【忍者】デッキが環境上位だった頃 ハンゾー全盛期の時代
・前書き
・忍者マスターHANZO エアーマンの系譜
・成金忍者コンビ 疑似【ガジェット】の強み
・【忍者ラギア】の成立 【甲虫装機】メタとしての活躍
・【HEROビート】が苦しかった時代
・まとめ
【前書き】
【第7期の歴史24 【ゼンマイハンデス】全盛期到来 先攻全ハンデスの恐怖】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
忍者マスターHANZO エアーマンの系譜
レギュラーパック「ORDER OF CHAOS」の販売によって引き起こされた最後の出来事、それは【忍者】デッキの大幅強化に他なりません。
このカードが召喚に成功した時、デッキから「忍法」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。
また、このカードが反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「忍者マスター HANZO」以外の「忍者」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。
上記は【忍者】最強の下級エース、「忍者マスター HANZO」の当時のテキストとなります。「召喚」成功時には【忍法】カードを、「反転召喚・特殊召喚」成功時には【忍者】モンスターをそれぞれサーチできるため、とにかく場に出れば確実に手札が増えるという脅威のアドモンスターです。
なおかつ、攻撃力も1800と準アタッカーラインに到達しており、下級同士の殴り合いにおいては十分に戦力として機能します。効果とステータスの両面が高水準に纏まった強力なモンスターであり、さながら第7期に蘇った「E・HERO エアーマン」のようなカードだったと言えるでしょう。
実際、召喚するだけでアドバンテージが取れる1800打点というのは第7期当時においても十分にパワーカードの部類だったため、【甲虫装機】や【ゼンマイ】ほどではないにしろ一定の注目を集めていました。同パックから「忍法 超変化の術」という使い勝手のいい疑似除去カードが現れていたことも追い風となり、一時期はこのセットが【忍者】系の出張ギミックとして流行したこともあったほどです。
成金忍者コンビ 疑似【ガジェット】の強み
さらに、やはり同じく「ORDER OF CHAOS」出身となる「成金忍者」の存在も【忍者】の躍進の後押しとなっています。
1ターンに1度、手札から罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。デッキからレベル4以下の「忍者」と名のついたモンスター1体を表側守備表示、または裏側守備表示で特殊召喚する。
手札の罠カードをリクルートに変換する効果を持った【忍者】であり、【忍者】デッキにおいては展開の起点となる重要なモンスターです。反面、手札消費の激しさから単体では取り回しがやや悪く、初動パーツでありながら運用に下準備が必要という若干ちぐはぐなカードでもあります。
しかし、この弱点は「忍者マスター HANZO」と併用することで解決でき、【忍法】罠カードのサーチによるコスト調達や、特殊召喚時の【忍者】サーチによる後続確保など、二重の意味で強固なシナジーを形成していました。特に「成金忍者」でリクルートした「忍者マスター HANZO」で2枚目の「成金忍者」を持ってくる動きが非常に強く、疑似的な【ガジェット】のように粘り強く戦えるギミックとして高評価を受けるに至っています。
また、【ガジェット】と違い1ターンでランク4エクシーズの素材が揃う点も優秀で、罠カードさえ用意できれば実質カード消費なしでエクシーズ召喚を繰り返すことも可能です。2011年環境において、この状況を安定して作り出せるデッキは【忍者】が唯一だったと言っても過言ではなく、これ以降はこのギミックを軸にした派生構築の研究が盛んに行われていくことになります。
【忍者ラギア】の成立 【甲虫装機】メタとしての活躍
この結果、【忍者】系の筆頭として成立に至ったのが【忍者ラギア】と呼ばれるアーキタイプです。
モンスターカード(枚) | |
---|---|
×3枚 | 成金忍者 |
ジュラック・グアイバ | |
忍者マスター HANZO | |
×2枚 | エフェクト・ヴェーラー |
×1枚 | カオス・ソルジャー -開闢の使者- |
ジュラック・ヴェロー | |
魔法カード(13枚) | |
×3枚 | 強欲で謙虚な壺 |
サイクロン | |
×2枚 | 禁じられた聖槍 |
×1枚 | 大嵐 |
死者蘇生 | |
増援 | |
月の書 | |
ブラック・ホール | |
罠カード(14枚) | |
×3枚 | 忍法 超変化の術 |
×2枚 | 神の警告 |
奈落の落とし穴 | |
リビングデッドの呼び声 | |
×1枚 | 神の宣告 |
激流葬 | |
スターライト・ロード | |
ダスト・シュート | |
連鎖除外 | |
エクストラデッキ(15枚) | |
×3枚 | |
×2枚 | エヴォルカイザー・ラギア |
ダイガスタ・エメラル | |
×1枚 | A・O・J カタストル |
イビリチュア・メロウガイスト | |
インヴェルズ・ローチ | |
CNo.39 希望皇ホープレイ | |
機甲忍者ブレード・ハート | |
ジェムナイト・パール | |
スターダスト・ドラゴン | |
No.39 希望皇ホープ | |
No.16 色の支配者ショック・ルーラー | |
氷結界の龍 トリシューラ | |
ブラック・ローズ・ドラゴン |
