キメラテック・フォートレス・ドラゴン テキストミスが疑われたカード

2019年1月10日

【前書き】

 【第5期の歴史25 神獣王バルバロス誕生 専用デッキ【スキドレバルバ】の成立】の続きになります。ご注意ください。

 「神獣王バルバロス」の誕生によって【スキドレバルバ】ギミックが成立、【メタビート】における強力な武器としての地位を確立しました。この時期に限ればそれほど大きな存在感を示していたわけではありませんが、やがては第6期のシンクロ全盛期において有力メタとして名を馳せるギミックです。

 来期に向けた制限改訂も近付く8月下旬、とある新規カードの参入によってOCG界隈に少なからぬ騒動が巻き起こることになります。

 

生ける超融合 相手モンスターを融合素材に

 2007年8月21日、Vジャンプ付録から新たに1種類のカードが誕生しました。遊戯王OCG全体のカードプールは2895種類に増加しています。

 ここで現れた規格外の問題児、それは「キメラテック・フォートレス・ドラゴン」という融合モンスターでした。

サイバー・ドラゴン」+機械族モンスター1体以上
このカードは融合素材モンスターとして使用する事はできない。フィールド上に存在する上記のカードを墓地に送った場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。このカードの元々の攻撃力は、融合素材にしたモンスターの数×1000ポイントの数値になる。

 恐らくですが、現在の価値観では上記テキストに違和感を覚えることは(旧テキストである点を除けば)無いのではないかと思われます。具体的には、カードに書かれている通り「お互いのフィールドの」モンスターを素材として融合召喚できるモンスターであるとごく自然に認識できるのではないでしょうか。

 しかし、これは当時としてはかなり違和感のあるテキストで、率直に言えばテキストの不備、つまり開発側のミスが真っ先に疑われるような「あり得ない召喚条件」だったのです。

 こうした疑惑が発生した背景には、「開発側の信頼度が今ほど高くなかったこと」が主な要因として挙げられます。

 もちろん、最初期の第1期~第2期頃と比較すればルールの明文化が進んでいたのも事実ですが、それでも曖昧なまま放置されている部分は多く、また、新たにルールミスが発覚することも日常茶飯事だったからです。

(そして、その内のいくつかが未解決のまま放置されてしまう、という状況が続いていました)

 これにより「自分フィールド限定とエラッタが出される派」と「テキストそのままの召喚条件派」でプレイヤーの意見が割れてしまい、公式のアナウンスが出されるまで騒動が続いてしまうことになりました。期間としてはそれほど長く続いたわけではありませんが、これほどインパクトのあるテキストミス疑惑騒動も珍しかったのではないでしょうか。

 

サイバードラゴン弱体化&強化 複雑な関係

 とはいえ、「キメラテック・フォートレス・ドラゴン」の誕生がもたらした出来事はルール面の騒動だけではありません。

 純粋にゲーム環境に対して及ぼした影響も極めて多大であり、中でも「サイバー・ドラゴン」の「弱体化及び強化」による評価の激変は最大の出来事に数えられます。

 これだけ聞くと明らかに矛盾した話なのですが、これは文字通り「強くも弱くもなった」という意味です。もう少し正確に言えば「アタッカーとしては弱体化、ただし疑似除去としては強化された」という表現になるでしょう。

 上述の通り、「キメラテック・フォートレス・ドラゴン」は自分・相手問わずフィールドのモンスターを融合素材とするため、フィールドに「サイバー・ドラゴン」と何らかの機械族モンスターが並んだ瞬間に召喚条件が整います。その上、第5期当時は現在と異なりエクストラデッキの枚数制限が設けられていなかったため、召喚条件が揃った瞬間に「キメラテック・フォートレス・ドラゴン」を出されることはほぼ間違いありません。

 つまり、これによって「サイバー・ドラゴン」は疑似的に機械族モンスター全てに対してアレルギーを持つ虚弱体質となってしまったことに等しく、場持ちの悪さから純粋にアタッカーとして運用することは非常に困難となったのです。

(サイドラ召喚の返しにガジェを置かれ、そのまま吸収されるなど)

 しかし、これはもちろん逆の状況にも当てはまることで、サイバー・ドラゴン」は全ての機械族モンスターを無条件で吸収できる能力を得たと解釈することもできます。よって後出し前提、かつ維持することを考えなければ実質デメリットを気にせずに済むため、その場合は疑似除去カードとしての強みだけが残ると考えて差し支えありません。

 その一方で、相手が機械族モンスターを使わない場合は従来通りアタッカーとして機能するなど、意外なほど絶妙にリスクを回避していたモンスターです。もちろん、この虚弱体質が足を引っ張ってしまうケースも少なからずありましたが、総合的には強化されていたと言っていいカードではあるでしょう。

 

【機械族】の衰退 吸収を待つだけの存在

 しかしながら、これは【機械族】全体にとっては非常に致命的な状況でもありました。

 上述の通り、「キメラテック・フォートレス・ドラゴン」の融合素材の取り合いは基本的に「後出しジャンケン」の関係となり、先出し側が圧倒的に不利となるのは避けられません。その際、「サイバー・ドラゴン」側が先出しを控えるのはそれほど難しいことではありませんが、【機械族】側がこれを実行するのは明らかに不可能な話だからです。

 つまり、これ以降【ガジェット】などの機械族中心のデッキは常に「キメラテック・フォートレス・ドラゴン」の脅威に晒され続けるようになるという、メタゲームにおいては極めて大きなハンデを背負ってしまうことになったのです。

 もちろん、これほどのハンデを乗り越えるのはやはり容易なことではなく、この先の環境では多くの【機械族】関連デッキが衰退の道を辿っています。実際、ここで純構築の【ガジェット】が解体に向かってしまったことにも(関連カードの規制強化もあったとはいえ)こうした背景が存在していたことは間違いありません。

 逆に言えば、キメラテック・フォートレス・ドラゴン」の存在こそがメタデッキである【パキケガジェット】を生み出したとも取れ、【サイドラガジェ】とさえ言われていた以前までの共存関係を思えば何とも複雑な間柄です。

 事実上、たった1枚の新規カードがこれまでの相性差を真逆に反転させてしまった格好であり、これは第5期の中でも最も衝撃的な出来事のひとつに数えられる事件だったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「キメラテック・フォートレス・ドラゴン」についての話は以上となります。

 情報判明時のテキストミス疑惑に始まる騒動もさることながら、何より【機械族】全体に与えた衝撃は凄まじく、メタゲームに及ぼした影響も計り知れません。遊戯王OCGでも数少ない「カードプールに存在するだけでゲームバランスを揺るがすモンスター」の1体であり、その意味では「冥府の使者ゴーズ」に通ずるものがあるカードです。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。