地雷デッキ【ダークマター征竜】ワンキル 【征竜】最後の輝き

2021年8月20日

【前書き】

 【第9期の歴史12 儀式詐欺テーマ【影霊衣(ネクロス)】全盛期 「青一色」環境の到来】の続きとなります。ご注意ください。

 【影霊衣】という次世代儀式詐欺テーマの参入を受け、環境は更なるインフレと高速化を迎えました。

 直前に猛威を振るっていた【シャドール】に対して有利に戦えたことも理由の1つですが、それ以上にそもそも単純にデッキパワーが高すぎたことが大きく、構図としてはパワーデッキが更なるパワーデッキに蹴落とされてしまった格好です。

 第9期突入からひたすらにゲームスピードが加速し続ける最中、年末に現れた未知の暗黒物質によって環境に波乱が起きることになります。

 

暗黒物質襲来 ギャラクシーアイズダークマタードラゴン

 2014年12月20日、「PREMIUM PACK 17」が先行販売されました。新たに20種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは6813種類に増加しています。

 【シャドール】の即戦力となった「ペロペロケルペロス」を筆頭に、【水属性】関連サポートでありながら汎用ランク2エクシーズとしても優秀な「キャット・シャーク」など、数は少ないながらも実戦級のカードを輩出したパックです。また、「BF-星影のノートゥング」「BF-上弦のピナーカ」といった有用なカテゴリ系サポートカードも現れており、全体的に中身の充実したラインナップに仕上がっていました。

 しかし、そうした中でも際立って存在感を示していたカードは、やはり「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」をおいて他になかったのではないでしょうか。

No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン

エクシーズ・効果モンスター
ランク9/闇属性/ドラゴン族
攻撃力4000/守備力0
レベル9モンスター×3
このカードは自分フィールドの「ギャラクシーアイズ」Xモンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。
このカードはX召喚の素材にできない。
①:このカードがX召喚に成功した時、自分のデッキからドラゴン族モンスター3種類を1体ずつ墓地へ送って発動できる。相手はデッキからモンスター3体を除外する。
②:このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる。

 いわゆる「重ねてエクシーズ召喚」系列のエクシーズモンスターの一種であり、ランク8である「ギャラクシーアイズ」Xモンスターを下敷きに召喚できるため、実質的にはランク9の皮を被ったランク8エクシーズモンスターと言えるカードです。

 攻撃力は4000と重量級モンスターにふさわしい数値を備えていますが、特筆すべきはやはり何と言ってもその効果です。エクシーズ召喚成功時に相手のデッキからモンスター3体を除外する1つ目の効果、エクシーズ素材を取り除いてモンスター限定の2回攻撃を行う2つ目の効果を持っています。

 後半の効果はほぼ見たままの性能であるため説明は省きますが、前半の効果に関しては一見すると良く分からない効果です。除外できる枚数は決して多いとは言えず、また除外するモンスターに関しても自分ではなく相手プレイヤーが自身で選んで除外するため、デッキ破壊としてもピーピングとしても中途半端な性能であることは否めません。

 しかし、問題は効果そのものではなくその発動コストにあり、なんとデッキからドラゴン族モンスター3種類を墓地へ送るという垂涎もののコストを支払うことができます。一見してとんでもない墓地肥やし能力であり、1体や2体であればまだしも納得できるとしても、3という数字は絶対適当に決めたのではないかと疑ってしまうほどの圧倒的パワーを感じます。

 実際、種族対応という緩い縛りで大量墓地肥やしができてしまうカードは「スネーク・レイン」などごく限られたカードしか存在しておらず、あまつさえそれをコストで行ってしまうというのは前代未聞の話です。コストが重い、軽いという表現に当て嵌めるのであれば「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」は軽いを通り越して負の質量であり、その名の通り確実に反物質の領域へと突入していることは疑いようもありません。

 また、OCGのルール上コストの支払いを無効にするような処理は原則存在しないため、間接的に「エフェクト・ヴェーラー」「スキルドレイン」などの効果無効系カードに耐性を持っているのも大きな強みです。

