ドラグーン・オブ・レッドアイズが禁止カードになった理由

2020年9月14日

【前書き】

 「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」というモンスターが存在します。

超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ(ちょうまどうりゅうきし-ドラグーン・オブ・レッドアイズ)

融合・効果モンスター
星8/闇属性/魔法使い族/攻撃力3000/守備力2500
ブラック・マジシャン」+「真紅眼の黒竜」またはドラゴン族の効果モンスター
①:このカードは効果の対象にならず、効果では破壊されない。
②:自分メインフェイズに発動できる。相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。この効果は1ターン中に、このカードの融合素材とした通常モンスターの数まで使用できる。
③:1ターンに1度、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、手札を1枚捨てて発動できる。その発動を無効にして破壊し、このカードの攻撃力を1000アップする。

 パッと見て「効果が強すぎる」と思わざるを得ないストロングスタイルなパワーカードであり、むしろ「強い」という単語以外にこれを形容する言葉はないと言えるようなカードです。当然その「強さ」は環境においても大々的に示されており、案の定2020年10月改訂で禁止カード指定を下されることになりました。

 とはいえ、融合モンスターという重量級モンスターであることを鑑みれば不自然と言うほどのテキストではなく、一見すると「禁止カードにするほどなのか?」と考えてしまいそうなカードではあります。実際、単純な効果の強さだけであればこのカードを上回る融合モンスターは少なくなく、このカードの脅威に直面したことのないプレイヤーにとっては今一つピンとこない話であってもおかしくはありません。

 この記事では、そんな「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。

 

「モンスター2体≒怪物」 アナコンダドラグーンの狂気

 結論から言ってしまえば、「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の禁止カード化はそもそもこれが重量級モンスターでも何でもなく、むしろ軽すぎるモンスターだったことが招いた結果だと言えるでしょう。

 

①:「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」をリンク召喚する。

 

②:「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」の効果で「真紅眼融合」をコピーし、「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」を融合召喚する。

 

 わざわざ記載する必要もないほどにシンプル極まりない動きですが、「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」1枚から「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」を展開するというコンボとも言えないコンボです。いわゆる「アナコンダドラグーン」として有名な汎用出張ギミックですが、要するに任意のモンスター2体を「効果破壊されず、対象にも取られない実質4000打点のモンスターに万能カウンターとバーン除去効果を付け足したカード」という怪物に変換できるということであり、これは現代遊戯王のゲームスピードにおいても相当狂気的な話です。

 まさしく現代に蘇った「プトレノヴァインフィニティ」とでも言うべきギミックですが、こちらはタイムラグが発生せず、おまけにレベルの制約すらないなど凄まじいまでのパワーアップを遂げています。

 一応、メインデッキに不純物を要求される点が弱いと言えなくはないですが、むしろたったそれだけのリスクでこんな面白コンボが決まるというのは中々の冗談だったのではないでしょうか。

 もっとも、「禁じられた一滴」や「三戦の才」など有効な対策カードは多く、巷で言われるほどドラグーンによる塩試合が横行していたわけではありません。むしろ基本的には返しのターンで処理されるものと思っておいた方がよく、あくまでも単体戦力の域を出なかった(※)ことは事実です。

(※実際、直近の環境においても採用率は低下傾向にありました)

 とはいえ、やはり「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の存在自体がOCG環境を歪めていたこともまた事実ではあります。

 というより、上記で取り上げた対策カードに関してもこのカードの影響力(※)から流行していた側面もあり、実際これらを握れずに「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の定着を許した結果、ドラグーン1枚にボコボコにされてしまうといったゲーム展開も決して珍しい話ではありませんでした。

(※それどころか、「三戦一滴はドラグーンを止めるために印刷された」などという噂すらまことしやかに囁かれていたほどです)

 いずれにしても、「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」のカードパワーが健全な範囲を逸脱していたことは明白であり、これに対する禁止カード指定は極めて妥当な措置(※)だったと言えるのではないでしょうか。

(※また、この影響で「真紅眼融合」が一気に無制限カードまで釈放されています)

 

禁止行きにするべきはアナコンダの方ではないかという疑惑

 しかしながら、「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」を取り巻く疑問点はもう1つ残っています。

 「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」の存在です。

捕食植物ヴェルテ・アナコンダ(プレデター・プランツ ヴェルテ・アナコンダ)

リンク・効果モンスター
リンク2/闇属性/植物族/攻撃力500
【リンクマーカー:左下/右下】
効果モンスター2体
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはターン終了時まで闇属性になる。
②:2000LPを払い、「融合」通常・速攻魔法カードまたは「フュージョン」通常・速攻魔法カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。この効果は、その魔法カード発動時の効果と同じになる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分はモンスターを特殊召喚できない。

 簡単に言えば「2000LPをコストにデッキから融合系カードをコピーする」というカードであり、こちらはこちらで中々に前衛的なテキストです。当記事で取り上げている「真紅眼融合」はもとより、超融合」を手札コストを踏み倒して撃つ、あるいは「影依融合」を1ターンに2回発動するなど割とやりたい放題できるため、「禁止行きにするべきはアナコンダの方ではないか」という声も少なからず散見されていました。

 実際、「兎と蜘蛛を混ぜるとドラグーンになる(※)」などというよく分からない法則を生み出してしまったのは間違いなくこのカードの責任であり、有罪か無罪かで言えば有罪寄りのカードであることは事実でしょう。

(※「転生炎獣アルミラージ」+「リンク・スパイダー」のセットで大多数のモンスターを素材に変換できることから)

 とはいえ、問題の本質がどちらにあるかを考えた場合、やはり「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の方に歪みがあると見るべきです。

 正直これに関しては五十歩百歩ではないかという印象もなくはないのですが、例えば元禁止カードである「エルシャドール・ネフィリム」なども融合モンスターの中では相当強力なカードであり、これを「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」で出せるというのは非常にパワフルな話です。

 しかし、実際にはこの「アナコンダネフィリム」ギミックは取り立てて問題視はされておらず、このことから多少融合先が強かったとしても「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」が問題を引き起こすわけではないということが分かります。

 要するに「アナコンダドラグーン」の問題点は「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」が「多少」の域に収まり切らないほど強すぎることが招いた結果であり、禁止カード指定を下すべきはやはりそちらであると言えるわけです。上記項目で語った通り「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」というカード自体が強すぎることは否定しようがなく、これを簡単に出せること以上にこのカードがそもそも壊れています。

 もちろん、「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」も何かがおかしいと言ってしまえばその通りのカードではあるため、結局のところ責任を2人で押し付け合っているだけ(※)なのではないか、という疑惑がちらついてしまうところではあるのですが……。

(※結局「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」も禁止カード行きになりました)

 

【まとめ】

 「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」についての話は以上です。

 とにかく「強い」としか表現できないような強烈すぎるカードであり、参入以降多少の浮き沈みはありつつも常にメタゲームに影響を与え続けていました。往年の「プトレノヴァインフィニティ」を彷彿とさせる光景ですが、そちらと違い本体部分に直接規制が入っている事実こそが「超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ」の危険性を物語っています。

 もっとも、「アナコンダドラグーン」に関して言えば双方に問題があることは否めない以上、今後のカードプール更新次第では土台側に規制が入るのもそう遠くない話なのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史