ドラグーン・オブ・レッドアイズが禁止カードになった理由
【前書き】
「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」というモンスターが存在します。
超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ(ちょうまどうりゅうきし-ドラグーン・オブ・レッドアイズ)
融合・効果モンスター
星8/闇属性/魔法使い族/攻撃力3000/守備力2500
「ブラック・マジシャン」+「真紅眼の黒竜」またはドラゴン族の効果モンスター
①:このカードは効果の対象にならず、効果では破壊されない。
②:自分メインフェイズに発動できる。相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。この効果は1ターン中に、このカードの融合素材とした通常モンスターの数まで使用できる。
③:1ターンに1度、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、手札を1枚捨てて発動できる。その発動を無効にして破壊し、このカードの攻撃力を1000アップする。
パッと見て「効果が強すぎる」と思わざるを得ないストロングスタイルなパワーカードであり、むしろ「強い」という単語以外にこれを形容する言葉はないと言えるようなカードです。当然その「強さ」は環境においても大々的に示されており、案の定2020年10月改訂で禁止カード指定を下されることになりました。
とはいえ、融合モンスターという重量級モンスターであることを鑑みれば不自然と言うほどのテキストではなく、一見すると「禁止カードにするほどなのか?」と考えてしまいそうなカードではあります。実際、単純な効果の強さだけであればこのカードを上回る融合モンスターは少なくなく、このカードの脅威に直面したことのないプレイヤーにとっては今一つピンとこない話であってもおかしくはありません。
この記事では、そんな「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。
「モンスター2体≒怪物」 アナコンダドラグーンの狂気
結論から言ってしまえば、「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の禁止カード化はそもそもこれが重量級モンスターでも何でもなく、むしろ軽すぎるモンスターだったことが招いた結果だと言えるでしょう。
①:「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」をリンク召喚する。
②:「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」の効果で「真紅眼融合」をコピーし、「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」を融合召喚する。
わざわざ記載する必要もないほどにシンプル極まりない動きですが、「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」1枚から「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」を展開するというコンボとも言えないコンボです。いわゆる「アナコンダドラグーン」として有名な汎用出張ギミックですが、要するに任意のモンスター2体を「効果破壊されず、対象にも取られない実質4000打点のモンスターに万能カウンターとバーン除去効果を付け足したカード」という怪物に変換できるということであり、これは現代遊戯王のゲームスピードにおいても相当狂気的な話です。
まさしく現代に蘇った「プトレノヴァインフィニティ」とでも言うべきギミックですが、こちらはタイムラグが発生せず、おまけにレベルの制約すらないなど凄まじいまでのパワーアップを遂げています。
一応、メインデッキに不純物を要求される点が弱いと言えなくはないですが、むしろたったそれだけのリスクでこんな面白コンボが決まるというのは中々の冗談だったのではないでしょうか。
もっとも、「禁じられた一滴」や「三戦の才」など有効な対策カードは多く、巷で言われるほどドラグーンによる塩試合が横行していたわけではありません。むしろ基本的には返しのターンで処理されるものと思っておいた方がよく、あくまでも単体戦力の域を出なかった(※)ことは事実です。
(※実際、直近の環境においても採用率は低下傾向にありました)
とはいえ、やはり「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の存在自体がOCG環境を歪めていたこともまた事実ではあります。
というより、上記で取り上げた対策カードに関してもこのカードの影響力(※)から流行していた側面もあり、実際これらを握れずに「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の定着を許した結果、ドラグーン1枚にボコボコにされてしまうといったゲーム展開も決して珍しい話ではありませんでした。
(※それどころか、「三戦一滴はドラグーンを止めるために印刷された」などという噂すらまことしやかに囁かれていたほどです)
いずれにしても、「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」のカードパワーが健全な範囲を逸脱していたことは明白であり、これに対する禁止カード指定は極めて妥当な措置(※)だったと言えるのではないでしょうか。
(※また、この影響で「真紅眼融合」が一気に無制限カードまで釈放されています)
禁止行きにするべきはアナコンダの方ではないかという疑惑
しかしながら、「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」を取り巻く疑問点はもう1つ残っています。
「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」の存在です。
捕食植物ヴェルテ・アナコンダ(プレデター・プランツ ヴェルテ・アナコンダ)
リンク・効果モンスター
リンク2/闇属性/植物族/攻撃力500