 要するに召喚に成功しさえすればほぼ確実に墓地肥やしを通せるということで、これほど色々な意味で規格外のカードは遊戯王広しと言えども一握りでしょう。

 とはいえ、これはあくまでも「召喚に成功すれば」の話であり、現実的にはその重い召喚条件によってある程度のバランス調整が保たれていたことは確かです。

 実際、当時のゲームバランスにおいてはランク8を立てること自体がそれなりにハードルの高い行為だったため、少なくともこの時点のカードプールに限って言えば(※)「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」も見た目の印象ほど壊れていたわけではありませんでした。

(※案の定、将来的には酷いことになりました。詳しくは記事後半部で解説しています)

 

ダークマター征竜の回し方・展開ルート

 もっとも、第9期当時の時点においても「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」が極めて強烈なインパクトを秘めたカードだったことに変わりはなく、間もなくこれを軸にした専用デッキ【ダークマター征竜】として世に解き放たれることになります。

 

サンプルデッキレシピ(2015年1月1日)
モンスターカード(24枚)
×3枚 ガーディアン・エアトス
神獣王バルバロス
青眼の白龍
×2枚 エクリプス・ワイバーン
幻水龍
×1枚 焔征竜-ブラスター
混沌帝龍 -終焉の使者-
巌征竜-レドックス
幻木龍
Sin スターダスト・ドラゴン
Sin 青眼の白龍
ドラグニティ-コルセスカ
瀑征竜-タイダル
嵐征竜-テンペスト
伝説の白石
レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)
魔法カード(15枚)
×3枚 死皇帝の陵墓
テラ・フォーミング
ドラゴン・目覚めの旋律
トレード・イン
×2枚  
×1枚 死者蘇生
ハーピィの羽根帚
竜の渓谷
罠カード(2枚)
×3枚  
×2枚 スキルドレイン
×1枚  
エクストラデッキ(15枚)
×3枚    
×2枚 幻獣機ドラゴサック
No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン
×1枚 琰魔竜 レッド・デーモン
ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン
クリムゾン・ブレーダー
神竜騎士フェルグラント
スクラップ・ドラゴン
スターダスト・ドラゴン
No.11 ビッグ・アイ
No.23 冥界の霊騎士ランスロット
No.62 銀河眼の光子竜皇
No.74 マジカル・クラウン-ミッシング・ソード
No.107 銀河眼の時空竜

 

 リストを見て分かる通り、大まかには【青眼征竜】を下敷きとして成立したと言えるアーキタイプです。各征竜はもちろんのこと、「エクリプス・ワイバーン」「伝説の白石」といったお馴染みの面々を搭載しており、これらを「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」で墓地に落とすことで爆発的なアドバンテージを叩き出すことを狙います。

 中でも最大の特徴となるのがレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」を絡めて「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」を連打する動きであり、これこそが【ダークマター征竜】を象徴する展開ギミックであると言っても過言ではありません。

 

ダークマターワンキル展開ルート

 具体的な展開ルートは下記の通りです。

 

①:適当なレベル8モンスター2体を素材に「ギャラクシーアイズ」モンスターをエクシーズ召喚し、それに重ねて(※)「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」をエクシーズ召喚する。(※間に「ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン」を経由しても可)

 

②:「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の効果で「エクリプス・ワイバーン」「焔征竜-ブラスター」「瀑征竜-タイダル」など(※)を墓地に落とす。(※「エクリプス・ワイバーン」以外の2枚は状況に応じて適宜変更)

 

③:「エクリプス・ワイバーン」の効果で「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」をデッキから除外する。

 

④:墓地の「焔征竜-ブラスター」の効果により、墓地の「エクリプス・ワイバーン」「瀑征竜-タイダル」を除外して自己蘇生する。

 

⑤:「エクリプス・ワイバーン」の効果で「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」を手札に加え、「瀑征竜-タイダル」の効果で「幻水龍」をサーチする。

 

⑥:フィールドの「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」を除外(※)して「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」を手札から特殊召喚する。(※ワンキルする場合は蘇生した征竜の方を除外)

 

