ライフチェンジャーが禁止カードになった理由
【前書き】
遊戯王における禁止カードの中に、「ライフチェンジャー」という罠カードが存在します。
お互いのライフポイントに8000ポイント以上の差があった場合に発動する事ができる。お互いのライフポイントは3000になる。
恐らくですが、このカードを見て真っ先に頭に浮かぶのは「弱い」という感想なのではないかと思われます。実際、強いか弱いかで言えば間違いなく弱いカードであり、それを裏付けるように登場から10年近くの間は全く注目されない(※)状況に置かれていたマイナーカードです。
(※というより、そもそも存在すらほぼ知られていませんでした)
しかし、そんな「ライフチェンジャー」は2016年4月の改訂で突如禁止カードに指定され、多くのプレイヤーを困惑させることになります。むしろ困惑どころか知名度が低すぎて正体不明の謎のカード扱いを受けていたほどですが、いずれにしても疑問の多い決定だったことは確かです。
この記事では、そんな「ライフチェンジャー」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。
ワンキルパーツとしての活躍 実質8000バーン?
まずは結論から言ってしまいますが、大まかには「ワンキルコンボのパーツとして悪用されたこと」が規制理由に当たります。
要するに「とばっちり規制」の一種であり、「ライフチェンジャー」ではなくその周辺カードの危険性を踏まえた規制です。実際に海外環境では「ライフチェンジャー」は今なお無制限カードのままであるため、本来であれば禁止カード指定そのものが不当な話であると言えます。
具体的にどのようなデッキで悪用されていたかについては下記の項目で解説していますが、コンボ単位においては以下のような手段が用いられていました。
①:「成金ゴブリン」「チキンレース」(及び「擬似空間」)などでドロー加速を行いつつ8000以上のライフ差を付ける。
②:相手のライフを3000にし、その直後に「マジカル・エクスプロージョン」(または「残骸爆破」)でとどめを刺す。
コンボの仕組み自体は非常にシンプルであり、実質的には1枚で8000以上のダメージを叩き出すバーンカードのような働きをしていることが分かります。コンボ前提とはいえバーンカードとしては規格外の効率であり、この点だけを見れば禁止カード指定もやむなしという判断になってもおかしくはないでしょう。
しかし、実際には後述の理由により「闇よりの罠」などで簡単に代用が効いてしまうため、「ライフチェンジャー」を規制したところで意味はほとんどなかったと言わざるを得ません。
実際、下記で取り上げている【マジエク帝】は後に【マジエク閃刀姫】として復活しているため、結論としてはとばっちりどころか完全な誤認逮捕だったのではないでしょうか。
先攻1キルデッキ【マジエク帝】の成立
「ライフチェンジャー」禁止カード化の背景に関しては以上ですが、ここからは上記でも軽く触れた【マジエク帝】について解説していきます。
モンスターカード(4枚) | |
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×3枚 | 冥帝エレボス |
×2枚 | |
×1枚 | 怨邪帝ガイウス |
魔法カード(34枚) | |
×3枚 | 擬似空間 |
チキンレース | |
帝王の深怨 | |
テラ・フォーミング | |
トレード・イン | |
成金ゴブリン | |
汎神の帝王 | |
無の煉獄 | |
×2枚 | 命削りの宝札 |
真帝王領域 | |
闇の誘惑 | |
×1枚 | 打ち出の小槌 |
強欲で謙虚な壺 | |
手札断殺 | |
魔法石の採掘 | |
罠カード(2枚) | |
×3枚 | |
×2枚 | |
×1枚 | マジカル・エクスプロージョン |
ライフチェンジャー | |
エクストラデッキ(0枚) | |
×3枚 | |
×2枚 | |
×1枚 |
【マジエク帝】とはその名の通り、【帝王】を土台に構成された【マジカルエクスプローション1キル】の一種です。「汎神の帝王」を始めとする強力なドローソースを駆使してデッキを1ターンでほぼ全て引き切り、その過程で墓地に溜まった魔法カードを種に「マジカル・エクスプロージョン」で超火力を叩き出す(※)というのが主なコンセプトにあたります。
(※そのため、【ドグマブレード】あるいは【ジャンクブレード】の実質的な後継デッキであると捉えることもできます)
この「デッキをほぼ全て引き切る」という表現は決して誇張ではなく、一旦デッキが回り始めた後は基本的にドローが止まることはありません。よって「マジカル・エクスプロージョン」のダメージは平均5000~6000前後に到達するため、これを何らかの方法でコピーするだけで先攻1キルが成立します。
当時においてはこの役割を上記の「ライフチェンジャー」が担っていたわけですが、既に述べた通り必ずしも「ライフチェンジャー」にこだわる必要はなく、「闇よりの罠」などであっても代替可能です。もちろん、確実にライフを3000に固定できる「ライフチェンジャー」の方がより適していることは事実ですが、規制すべきはどう考えても「マジカル・エクスプロージョン」の方(※)でしょう。
(※とはいえ、「ライフチェンジャー」の方も「残骸爆破」と併用することでワンキルが成立するため、根本治療としては海外のように周辺のドローソースを規制するのが最も無難な措置ではあります)
現在では諸悪の根源である「マジカル・エクスプロージョン」も禁止カード指定を下されていますが、その犠牲になった「ライフチェンジャー」も相変わらず禁止カード指定を受け続けており、恐らくは今後もこのまま放置されるのではないかというのが個人的な見解です。
【まとめ】
「ライフチェンジャー」についての話は以上です。
純粋なカードパワーはお世辞にも高いとは言えないカードであり、実際に当初は使い道すら分からないレベルのマイナーカードという扱いに甘んじていました。しかし、それから10年後にワンキルパーツとして悪用された結果、第9期後期にて突然の禁止入りを果たすことになります。
OCGにおける「とばっちり規制」の中でもトップクラスに不幸な事例であり、いわゆる「禁止カード場違い勢」の1人です。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
ひとつ気になったのですが、《ライフチェンジャー》を《闇よりの罠》で代用すると《成金ゴブリン》が使えなくなり、ドローソースが足りなくなってデッキが回らなくなる危険がありませんか?
《成金ゴブリン》を抜いても十分な勝率を確保できるほどの安定性が確保できるか疑問です。
コメントありがとうございます。
「闇よりの罠」の発動条件と「成金ゴブリン」のライフゲインは特に競合しませんので、2枚とも問題なく併用できます。
一応、ライフゲインの影響でライフを削り切れなくなる可能性が全くないとは言えませんが、記事の解説の通りマジエクのダメージは5000~6000前後が平均ですので、ほとんどの場合問題にならないのではないでしょうか。
(「成金ゴブリンを3枚全て発動している≒デッキをほぼ引き切っている」となるため、意図的にダメージを下げようとしない限りほぼ起こり得ない状況です)
まあこういうカードは「またワンキルバーン」が出た時の調整役にされて、「一枚あれば問題ないカード」の部類だから永久投獄でしょうね。
こういった事例の禁止カードの復帰は強い弱いじゃなくて「後顧の憂いを断つ」為なので二度と帰って来ないでしょう…
コメントありがとうございます。
性能だけを見れば間違いなく弱いカードですが、この類のカードは一度禁止になった時が最期というパターンが多いように思います。そしてあえて復帰させるメリットがあるかというとそういうわけでもなく、なんというか永久禁止というよりは「死んだカード」という印象が付いて回るカードです。