エンシェントフェアリードラゴンが禁止カードになった理由

【前書き】

 遊戯王OCGにおける禁止カードの1つに、「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」と呼ばれるシンクロモンスターが存在します。

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。
また、1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。フィールド上のフィールド魔法カードを全て破壊し、自分は1000ライフポイント回復する。その後、デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える事ができる。

 これ自体は2009年というシンクロ時代中頃に現れていたカードですが、当初は単体ではほぼ役に立たない性能から扱いにくいカードとされており、他の7シンクロと比較して明らかに不遇なポジションに置かれていました。もちろん、当時においても光るものはあると言われていたことも事実ですが、やはり根本的にカードパワーが低すぎる(※)面があったことは否めません。

(※そのため、俗に「他力本願竜」などと揶揄されていた時期すらあります)

 一方で、フィールド魔法を起点に動くコンボデッキではキーカードとして声がかかることも多く、実際に【神風ワンキル】や【ノーデンワンキル】などの先攻1キルデッキのコンボパーツとして悪用された実績もあります。とはいえ、これもどちらかと言うと周辺カードの悪影響によるところが大きく、「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」そのものが問題の本質だったわけではありません。

 ところが、こうした背景をよそに「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」は2018年1月の制限改訂で突如禁止カード指定を下されるという結末を迎えることになります。上述の経歴だけを判断材料とするならば明らかに不当な話であり、一見すると「とばっちり規制」を疑ってもおかしくはないところです。

 この記事では、そんな「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説します。

 

「竜の渓谷+デストルドー」展開パッケージの確立

 ひとまず先に結論から言ってしまいますが、乱暴にまとめれば「単体で使っても普通に強すぎる性能になったから」という理由に集約されます。

 要するにコンボパーツとしての枠組みを抜け出してパワーカードの仲間入りを果たしたということであり、いわゆる「カードプールの拡大に伴って強化されたカード」に分類されるモンスターです。また、エクストラデッキに用意できるという性質上「無制限のままにするか禁止にするか」の2択となってしまう背景もあり、その2択であれば禁止にするしかないという判断による規制だったと言えるでしょう。

 流石に具体的な使用方法を1つ1つ取り上げていくと日が暮れてしまうため、ここでは直前の環境で最も多用されていた「竜の渓谷」+「亡龍の戦慄-デストルドー」による展開パッケージを例に説明を進めます。

・手札に「竜の渓谷」(+手札コスト1枚)、フィールドに「レベル6以下のモンスター」が存在する場合

 

①:「竜の渓谷」の効果で「亡龍の戦慄-デストルドー」を墓地に落とす。

 

②:フィールドの「レベル6以下のモンスター」を対象に「亡龍の戦慄-デストルドー」を自己蘇生する。

 

③:「亡龍の戦慄-デストルドー」と②のモンスターを素材に「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」をシンクロ召喚する。

 

④:「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」の効果で「竜の渓谷」を破壊し、任意のフィールド魔法をサーチする。(+1000LPゲイン)

 

⑤:(任意)手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 

 分かりやすく言えば「竜の渓谷」がテラ・フォーミング」と「切り込み隊長」を足したカードに化けるということであり、これは現代遊戯王においては相当強烈なパワーカードです。一応、特殊召喚効果を使用した場合はバトルフェイズを行えなくなるデメリットもありますが、これも先攻1ターン目であれば事実上無視できるため、展開自体の用途を考えればあってないようなリスクでしょう。

 

決定打は【SPYRAL】における濫用 制圧展開ルートの要

 とはいえ、恐らくこれだけでは実際に何がどう強いのかが分かりにくいと思われるため、ここからは上記の「渓谷トルドー」展開を応用すると何が起きてしまうのかを解説します。

 具体例として、「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」現役当時の環境トップであった【SPYRAL】における展開ルートのうち1つを下記に示します。