⑦:「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」の効果で墓地の「ギャラクシーアイズ」モンスターを蘇生し、それに重ねて(※)2体目の「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」をエクシーズ召喚する。(※間に「ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン」を経由しても可)

 

⑧:「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の効果で「エクリプス・ワイバーン」「嵐征竜-テンペスト」「巌征竜-レドックス」など(※)を墓地に落とす。(※落とすカードは状況に応じて適宜変更)

 

⑨:「エクリプス・ワイバーン」の効果で「混沌帝龍 -終焉の使者-」をデッキから除外する。

 

⑩:墓地の「嵐征竜-テンペスト」の効果により、墓地の「エクリプス・ワイバーン」「巌征竜-レドックス」を除外(※)して自己蘇生する。(※他にコストがあるならそちらを優先)

 

⑪:「エクリプス・ワイバーン」の効果で「混沌帝龍 -終焉の使者-」を手札に加え、「巌征竜-レドックス」の効果で「幻木龍」をサーチする。

 

⑫:「焔征竜-ブラスター」「嵐征竜-テンペスト」の2体を素材に「幻獣機ドラゴサック」をエクシーズ召喚する。

 

⑬:召喚権が残っている場合、「幻水龍」「幻木龍」の2体で追加のランク8を立てる(※)ことも可。(※もしくは手札に温存)

 

 上記の展開により、フィールドに「幻獣機ドラゴサック」「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」を並べつつ、墓地に2色~3色の【征竜】及びそれを運用するための墓地リソースを確保できます。

 加えて「幻水龍」「幻木龍」のセットが手札に揃うことも重要で、追加のランク8エクシーズを戦力として予約できるほか、最終的には【征竜】の展開リソースとしても変換可能です。事前準備が必要とはいえ流石は【征竜】と言うべきアドバンテージ生成能力であり、1ターンの爆発力に限って言えば(※)全盛期【征竜】に勝るとも劣らないパワーを秘めていると言っても過言ではないでしょう。

(※逆に言えば、これを毎ターン繰り返せる全盛期【征竜】がいかに狂っていたかという話でもありますが……)

 また、展開の過程で「混沌帝龍 -終焉の使者-」を確保できることも侮れない強みであり、これまでの【征竜】とはまた違った形のプランを持てるようにもなっています。

混沌帝龍 -終焉の使者-(カオス・エンペラー・ドラゴン しゅうえんのししゃ)

特殊召喚・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻撃力3000/守備力2500
このカードは通常召喚できない。自分の墓地から光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ除外した場合のみ特殊召喚できる。
このカードの効果を発動するターン、自分は他の効果を発動できない。
①:1ターンに1度、1000LPを払って発動できる。お互いの手札・フィールドのカードを全て墓地へ送る。その後、この効果で相手の墓地へ送ったカードの数×300ダメージを相手に与える。

 時系列がやや前後しますが、2015年1月の改訂で「混沌帝龍 -終焉の使者-」がエラッタによる弱体化(※)とともに制限復帰を迎えたため、【征竜】においても早々に採用候補に名前が挙がることになりました。蘇生や帰還が不可能になったこと、バーンダメージが相手依存になったこと、何よりリセット効果を発動するターンは他の効果を一切使用できなくなったことなど厳しい弱体化が入ってはいますが、それでも全体的なカタログスペックの高さはやはり健在です。

(※全盛期【カオス】については下記の記事をご参照ください)

 具体的には、墓地リソースで戦える【征竜】では「混沌帝龍 -終焉の使者-」の全体リセットが普通のデッキ以上に強烈に作用するため、墓地を残しながら動くことで相手に強いプレッシャーをかけることが可能です。これは見かけの上では一度限りの全体除去を構えているに過ぎませんが、「盤面リソースの駆け引きを任意のタイミングで強制的に打ち切り、墓地リソースの戦いを無理やり相手に押し付ける権利」と考えれば想像以上に強力であることが分かります。

 これにより【征竜】側は積極的に手札を使い切るプレイを取りやすくなったということでもあり、例えば「幻水龍」「幻木龍」をあまり勿体ぶらずに使ってしまうなど、本来であればリスクの高い動きを比較的気軽に行えるようになりました。

