魔鍾洞が禁止カードになった理由

2021年9月20日

【前書き】

 「魔鍾洞」というカードが存在します。

魔鍾洞(ましょうどう)

フィールド魔法
①:相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合、相手はモンスターの効果を発動できず、攻撃宣言もできない。
②:自分フィールドのモンスターの数が相手フィールドのモンスターより多い場合、自分はモンスターの効果を発動できず、攻撃宣言もできない。
③:自分・相手のエンドフェイズに、お互いのフィールドのモンスターの数が同じ場合に発動する。このカードを破壊する。

 言わずと知れた「何かがおかしい系カード」の筆頭であり、文字通り「何かがおかしい」としか言いようがないようなカードです。今更この場でわざわざ効果を解説するようなことはしませんが、その強烈すぎるロック性能によって【魔鍾洞チェーンバーン】を成立させたほか、制限カード指定以降も【閃刀姫】などの相性のいいコントロールデッキで採用実績を残し、挙句の果てにはもはやデッキ関係なくサイドに雑に突っ込まれる(※)といった運用法すら試されるようになっていました。

(※念のため、サイドの採用率自体が高かったという意味ではありません)

 その結果、2021年10月改訂をもって「魔鍾洞」は遂に禁止カード指定を受け、その曰くつきの経歴に終止符を打つことになりました。

 この記事では、そんな「魔鍾洞」がなぜ禁止カード指定を受けるに至ったのかについて解説いたします。

 

遅延ロックカード魔鍾洞 禁止改訂すら遅延

 実際のところ、「魔鍾洞」に関してはこれが禁止カードになった理由どうこう以前に、むしろ「今まで禁止カードではなかった理由」を探すべきカードです。

 というのも、「魔鍾洞」の危険性についてはもはや見たままの話に近く、このカードがどうして禁止になったのかと言われても回答に困ってしまいます。むしろ前書きだけで話がほぼ終わっているような気もするため、一周回って解説することが何もありません。

 もっとも、それでは記事の意味がなくなってしまうため、あえて言語化するのであれば魔鍾洞」が通った瞬間に「別のゲームが始まって」しまうことが主な問題点であると表現できます。

 別のゲームが始まるというと抽象的な表現にも聞こえますが、実際そう当てはめるのが恐らく最も適切なカードです。「魔鍾洞」が定着した時点で盤面が膠着してしまい、そして「魔鍾洞」をどうにかするまでゲームが進まなくなってしまうため、一種のリセットカードと解釈しても差し支えないのではないでしょうか。

 というより、デッキによってはそもそも対処すらできずに「魔鍾洞」1枚で詰んでしまうことも少なくなく、いわゆる「ゲームを台無しにする系カード」の中でも最高峰の台無し能力を誇っています。基本的に除去手段の大半をモンスターが担う現代遊戯王における「魔鍾洞」の制圧力は絶大であり、唯一の回答はサイドに積んだ「ハーピィの羽根帚」だけというケースも決して珍しいことではなかったのです。

 とはいえ、当然ながら「魔鍾洞」の効力が及ぶのはモンスターに対してのみであり、魔法・罠には何ら耐性を発揮しないことは確かです。よってサイクロン」などで処理することは普通にできるため、なにも禁止にするほど凶悪ではないのではないか、という意見も時折見かけはします。

 しかし、正直な話それは王宮の弾圧」は「サイクロン」で割れるから禁止でなくても問題ないと言っているのと大差なく、控えめに表現しても相当に無茶な理屈であると言わざるを得ません。

 何より、そもそもの問題として「魔鍾洞」というカードにポジティブな認識(※)を持っているプレイヤーは恐らくほぼ居ないと思われるため、これに対する禁止カード指定は極めて妥当な決定だったのではないでしょうか。

(※多分ダークロウの次くらいに嫌われています)

 

TOD絡みの問題も 存在そのものが害悪

 ゲーム的な観点における「魔鍾洞」の禁止理由についてはおおむね上記の通りですが、実のところ「魔鍾洞」を取り巻く問題はもう1つ存在しています。

 それは俗に言うTOD絡みの問題をしばしば引き起こしてしまう傾向にあったという事実です。

 もちろん昔の時代ほど露骨なタイムオーバーデスを狙うようなことは(少なくとも一般的では)なくなっていますが、「魔鍾洞」の性質上これを使うことでゲームが長引くことは避けられず、状況次第ではエキストラターンによるキルなどに持ち込むこともできてしまいます。できてしまう、とは言っても実際そうした遅延戦法を意図的に狙うプレイヤーがそこまで多くいたというわけでもないのですが、この手の問題はできる、できないが重要であり、こうした状況を成立させてしまう可能性があること自体が問題です。

 またTODとまではいかずともゲームの膠着によって試合時間が長引いてしまい、場合によっては魔鍾洞」を普通に使っているだけで大会運営に支障をきたしてしまうケースも往々にしてあり、もはや根本的に「魔鍾洞」というカードのデザイン設計そのものに致命的な欠陥(※)があったことは否定できません。

(※性質的には「ヴィクトリー・ドラゴン」と同系統のカードと言えなくはないですが、流石にVドラと比べるのは「魔鍾洞」といえども可哀想な気もするため同類扱いはしないでおきます)

 要するに魔鍾洞」は実質的に「存在してはいけない類のカード」に該当していると言って差し支えないため、そういった意味でも「魔鍾洞」のこれ以上の生存は許すべきではなかったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「魔鍾洞」についての話は以上です。

 普通に使うだけでも割とギリギリ許せないカードでありながら、それとは別方面においても問題を噴出させていたカードであり、いわゆる「存在罪」を犯してしまっていたことは否定できません。使用率どうこう以前に(※)カードプールに存在していること自体が害悪であり、究極的にはそもそも印刷したこと自体が間違いだったとも言えるでしょう。

(※性質上汎用的に使われるカードではなかったため、同改訂禁止のVFDと比べると遭遇率自体は控えめでした)

 個人的な希望を述べるのであれば、これで「メタバース」を返して(※)もらえないものかと少し期待したいところです。

(※逆に考えると魔鍾洞」禁止のこのタイミングこそが最大の復帰チャンスだったような気もするため、ひょっとするとこのまま放置されるのではないかという懸念もありますが……)

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史