邪帝ガイウス参戦 最強の帝と言われたカード
【前書き】
【第5期の歴史33 【ドグマブレード】全盛期 成功率8割超えの先攻1キルデッキ】の続きとなります。ご注意ください。
遊戯王OCGでも最も美しいと言われる先攻1キルデッキ【ドグマブレード】が誕生し、当時のプレイヤーの間で大きな話題となりました。複数の要因によりトーナメントシーンでの活躍はあまり望めませんでしたが、知名度そのものは数ある先攻1キルデッキの中でもトップクラスと言っても過言ではありません。
騒動の種を取り込みつつも引き続き【ダムドビート】を頂点としたメタゲームが展開される中、年末のカードプール更新で再び環境に波紋が広がることになります。
邪帝ガイウス インフレを象徴する上級帝
2007年12月15日、ストラクチャーデッキ「帝王の降臨」が販売されました。新たに5種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは3016種類に増加しています。
この時期のストラクチャーデッキとしては珍しく完成度が比較的高く、再録商品としてはもちろん、デッキとしても程好くまとまった内容に仕上がっていた商品です。新規についても「D・D・R」といった優秀なカードが含まれており、第5期では最も売れたストラクと言っても過言ではないでしょう。
とりわけ売り上げに貢献したのは、看板モンスターである「邪帝ガイウス」の存在だったのではないでしょうか。
このカードの生け贄召喚に成功した時、フィールド上に存在するカード1枚を除外する。除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、相手ライフに1000ポイントダメージを与える。
上級帝シリーズの1体であり、召喚時の固有効果は「フィールドのカード1枚を除外する」というものです。また、その除外したカードが「闇属性モンスター」である場合は追加で1000ダメージを与えられるため、変則的なバーン効果を持っている(※)と考えることもできます。
(※特に「邪帝ガイウス」自身が闇属性であることから、自分を除去の的とすることで引導火力にする使い方は非常に有名です)
性能としては「シンプルに強力な汎用除去+α」という形であり、パワーカード揃いの上級帝の中でも最強候補と言われます。単純に万能除去であるために状況を選ばず使用できるほか、除外により墓地利用を含む多くの再利用ギミックを潰せるのは大きな魅力です。
もちろん、これ以前に現れていた「雷帝ザボルグ」「地帝グランマーグ」との性能差は比べるのも酷と言うほかありません。事実上は2枚とも「邪帝ガイウス」の下位互換カードに成り下がってしまった格好であり、逆に「邪帝ガイウス」の印刷が許されたこと自体がゲームバランスのインフレを物語っていたとも言えます。
当然、これほどのパワーカードが注目されないはずがなく、参入早々にトーナメントシーンの常連カードとして名を馳せていくことになりました。
実は不遇 ダムドの影に隠れた邪帝
とはいえ、そんな「邪帝ガイウス」であっても順風満帆の状況にあったわけではありません。
理由は簡単で、当時は「ダーク・アームド・ドラゴン」という最強クラスのライバルがメタゲームを支配していたからです。
この時期の環境は良くも悪くも「ダーク・アームド・ドラゴン」を中心に回っており、その基準に満たないカードは軒並み評価を落としている状況にありました。翻って「邪帝ガイウス」の性能を見た場合、このカードは生け贄1体と召喚権を消費し、やっとカード1枚分の除去と上級アタッカーを展開しているに過ぎません。
「ダーク・アームド・ドラゴン」とのカードパワー格差は火を見るより明らかであり、逆に言えば「ダーク・アームド・ドラゴン」の強さは最強の帝ですら届かない領域にあったということでもあるでしょう。
とはいえ、一応「フォッシル・ダイナ パキケファロ」「閃光の追放者」といった各種メタビモンスター、あるいは「D.D.クロウ」による墓地枚数潰しなどを苦にしないという優位性はあったため、完全な下位互換カードと見なされていたわけではありません。また属性的に【ダムドビート】と素で噛み合っているという強みもあり、むしろ準レギュラーとして声がかかる機会に恵まれていたカードです。
もっとも、【ダムドビート】自体が重量級デッキに分類されるという事情もあり、いたずらに併用しても事故要員になるばかりで活躍できないケースも少なくありません。そのため、無理に欲張らず潤滑油パーツを取り入れた方が結果的にデッキが引き締まる場合も多く、実際「邪帝ガイウス」を採用しないタイプの【ダムドビート】も当時は散見されました。
まとめると、単純にカードパワーのみを見て判断した場合、この時期の「邪帝ガイウス」は「ダーク・アームド・ドラゴン」の補欠扱いを抜け出せない状況にあったことは確かです。
メタデッキ【次元ビート】の流行
よって「邪帝ガイウス」の真価が発揮される場は、コンセプト的に「ダーク・アームド・ドラゴン」を採用できないデッキに用意されていたのではないでしょうか。
前述の通り、当時は【ダムドビート】がトップデッキとして覇権を握っていた関係上、それを対策したメタデッキがいくつも試されている状況でした。その中の一つに【次元ビート】があり、「邪帝ガイウス」とストラクの参入を受けて躍進を遂げた形となります。
もちろん、要因としては【次元ビート】自体が【メタビート】の中でもメジャーなアーキタイプだったことが一番の理由にあたりますが、やはりストラク3箱で9割方デッキのパーツが集まるという燃費の良さは非常に大きな魅力です。実際、この「帝王ストラク3箱買い」は一時期トレンドにもなり、長くはないものの品薄状態を引き起こしたこともあります。
その他、「スキルドレイン」を取り入れることで更にメタに寄せた【スキドレ次元】と呼ばれる型(※)も開発されており、これも有力デッキの一角として少なからず結果を残していました。
(※ただし、こちらは構成としては【スキドレバルバ】に近く、【帝コントロール】のギミックとは基本的に無縁です)
いずれにしても、この時期の「邪帝ガイウス」が【次元ビート】の代表として一世を風靡したことは間違いなかったと言えるでしょう。
【まとめ】
「邪帝ガイウス」についての話は以上となります。
第5期当時の基準としては高いカードパワーを持ったモンスターであり、実際に上級帝の中では最強と言われた存在です。しかし、その遥か上を行く「ダーク・アームド・ドラゴン」の影に隠れてしまっていた印象は拭えず、あまりにも参入時期が悪すぎたと言うほかありません。
とはいえ、「邪帝ガイウス」にも「邪帝ガイウス」なりの有用性はあり、実際に【次元ビート】のエースカードとしてトーナメントシーンでも多くの採用実績を残しています。むしろダムド全盛期の当時においてすら使われていたという意味では、「邪帝ガイウス」の強さが他の多くのカードを凌駕していた事実を示しているのではないでしょうか。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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