 もちろん、従来通り盤面を切り返された際の保険のリセット手段として使うだけでも悪くはなく、その場合も墓地リソースが残っていればやはり有利にゲームを進めることができるわけです。

 

実はワンキルだけではない 意外と長期戦もできる強み

 ちなみに、意外とあまり知られていない事実なのですが、上記解説でも示している通り【ダークマター征竜】は実は厳密には後攻ワンキルデッキというわけではありません。

 もちろんワンキルが【ダークマター征竜】にとって最大の勝ち筋の1つだったことも事実なのですが、だからと言って闇雲にワンキルを狙っていくような単純なデッキではなく、少なくとも巷で言われるようなワンキル一辺倒のデッキではなかった(※)ことは確かです。あくまでも従来の【青眼征竜】のアドバンテージ源として「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」を利用するという発想からスタートしたデッキであり、ワンキルという要素はそこに付随して生まれたものであるとも言えます。

(※これに関しては下記で取り上げている【聖刻征竜】型と混同されてしまっている節もあります)

 そのため、見た目のイメージとは裏腹に意外と長期戦にも対応できるという強みがあり、高い爆発力を持ち合わせながらもある程度の継戦能力を兼ね備えていました。

 もっとも、積極的にロングゲームができるほどの持久力を持っていたとまでは言えず、結局は自分のやりたいことをやれるかどうかという話だったことは否めません。

 何より、最大の問題はNo.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」を通せなければ何も始まらないという致命的なボトルネックであり、初手によってはドローゴー状態でサンドバッグにされただけで終了といったゲーム展開も珍しくありませんでした。手札事故を起こした場合は当然として、一度ランク8の展開に失敗してから再度ランク8を狙うというのも物理的にかなり困難だったため、相手の妨害1回で沈黙してしまいかねない脆さを抱えたデッキでもあったのです。

 

【聖刻征竜】の成立 ランク8完全特化型

 その結果、純正の【ダークマター征竜】とは別軸のコンセプトを元にした【聖刻征竜】と呼ばれる型が新たに考案されることになります。

 

サンプルデッキレシピ(2015年1月1日)
モンスターカード(26枚)
×3枚 真魔獣 ガーゼット
聖刻龍-アセトドラゴン
聖刻龍-シユウドラゴン
聖刻龍-トフェニドラゴン
聖刻龍-ドラゴンゲイヴ
聖刻龍-ネフテドラゴン
×2枚 神龍の聖刻印
×1枚 エクリプス・ワイバーン
焔征竜-ブラスター
瀑征竜-タイダル
ラブラドライドラゴン
嵐征竜-テンペスト
レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)
魔法カード(16枚)
×3枚 ギャラクシー・クィーンズ・ライト
サイクロン
召集の聖刻印
×2枚 皆既日蝕の書
禁じられた聖槍
×1枚 死者蘇生
月の書
ハーピィの羽根帚
罠カード(0枚)
×3枚  
×2枚  
×1枚  
エクストラデッキ(15枚)
×3枚    
×2枚 No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン
×1枚 ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン
幻獣機ドラゴサック
神樹の守護獣-牙王
迅雷の騎士ガイアドラグーン
神竜騎士フェルグラント
セイクリッド・トレミスM7
セイクリッド・プレアデス
聖刻龍王-アトゥムス
星態龍
No.11 ビッグ・アイ
No.62 銀河眼の光子竜皇
No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ
No.107 銀河眼の時空竜

 

 デッキ名の通り【ダークマター征竜】に【聖刻】要素(※)を加えた複合デッキとなっており、ざっくり言うと純構築以上にランク8の展開に完全特化しているのが特徴です。元々【聖刻】が持つ「神龍の聖刻印」による展開ギミックはもちろんのこと、「ギャラクシー・クィーンズ・ライト」などのピーキーなカードすら採用しているほどであり、「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の召喚成立にデッキリソースの大半を割いていることが分かります。

(※【聖刻】についての解説は下記の記事をご覧ください)

