ダンディライオン激動の生涯 生け贄、シンクロ、リンクまで
【前書き】
【第4期の歴史24 黄泉ガエルが【黄泉帝】の魂だった頃の話】の続きとなります。ご注意ください。
「黄泉ガエル」という最高の自己再生モンスターの参入によって【黄泉帝】が成立し、【Vドラコントロール】の支配が強まっていた当時の環境に一石を投じました。これにより間接的に既存のビートダウンデッキも復権するなど、様々な形で上向きの変化に繋がっています。
その後は散発的に新規カードが現れながらもメタの大きな変動はなく、上記の状況を引き継いだ格好で12月を迎えています。そのまま来年に突入するかに思えた遊戯王OCGでしたが、そんなOCG界に再び衝撃が走りました。
遊戯王OCG屈指の有名カード、「ダンディライオン」の誕生です。
トークン産み落とし 分裂する綿毛素材
2005年12月17日、Vジャンプ付録の書籍同梱カードとして「ダンディライオン」が現れました。遊戯王OCG全体のカードプールは2316種類に増加しています。
このカードが墓地へ送られた時、自分フィールド上に「綿毛トークン」(植物族・風・星1・攻/守0)を2体守備表示で特殊召喚する。このトークンは特殊召喚されたターン、生け贄召喚のための生け贄にはできない。
元の場所は問わず、墓地へ送られた場合にトークン2体を特殊召喚する効果を持ったモンスターです。自身も含め、戦力としては期待できない小粒のステータスですが、ことトークン生成能力において右に出るものはありません。
単純にこれ1体で3体分のモンスターにカウントできることに加え、効果の発動条件や回数制限も一切存在しないなど、遊戯王全体を見渡しても稀なほどに高いポテンシャルを備えています。おおよそトークンが活きる状況下ではどんな時でも輝くモンスターであり、実際に何度も制限リストを行き来した経験を持つカードです。
また海外では制限を飛び越えて禁止カードにまで指定されており、そうした事実からもこのカードの性能が規格外であることが窺えます。もちろん、今後の環境の推移次第では日本国内でも海外に倣った規制が取られる可能性(※)もあり、この先も動向に目が離せないカードなのではないでしょうか。
(※案の定、日本でも2019年1月の改訂で禁止カード指定を下されることになりました)
生け贄時代 ライバルは黄泉ガエル
そんな「ダンディライオン」最初の活躍の場は、この1ヶ月前に現れた新勢力【黄泉帝】において訪れています。
小型トークンを2体も呼び出す効果が帝モンスターと強固にシナジーすることは誰の目にも明らかです。トークンには特殊召喚されたターン生け贄召喚に使用できない制約もありますが、相手ターン中に墓地へ送られれば返しのターンでそのまま使用できるため、それほど大きな問題とはなりません。
また、「黄泉ガエル」と異なり魔法・罠ゾーンを空けておく必要もないため、デッキ構築時点から【グッドスタッフ】に近い構成を取れるメリットもあります。この型は特に【獅子黄泉帝】と呼ばれて区別され、従来の【黄泉帝】と比べて事故の問題がある程度解消されているという強みを持っていました。
ただし、安定性と引き換えに爆発力が落ちていることも間違いないため、必ずしも【黄泉帝】以上に強いデッキであると言い切ることはできません。むしろ純粋なデッキパワーそのものは【黄泉帝】の方が高く、【獅子黄泉帝】への派生はメタゲームへの適応の結果だったとも言えます。
最後は3ヶ月後の改訂で「ダンディライオン」が制限カード行きとなり、この【獅子黄泉帝】も解体宣言を下されることになりました。デザイン時点から生け贄召喚への濫用を防ぐ設計が取られていたにもかかわらず、こうした結果に繋がってしまった事実こそが、当時の「ダンディライオン」の強さを物語っていたのではないでしょうか。
シンクロ時代 【デブリダンディ】ほか
次の活躍の場は第7期初頭、【デブリダンディ】全盛期において訪れています。
「ダンディライオン」のトークン生成能力は強制効果であるため、シンクロ召喚の素材となった場合も同様にトークンを生み出します。合計レベルはトークンと合わせて5、さらに分割してレベルの調整が行えるなど、【シンクロ召喚】におけるこのカードの有用性は計り知れません。
生け贄召喚時代と違ってトークンの使用制限も全く存在せず、ある意味ではかつて以上にポテンシャルを発揮していたとも言えます。実際に規制緩和直後から様々なデッキで活用法が見出され、やがては【デブリダンディ】の成立に至っていた事実からもそのことが窺えるでしょう。
結局、緩和から1年後の2011年3月改訂で再び制限カードに逆戻りしてしまい、その後6年間の制限カード時代を過ごすことになりました。時代の進行によってパワーカードが更なる成長を遂げた例であり、こうした出来事もまた「ダンディライオン」の強さを裏付けるエピソードの1つです。
リンク時代 【植物リンク】の中核
最後の活躍の場は第10期中期、【植物リンク】の全盛期において訪れています。
レベルなどに関係なく、とにかくモンスターの数が重視されるリンク召喚とは最高に噛み合うカードであり、ルール導入直後から一定の注目を集めていました。シンクロ時代と違ってチューナーすら必要としないため、その利便性、取り回しの良さは過去最高クラスです。
カードプールの拡大によって「ダンディライオン」そのものへのアクセス手段が格段に増加していた事実も見逃せません。とりわけ「アロマセラフィ-ジャスミン」の存在は極めて重大な要素となり、このカードの潜在能力を最大限に引き出す結果にも繋がっています。
こうした流れもあって【植物リンク】が成立し、以降の環境ではトップメタの一角として大きな存在感を示していくことになりました。その結果、2018年1月の改訂ではまたしても制限カード行きの結末を迎えており、どうにも既視感が拭えない状況です。
しかし、制限カードとなった後も【植物リンク】を含む各種【リンク召喚】系デッキの中核カードとして活躍し続けたため、最終的には禁止カード指定を下されています。ゲームバランスのインフレが進んだ今日の遊戯王において、もはや「ダンディライオン」のようにほぼ無条件でトークンをばら撒けるカードは到底許される存在ではなくなっていたということなのかもしれません。
【まとめ】
「ダンディライオン」に関する話は以上です。
参入直後から【黄泉帝】を【獅子黄泉帝】に派生させるほどの影響力を発揮するなど、そもそもカードデザイン段階から調整ミス気味に強いカードだったことは否定できません。ある時代におけるトークンの有用性がそのままカードパワー評価に直結しており、実際にエクシーズ時代、ペンデュラム時代はそれほど目立たない立ち位置に置かれていたカードでもあります。
リンク召喚全盛期の現在は恐らくこのままの位置に落ち着くものと思われますが、結局のところ、その時代における主流の召喚法との相性に応じて再び浮き沈みを繰り返す羽目になるカードなのかもしれません。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
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