十二獣ドランシアが禁止カードになった理由
【前書き】
「十二獣ドランシア」というカードが存在します。
十二獣ドランシア(じゅうにししドランシア)
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/地属性/獣戦士族/攻撃力?/守備力?
レベル4モンスター×4
「十二獣ドランシア」は1ターンに1度、同名カード以外の自分フィールドの「十二獣」モンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。
①:このカードの攻撃力・守備力は、このカードがX素材としている「十二獣」モンスターのそれぞれの数値分アップする。
②:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。この効果は相手ターンでも発動できる。
かつて第9期における全盛期【十二獣】の強さを支えた大黒柱的なカードであり、その結果2017年4月改訂で禁止カード指定を一度受けるに至ったカードです。その後は環境の変化もあって2020年1月には制限復帰を遂げていますが、それからしばらくして現れた「天霆號アーゼウス」との絶大なシナジーにより【十二獣】が環境に復権したことで再び存在感を示し始め、最終的には今回2021年7月の改訂をもって再度禁止行きになるという末路を辿ることになりました。
この記事では、そんな「十二獣ドランシア」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。
【十二獣鉄獣戦線】に対する規制
正直これに関しては見たままの話ではないかという印象もあるのですが、ひとまず記事の趣旨に従って解説していきます。
まず大前提として、「十二獣ドランシア」は純粋にパワーカードです。
フリーチェーンの除去というシンプルに強力な妨害能力を持つことに加え、各種【十二獣】モンスターから1枚で出せるという圧倒的な軽さが強みであり、さながら現代遊戯王を象徴するかのようなカタログスペックを持ち合わせています。特に先攻時であれば誘発で妨害されることがほぼないため、小粒ながらも非常に信頼性の高い妨害として運用することができました。
また、「十二獣ライカ」と合わせて「FNo.0 未来龍皇ホープ」を立てるための動きに用いるケースも多く、ある種の展開パーツとして機能していたところもあります。
このように「十二獣ドランシア」は多角的な観点において強力なカードであることは間違いないのですが、いくら「十二獣ドランシア」が強いとは言っても(少なくとも現代においては)単体で壊れているというほどではなかったのも確かです。
また、詳しくは後述しますが「十二獣ドランシア」そのものというよりは展開先を自在に使い分けられる【十二獣】というテーマが強い(※)といった方が正確ではあるため、これだけで禁止行きになるかというと理由としては少々弱い印象はあります。
(※例えば「十二獣ドランシア」と「天霆號アーゼウス」を先後で使い分ける動きなどが典型的です)
そのため、実際のところは【十二獣】及びその出張ギミックのパワーを落とすことを意図した規制、もっと言えば現環境トップの一角である【十二獣鉄獣戦線】の力を削ぐことを目的とした規制だったのではないでしょうか。
話が脇道に逸れるためここでは【十二獣鉄獣戦線】についての解説は省きますが、【十二獣】ギミック自体の優秀さもさることながら、種族シナジーを始めとする各種シナジー(※)をもとに成立していたと言っていいアーキタイプです。中でも「炎舞-「天璣」」によって初動の「鉄獣戦線 フラクトール」と【十二獣】ギミックを使い分ける動きはシンプルながら強力であり、【十二獣鉄獣戦線】の対応力と安定性に貢献していました。
(※反面、召喚権が競合しやすいなどのデメリットも少なからず存在します)
つまり、逆にそこから「十二獣ドランシア」を削ぎ落してしまうと上記の強みの大半が失われてしまい、【十二獣】ギミックを使う魅力が大幅に薄れてしまうわけです。
実際、「天霆號アーゼウス」目当てに【十二獣】ギミックをあえて利用するかというと悩ましい面はあり、「十二獣ライカ」で盤面を横に伸ばすにしても、召喚権を使ってまでやることなのかという疑問はあります。早い話が純【鉄獣戦線】で良い(※)という話になってしまうため、【十二獣鉄獣戦線】というアーキタイプ自体にあまり意義が見出せない状態に陥ってしまうことは否めません。
(※混ぜ物をするにしても【LL鉄獣戦線】などの方が適していることは明らかです)