 また、中核パーツである【征竜】に関しても3色のみの採用が基本で、さらにはサーチ先のドラゴン族の枠もほぼ用意されないなど、全体的にかなり割り切った構築が取られる傾向にありました。その分【ダークマター征竜】に比べて継戦能力は落ちていますが、瞬間的なワンキル能力は相応に向上しており、また手数を増やすことで妨害に対しても「多少は」抵抗できるようになっているという理屈です。

 

「真魔獣 ガーゼット」が輝いた時代

 その他、「真魔獣 ガーゼット」という特徴的なカードが使われたことも特筆すべき事項に数えられます。

真魔獣 ガーゼット(しんまじゅう ガーゼット)

特殊召喚・効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻撃力0/守備力0
このカードは通常召喚できない。自分フィールドのモンスターを全てリリースした場合のみ特殊召喚できる。
①:このカードの攻撃力は、このカードを特殊召喚するためにリリースしたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値になる。
②:このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 自分フィールドのモンスター全てを犠牲にしてフレンチバニラを出すだけ、しかも結局打点の合計は一切変わらないという散々な性能のカードですが、何が何でもランク8に繋げたい【聖刻征竜】ではむしろこの重すぎるコストこそが有効に働きます。

 具体的には、フィールドに【聖刻】モンスターを置いた後に「真魔獣 ガーゼット」を展開することで自然とレベル8が2体並ぶため、非常に緩い条件の2枚初動から「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」にアクセス可能です。その際に召喚権を使用しないのもポイントで、「聖刻龍-トフェニドラゴン」との併用により相手の妨害を1回貫通できる可能性を作れるというメリットもあります。

 これは本来であれば真魔獣 ガーゼット」の完全上位互換カードと言っていい「レベル8かつノーコストで特殊召喚可能なカード群」を用いるだけでは成立しない動きであり、明らかな下位互換カードが特定条件下でのみ脚光を浴びた稀有な例であると言えるでしょう。

 

結局は地雷の域を出ず 【征竜】という時代の終わり

 このように、【ダークマター征竜】が単なる後攻ワンキルデッキでは終わらない魅力を持つアーキタイプだったことは確かです。

 しかしながら、やはりと言うべきかトーナメントレベルでまともに戦っていけるほどの安定感はなく、環境においては地雷の域を出ない活躍にとどまっていました。

 これに関してはメタゲーム云々というよりはシンプルにデッキパワーが足りていなかったというのが正直なところで、アーキタイプとしてはかなり初歩的な部分で厳しい課題を抱えていたことは否めません。というより、恐らく【ダークマター征竜】の敗因のうち最多を占めるのが「手札事故」、その次が「罠」というような低いレベルで苦戦していたことは否めず、その時点で9期勢と対等に渡り合うのは相当に苦しいものがあったとも言えます。

 とはいえ、誤解のないように明言しておくと【ダークマター征竜】は上記でも語ったように決して弱いデッキというわけではなく、実際に2015年1月~4月頃(※)を中心に散発的に結果を出していた時期もありました。メタゲーム上において明確に勢力として根付くことこそありませんでしたが、それでも地雷として十分な威力は持っていた趣深いアーキタイプです。

 その結果、最終的には2015年4月改訂において遂に親征竜4種全てが同時に禁止カードに指定され、【ダークマター征竜】も完全解体を余儀なくされています。

 2013年の【征竜魔導】環境から長らく続いていた【征竜】の歴史(※)がようやく最期を迎えた格好であり、1つの時代が終わったことにある種の感慨深さを抱いたプレイヤーは少なくなかったのではないでしょうか。

(※征竜の歴史については1つの記事では網羅しきれないほど長くなってしまうため、詳しくは下記の記事内の【まとめ】項目内のリンク集から個別記事をご確認ください)

 

補足 ダークマタードラゴン禁止化の理由について

 ちなみに、そんな「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」というカードですが、案の定と言うべきか現在では禁止カードに指定されている状況にあります。

 禁止行きになったのは誕生から約4年後の2019年1月のことで、規制されて以降は一度として現役復帰していません。これに関しては「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の効果の性質上、カードプールが拡大すればするほどに強化されていくタイプのカードであり、当然と言えば当然の話です。

