最強の儀式魔法「高等儀式術」 儀式デッキの救世主

2018年12月3日

【前書き】

 【第5期の歴史14 転生の予言がパワーカード扱いされていた時代】の続きになります。特に、この記事では前中後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。

 

高等儀式術 二度と印刷されないタイプのカード

 「N・グラン・モール」や「転生の予言」のような汎用カードとしてではなく、専用サポートカードとして注目を浴びたのは「高等儀式術」という儀式魔法でした。

手札の儀式モンスター1体を選び、そのカードとレベルの合計が同じになるようにデッキから通常モンスターを墓地へ送る。その後、選んだ儀式モンスター1体を特殊召喚する。

 手札にある「任意の」儀式モンスターと同じレベルになるように、通常モンスター1体以上を「デッキから」墓地に送って儀式召喚を行うという効果を持っています。このカードの特徴は見ての通り2点ありますが、どちらも第5期当時としては革命的な効果です。

 最大の特徴は、やはり儀式召喚のコストをデッキから支払える点にあるでしょう。

 制約としてレベルの合計が儀式先と等しいこと、また通常モンスターしかコストにできないことなどが存在しますが、得られるメリットに比べれば些細な縛りです。これまでは手札からコストを支払うしかなかった【儀式召喚】としては画期的なカードであり、「儀式召喚のコストを軽減する儀式魔法カード」としては史上初となるカードでもあります。

 なおかつ、高等儀式術」以降なぜか目立ったサポートを全く貰えなくなるという不遇さにより、【儀式召喚】界隈においては長年に渡って唯一の救世主であり続けていました。こうした状況が動くのは【リチュア】などが現れる第7期頃のことで、実質的には3~4年は時代を先取りしていたカードだったと言えるでしょう。

 ちなみに、「高等儀式術」の大きな強みである「儀式召喚のコストをデッキから支払える」という特徴ですが、実はこれと同じ条件を持つカードは遊戯王全体でもごく僅かであり、なおかつ2例目が現れたのも極めて最近の話です。

 墓地リソースによって消費を肩代わりするなど、別方向からのアプローチによってコストを軽減するタイプの儀式魔法は少なくありませんが、純粋にデッキから儀式コストを肩代わりする効果に限定した場合、なんと第10期出身の「リヴェンデット・バース」の参入を待たなければなりません。

 実に12年近い時代の先取りと言って良く、革命的という言葉にも誇張はないことが窺えます。

 一方、もう一つの特徴である「あらゆる儀式モンスターに対応すること」も上記に劣らず目を引きます。複数の儀式モンスターに対応する儀式魔法カードとしては「奈落との契約」などが過去にも現れていますが、こちらは文字通り制約が一切存在しません。

 これと同様の対応範囲を持つ儀式魔法が次に現れるのは「魔神儀の祝誕」誕生時のことで、こちらも第10期出身のカードです。それも事実上は【魔神儀】カテゴリカードであることを踏まえれば、汎用カードに分類される「高等儀式術」がいかに異様な性能であるかが窺えます。

 何より、「儀式召喚のコストをデッキから支払えること」「あらゆる儀式モンスターに対応すること」の2点を同時に兼ね備えるカードは今なお現れておらず、文字通り遊戯王OCGにおいては唯一無二のカードです。

 恐らくはカードプールが広がりすぎたことで安易に条件の緩いカードをデザインできなくなったことによる関係であり、まさしく今後二度と印刷されないタイプの奇跡のカードと言えるのではないでしょうか。

 

【儀式】デッキ復権ならず 当初は「所詮は儀式」

 もっとも、この「高等儀式術」も参入直後から環境での活躍があったわけではありません。

 理由は非常に単純で、そもそも根本的に【儀式召喚】というシステムそのものが実戦レベルではないと多くのプレイヤーに認識されていたからです。

 第1期の時点から既に不遇の立ち位置にあった【儀式召喚】ですが、驚くべきことに4世代もの時間をかけて得た有力なサポートは「センジュ・ゴッド」や「ソニックバード」、また「マンジュ・ゴッド」程度しか存在しませんでした。逆にだからこそ「高等儀式術」のような大振りなカードのデザインが許されたとも言えますが、同期の【融合召喚】と比べて露骨な格差社会が広がっていたことは否定できません。