要するに【十二獣鉄獣戦線】を弱体化させるという目的に限って言えば「十二獣ドランシア」の規制は的外れというほどではなく、少なくとも開発側の意図した通りに規制が機能していることは間違いないでしょう。
なぜドランシアが? 純【十二獣】のとばっちり感
もっとも、個人的に正直な心境を述べるのであれば「なぜドランシアなのか?」といった素朴な疑問がちらついてしまうところではあります。
これに関しては既に各所でも物議を醸しているようにも見受けられますが、数ある規制候補の中からあえて「十二獣ドランシア」を取り上げるというのはどうにも腑に落ちない話です。というより、むしろ「十二獣ドランシア」が禁止予備軍に含まれていたこと自体にも違和感があるレベルであり、恐らくこの結果を予想できた現役プレイヤーはほとんど居なかったのではないでしょうか。
実際、今回の規制は純粋なカードパワー云々というよりはいわゆる商業的な都合が大いに関係していると思われるため、ゲームバランス的な観点からこれを考察するのはあまり意味がないかもしれない、という印象です。あるいは、少々邪推するのであれば【十二獣】ではなく、最近強化された【LL鉄獣戦線】を間接的にプッシュしたいという販促意図が絡んでいるという見方もできます。
何にせよ【十二獣】関連アーキタイプ、とりわけ純【十二獣】使用者にとっては非常に厳しい規制となってしまったことは疑いようもありませんが……。
【まとめ】
「十二獣ドランシア」についての話は以上です。
解説、とは言っても半ば見たままの話であり、あまり解説記事らしいことを書けた自信はありませんが、ひとまず禁止行きの理由に関しては一通り触れられたのではないかと思います。とはいえ、やはり商業的な都合(※)が絡んできてしまうと少々釈然としない思いもあり、遊戯王における制限改訂の妙を改めて感じる次第です。
(※とはいえ【十二獣】は【十二獣】で強かったことも間違いないため、完全にとばっちりとも言い切れないのがややこしいところではあります)
ただ、個人的には「十二獣ドランシア」の禁止行き自体はまだいいとしても、それならせめて他にも規制してほしいカードがあった(※)ような気もするのですが……。
(※2021年10月の制限改定で2枚とも禁止カードになりました)
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
ここしばらくのリミットレギュレーションではテーマの根幹を潰すような規制はほぼなかったので、十二獣の核だったドランシアが禁止行くのは予想外してませんでした…。アーゼウスやフラクトールとかをスルーで十二獣要素のドランシアだけ禁止なのはやっぱり鉄獣の新たな相方としてLLを押したいのではないかと感じてしまいますね…。
しかし、召喚時効果を止める止めないの駆け引きかなく、本当にただ一体が出るだけで色々と出来てしまう十二獣自体にもやっぱり問題はあったようには思います…。これを止めようとテンキとか会局にうららを当てようとするとガンマが飛んできたりでかなり嫌でした。正直十二獣全体に何らかのエラッタをかけて作り直してブルホーンもドランシアも戻ってきてほしいなと希望してはいますが。。。
あと個人的には魔鍾洞は早く禁止に行ってほしいなあと思います。このカードに関しては賛否はありますが通ってしまった時にゲームがひっくり返るレベルで膠着してしまう影響力の高さは禁止級だと自分は思いますし。除去カードなどを多く入れるなど対策は出来ますが、それって強欲な壺や苦渋の選択がうららで止まるからok、ヴェーラーやニビルで止まるからサイエンが許されるという理論と変わらないのではと思います。
コメントありがとうございます。
ドランシアは1枚でポンと出てくるのはもちろんですが、使う側としては通っても通らなくてもいい(むしろ通らない方が美味しい)みたいなところがあったのも問題だったように思います。全盛期の頃から言われていることではありますが、やはり1枚エクシーズというメカニズムそのものに少なからず欠陥があるのかもしれません。
魔鍾洞は禁止行き云々というより、そもそもなぜ今まで生き続けているのかすら良く分からないレベルの危険物ではないかと考えています。分類的にはトーチゴーレムと同類のちゃぶ台返し系カードですし、個人的にもあまり好みではないので禁止行きを期待したいところです。
(逆にVFDに関しては実を言うとそこまで理不尽には感じていなかったりします)
十二獣はシャドールのような直接の新規も、召喚獣のような新たな相方なしで単独で環境に出てきてしまったのが運営的には想定外だったんでしょうか……?