 もう少し具体的な話をすると、直近販売のパックから【守護竜】という強力な【ドラゴン族】新規サポートが現れていたこと、また直前の2018年10月改訂で「嵐征竜-テンペスト」が制限カードに復帰していたことなど、規制に至った理由はいくつか存在しています。

 しかし、中でも大きな要因となったのが【ガンドラ1キル】のワンキルパーツとして悪用されてしまったという実績です。

 

【ガンドラ1キル】展開ルート例

 【ガンドラ1キル】のワンキル手順については1つではなく複数のパターンが存在しますが、ここではそのうち代表的な展開ルートを下記に示します。

 

①:何らかのカードで「水晶機巧-ハリファイバー」をリンク召喚する。

 

②:「水晶機巧-ハリファイバー」の効果で「BF-隠れ蓑のスチーム」をリクルートする。

 

③:「水晶機巧-ハリファイバー」「BF-隠れ蓑のスチーム」の2体を素材に「アークロード・パラディオン」をリンク召喚する。

 

④:「BF-隠れ蓑のスチーム」の効果で「スチーム・トークン」を特殊召喚する。

 

⑤:「アークロード・パラディオン」を素材に「マギアス・パラディオン」をリンク召喚する。

 

⑥:「スチーム・トークン」を素材に「リンクリボー」をリンク召喚する。

 

⑦:手順⑥に反応し、「マギアス・パラディオン」の効果で「星辰のパラディオン」をサーチする。

 

⑧:「マギアス・パラディオン」「リンクリボー」の2体を素材に「ヴェルスパーダ・パラディオン」をリンク召喚する。

 

⑨:手札の「星辰のパラディオン」の効果により、自身を「ヴェルスパーダ・パラディオン」のリンク先に特殊召喚する。

 

⑩:「星辰のパラディオン」の効果で墓地の「アークロード・パラディオン」をエクストラデッキ(※)に戻す。(※本来はサルベージ)

 

⑪:「星辰のパラディオン」を素材に「守護竜エルピィ」をリンク召喚する。

 

⑫:手順⑪に反応し、「ヴェルスパーダ・パラディオン」の効果で「守護竜エルピィ」のカードの位置を、2体のリンク先が同じになるように(※)移動する。(※つまり1つ右に移動)

 

⑬:「守護竜エルピィ」の効果で「インフルーエンス・ドラゴン」をリクルートする。

 

⑭:「インフルーエンス・ドラゴン」の効果で「ヴェルスパーダ・パラディオン」の種族をドラゴン族に変更する。

 

⑮:「ヴェルスパーダ・パラディオン」「インフルーエンス・ドラゴン」の2体を素材に「守護竜アガーペイン」をリンク召喚する。

 

⑯:「守護竜アガーペイン」の効果で「No.62 銀河眼の光子竜皇」をエクストラデッキから特殊召喚する。

 

⑰:「守護竜エルピィ」「守護竜アガーペイン」の2体を素材に「天球の聖刻印」をリンク召喚する。

 

⑱:「No.62 銀河眼の光子竜皇」に重ねて「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」をエクシーズ召喚(※)する。(※位置は手順㉘で出す予定の「アークロード・パラディオン」のリンク先)

 

⑲:「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の効果で「エクリプス・ワイバーン」「嵐征竜-テンペスト」「任意のドラゴン族モンスター」の3体をデッキから墓地に送る。

 

⑳:「エクリプス・ワイバーン」の効果で「破滅竜ガンドラX」をデッキから除外する。

 

㉑:墓地の「嵐征竜-テンペスト」の効果により、墓地の「エクリプス・ワイバーン」を含むドラゴン族2体を除外して自身を墓地から自己蘇生する。

 

㉒:「エクリプス・ワイバーン」の効果で「破滅竜ガンドラX」を除外ゾーンから手札に加える。

 

㉓:墓地の「BF-隠れ蓑のスチーム」の効果により、「天球の聖刻印」をリリースして自身を墓地から自己蘇生する。

 

㉔:「天球の聖刻印」の効果で「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」をリクルート(※)する。(※位置は手順㉘で出す予定の「アークロード・パラディオン」のリンク先)

 