デッキ名の通り、強力なランク4エクシーズである「エヴォルカイザー・ラギア」を切り札に据えた【忍者】であり、「忍者マスター HANZO」の強さを最も効果的に引き出すことを狙った構成が取られていました。そのコンセプトの中核は「忍法 超変化の術」で安定的に「ジュラック・グアイバ」を呼び出すことにあり、「成金忍者」はその補助としての運用(※)が主となります。
(※そのため、型によっては枚数が減らされるか、そもそも採用されないケースもありました)
ちなみに、【忍者ラギア】における「忍者マスター HANZO」のテキストは実質的には下記のように言い換えることが可能です。
①:相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターとこのカードを墓地へ送り、デッキから「ジュラック・グアイバ」1体を特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。
1800打点では突破できない上級ラインのモンスターを除去しつつ「ジュラック・グアイバ」を展開できる強力な動きであり、この一石二鳥のコンボこそが【忍者ラギア】を成立させたと言っても過言ではないでしょう。最終的なゴール地点が「エヴォルカイザー・ラギア」の着地にあるのは【次元ラギア】と同様ですが、こちらはその過程で妨害を差し込める点で優れており、また事実上の「ジュラック・グアイバ」6枚体制による下級ビート性能の高さも光ります。
何より、メインギミックの段階でフリーチェーンの妨害を搭載する関係上、【甲虫装機】に対して自然と対策が取れる事実が重要だったのではないでしょうか。
単純に考えても「忍者マスター HANZO」を召喚するたびに「甲虫装機 ダンセル」「甲虫装機 センチピード」の残機を1つ消費させることができるため、実質的に伏せカードを1枚多くカウントできる強みがあります。全体的に小粒が多い【甲虫装機】相手には「ジュラック・グアイバ」の1700打点も信頼性が高く、すみやかに「エヴォルカイザー・ラギア」を作り出すことで盤石の構えに持っていくこともできました。
【HEROビート】が苦しかった時代
とはいえ、そんな【忍者ラギア】も当時の環境で順風満帆の状況にあったわけではありません。
最大の仮想敵はやはり【HEROビート】であり、ほとんどのモンスターが1900族で構成される都合上、下級同士の殴り合いにおいては絶対的な不利がついています。【忍者ラギア】以上にフリーチェーンの妨害を多用してくる関係で「忍法 超変化の術」も通り辛く、仮に通ったとしてもマイナスをゼロにする程度の効果しか見込めません。
また、「ジュラック・グアイバ」で戦闘破壊できるモンスターがほぼ存在しないことも致命的で、多くの場合1700打点のバニラと化してしまい、「エヴォルカイザー・ラギア」の土台として機能しなくなる問題を抱えていました。一応、「禁じられた聖槍」などのコンバット・トリックカードで補助をすることはできますが、常にこうしたサポートができるわけではなく、そもそも展開サポートのサポートをするという時点で中々に回りくどい話です。
加えて、その【HEROビート】自体が【甲虫装機】のメタデッキとして有力視されていたという役割競合の背景も無視できません。
①:【甲虫装機】
②:【甲虫装機】に強い【HEROビート】
③:【甲虫装機】に強いが【HEROビート】に弱い【忍者ラギア】
話をシンプルにすると上記のような構図であり、①がグー、②がパーとすると、③はパーに負けるパーです。控えめに見ても不利すぎる状況と言わざるを得ず、そもそも【忍者ラギア】を選択する時点で大きなハンデがついてしまうことになります。
もちろん、実戦環境においては他のデッキも存在しており、【忍者ラギア】の強みが有効に働く機会も多かったため、ここまで極端な相性差が生じていたわけではありません。具体的には、「成金忍者」によって「インヴェルズ・ローチ」を素早く作り出せることはシンクロデッキに対する明確な勝ち筋となるほか、小粒が多い相手には【グアイバビート】でアド差をつけていくことも可能です。
さらに、【忍者ラギア】自体の開発も並行して進んでいっており、「レスキューラビット」を取り入れることで打点と速度の補強を図った【兎忍者】を筆頭に、【カオスドラゴン】要素との複合である【忍者カオスドラゴン】などの派生型が盛んに考案されるなど、様々な形で環境への適応が図られていました。
【忍者】としては間違いなく最も輝いていた時期であり、おおよそ2011年末~2012年上半期のこの時代こそが【忍者】最大の全盛期だったと言えるでしょう。
【まとめ】
【忍者】デッキについての話は以上です。
当初はカテゴリというより単なるシリーズカードのような扱いを受けていたテーマでしたが、「忍者マスター HANZO」を筆頭とする強力なサポートを多数獲得したことで一気に強化され、間もなくトーナメントレベルのデッキにまで成長を遂げました。当時の環境トップである【甲虫装機】に対して少なからず有利を取れたことも躍進の後押しとなり、外見の派手さは無いながらも堅実に戦っていける魅力から人気を博したデッキです。
まさに「忍者」のフレーバーにふさわしいいぶし銀の戦いぶりであり、カタログスペックの不利に負けない健闘を見せていたテーマだったのではないでしょうか。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
HANZOが出た頃からずっと忍者を使ってるので、忍者の記事があったことに感激しました!
コメントありがとうございます。
【甲虫装機】や【ゼンマイ】のインパクトに隠れていましたが、HANZOも当時としてはかなりのパワーカードだったように思います。環境でもしばらくの間は侮れない存在感を示していましたし、個人的には割かし思い出に残っているテーマです。