・手札に「SPYRAL-ジーニアス」「竜の渓谷」(+手札コスト1枚)が存在する場合

 

①:「SPYRAL-ジーニアス」を召喚し、効果で「SPYRAL GEAR-ビッグ・レッド」をサーチする。

 

②:「竜の渓谷」の効果で「亡龍の戦慄-デストルドー」を墓地に落とし、フィールドの「SPYRAL-ジーニアス」を対象に「亡龍の戦慄-デストルドー」を自己蘇生する。

 

③:「亡龍の戦慄-デストルドー」と「SPYRAL-ジーニアス」を素材に「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」をシンクロ召喚する。

 

④:「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」の効果で「竜の渓谷」を破壊し、「SPYRAL RESORT」をサーチする。(+1000LPゲイン)

 

⑤:「SPYRAL RESORT」を発動し、効果で「SPYRAL-ダンディ」をサーチする。

 

⑥:「SPYRAL GEAR-ビッグ・レッド」で「SPYRAL-ジーニアス」を蘇生し、効果で「SPYRAL GEAR-ドローン」をサーチする。

 

⑦:「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」の効果で手札から「SPYRAL GEAR-ドローン」を特殊召喚する。

 

⑧:「SPYRAL GEAR-ドローン」の効果で相手のデッキトップを操作する。

 

⑨:手札から「SPYRAL-ダンディ」を特殊召喚する。(※宣言は⑧で操作したカード)

 

⑩:上記4体を素材に「セキュリティ・ドラゴン」「SPYRAL-ザ・ダブルヘリックス」をそれぞれリンク召喚する。

 

⑪:「SPYRAL-ザ・ダブルヘリックス」の効果で「SPYRAL-グレース」をリクルートする。(※宣言は⑧で操作したカード)

 

⑫:「SPYRAL-グレース」の効果で「SPYRAL MISSION-救出」をサーチする。

 

⑬:「セキュリティ・ドラゴン」「SPYRAL-グレース」を素材に「デコード・トーカー」をリンク召喚する。

 

⑭:「SPYRAL-グレース」の効果で「SPYRAL RESORT」と「SPYRAL-ジーニアス」をサーチする。

 

⑮:手札の「SPYRAL-ジーニアス」をコストに墓地の「SPYRAL-ジーニアス」を自己蘇生し、効果で「SPYRAL GEAR-ドローン」をサーチする。

 

⑯:手札の「SPYRAL MISSION-救出」をコストに「SPYRAL-ジーニアス」を自己蘇生し、効果で「SPYRAL GEAR-ドローン」をサーチする。

 

⑰:「SPYRAL-ジーニアス」2体を素材に「森羅の姫芽宮」をエクシーズ召喚する。

 

⑱:「デコード・トーカー」「森羅の姫芽宮」を素材に「ファイアウォール・ドラゴン」をリンク召喚する。(※位置は中央)

 

⑲:墓地の「SPYRAL GEAR-ドローン」「SPYRAL GEAR-ビッグ・レッド」を除外し、「SPYRAL-ダンディ」をサルベージする。

 

⑳:手札の「SPYRAL-ダンディ」をコストに「SPYRAL-ジーニアス」を自己蘇生し、効果で「SPYRAL GEAR-ラスト・リゾート」をサーチする。

 

㉑:手札の「SPYRAL GEAR-ドローン」をコストに「SPYRAL-ジーニアス」を自己蘇生し、効果で「SPYRAL GEAR-マルチワイヤー」をサーチする。

 

㉒:「SPYRAL-ジーニアス」2体と「SPYRAL-ザ・ダブルヘリックス」を素材に「ファイアウォール・ドラゴン」をリンク召喚する。(※位置は右内側)

 

㉓:「ファイアウォール・ドラゴン」(中央)の効果で手札から「SPYRAL GEAR-ドローン」を特殊召喚する。

 