【リンクマーカー:左下/右下】
効果モンスター2体
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはターン終了時まで闇属性になる。
②:2000LPを払い、「融合」通常・速攻魔法カードまたは「フュージョン」通常・速攻魔法カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。この効果は、その魔法カード発動時の効果と同じになる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分はモンスターを特殊召喚できない。
簡単に言えば「2000LPをコストにデッキから融合系カードをコピーする」というカードであり、こちらはこちらで中々に前衛的なテキストです。当記事で取り上げている「真紅眼融合」はもとより、「超融合」を手札コストを踏み倒して撃つ、あるいは「影依融合」を1ターンに2回発動するなど割とやりたい放題できるため、「禁止行きにするべきはアナコンダの方ではないか」という声も少なからず散見されていました。
実際、「兎と蜘蛛を混ぜるとドラグーンになる(※)」などというよく分からない法則を生み出してしまったのは間違いなくこのカードの責任であり、有罪か無罪かで言えば有罪寄りのカードであることは事実でしょう。
(※「転生炎獣アルミラージ」+「リンク・スパイダー」のセットで大多数のモンスターを素材に変換できることから)
とはいえ、問題の本質がどちらにあるかを考えた場合、やはり「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の方に歪みがあると見るべきです。
正直これに関しては五十歩百歩ではないかという印象もなくはないのですが、例えば元禁止カードである「エルシャドール・ネフィリム」なども融合モンスターの中では相当強力なカードであり、これを「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」で出せるというのは非常にパワフルな話です。
しかし、実際にはこの「アナコンダネフィリム」ギミックは取り立てて問題視はされておらず、このことから多少融合先が強かったとしても「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」が問題を引き起こすわけではないということが分かります。
要するに「アナコンダドラグーン」の問題点は「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」が「多少」の域に収まり切らないほど強すぎることが招いた結果であり、禁止カード指定を下すべきはやはりそちらであると言えるわけです。上記項目で語った通り「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」というカード自体が強すぎることは否定しようがなく、これを簡単に出せること以上にこのカードがそもそも壊れています。
もちろん、「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」も何かがおかしいと言ってしまえばその通りのカードではあるため、結局のところ責任を2人で押し付け合っているだけ(※)なのではないか、という疑惑がちらついてしまうところではあるのですが……。
(※結局「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」も禁止カード行きになりました)
【まとめ】
「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」についての話は以上です。
とにかく「強い」としか表現できないような強烈すぎるカードであり、参入以降多少の浮き沈みはありつつも常にメタゲームに影響を与え続けていました。往年の「プトレノヴァインフィニティ」を彷彿とさせる光景ですが、そちらと違い本体部分に直接規制が入っている事実こそが「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の危険性を物語っています。
もっとも、「アナコンダドラグーン」に関して言えば双方に問題があることは否めない以上、今後のカードプール更新次第では土台側に規制が入るのもそう遠くない話なのかもしれません。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
最近は一滴流行ってるから対策できる、メインデッキに枠とる、制限カードの真紅眼融合の方を素引きしたらアナコンダ使えない….などで禁止行きになるほどではないって言われてましたが、わりとアッサリ禁止になりましたね。
ドラグーン自体はガンドラみたいに周りを禁止にして、しぶとくもう1年くらいヘイト買いつつ生き残るのかと思ってましたが….。
個人的にはアナコンダはもう融合救済汎用カードみたいな扱いされてて、ハリファイバーみたいにこの先絶対禁止行きにはならないカードなんだろうなあって思います。アナコンダが悪さすればその組んでた相方が禁止行きなる感じで。
ハリファイバー同様に遊戯王界の上級国民の仲間入りしてしまったのかもしれません。
コメントありがとうございます。
ドラグーンは昔ほど強くなくなったと言われており、実際これだけで決まるゲームも最近は減っていましたが、生きている限り存在を考慮しなければならないタイプのカードではありますし、何らかの規制はやむなしだったと個人的には考えています。
その場合はご指摘のように本体か周りを禁止することになりそうですが、結局アナコンダとの2択に行き着くことは避けられず、その2択であればこちらを……という判断だったのかもしれません。
(【融合召喚】のサポートとして売り出したいという商業的な都合も多少は関係していそうです)
リリーサーを禁止ライトステージを制限に送りにして三戦一滴だけ残していったカード
本当になんでアナコンダと一緒に刷ったのか
コメントありがとうございます。
むしろドラグーンを刷ったのはアナコンダの後なので、「アナコンダで出せるけどまあ大丈夫だろう」と考えながらデザインした疑惑すらあります。
(ただ見落としていただけという可能性もありますが、それはそれで「いつもの」という感じです)
