無謀な欲張りが極悪カード扱いされていた時代
【前書き】
【第2期の歴史43 悪夢の蜃気楼 全てのデッキが4ドローを標準搭載する末期世界】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の中編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
【先攻1キルのコンボパーツ達】
「悪夢の蜃気楼」と「サイクロン」によるドローギミックを得た【八汰ロック】に対抗するように、【宝札エクゾディア】を筆頭とする先攻1キルデッキ達も凶悪な新兵器を手に入れています。そして残念なことに、そうしたコンボパーツの存在こそが第2期の末路を決定付けてしまうことになりました。
無謀な欲張り(大嘘)
最大の戦犯は、まず間違いなく「無謀な欲張り」に他なりません。
カードを2枚ドローし、以後自分のドローフェイズを2回スキップする。
「強欲な壺」と同様、カードを2枚ドローする効果を持った罠カードです。ただし、それ以降のドローフェイズが2回分スキップされるため、結果的にはこのカード1枚分のディスアドバンテージを負ってしまうことになります。
罠カードゆえに即効性もなく、【グッドスタッフ】などのフェアデッキで採用されるタイプのカードではありません。構造的にはビートダウンを下敷きにしている【八汰ロック】も同様です。また、長期的なリソースを重視する低速コントロールデッキで使われるケースもほとんどないでしょう。
必然的に、このカードの活躍の場はコンボなど高速でゲームを終わらせるタイプのデッキに限られます。ただし、その場合でも罠カードであるという点が足を引っ張り、あまり高い採用率には繋がっていないのが実情です。カードプールが広がった現在でもこのカードを活かす手段は少なく、今ではほとんど姿を見かけることはありません。
しかしながら、この時期は「無謀な欲張り」を最大限に活用するための土壌が整っており、こうした問題は無視できるものでしかありませんでした。
「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」の存在です。
このカードが墓地へ送られたターン、このカードの持ち主は手札から罠カードを発動する事ができる。
詳しくは上記関連記事で取り上げていますが、一言でまとめれば「罠カードを先攻1キルギミックに組み込めるようにしてしまう極悪カード」です。つまり、これと組み合わせることで「無謀な欲張り」が3枚積める「強欲な壺」に化けてしまいます。
言うまでもなく大問題であり、そして先攻1キルデッキにとっては革命的とすら言えるギミックです。本来は重い代償であるはずのドローフェイズのスキップも、先攻1キルデッキでは存在しないも同然のデメリットでしかありません。
唯一、単体では死に札となってしまう欠点はありますが、当時は「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」が無制限カードであり、さらに「苦渋の選択」「天使の施し」「手札抹殺」などの有力なパートナーが軒並み現役だったため、非常に緩い条件でコンボを成功させることができます。
ちなみに、このギミックを最も効果的に活用できる先攻1キルデッキは【現世と冥界の逆転】でした。元々「処刑人-マキュラ(エラッタ前)」をメインギミックに組み込んでいた都合もあり、これ以降は議論の余地なくデッキの必須枠に収まっています。
ちなみに、こうした各種ワンキルデッキに散々悪用された結果、「無謀な欲張り」は第2期終盤の制限改訂で制限カード指定を受けるという結末を辿っています。現在の価値観では一見信じがたい話であり、それだけ当時の環境が歪なバランスであったとも言えるでしょう。
メタモルポット目覚まし時計 太陽の書
第2の刺客は、「太陽の書」という通常魔法カードでした。
フィールド上の裏側表示モンスター1体を表側攻撃表示にする。
セットモンスター1体を表側表示にするという、一見何の役に立つか分からないカードです。実際、通常のデッキでは全く機能せず、精々「『守備』封じ」の下位互換カードにしかなりません。
しかし、「聖なる魔術師」などのリバースモンスターと組み合わせた場合、「リバース効果を即座に発動させるカード」としての役割を持たせることができます。とはいえ、それだけでは「太陽の書」1枚分のディスアドバンテージを負ってしまう関係上、基本的には損な取引となるケースがほとんどでしょう。
そのため、主にそうしたディスアドバンテージが気にならないコンボデッキなどで使われていくことになりました。
とりわけこの時期は「サイバーポッド」が現役であり、「メタモルポット」に至っては無制限カードという時代です。まさに悪用しろと言わんばかりの状況であり、次第に先攻1キルデッキにおける必須ギミックとしての立ち位置を確立していくことになります。
また、この発見の影響で、本来は先攻1キルデッキに入らないはずの「聖なる魔術師」や「闇の仮面」にもスポットライトが当たっています。「手札抹殺」や「現世と冥界の逆転(エラッタ前)」など、エンドカードとなり得るカードをサルベージすることができるからです。
当時は低評価 月の書
上記の「太陽の書」の対のカードとして、「月の書」というカードも現れています。
フィールド上の表側表示モンスター1体を裏側守備表示にする。
こちらは「太陽の書」とは逆に、表側表示モンスター1体を裏側表示にするという効果です。ただし、速攻魔法であるという点が明確な差異として現れており、その汎用性の高さは「太陽の書」の比ではありません。一時期は制限カードに指定されたこともあるパワーカードの1枚であり、「サイクロン」同様往年の名カードとして高い知名度を誇る存在です。
コンボパーツとしても優秀で、これで寝かせたリバースモンスターを「太陽の書」で即座にリバースさせるなど、関連カードとは一定のシナジーを形成します。上述の通り当時は「メタモルポット」と「太陽の書」のコンボが先攻1キルデッキを中心に流行していたため、その補助パーツとして採用されるケースもありました。
ちなみに、カードパワーインフレ甚だしい現在においてすら、デッキによっては採用候補に挙がることも少なくないカードでもあります。第2期出身とは思えないほど息の長いカードであり、まさしく遊戯王を代表するカードの1枚と言えるのではないでしょうか。
このように、「月の書」が極めて高いポテンシャルを秘めたカードであることは以上の通りです。
しかしながら、実は当初はコンボパーツの一種程度としか見られておらず、【八汰ロック】などのビートダウンデッキではほとんど使われていませんでした。
そうした背景には「月の書」の効果的な使い方がプレイヤーに浸透していなかったという都合もありますが、「サンダー・ボルト」を筆頭とする凶悪パワーカードが多数現役を務めていたことも大きな理由の一つとなるでしょう。いくら「月の書」が優秀なカードであるとはいえ、流石に禁止リスト常連メンバーと比べれば見劣りしてしまうのは否めません。
その後、第3期で禁止カード制度が導入され、上記のパワーカードの規制が進んで以降は徐々にその強さが浸透していくことになります。結果として第4期では制限カードに指定され、第9期に至るまで規制強化と緩和を繰り返していました。
【後編に続く】
「Pharaonic Guardian -王家の守護者-」に収録されていたカードのうち、主に先攻1キルデッキで使われていたカードについては以上です。
時代に恵まれなかった「月の書」も含め、いずれも単体で機能するタイプのカードではありませんでしたが、悪用した場合の凶悪さは前記事の「悪夢の蜃気楼」すら上回る部分があります。その脅威度は、これを最大限に活かす術を持っていた【現世と冥界の逆転】が頭一つ抜けた先攻1キル成功率を得るに至ったほどです。
とはいえ、当パックに収録されていたのはこうしたパワーカードや凶悪カードだけではありません。「首領・ザルーグ」や「守護者スフィンクス」など、優良カードと呼んで差し支えないものも含まれていたことには触れておく必要があるでしょう。
後編に続きます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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