捕食植物ヴェルテ・アナコンダが禁止カードになった理由

2022年3月17日

【前書き】

 「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」というカードが存在します。

捕食植物ヴェルテ・アナコンダ(プレデター・プランツ ヴェルテ・アナコンダ)

リンク・効果モンスター
リンク2/闇属性/植物族/攻撃力500
【リンクマーカー:左下/右下】
効果モンスター2体
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはターン終了時まで闇属性になる。
②:2000LPを払い、「融合」通常・速攻魔法カードまたは「フュージョン」通常・速攻魔法カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。この効果は、その魔法カード発動時の効果と同じになる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分はモンスターを特殊召喚できない。

 恐らく水晶機巧-ハリファイバー」と並んで現代遊戯王を象徴するカードの1枚であり、誕生以降から年単位に渡って環境で活躍し続けてきたモンスターです。その知名度、及び影響力は全カード中でも屈指で、強さどうこうの段階を通り越し、もはやこのカードが存在しないカードプールは考えられないというレベルにまで到達していたと言っても過言ではありません。

 しかし、そんな「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」も2022年4月改定で遂に禁止カード指定を下され、その太く長い生涯を終えることになりました。

 この記事では、そんな「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。

 

お手軽デッキ融合 融合界隈のライフライン

 ざっくり結論を言ってしまうと、融合サポートとしての働きがあまりにも逸脱して優秀すぎたことが規制の理由であると言えます。

 これに関しては以前の関連記事でも再三取り上げているためこの場で改めて解説することはしませんが、要するに融合界隈におけるハリファイバー的存在(※)と化していたということであり、融合ギミックが多少なり絡むデッキにおいてはほぼ例外なくこのカードが使われていたと言っても過言ではありません。特に「真紅眼融合」や「フュージョン・デステニー」などのデッキ融合系カードとのシナジーは絶大であり、環境においてもしばしば問題を引き起こしていました。

(※ハリファイバーがどういう存在なのかについては下記の記事で解説しています)

 そのため、「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」の危険性は以前から指摘され続けており、いつ禁止行きになってもおかしくないカードではある(※)と言われていました。

(※詳しくは後述しますが、そう言われつつも禁止になる可能性は低いという意見が主流ではありました)

 よって今回の改訂で「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」が禁止カード指定を受けたこと自体はそれほど違和感のある話ではなく、いわゆる「来るべき時が来た」という具合の結論に落ち着くのではないでしょうか。

 

禁止にするほどではない? カードデザイン面の負担

 もっとも、現環境に限って言えば「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」は禁止にするほどの理不尽なパワーは持っていなかったことも確かです。

 一般的によく言われている通り、「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」はこれを立てる段階でモンスターを2体消費しているため、アドバンテージ面ではさほど得をしているわけではありません。むしろ融合先によっては損をしているとすら言えるほどで、見かけほど雑に強いカードではなかったのです。

 実際、前々期環境の「フュージョン・デステニー」などもアナコンダ経由ではなく素で発動した方が強いという意見が多く、一概にこのカードが悪いとは言い切れない部分もありました。また今期における【デスピア】などにとっても「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」はそれほど扱いやすいカードとは言えず、どちらかというと保険の意味合いが強いカード(※)だったことは事実です。

(※というより、なるべく使いたくないカードでした)

 もちろん、素引きできない時でも融合にアクセスできることこそがアナコンダ最大の強みではあるのですが、言ってしまえばそれは「損失を80点に抑えるカード」であるということの裏返しでもあります。

 つまり他の禁止カードのように物理的にカードパワーが狂っているタイプのカードではなかったため、巷で言われるほど「禁止になって当然の壊れカード」のような類の存在ではありませんでした。むしろこうした環境デッキ以上に中堅デッキにとっての大黒柱となっていた側面もあり、見方によってはカジュアル界隈に対するダメージの方が大きい規制となってしまった印象はあります。

 とはいえ、だからと言って「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」というカードの構造に問題が無かったかというとそんなこともなく、いわゆる「存在罪」を犯しているカード群に片足を突っ込んでいたことも否定はできません。

 上記項目でも軽く言及したように、「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」は融合サポートとしてはあまりにも優秀すぎるため、融合関連のアーキタイプを考える上ではこれの存在を考慮しないわけにはいきません。そしてそれはプレイヤーだけでなく恐らくは開発側にとっても同様で、とりわけ新規のカードデザイン面に負担をもたらすボトルネック(※)となっていたことは容易に推察できます。

(※これに関しては「水晶機巧-ハリファイバー」も同様ですが、あちらは一周回って完全に手遅れになってしまったパターンです)

 要するに捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」というカードがカードプールに存在していること自体の影響力が大きくなりすぎていたということであり、そうした商業上の都合も踏まえて考えるのであれば、やはり今回の規制は比較的妥当な話だったと言えるのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」についての話は以上です。

 良くも悪くも融合界隈のライフラインとでも言うべき存在であり、「水晶機巧-ハリファイバー」同様に生存ルートに入ったかと思いきや、実は全然そんなことはなかったという結末を迎えてしまっています。個人的には「フュージョン・デステニー」の入れ替え改定があるとすれば「D-HERO デストロイフェニックスガイ」だと考えていたため若干意表を突かれた感はありますが、何にせよ融合関連アーキタイプの多くにとって無視できない大事件となってしまったことは確かです。

 もっとも、逆に考えれば捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」の禁止カード化によってデッキ融合系のカードを新規にデザインしやすくなったと捉えることもできるため、案外このカードが居なくなったことが融合界隈にとって良い方向に作用するかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史