アナコンダはハリファイバーやエレクトラムに近いポジションにしたいのかもしれませんね。今後の融合系カードをある意味でこのカード前提でデザインするという。
5-6年したらもしかしてドラグーンが帰ってきて、その代わりにアナコンダが監獄に行く未来もあるのかなぁ、征竜とダークマターのように。
個人的に11期はマジックテンペスターが生き残っているのが意外でした。あの手の先攻ワンキルカードは真っ先に規制される印象があるので。
コメントありがとうございます。
下級チューナーに強力な墓地誘発持ちがめっきり現れなくなったのと同じように、今後は融合系というだけで抑え気味の調整にせざるを得なくなりそうです。それ自体が悪いという話ではないですが、その状況が一定期間続くと事実上本体部分に手が出せなくなるという一種の不具合が……。
マジテンに関しては、キャノソルのようにそれ自体をループギミックに組み込めない+セレーネなどの補助輪が必要なことから規制を免れている印象はあります。ただガンドラ然りフィニッシャー専門のワンキルパーツが禁止行きになっている例もありますし、遅かれ早かれという話なのかもしれません。
ドラグーンとアナコンダどっちを先に禁止に送るか論だと個人的にはドラグーンの方が優先度高かったのかなあと思います
アナコンダがあるとはいえ本来融合ギミックとは無縁のデッキにまず召喚しない上に引いたら処理に困りかねない最上級通常モンスター2種類とデッキ融合できるとはいえ素撃ちするとセットくらいしか展開できなくなるカードをわざわざ入れてその展開をするためだけにドラグーンとアナコンダを採用するのみるにゴールのドラグーンが危険と判断したのかなと思います
アナコンダ自身もヤバいといえばヤバいですがドラグーン無しだと融合ギミックが元から入るデッキに出番が限られてくると判断したのかなと思いますがこれは後の環境次第ですかね
コメントありがとうございます。
改訂が出る以前の世論でもドラグーン禁止派が多数を占めていた印象はありますし、今回のアナコンダ生存ルートは必然だったのかもしれないと考えています。今後どうなるかは公式の胸三寸ですが、当記事のコメント欄でもたびたび言及されているように、ひょっとすると第2のハリファイバーになる可能性が高いカードなのかもしれません。
「容易な召喚条件」「強固な耐性」「単体での高い制圧効果」これら全てを兼ね備えたカードは過去にも、真竜剣皇マスターPやマジェスペクターユニコーンといったカードがありましたが、ドラグーンオブレッドアイズはこれらに比肩するパワーカードであったと感じました。
制限カードであった時は、禁じられた一滴や三戦の才といった強力な対抗手段が増えたから禁止まではいかないのではといった声も聞かれましたが、これらのカードの相対的なカードパワーがどうこうというより、これらのカードが存在することによってそれに対応するために対策カードを入れざるを得ず、結果としてデッキの固定化を招く事にむしろ問題があったのではないかと思いました。
デッキの固定化という面ではすでに手札誘発カードという問題が発生しているという事実もありますが…
コメントありがとうございます。
どのようなカードゲームにも言えることですが、「軽い」「硬い」「キツイ」の3Kが揃ってしまうと一気に環境が狂ってしまうように思います。有名な例で言うとMtGのオーコ辺りが典型的でしょうか?
手札誘発とデッキ固定化の関係については昔から賛否両論ありますが、個人的にはOCGのゲームシステム上やむを得ない話と受け止めております。というより、これが無かった時代が遊戯王黎明期の暗黒期ですので、恐らくは今後もこの状況が変わることはないのかもしれません。
ダークネクロフィアを使用した8軸悪魔デッキ使ってますがある日ドヤ顔でドラグーンで制圧されましたw
耐性がなければまだ許されたかもしれませんでしたが、誰が使ってもどう扱ってもどこで出してもどの瞬間でも強いんだからまあ規制されて当然なのかなと思います。
あくまで身内ですが体感的にはマスターPの方が強いなと感じますがやはりポンと出せる恐ろしさならドラグーンに軍配が上がります。アナコンダの存在もこれまで以上に融合モンスターが怖くなる。
競技性と娯楽性は中々両立はできないと思いますし棲み分けすればいいかなと勝手に線引きしてますが何にも考えずに刷ったんだなとコナミさんの怠惰さをまた感じてしまったというのが正直な感想。友情のカードを嫌ってしまうのは嫌ですが…
二度と檻から出てくるな、これに尽きます。
コメントありがとうございます。
ドラグーンの問題点は色々とありましたが、一言に集約すれば「シンプルに強すぎる」という表現がふさわしいカードだったように思います。記事ではアナコンダとのシナジーを中心に語っていますが、真紅眼融合でポンと出てくるだけでも普通に辛いですし、やはりドラグーン自体のスペックがおかしすぎたと言わざるを得ないのかもしれません。
ドラグーンの恐ろしいところはアナコンダは勿論、シンクロデッキでも採用できたお手軽さもあります。
星杯の巫女イヴ(今は禁止ですが)を素材にドロドロゴンをシンクロすることでお手軽に融合されます。
アナコンダに比べるとエクストラの枠を食う、手順が増えるため妨害に弱くなる等の難点がある一方、メインに割く枠が星杯の守護竜のみで良い、特殊召喚を縛られないため展開ルートに組み込みやすい、ライブラリアンがいればドローできるといった利点があります。
また、ハリファイバーに頼らずともジャンクシンクロン+ドッペルウォリアーといったシンクロとしてはかなりポピュラーな初手から出すことができました。
コメントありがとうございます。
ドラグーンと言えばアナコンダが有名ではありますが、イヴとのシナジーも中々に気が狂っていたように思います。当時はイヴどころかリンクロスも現役だったせいで簡単にドラグーンが2体並んだりと、今にして思えば割とやりたい放題できていた時代でした。
(ドロドロゴン展開についてはイヴ側の記事でも解説していますので、よろしければそちらもどうぞ)
【星杯の神子イヴが禁止カードになった理由】
そういえば、TCGの環境でドラグーンがこれまで生き残ることができるのはなぜですか?
コメントありがとうございます。
ご質問いただいた件ですが、私自身海外環境についてはほぼ触れた経験がありませんので、当ブログで詳しく取り扱うことは難しい状況です。ご容赦ください。