【カラクリ】が地味に強かった時代 2011年下半期の奮闘
・前書き
・環境トップ勢力の入れ替わり 【TG代行天使】1強時代
・【暗黒界】意外な苦境 環境トップに届かず
・中堅勢力の浮上 【カラクリ】環境入り
・【カラクリ】のデッキレシピ(2011年9月)
・まとめ
【前書き】
【第7期の歴史19 制限改訂2011/9 「開闢」制限復帰 【カオス】の復活】の続きとなります。特に、この記事では前後編の後編の話題を取り扱っています。ご注意ください。
環境トップ勢力の入れ替わり 【TG代行天使】1強時代
2011年9月の制限改訂によってカードプールに調整が入り、環境の勢力図にも大きな変化が訪れることになりました。これまでメタゲームの中心にあった【六武衆】【ジャンクドッペル】の2大巨頭はその勢いを大幅に落とし、環境の流れを左右するほどの存在ではなくなっています。
代わりに環境トップに立ったのが【TG】と【代行天使】の複合デッキである【TG代行天使】です。
制限改訂ノータッチという追い風に加え、シンクロ関連ギミックに規制が入ったことによる【TG】ギミック再評価の流れや、何より「カオス・ソルジャー -開闢の使者-」を最も有効に使いこなせるアーキタイプだったという複数の優位点が重なり、一気に勢力を拡大することに成功しています。
また、当時のカードプールでは【TG代行天使】対策になる現実的なメタカードが「ライオウ」や「スキルドレイン」程度しかなく、そこから一歩下がって「A・O・J コアデストロイ」に声がかかるケースがあるという程度に収まっていました。なおかつ、これらのカードは1枚で動きを封殺できるほどのクリティカルな対策にはなり得なかった(※)ため、究極的には汎用カードによる妨害しか応手がないという状況にあったのです。
(※「ライオウ」は「創造の代行者 ヴィーナス」からの「ガチガチガンテツ」などで処理され、「スキルドレイン」は刺さりはするものの直撃とまではいきません)
最大の問題は、そもそも「ライオウ」や「スキルドレイン」は他の多くのデッキにとっても苦しいメタカードだったため、これを無理なく用意できるデッキ自体が少なかったことにあるでしょう。かつての【旋風BF】のようにアンチシナジーを気にせずに済むほどの地力を持ったデッキも存在せず、結局は【TG代行天使】の一人舞台を許すしかなかったという苦い背景が存在します。
これにより、最終的に【TG代行天使】は短期間ながら1強に近いポジションを築き上げるに至っており、前期とは打って変わって旗色のはっきりしたメタゲームが展開されていくことになりました。
【暗黒界】意外な苦境 環境トップに届かず
一方、同じく続投組の中では【暗黒界】の躍進も目を引きます。
対策なしでは勝てないと言われていたほどのパワーデッキであり、純粋な地力においては【六武衆】にすら比肩するものがあった強力なアーキタイプです。当然、2011年9月以降も引き続きメタゲームを牽引していくと目されており、実際に環境初期の段階では【TG代行天使】と勢力を二分する形でメタが推移していました。
しかし、【六武衆】という防波堤が消えたことで環境のターゲットがこれまで以上に【暗黒界】に集中するようになったため、「ヂェミナイ・デビル」などの追加のサイドカードによる対策のほか、メインデッキの段階から【暗黒界】を強く意識したカード選択が取られるようになっています。
具体的には、「暗黒界の龍神 グラファ」に効き目が薄かった「神の警告」の採用率が低下し、代わりに「サンダー・ブレイク」「鳳翼の爆風」などのフリーチェーン系の妨害カードが使われるようになりました。これらは「暗黒界の龍神 グラファ」「暗黒界の雷」の被害を軽減できる(※)ことに加え、【暗黒界】のメインエンジンである「暗黒界の門」を潰せるという優位点を持っていたからです。
(※「暗黒界の雷」に関しては、手札を捨てさせないことによって展開を妨害できるケースもあります)
さらに、次世代版【次元メタビ】である【次元ラギア】が本格的に頭角を現していたことも向かい風となっており、結果的にはむしろ前期環境よりも苦しい立場に追い込まれていたことは否めません。
強力なライバルが消えたことが逆に失速の原因となった珍しいケースであり、純粋なデッキの強さだけがメタゲームの順位を決めるわけではないことを示す好例と言えるでしょう。
中堅勢力の浮上 【カラクリ】環境入り
このように、2011年9月の制限改訂は環境トップを取り巻く状況を大きく変化させましたが、その影響は中堅勢力においても色濃く表れています。
当改訂を追い風として受けた勢力の筆頭、それは【カラクリ】と呼ばれるシンクロデッキの一種です。
星8/地属性/機械族/攻撃力2800/守備力1700
チューナー+チューナー以外の機械族モンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分のデッキから「カラクリ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「カラクリ」と名のついたモンスターの表示形式が変更された時、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
上記は【カラクリ】最強のエースモンスター、「カラクリ大将軍 無零怒」のテキストです。【カラクリ】シンクロに共通するリクルート効果に加え、【カラクリ】モンスターの表示形式変更に反応してドロー加速を行う強力なアドバンテージ生成能力を持っています。
