【神光の宣告者】全盛期 メタデッキとしての活躍
・前書き
・神光の宣告者 2010年環境における奮闘
・【神光の宣告者】の成立 【高等儀式術】との複合
・大天使クリスティアの採用 制圧要員兼エースアタッカー
・「聖なるあかり」の意外な活躍 縁の下の力持ち
・まとめ
【前書き】
【第6期の歴史32 イレカエル×粋カエルの禁止コンボ 【ガエル】系デッキの環境入り】の続きとなります。特に、この記事では前中後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
神光の宣告者 2010年環境における奮闘
レギュラーパック「THE SHINING DARKNESS」から現れた有力新人の一角、それは「神光の宣告者」という儀式モンスターでした。
「宣告者の預言」により降臨。
手札から天使族モンスター1体を墓地へ送って発動する。相手が発動した効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。
手札の天使族モンスターを墓地へ送ることでモンスター効果・魔法・罠カードの発動を無効にするという、遊戯王OCGでも稀に見る強烈な制圧効果を与えられています。
さらに、ターン1制限を始めとする制約も一切設けられておらず、文字通りコストさえあれば何度でも万能カウンターを撃てるというのはシンプルに凶悪な性能と言わざるを得ません。効果だけを見るなら当時どころか現在の水準でもパワーカードの領域であり、現存する儀式モンスターの中でも最強格と言われる存在です。
弱点としては、単純に儀式モンスターゆえに重いこと、にもかかわらず効果を活かすために手札コストを要求されるという消耗の激しさが挙げられます。功を焦って無理に召喚しても真価を発揮できないまま落とされてしまうケースが多く、実質的には額面以上に重い召喚条件を与えられている儀式モンスターであると言えるでしょう。
しかし、そうした弱点を補って余りある強さを備えていることは間違いなく、「終焉の王デミス」以来のトーナメントレベルの儀式モンスターとして専用デッキの開発が進んでくことになります。
【神光の宣告者】の成立 【高等儀式術】との複合
【神光の宣告者】の相方として最初に名前が持ち上がったのは、やはりと言うべきか「高等儀式術」でした。
かつて【デミスドーザー】の中核として活躍した結果、2008年3月の改訂をもって制限カードに指定されたカードですが、それでも「マンジュ・ゴッド」「ソニックバード」らのサーチに対応することによって一定の実用性を残していました。また第6期中に「儀式の準備」という新たな武器を獲得していたこともあり、最低限【儀式召喚】として成り立つだけの土壌は十分に整っています。
さらに、「高等儀式術」自体が「神光の宣告者」と間接的にシナジーを形成していたことも強い追い風となっていました。
具体的には、儀式召喚の過程における墓地肥やしを「闇の量産工場」などのサルベージカードの布石とすることができるため、「神光の宣告者」の手札消費の荒さをある程度カバーできるという理屈です。なおかつ、上述のように「高等儀式術」をデッキの動きの主軸に据えている関係上、「神光の宣告者」が立っている場面ではほぼ確実に「闇の量産工場」を発動できるという図式が成り立つことになります。
つまり、【神光の宣告者】における「高等儀式術」は各種サルベージカードを万能カウンターに書き換えるカードと言い換えることもでき、その働きは単なる儀式サポートにとどまるものではありません。かつての【デミスドーザー】がそうであったように、「高等儀式術」というカードの性質がそのままメインギミックに関与している格好であり、この強固なシナジーこそが【神光の宣告者】のコンセプトの基盤を形作ったと言っても過言ではないでしょう。
大天使クリスティアの採用 制圧要員兼エースアタッカー
一方、別軸からの攻め手として「大天使クリスティア」をメインから複数枚積んでいたことも特徴の一つに当たります。
自分の墓地に存在する天使族モンスターが4体のみの場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
この効果で特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在する天使族モンスター1体を手札に加える。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いにモンスターを特殊召喚する事はできない。
このカードがフィールド上から墓地へ送られる場合、墓地へ行かず持ち主のデッキの一番上に戻る。
言わずと知れた【天使族】最強格のエースモンスターであり、【代行天使】などを中心に数々の採用実績を残した名カードです。現在でも特殊召喚メタを兼ねるアタッカーとして高い知名度を誇っており、「大天使クリスティア」を採用できること自体が一種の強みとして考えられるほどの存在感を放っています。
とはいえ、第6期当時の「大天使クリスティア」は相性の良いデッキに恵まれておらず、カードパワーの高さに反して満足に結果を出せていない状況にありました。これは単純に「大天使クリスティア」を出せるデッキが限られていたことも理由の一つですが、そもそも当時のカードプールでは専用デッキを組んだとしても【天使族ビート】にしかならず、素のデッキパワーが低すぎてまともに戦えなかったからです。
そこに現れたのが上記の【神光の宣告者】であり、複数のシナジーにより間もなく複合がなされたというのが大まかな事の経緯となります。具体的には、従来の【クリスティア】では難しかった墓地肥やしを「高等儀式術」によってすみやかに達成でき、逆に4体を超えてしまった場合も「闇の量産工場」で枚数調整を行えるなど、「大天使クリスティア」にとっては非常に都合の良い状況が成立していました。
もちろん、【神光の宣告者】側にとっても「大天使クリスティア」の存在はありがたく、純構築では不足しがちなアタッカーの確保、またサルベージ効果による手札コストの調達など、多くの面でこの恩恵に与っています。「大天使クリスティア」自体が持つ特殊召喚メタ能力もデッキコンセプトに噛み合っており、パーミッションとロックによる強固な盤面制圧は当時においても非常に恐れられていました。
