過ぎたことから、これ以外の上級モンスター達が軒並み戦力外通告を受けてしまう事態に繋がってしまいます。
デッキには「デーモンの召喚」3枚のみが採用されるケースが大半となり、とうとう「青眼の白龍」すら第一線から退いていくことになりました。
魔法サルベージ 聖なる魔術師
さて、ただステータスが高いというその一点だけで環境に躍り出た「デーモンの召喚」でしたが、同期の効果モンスターも負けてはいません。
優秀なサルベージ効果を持つリバースモンスター、「聖なる魔術師」の誕生です。
「聖なる魔術師」の表示が表になった時、自分の墓地から魔法カード1枚を手札に加える。
リバース時に任意の魔法カードを墓地から回収する効果を持っています。「人喰い虫」以来の3積み確定クラスのパワーカードであり、とにかくアドバンテージを失いにくいという強みがありました。
回収対象となることが多かったのは「強欲な壺」で、確実にアドバンテージを得られる非常に強い動きです。「強欲な壺」で1アド、サルベージ効果で1アド、回収した「強欲な壺」で1アド、と計3アド稼ぐことができます。
4枚ドローによって2枚目の「聖なる魔術師」を引き込むことを狙えるのもポイントで、その場合は更なるアドバンテージを獲得可能です。潤沢な手札はプレイヤーに絶大な有利をもたらし、手なりでプレイしても勝てるほどでした。
即効性のある対応が必要な場合は除去を回収することもありましたが、上記のような上振れに期待し、「強欲な壺」で引きにいくケースもありました。
「デーモンの召喚」に勝るとも劣らない影響を環境に及ぼしたモンスターであり、当時のプレイヤー達のセットモンスターへの警戒度は更に上昇していく形となります。
罠サルベージ 闇の仮面
また、「聖なる魔術師」の対のカードとして、「闇の仮面」も誕生しました。
「闇の仮面」の表示が表になった時、自分の墓地から罠カード1枚を手札に加える。
魔法カードではなく罠カードを回収する効果を持っています。一見すると「聖なる魔術師」と同格の存在に見えますが、残念ながら前記事における「援軍」と「城壁」の関係に近い状況にありました。当時は有用な罠カードが少なく、「聖なる魔術師」と違って常に使用の機会がある訳ではなかったため、汎用性の時点でかなりの差をつけられていたことがその理由となります。
更に、回収先のカードについても、魔法カードには「強欲な壺」「サンダー・ボルト」「ブラック・ホール」「死者蘇生」「光の護封剣」とそうそうたる面子が揃っていたのに対し、罠カードでは「落とし穴」「鎖付きブーメラン」「死のデッキ破壊ウイルス」程度です。
流石に役者が違うと言わざるを得ず、それに釣られる形で「闇の仮面」もそれなりの評価に落ち着く形となりました。
とはいえ、これまでに生まれてきた効果モンスター達の中では上位に入るカードパワーを持っていることは間違いなく、構築によっては十分に選択肢に入りうる1枚ではありました。
特に、「闇の仮面」は攻撃力1000以下の闇属性モンスターでもあったことから「死のデッキ破壊ウイルス」の媒体となることができ、これらを3枚ずつフル投入して【死のデッキ破壊ウイルス】を構築する猛者も居たほどでした。
扱いにくい種族メタカード
その他、一風変わったカードとして、「戦士抹殺」を始めとした種族メタカードの誕生もあります。
フィールド上の戦士族モンスターは、すべて破壊される。
テキストから読み取れる通り、特定の種族に対しての全体除去効果を持ったカード群となります。
しかし、それ以外のモンスターには全くの無力である上に、裏側表示のモンスターにも対応していません。メタカードとしても扱いにくく、そもそも当時は除去カードも十分に種類が増えていたため、あえてこれらのカードを使う理由はありませんでした。
また、密かに「封印されし者の右足」もこの時のカード群に紛れ込んでいました。同シリーズでは3枚目の謎のカードであり、その復元度は60%となっています。
【まとめ】
「デーモンの召喚」の台頭によって他の上級モンスターに声がかかることはなくなり、全体的に優秀なカードが増えてきたことで「ハネハネ」や「『守備』封じ」などのベターなカードもデッキから抜けていく形となりました。
しかし、私はどうしても「青眼の白龍」を抜くことができず、1枚だけデッキに挿していました。あまり合理的とは言えない選択ではありましたが、稀にこれが「デーモンの召喚」を殴り倒すこともあり、侮れない活躍をしていました。
もっとも、出番が来ないまま手札で燻っていることの方が多かったのですが……。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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