No.101 S・H・アークナイト アニメ出身の壊れエクシーズ

2019年11月20日

【前書き】

 【第8期の歴史22 励輝士ヴェルズビュート参戦 ランク4インフレの火付け役】の続きになります。特に、この記事では前中後編の中編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

「遊戯王ランク4モンスターズ」の始まり

 レギュラーパック「LEGACY OF THE VALIANT」から現れたトップレアの筆頭、それは「No.101 S・H・Ark Knight」と呼ばれるカードでした。

レベル4モンスター×2
このカードのエクシーズ素材を2つ取り除き、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする。
No.101 S・H・Ark Knight」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
また、フィールド上のこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。

 2013年当時のランク4エクシーズとしてはパッと見て分かるほどの壊れカードであり、実際に第9期中頃まで現役を務めた次世代エクシーズの一種です。前記事で取り上げた「励輝士 ヴェルズビュート」も当時としては何かがおかしいカードでしたが、こちらもそれに匹敵する異次元のカードパワーを内蔵しています。

 「特殊召喚されている攻撃表示モンスター」というやや限定された効果範囲ではあるものの、やはり破壊耐性を無視した除去効果を持っているというのは極めて破格であり、少なくとも第8期当時のゲームバランスにおいて許されていい効果ではありません。

 実際、当時は除去持ちランク4と言えば「No.50 ブラック・コーン号」が持ち上がっていたような時代であり、そうした価値観の中で現れた「No.101 S・H・Ark Knight」は率直に言って理解不能な存在でした。アニメ出身カード、それも主要キャラクターのエース格というデリケートな出自だったという事情もあるにはありますが、それを踏まえても流石にこんなデザインで世に送り出しまったのは明らかな調整ミス(※)と言わざるを得ません。

(※OCG化の際には素材縛りなどの弱体化修正が入るだろうと言われていました)

 もちろん、「No.101 S・H・Ark Knight」の強みは除去効果だけではなく、後半の破壊耐性についても負けず劣らずの反則性能です。

 というより、そもそも除去耐性を持った「サイバー・ドラゴン」というだけでも既に十分なほど強いのですが、相手モンスターを吸収した上でこれが場に居座るというのは明らかに何かが間違っています。ただでさえ強力な効果を2つも同時に持たせてしまった始末であり、いくら何でも盛り込み過ぎと突っ込まざるを得ないパワーカードだったと言えるでしょう。

 事実上、いわゆる「遊戯王ランク4モンスターズ」の先駆けとなったカードであり、「励輝士 ヴェルズビュート」とともにランク4のインフレを象徴するカードとして長らく語り継がれることになる存在です。

 

露骨な上位互換 マエストロークとは何だったのか

 しかしながら、「No.101 S・H・Ark Knight」の本当の問題点はこうしたカードパワー如何に関するものではなく、既に存在するカードの実質的な上位互換カードとして刷られてしまった事実にこそあります。

 「No.101 S・H・Ark Knight」誕生による被害を被った最大の犠牲者は「交響魔人マエストローク」でした。

 もちろん、多くのカードゲームがそうであるように、カードプールの増加に伴って上位互換カードが現れるのは当然と言えば当然の話ではあります。実際、「炸裂装甲」と「次元幽閉」の関係などがそうであり、こうした出来事を逐一取り上げるのは非常に不毛な話です。

 しかし、交響魔人マエストローク」は当時においてもパワーカードとして環境の最前線にあった現役エースであり、そのさらに上位互換をポンと出してしまうというのは流石に「それはない」と言わざるを得ません。せめて相互互換と言える部分が多少なりともあればまだしも救いがありましたが、この2枚を比較して「交響魔人マエストローク」を優先する合理的な理由は残念ながら皆無(※)です。

(※一応、「奈落の落とし穴」などを受けても除去効果を残せるなどといった優位点がないわけではありません)

 よってこれ以降「交響魔人マエストローク」は事実上カードプールに居ても居なくても変わらないカードに落ちぶれてしまい、環境で姿を見かける機会はほとんどなくなってしまっています。この直前まではランク4のエースとして君臨していたとは思えない凋落ぶりであり、インフレによる世代交代としてはあまりに唐突かつ露骨すぎると言うほかありません。

 一方で、かつて「交響魔人マエストローク」によってエースの座を降ろされた「ジェムナイト・パール」の評価が「交響魔人マエストローク」を抜き返すという逆転現象も起こっています。

 もちろん、純粋なカードパワーという意味では「交響魔人マエストローク」が上に位置していますが、エフェクト・ヴェーラー」や「デモンズ・チェーン」などの影響を受けずに済むという「No.101 S・H・Ark Knight」ですら持ち得ない強みを備えているため、その相互互換カードとして居場所を見出した格好です。

 実に2年越しに雪辱を果たした形であり、その点に限って言えば興味深い環境推移が起こっていたと言えなくもないのかもしれません。

 

「守備表示で特殊召喚」の定石 アークナイト環境の始まり

 その他、「No.101 S・H・Ark Knight」に絡んだ話として有名なのは、これ以降のゲームにおいて「モンスターは可能な限り守備表示で特殊召喚するべきである」という定石が浸透していったことでしょう。

 上述の通り、「No.101 S・H・Ark Knight」は当時のランク4としては破格の除去能力を持っていますが、効果範囲の関係上守備表示のモンスターには無力です。よってモンスターを先出しする際には守備表示で特殊召喚することで間接的に吸収効果を回避でき、これがそのまま「アークナイトケア」として広まっていった(※)というのが大まかな事の経緯となります。

(※しかし、逆に横出しした「閃珖竜 スターダスト」が適当な上級ラインに潰されるなどといった裏目もあるため、これを濫用しすぎると痛い目を見ることもありました)

 逆に言えば、ただカードプールに存在するだけで自動的に「レベル制限B地区」を適用してしまうほどの影響力を持っていたということでもあり、全盛期の「No.101 S・H・Ark Knight」の存在感は凄まじいものがあったと言うほかありません。

 単一のカードでありながら極めて広くゲームバランスに影響を及ぼしたOCG屈指のパワーカード(※)であり、歴代ランク4エクシーズの中でも間違いなくトップクラスの知名度を誇るカードです。

(※もっとも、末恐ろしいことにこのカードですら将来的には2軍落ちしてしまうことになるのですが……)

 

【後編に続く】

 「No.101 S・H・Ark Knight」についての話は以上です。

 もはやどこからどう見ても当時の平均カードパワーを大幅に超えていた凶悪ランク4エクシーズであり、「励輝士 ヴェルズビュート」とともに「遊戯王ランク4モンスターズ」の火付け役となったカードです。一応、エクシーズ召喚の実装から2年以上が経過していたという時代背景もあるにはありますが、だからと言ってこれほど露骨なパワーカードを刷ってしまうというのは流石に「飛ばし過ぎ」と言わざるを得ません。

 このように、遊戯王史に名を残す2体の怪物を輩出した「LEGACY OF THE VALIANT」でしたが、当然それ以外にも細かな出来事は少なからず起こっており、中でもとある中堅カテゴリが大きく強化されていたことには触れておく必要があるでしょう。

 後編に続きます。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。