㉕:「嵐征竜-テンペスト」「BF-隠れ蓑のスチーム」の2体を素材に適当なリンク2のモンスターをリンク召喚する。

 

㉖:「BF-隠れ蓑のスチーム」の効果で「スチーム・トークン」を特殊召喚する。

 

㉗:墓地の「リンクリボー」の効果により、「スチーム・トークン」をリリースして自身を墓地から自己蘇生する。

 

㉘:「リンク2のモンスター」「リンクリボー」の2体を素材に「アークロード・パラディオン」をリンク召喚する。

 

㉙:「アークロード・パラディオン」のリンク先に「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」がそれぞれ存在するため、「アークロード・パラディオン」の攻撃力が8800になる。

 

㉚:「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン(エラッタ前)」の効果で「破滅竜ガンドラX」を手札から特殊召喚する。

 

㉛:「破滅竜ガンドラX」の効果により、フィールドのモンスターを全て破壊して8800バーン。

 

 コンボの性質上、展開ルートだけでなくカードの位置絡みの調整がいることに注意する必要がありますが、上記の展開を先攻1ターン目に行うことで先攻ワンキルが成立します。コンボ突入に必要な条件は「水晶機巧-ハリファイバー」1枚のみと非常に軽く、「終末の騎士」を始めとする数多くのカードによって1枚初動ワンキルが成立するのが強みです。

 このコンボの核となっているのが「守護竜アガーペイン」によって「No.62 銀河眼の光子竜皇」を直接展開する動きであり、これにより従来の制約だったはずのランク8という縛りすら無視して「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の恩恵を受けられるようになってしまっているわけです。

 これに関しては「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」だけでなく守護竜アガーペイン」の方も割とおかしい(※)と言ってしまえばそうなのですが、それはそれとして「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の大量墓地肥やしを【リンク召喚】のギミックに組み込めてしまうことはやはり問題だったと言わざるを得ません。

(※なお、現在では「守護竜アガーペイン」も禁止カードです)

 また、この頃のカードプールでは「外神ナイアルラ」「外神アザトート」の誘発封殺ギミックも現役だったため、そうした点を含めても【ガンドラ1キル】の、ひいてはNo.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の存在そのものがゲームバランスに悪影響をもたらしていた(※)側面もあります。

(※とはいえ、実戦でのワンキル成功率は意外と高くなく、デッキとしてはそれほど流行していたわけではありませんでした。また「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の規制後も【ガンドラ1キル】自体は普通に生存しています)

 何にせよ「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」のカードパワーが設計当初の想定範囲を逸脱しつつあったことは間違いなく、これに対する禁止指定は妥当な流れだったと言えるでしょう。

 実際、2019年当時からさらに時間が経過した今現在においてはますます凶悪度が跳ね上がっており、ある意味では【征竜】以上の超危険物質と化してしまっている印象はあります。というより、恐らくは現存する【ドラゴン族】サポートの中でも最強格のカードに成り果てているため、仮にこれが復帰した場合【ドラゴン族】絡みのあらゆるカードに何らかの不具合が生じてしまう(※)ことは避けられません。

(※というより、下手をすると【ドラゴン族】以外のデッキでも何かしらの展開ギミックに悪用されかねないリスクがあります)

 よって「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」の制限復帰の見込みは限りなくゼロに近く、いわゆる事実上の永久禁止カードに名を連ねてしまったと考えて差し支えないのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」についての話は以上です。

 誕生直後からその衝撃的なカタログスペックによって話題をさらい、特に【征竜】との凶悪なシナジーは当初から問題視されていましたが、案の定それから僅か4ヶ月後には親征竜4種の禁止行きという結末をもたらしてしまうことになりました。良くも悪くも【征竜】にとってのカンフル剤のような作用をもたらしたカードであり、結果的にそれが致命傷になった点を含めて中々に深い因縁を感じさせます。

 加えて、後世では逆に「嵐征竜-テンペスト」の存在が「No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン」禁止化の決定打になったという背景もあり、まさにお互いがお互いを食らい合うかのような複雑な関係にあると言えるでしょう。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

Posted by 遊史