メタルモンスターのロマン デッキで適用される召喚ルール効果
【前書き】
【第1期の歴史17 初期の融合モンスター 「デッキが組めない」からファンデッキに至るまで】の続きとなります。ご注意ください。
「デビル・フランケン」の誕生により、【グッドスタッフ】は瞬間的な火力を手にする形となりました。しかしながら、この新兵器は【エクゾディア】に対して有効と言えるものではなく、実際の環境はエクゾディアパーツをいかに素早く集めるかというソリティア・ゲームと化していきます。
また、【エクゾディア】側も徐々に「メタモルポット」「ニードルワーム」を意識し始め、当時は評価の低かった「神の宣告」を使い始めたことに加え、その逆に「メタモルポット」に効かない「心変わり」をデッキから抜いてしまうプレイヤーも現れるほどでした。
原始的なメタゲームの発生であり、この辺りから「環境」と呼ばれる概念がおぼろげに形を持ち始めていたのかもしれません。
そんな折、【第1期の歴史8 ゲーム同梱ランダム収録 なかなか手に入らない超レアカード】の記事で取り上げたものと同様に、普通の手段では入手できないカード群が誕生しました。
【ゲーム同梱カードの話】
1999年12月9日、「遊戯王真デュエルモンスターズ 封印されし記憶」というゲームソフトが発売されました。このゲームソフトにも特典としてカードが同梱されており、全5種類の中からランダムに3種類が封入されていました。
分母が前回から半分となったことにより、狙ったカードを多少は引き当てやすくなった格好となります。しかし、やはり購入者に厳しすぎる仕様と言うほかなく、これらのカードもかなりの高値で取引されていました。
幸い、ここで収録されていたカード群はいずれも実戦級の性能ではなかったため、プレイヤー目線では必須と言えるカードではありませんでした。あくまでもコレクションアイテムとしての側面が強く、これ目当てにゲームソフトを複数購入するといった事態はそれほど起こらなかったのではないでしょうか。
しかしながら、実用性はない反面かなり変則的な効果を持ったカードも含まれており、当時のプレイヤーの関心を多かれ少なかれ引き寄せました。
メタル化・魔法反射装甲
その内の1枚は、「メタル化・魔法反射装甲」です。
モンスター1体の攻撃力・守備力を300ポイントアップ! このカードを装備したモンスターで攻撃した時、相手の攻撃力の半分を装備モンスターの攻撃力にプラス!
「鎖付きブーメラン」と同様に、発動後装備カード化する罠カードとなります。装備モンスターの攻守を300上昇させる他、攻撃時に相手モンスターの攻撃力の半分を装備モンスターの攻撃力に上乗せすることが可能です。
つまり、装備モンスターの攻撃力が相手モンスターの攻撃力の半分以上であれば、数値にかかわらず攻撃力で上回ることができます。例えば、「岩石の巨兵」で「青眼の白龍」を戦闘破壊できるようになるため、発動さえできればほぼ確実に攻撃を通せるカードと言えるでしょう。
しかし、この効果は攻撃時にしか適用されず、相手から攻撃を受けた場合には無力です。そのため大半のケースで使い切りとなってしまい、修整値の低さも相まって装備カードである利点を活かしにくいカードでもありました。
ちなみに、この部分の効果を勘違いし、「相手の攻撃を受けた時にも攻撃力が上がる」と誤解してしまうプレイヤーも僅かながら存在していました。これに関しては「このカードを装備したモンスターで攻撃した時」とテキストに明記されており、開発側に落ち度はないと考えられますが、当時としては複雑な処理を行う効果だったことは否めないため、そうした誤解もやむなしと言えるのかもしれません。
この問題はアニメにおいても大々的に取り上げられており、ご存知の方も少なくないのではないでしょうか。その劇中においては、あるキャラクターが「メタル化・魔法反射装甲」の効果を勘違いしていたためにエースモンスターを戦闘破壊され、(主人公のネームバリューも影響していましたが)戦意喪失するというエピソードが描かれていました。
総評としましては、一定の有用性を持ったカードではあるものの、最前線で活躍するのは難しいという評価に落ち着いています。
メタルモンスター 美しすぎる光沢
そんな「メタル化・魔法反射装甲」の関連カードとして、「メタル・デビルゾア」というモンスターも同時期に生み出されました。
「メタル化・魔法反射装甲」を装備した「デビルゾア」を生け贄に捧げる。デッキからこのカードをフィールドに出すことができる。
特殊な条件を満たしたモンスターをコストとして、デッキからこのカード自身を特殊召喚できる召喚ルール効果を持っています。召喚ルール「効果」と呼ばれていますが、厳密には効果外テキストであり、効果ではないので注意が必要です。
当時は珍しかった特殊召喚モンスターの1体であり、そして特殊召喚モンスターの中でも極めて例外的な召喚条件を与えられたモンスターでもありました。
デッキからモンスターを特殊召喚する効果は数あれど、「条件による特殊召喚」によってこれを行うカードは遊戯王OCG全体で見ても異例です。ルール上、デッキの中、つまり非公開領域で効果が適用されている格好となるため、全体的にやや奇妙な挙動をします。
実際に使う場合、デッキから「メタル・デビルゾア」を特殊召喚することを宣言し、コストとなる「デビルゾア」「メタル化・魔法反射装甲」を墓地へ送ってデッキの「メタル・デビルゾア」を公開します。その後、デッキをシャッフルし、そこで改めて特殊召喚を無効にするタイミングが訪れる形となります。
召喚の際、いきなりデッキを触り始めるとトラブルの元となってしまうため、この辺りはよく注意しておくべきでしょう。
このように、非常に珍しい処理を行うカードではありますが、やはり性能面では優れているとは言い難く、ゲームでの活躍はほとんどありませんでした。
「メタル・デビルゾア」の性能以前に、まず肝心のコストとなる「デビルゾア」自体がレベル7・攻撃力2600のバニラと厳しい性能であり、そこから更に「メタル化・魔法反射装甲」を装備させなければなりません。
その上、苦労してコストを用意したとしても、それで出せる「メタル・デビルゾア」は攻撃力・守備力が400ずつ上がるだけと恩恵に乏しく、「メタル化・魔法反射装甲」の修整値を考慮すると僅か100しかステータスが変わっていないことになります。攻撃力吸収効果を失った分、むしろ弱体化しているとすら言えるでしょう。
しかしながら、メタル化という響きそのものにロマンをくすぐられるプレイヤーも居ない訳ではなく、少ないながらも愛好家が居たと記憶しています。
また、「メタル・デビルゾア」の同型カードとなる「レッドアイズ・ブラックメタルドラゴン」というモンスターも収録内容に含まれていました。こちらは「デビルゾア」ではなく「真紅眼の黒竜」がメタル化した姿で、原作漫画での活躍も手伝ってかコレクションアイテムとして一定の人気をキープしていました。
【まとめ】
「遊戯王真デュエルモンスターズ 封印されし記憶」の同梱カードについては以上です。
ここで誕生したカードはあくまでもコレクションアイテムとしての用途に留まり、環境に与えた影響は皆無と言えるものでした。
しかしながら、むしろ当時はその事実に胸を撫で下ろしたプレイヤーの方が多かったのではないでしょうか。入手困難かつ実戦級のカードなど、その取引価格が天井知らずに上がっていってしまうのは火を見るより明らかですので……。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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