影響力が高過ぎる征竜とはまた違う理由で、十二獣というテーマが許されるのは数世代先になるかもしれないですね
コメントありがとうございます。
個人的には十二獣のような誘発系デッキが流行る分にはむしろ歓迎していいのではないかと思っていますが、出張ギミックとして活躍しすぎたことが問題と捉えられた可能性はあるかもしれません。ただ、これもどちらかというとアーゼウス側に原因があることは否めず、そちらを規制するよりはこちらを……という意図も感じますので、そういう意味でもやはり商業的な都合が見え隠れする改訂でした。
ドランシア、ひいては十二獣というテーマが、1枚からの展開が可能なテーマであり、同じレベルのモンスターを二体並べて特殊召喚するエクシーズ召喚という召喚法の概念を逸脱したカード群であるため、そういった意味でも、このテーマのカードに対し強い規制がかけられるのはやむなしなのかなと考えています(似たような理由により、1枚から展開が可能なリンク1モンスターも、いつかやらかすカードが出てきてもおかしくないと思っていますが…)。
今は更新が止まっておりますが、そのうちこのブログでも十二獣というテーマについて触れるかと思われますので、その時に管理人様の率直な印象をお聞かせ願えればと思います。
コメントありがとうございます。
【十二獣】の1枚エクシーズについてですが、第9期当時の時点では間違いなく壊れていたように思います。
ただ、現代においては構造的には【閃刀姫】辺りのカード群とさほど変わらない性質ではありますので、多少の欠陥はあるにせよ世間で言われているほどに1枚エクシーズというメカニズムが危険かというと、そうではないという感じはあります。(あくまでもカードの構造的に、という意味であってカードパワーの話ではないですが)
ブログの更新に関しましては現状ですと中々厳しいかもしれません。いずれは更新再開したいと考えていますが、とりあえずは今回の記事のような単発記事を出していけたらと思っています。
結局何のために帰ってきたんだよとしか言えない
コメントありがとうございます。
ドランシアの復帰に関しては、実際のところ復帰時点では【十二獣】が環境に出てくる気配はありませんでしたので、いわゆる過去テーマ救済緩和の一種というだけで特に問題ない改訂だったように思います。ただ、その後にアーゼウスが参入してきたことで【十二獣】が本来想定されていない方向に強化されてしまった節はあり、やはりアーゼウスの存在こそが全ての元凶となってしまった印象はあります。
最近環境にはめっきり触れず身内戦ばかりやってきた身なので切り込んだ話はできないのですが、友人の十二獣と戦っていてもアーゼウスが元凶なのではないか…とはひしひしと感じていましたね
開発側としてはライストや結界波などの捲くり用札と同じ立ち位置という認識なのかもしれませんが、ヴェーラーすら複数チェーンを積むことで回避できるのは流石に理不尽さを感じざるを得ませんでした
汎用性も高すぎますし、将来的なカードデザインの妨げになるという意味でもアーゼウスにメスを入れてほしかった感はありますね
(流石に商業的な都合もあるのでこのタイミングでは厳しかったのでしょうが)
コメントありがとうございます。
アーゼウスの存在は、一言で言えば全てのエクシーズモンスターに対して「このカードが戦闘を行った場合、フリーチェーンで全体除去を行う効果を永続的に得る」というテキストを一斉に追加してしまうようなもので、強い弱い以前に存在自体に問題がありすぎるのではないかと危惧しています。控えめに考えてもカードプールに及ぼす影響力が大きすぎますし、そもそもなぜ印刷されてしまったのか分からないレベルのカードという印象です。
マスターデュエルではドランシアが使えるけど、結局モルモラット無しのドランシアは制限止まりのカードパワーしか無いと感じる
しかし、本記事の十二鉄獣の力を削ぎ落とす目的というのはしっくり来た
コメントありがとうございます。
ドランシアはパワーカードであること自体は間違いないとは思いますが、単体で禁止にするほどの性能ではないという印象のカードでした。現時点のマスターデュエルでもさほど問題を起こしている様子はありませんし(他の禁止勢と比べるとなおさら)やはり十二鉄獣の存在さえなければ規制されることもなかったのかもしれません。
マスターデュエルでドランシア3枚、モルモラット1枚、会局が無制限になりました。
この実験の結果次第で歴史が動きますね
コメントありがとうございます。
十二獣に関しては(ブルホーン以外は)今後少しずつ緩和されていくのではないかとは思っていましたが、さすがにこれほど一度に来るとは予想しておらず、デジタルとはいえ大胆な改定だと驚いています。一応モルモラットが1枚ということで極端に跳ねることはなさそうですが、もしかしたらランクマでも見かけることになるかもしれません。