簡単に言えば、シンクロ召喚のディスアドバンテージを即座に回復し、さらに維持できればリソース源にもなるという優秀な大型モンスターです。効果の性質も【カラクリ】というカテゴリの特徴に噛み合っており、当時の【カラクリ】はこのカードの存在によって成り立っていた(※)と言っても過言ではないでしょう。
(※実際、「カラクリ大将軍 無零怒」をいち早く展開するためだけに「簡易融合」と「メカ・ザウルス」のセットが標準搭載される傾向にあったほどです)
前置きが長くなりましたが、つまり当時の【カラクリ】は良くも悪くも「カラクリ大将軍 無零怒」からの展開に依存しており、【ジャンクドッペル】のように「TG ハイパー・ライブラリアン」や「フォーミュラ・シンクロン」を起点として動くことが困難なデッキでもありました。これは2011年環境においてはあまりに厳しいハンデであり、前期環境ではその点で落第点を付けられていたことは否めません。
しかし、制限改訂で上記2枚に規制が入った後となってはむしろこれが強みに転じており、改訂によるダメージを全く受けずに済んだ数少ないシンクロデッキとして脚光を浴びるに至っています。属性の関係で「ナチュル・ビースト」を採用できるという【ジャンクドッペル】にもなかった強みを持っていたことも大きく、次第にその制圧力を活かした【準メタビート】軸の構築が浸透していくことになりました。
とはいえ、やはり【カラクリ】のデッキパワーが【TG代行天使】や【暗黒界】には一段及ばなかったことは事実です。
8シンクロという重いカードを起点とする以上、特定のカードが揃わなければ動き出せない鈍重さを抱えていることは否めず、また展開が大振りになりやすい関係で妨害にも脆さを露呈してしまいます。頼みの「ナチュル・ビースト」もフリーチェーン罠の流行を受けて徐々に信頼性を落としていっており、最後には年末の【甲虫装機】の台頭によって致命傷を食らってしまった印象はあります。
もちろん、当時の【カラクリ】も環境上位に入り得るだけのポテンシャルは持っていたと思うのですが、少なくとも史実においては大成できなかったというのが現実です。
【カラクリ】のデッキレシピ(2011年9月)
個人的に使っていた【カラクリ】のデッキレシピも載せておきます。
モンスターカード(13枚) | |
---|---|
×3枚 | カラクリ小町 弐弐四 |
カラクリ商人 壱七七 | |
カラクリ兵 弐参六 | |
×2枚 | カラクリ参謀 弐四八 |
×1枚 | カラクリ守衛 参壱参 |
カラクリ忍者 九壱九 | |
魔法カード(16枚) | |
×3枚 | 簡易融合 |
借カラクリ蔵 | |
サイクロン | |
×2枚 | カラクリ解体新書 |
×1枚 | 大嵐 |
死者蘇生 | |
月の書 | |
貪欲な壺 | |
ブラック・ホール | |
罠カード(11枚) | |
×3枚 | |
×2枚 | 神の警告 |
次元幽閉 | |
奈落の落とし穴 | |
リビングデッドの呼び声 | |
×1枚 | 神の宣告 |
激流葬 | |
ダスト・シュート | |
エクストラデッキ(15枚) | |
×3枚 | カラクリ大将軍 無零怒 |
×2枚 | カラクリ将軍 無零 |
メカ・ザウルス | |
×1枚 | A・O・J カタストル |
スクラップ・ドラゴン | |
スターダスト・ドラゴン | |
ナチュル・ビースト | |
ナチュル・ランドオルス | |
氷結界の龍 トリシューラ | |
氷結界の龍 ブリューナク(エラッタ前) | |
ブラック・ローズ・ドラゴン |
必須パーツ+強い罠を詰め込んだだけの面白みに欠けるテンプレ構築ですが、そのぶん癖も薄いため、よく言えば無難に強いリストです。真面目に調整するなら最適化できそうな部分(※)もありますが、それを話し始めると収拾がつかなくなりそうなので、ここでは触れません。
(※とりあえず「アーカナイト・マジシャン」+「カオス・ウィザード」のパッケージは入れるべきだったとは思います)
とはいえ、回していて楽しいデッキだったことは間違いなく、弱点は決して少なくないながらも手に馴染むという面白いデッキでもありました。何より、基本的なパーツが5000円程度で揃うという価格的な手軽さも魅力となり、カタログスペック以上に使用者に恵まれていたカテゴリだったのではないでしょうか。
【まとめ】
前記事と合わせて、2011年9月の改訂で起こった大まかな出来事は以上です。
前期環境においてメタゲームの柱を担った【六武衆】【ジャンクドッペル】らがトップから落ち、これ以降は【TG代行天使】が広く環境を支配していくことになります。それ以外にも【暗黒界】や【次元ラギア】などの強力な勢力は存在しましたが、様々な理由から【TG代行天使】の牙城を崩すには至らず、最終的には1強環境に収束するという結末を迎えました。
しかし、その裏では【カラクリ】を始めとする各種中堅デッキの勢いも増しているなど、新たな流れも生み出していた改訂だったと言えるでしょう。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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