 加えて、当時は「ダスト・シュート」や「マインドクラッシュ」などのハンデスカードが猛威を振るっており、儀式召喚を妨害されやすかったことも強い向かい風として吹いていました。単純にハンデスでパーツを落とされることはもちろん、最悪の場合「高等儀式術」にハンデスを重ねられ、空振りにされてしまう(※)ことも決して少ないとは言えません。

(※カードの発動時点では儀式モンスターを公開する必要はありませんが、既に相手に知られているか、予測されているケースがほとんどです)

 その他、「マンジュ・ゴッド」らのサーチ効果を止めてくる「死霊騎士デスカリバー・ナイト」や、安易なワンショットを咎める「冥府の使者ゴーズ」も厳しい仮想敵として立ち塞がります。あるいはもっと単純に、やはり【儀式召喚】というアーキタイプには当時のインフレ環境に真正面から対抗できる地力は備わっていなかったのです。

 こうした背景もあり、言葉は悪いですが「高等儀式術」の存在を踏まえたとしても「所詮は儀式」という風潮が強かったことは否めません。そのため当初は【儀式召喚】が環境レベルで浮上することはなく、しばらくは水面下で燻る状況が続いていました。

 

【デミスドーザー】の前身 【デミスゾーク】奮闘時代

 しかし、「高等儀式術」の存在が多くの【儀式召喚】関連デッキを環境上位に導いたことは事実です。

 中でも【デミスドーザー】における活躍ぶりは目を見張るものがあり、むしろ活躍しすぎて同デッキから禁止カードを複数枚輩出してしまうほどの猛威を振るうことになります。【儀式召喚】特有の脆さから弱点も少なくないデッキ(※)ではありましたが、その上で結果を出したというのはある意味並以上に驚異的な話です。

(※詳しくは下記の関連記事で解説しています)

 とはいえ、やはり上記項目の通りこの時点では【儀式召喚】自体の評価が低く、【デミスドーザー】成立の気配は全く見られない状況でした。辛うじてファンデッキ寄りの【デミスゾーク】、それも「青眼の白龍」「ジェネティック・ワーウルフ」「正統なる血統」を積んで【バニラビート】の要素を取り入れた型が考案されていた程度です。

 「デビルドーザー」とのコンボが広く認知されるようになるのは2007年以降、そこから「巨大化」などを取り込んで後攻1キルギミックに特化し始めるのは3月の改訂以降の話となります。その後、同年6月に「トレード・イン」を獲得したことで選考会に滑り込みで参戦し、地雷的に一定の成績を収めたというのが大まかな経緯となるでしょう。

 結果として直後の9月の改訂では「巨大化」が制限カードに、「突然変異」が禁止カードに指定され、後攻1キルデッキとしては大幅に勢いを落としています。最終的にはその半年後に「高等儀式術」そのものが制限カード指定を受け、【儀式召喚】全体を巻き込んで現役時代を終えることになりました。

 

実は制限行き後も使われていた高等儀式術 儀式デッキの星

 このように、第5期終盤において制限行きを余儀なくされた「高等儀式術」というカードですが、実は制限カードになった後もトーナメントレベルで実績を残していたことは意外に知られていません。

 代表的なのは【神光の宣告者】における活躍であり、むしろ「高等儀式術」の存在がなければ【神光の宣告者】の環境入りはなかったとまで言われます。詳しくは関連記事の通りですが、「高等儀式術」の高い墓地肥やし性能が【神光の宣告者】というアーキタイプの根幹部分にまで絡んでいたことがその理由です。

 つまり、制限カードというハンデを抱えながらも環境クラスのデッキの柱を担っていたということであり、その影響力は尋常ではありません。「高等儀式術」が備える高い汎用性と応用性、あるいは【儀式召喚】界隈の極端な狭さが招いた結果とも言えますが、いずれにせよ単にカードパワーが高いだけのカードには到底不可能な偉業です。

 実に誕生から数世代に渡って儀式デッキ全般を支えた縁の下の力持ちであり、まさに儀式デッキの救世主とも言える存在だったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「高等儀式術」についての話は以上となります。

 長らく不遇の立ち位置にあった【儀式召喚】の期待の星として現れ、実際に後の環境では【デミスドーザー】をトーナメントシーンに押し上げるなど、多くの実績を残した【儀式召喚】を代表するカードです。

 一方で、参入直後の活躍はカジュアルレベルに収まっていた向きはあり、これほどのサポートをもってしても儀式デッキの環境入りは一筋縄ではいかない話だったという厳しい現実を示していたのかもしれません。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。