もっとも、そう都合よく制圧布陣を敷いていけるゲーム展開ばかりではなく、大抵は序盤数ターンを下準備に費やさなければならない鈍重さを抱えていたことは否めません。
なぜなら、【神光の宣告者】は根本的に「高等儀式術」からの展開に依存しているため、これの発動に成功するまではどう足掻いても【天使族ビート】として振る舞うしかなかったからです。
「聖なるあかり」の意外な活躍 縁の下の力持ち
そのため、この時期に【神光の宣告者】が躍進を遂げた背景としては、むしろ「聖なるあかり」をメインから無理なく運用できたことにあったと言えるでしょう。
このカードは闇属性モンスターとの戦闘では破壊されず、その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、闇属性モンスターは攻撃宣言できず、お互いに闇属性モンスターを召喚・特殊召喚できない。
ステータスは貧弱であり、効果範囲もかなり限定されているピンポイントなメタカードですが、その分【闇属性】全般に対しては劇的に刺さる1枚です。つまり、当時のトップメタであった【インフェルニティ】【旋風BF】らを強く意識することができたため、メインから積める対策カードとしてはかなりの効力を発揮します。
【神光の宣告者】における「聖なるあかり」の有用性を保証していたのが「シャインエンジェル」「コーリング・ノヴァ」といった各種リクルーターの存在であり、たとえピン挿しであっても任意のタイミングで呼び出すことはそう難しくありません。
また、最悪「神光の宣告者」の手札コストにしてしまえる点も無駄がなく、場合によってはメインから「聖なるあかり」が3積みされることさえあったほどです。
実際のところ、「聖なるあかり」は【インフェルニティ】に対しては特に致命的なメタカードであり、これを突破するには数ターン反転召喚を繰り返して地道にシンクロ素材を揃えるか、「激流葬」などの数少ない除去に望みを託すしかなくなります。流石にメタが煮詰まってくる環境終盤においては「スノーマンイーター」「インフェルニティ・ブレイク」といった「対策の対策」も進んでいっていますが、それでも完全には応じきれず、【インフェルニティ】側はメイン戦でこれを置かれたら実質ゲームセットだったと言っても過言ではありません。
一方、【旋風BF】には「ゴッドバードアタック」を筆頭とする各種汎用除去、また「ライオウ」などの闇属性以外のモンスターも採用されることが多かったため、流石に「聖なるあかり」だけで勝つのは難しいと言われていました。しかし、リクルーターから「聖なるあかり」がいきなり飛び出してくるというだけでも【旋風BF】にとっては十分に脅威であり、少なくともデッキパワー格差を縮めるだけの有利は取れていたのではないでしょうか。
とはいえ、【ガエルシンクロ】や【光デュアル】などの【闇属性】が絡まないデッキに対しては何の効力も発揮しないカードでもあるため、その場合は【神光の宣告者】本来のデッキパワーだけで勝負しなければならない不利も抱えていました。上述の通り、当時の【神光の宣告者】はそれほど高い地力を備えていたわけではなく、そもそも真正面から戦うこと自体が厳しいハンデだったからです。
結局、【神光の宣告者】がこうした地力の低さという問題から逃れることはできず、終始2番手以下の立ち位置に甘んじていたことは否めません。実際、最大の仮想敵である【インフェルニティ】が衰退する2010年9月以降は勢力を一気に縮小させており、やがては自然消滅してしまった短命のアーキタイプでもありました。
【まとめ】
「神光の宣告者」についての話は以上です。
2010年出身の儀式モンスターとしては破格のカードパワーを与えられており、間もなく【神光の宣告者】として環境入りを果たしています。素のデッキパワーにはやや恵まれないながらも「大天使クリスティア」「聖なるあかり」といった面々を取り込んでメタゲームを生き抜いており、単純なデッキパワーだけが全てではないということを実績として示していたデッキです。
その後は上述のように2010年9月の改訂を境に第一線を退いていますが、将来的には【代行天使】との複合デッキ【代行宣告者】として一時期復再浮上を果たすなど、侮れない活躍をしていました。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
パーデクはインフェルニティやBF相手には基本的にTODで勝つのが基本のプレイングだったように思います!
デュエル1本目からパーデクあかりクリスティアを敷ければ自爆特攻による自滅もある程度防げて試合時間40分経過させてライフ差で勝利みたいな流れが多かった気がします。
仮にデュエルに決着がついてしまっても当時の公認大会はもちろんCS等の非公認大会ですらレインボーライフなどのライフ回復系が普通にまかり通っていたような時代だった気がするので時間をかけて戦って後は、サイドチェンジする際にライフ回復系カードと時間制限でゲームをゴリ押していたような思い出があったはずです、、
CSは基本的にサレンダーがオッケーだったはずなので、いかにサレンダーをさせないようなゲーム運びをするのか、なんならサレンダーされた際にいかに言いくるめてサレンダーをさせないのか、みたいなことにも注力していたような覚えがあります。
褒められたデュエルの仕方ではもちろん無いのですが、、、
当時のTPなんてパーデクで不正ばかりしていたなんて話題も多かったですし、自分も使ってたのですが、根本的にパーデク周りは遅延や不正でトラブルの元になるような事が多かったように思えます。
10年近く前の話しで記憶も曖昧ですけどね。
読んでいたら当時が懐かしくてついついコメント残したくなってしまいます!
コメントありがとうございます。
パーデクがこの頃からTOD狙いのデッキだったというのは理解していませんでした。知識不足ですみません……。(記憶違いでなければ神戸CSとかで噂になっていたような気はしますが、対面経験が少ない+間違っていたら失礼すぎるので記事には書けませんでした)
過去環境の話はどうしても記憶に頼る部分が多くなってしまいますので、詳しい方から話を聞かせていただけるのはとても助かります。今はちょっと追記するのは無理そうですが、そのうち詳しく書き直せたらと思います。