遊戯王初期ルールの滅茶苦茶バランス 高攻撃力至上主義の札遊び

2017年11月14日

【前書き】

 【第1期の歴史2 ブルーアイズとサンボルを持っているプレイヤーが勝つゲーム】の続きとなります。ご注意ください。

 遊戯王OCGの開始から一ヶ月と少し、まだまだカードゲームとしての知名度は原作漫画にぶら下がる形で、純粋なゲームとしてというより、ファンアイテムとしての面が強く出ている時期でした。

 そんな空気を吹き飛ばすかの如く、3月18日から僅か9日後、3月27日に新たなカード群が誕生しました。

 前回ほどではありませんが、この時にも環境に大きな変化が起こっています。

 

【当時の環境 1999年3月27日】

 1999年3月27日、「Vol.2」が販売され、新たに40種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは172種類(「女剣士カナン」を合わせて)となり、順調にその規模を拡大させていました。

 

死者蘇生 蘇生カードの開祖

 この時に誕生したカードの中で、一番の注目を集めたのは何と言っても「死者蘇生」です。

相手か自分の墓場にあるモンスターを、自分のコントロールでフィールド上に出せる。

 最古にして最高の蘇生カードであり、現在までの全ての蘇生カードの基準になったカードと言っても過言ではありません。原作漫画においても象徴的とすら言えるカードで、カードゲーム的にもファンアイテム的にも文句の付けどころのないカードとなっていました。

 相手の墓地のモンスターに触れられるというのもポイントで、除去カードで処理した「青眼の白龍」を奪ってしまうなど、相手プレイヤーに精神的ダメージを与えるカードとしても活躍しています。

 もちろん、単純に自分のモンスターを蘇生させる使い方も強く、除去された最上級モンスターを戦線復帰させる数少ない手段として重宝されました。

 

光の護封剣 防御系カードの開祖

 次点で注目を集めたのは「光の護封剣」というカードです。

敵モンスターは全て3ターンの間攻撃できない。使用時に裏になっているモンスターを表向きにする。

 時間制限付きとはいえ、全てのモンスターに効果のある「ドラゴン族・封印の壺のようなものであり、反撃までの時間を稼ぐカードとして最高の評価を持つカードでした。

 ある意味で「死者蘇生」以上に環境に影響を与えたカードで、特に初期の頃は実際のカードパワー以上の高評価を受けていることが多かったと記憶しています。オブラートに包まずに言えば「ズルいカード」と揶揄されることも少なくなく、どことなく強さが一人歩きしている印象もあったカードです。

 とはいえ、もちろん強力なカードであることは間違いなく、最上級モンスターが飽和する当時においても存在感を示していました。

 また、カードの挙動そのものに関しても現在とは異なっています。

 現在は永続魔法のようにフィールドに残り続ける扱いですが、誕生初期は残存効果(発動後フィールドに残らず効果だけが適用される)扱い(※)であり、発動を通した後は対処不可能と裁定に優遇されたカードでもありました。

(※その後、1999年8月頃に現在と同じくフィールドに残り続ける裁定に変わっています)

 

カース・オブ・ドラゴン 攻撃力は上級レベル(元祖)

 さて、以上の2枚に比べれば小さな変化ですが、モンスターカードにも優秀なカードが誕生しています。

 まずは何と言っても「カース・オブ・ドラゴン」です。

星5/闇属性/ドラゴン族/攻撃力2000/守備力1500

 レベル5の上級モンスターであり、攻撃力は2000とそこそこ高い数値を誇ります。この時点ではまだ生け贄召喚の概念が存在しなかった関係上、当初は最上級モンスターの事実上の下位互換の位置付けにありましたが、エキスパートルール導入後には最強のアタッカーとして環境の最前線で活躍することになるカードです。

 また、単純に当時としては4番手の攻撃力を誇っていたため、カード資産の関係で繰り上がり的に最強の座についているケースもありました。実際、最上級モンスターには及ばないものの下級モンスターには負けない強さを持ち、先兵として優秀な働きをしていたのではないでしょうか。

 

ハープの精 壁モンスターという概念の成立

 最後に取り上げるのは「ハープの精」などの壁モンスターについてです。

星4/光属性/天使族/攻撃力800/守備力2000

 攻撃力は僅か800と実用に耐えない数値ですが、守備力はなんと2000であり、あの「アクア・マドール」と同じ数値に届いています。

 更に、当時スーパーレアだった「ホーリー・エルフ」はともかく、「ハープの精」はノーマルカードと比較的入手しやすいカードとなっていたことから、多くのプレイヤーがこれらのカードを使うようになりました。

 それにより、基本的に攻撃力一辺倒だった下級モンスターに「壁モンスター」という役割が生まれ、一定の影響をゲームに及ぼしました。この影響は環境に対してというよりプレイヤーに対してのものが大きく、「攻撃力だけでなく、守備力も重要だ」という認識がプレイヤー達に広がったのです。

 カードゲームとして戦略に幅が生まれた瞬間であり、歴史的な出来事の一つに数えられる変化と言えるでしょう。

 もっとも、やはり初期ルールの大味すぎるゲームバランスでは最上級モンスターに成す術がなく、この時点ではやや逆風の立場に置かれていました。これらの壁モンスターが真価を発揮するのはエキスパートルール導入以降の話です。

 

【まとめ】

 1999年3月27日当時に起きた大まかな出来事は以上になります。

 原作でも活躍した「死者蘇生」「光の護封剣」「カース・オブ・ドラゴン」の誕生、更には壁モンスターという新たな概念の成立など、遊戯王の歴史における重要な出来事があった時期です。

 とはいえ、結局のところ最上級モンスターばかりが活躍するゲームバランスに変化は訪れず、使用デッキは【生け贄無し最上級】一択という状況から全く動いていません。カード資産がそのままプレイヤーの強さに直結している格好であり、実質的には手持ちのコレクションを並べるだけの「札遊び」と大差ない状況です。

 原作漫画の再現という意味ではニーズに応えていたのかもしれませんが、カードゲームとしては停滞している状況でした。

 しかしこの直後、最上級モンスター至上主義だった当時の環境をひっくり返す、とある革命が起こることになります。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史