㉔:墓地の「SPYRAL MISSION-救出」を除外し、「SPYRAL-ザ・ダブルヘリックス」を蘇生する。(※位置は右端)

 

㉕:「SPYRAL GEAR-ドローン」を素材に「リンクリボー」をリンク召喚する。

 

㉖:「ファイアウォール・ドラゴン」(中央)の特殊召喚効果にチェーンして「ファイアウォール・ドラゴン」(右内側)のサルベージ効果を発動する。(※対象は「SPYRAL GEAR-ドローン」「セキュリティ・ドラゴン」「SPYRAL-グレース」の3体)

 

㉗:「ファイアウォール・ドラゴン」(中央)の効果で手札から「SPYRAL-グレース」を特殊召喚する。

 

㉘:「SPYRAL RESORT」を発動し、効果で「SPYRAL-ジーニアス」をサーチする。

 

㉙:「リンクリボー」「SPYRAL-グレース」を素材に「セキュリティ・ドラゴン」をリンク召喚する。

 

㉚:「ファイアウォール・ドラゴン」2体の効果で手札から「SPYRAL GEAR-ドローン」「SPYRAL-ジーニアス」をそれぞれ特殊召喚する。

 

㉛:「SPYRAL GEAR-ドローン」「ファイアウォール・ドラゴン」(右内側)を素材に「プロキシー・ドラゴン」をリンク召喚する。

 

㉜:「ファイアウォール・ドラゴン」の効果で手札から「SPYRAL GEAR-ラスト・リゾート」を特殊召喚する。

 

㉝:墓地の「SPYRAL GEAR-ドローン」「SPYRAL RESORT」を除外し、「SPYRAL-ダンディ」をサルベージする。

 

㉞:「プロキシー・ドラゴン」「SPYRAL-ジーニアス」を素材に「トライゲート・ウィザード」をリンク召喚する。(※位置は右内側)

 

㉟:「ファイアウォール・ドラゴン」の効果で手札から「SPYRAL-ダンディ」を特殊召喚する。

 

㊱:「SPYRAL GEAR-ラスト・リゾート」「SPYRAL-ダンディ」を素材に「No.41 泥睡魔獣バグースカ」をエクシーズ召喚する。

 

㊲:「SPYRAL GEAR-マルチワイヤー」をセットする。

 

 流し読みするだけで目が痛くなってくるような展開ルートですが、ざっくり言えば「ゲームに勝利する」を意味する制圧布陣を築くことができます。実質的には上記の「渓谷トルドー」のモンスター部分をカテゴリカードに差し替えただけの応用結果であり、現代遊戯王において「フィールド魔法サーチ+特殊召喚」の組み合わせがいかに危険であるかが窺える話です。

 もちろん、この「渓谷トルドー」を利用していたデッキは【SPYRAL】だけではなく、例えば【ABC】では事実上の必須枠として扱われていました。単純に「テラ・フォーミング」の水増し要員として有用であることはもちろんですが、何より「ユニオン格納庫」でサーチしたユニオンモンスターをそのまま特殊召喚し、装備効果のトリガーとなる動きが非常に強力だったからです。

 そのため、規制の決定打という意味では【SPYRAL】における濫用が引き金になったと言えますが、実質的にはこうした拡張性の高すぎる展開パーツとしての働きこそが「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」禁止カード化の本質的な理由だったことは間違いないでしょう。

 

【まとめ】

 「エンシェント・フェアリー・ドラゴン」禁止カード化の背景については以上です。

 かつては微妙カードの代名詞のような扱いを受けていたモンスターですが、強力なフィールド魔法カードが増え始める第9期中頃を境に有用性を見出されていき、遂には9年越しに禁止カード入りを果たすという激動の生涯を送っています。元々悪用前提、というより悪用しないとまともに使いものにならないなどと言われていたとは思えない出世ぶりであり、文字通り生まれてくる時代を間違えていた「未来のカード」だったのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。