儀式詐欺テーマ【影霊衣(ネクロス)】全盛期 「青一色」環境の到来

2020年10月9日

【前書き】

 【第9期の歴史11 制限改訂2014年10月 【光天使シャドール】壊滅へ】の続きとなります。ご注意ください。

 制限改訂によって【シャドール】や【セプタースローネ】に規制が入り、当時の環境を牛耳っていた【光天使シャドール】を筆頭とする各勢力がようやく解体に向かいました。特に【セプタースローネ】ギミックが消えた影響は大きく、これによって9期のインフレが多少なりとも抑制されたことは確かです。

 その一方で、全体的に見ればやはり【シャドール】の勢いが強く、以前と相変わらずの融合地獄が広がっていたことは否めません。新進気鋭の9期勢として【M・HERO】【クリフォート】なども頭角を現してはいましたが、恐ろしいことに【シャドール】のパワーは弱体化してなお同期達を抑え込むほどに強大だったのです。

 ところが、そうした【シャドール】の天下が長続きすることはありませんでした。理由は至ってシンプルで、この直後にその【シャドール】以上に強いテーマがあっさり誕生してしまったからです。

 

【儀式召喚】の革命【影霊衣】 もはや儀式ではない何か

 2014年10月11日、ブースターSPシリーズ第2弾「トライブ・フォース」が販売されました。新たに32種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは6687種類に増加しています。

 前弾の「レイジング・マスターズ」とは打って変わって非常に充実したパックであり、新規はもちろん再録カードも全体的に豪華なラインナップです。これに関してはむしろ前弾の当たりが少なすぎたとも言えますが、何にせよ俗に言う「剥き得パック」として人気を博したことは間違いありません。

 その主な要因となったのは、やはり何と言っても新テーマである【影霊衣】の存在だったのではないでしょうか。

ブリューナクの影霊衣(ブリューナクのネクロス)

儀式・効果モンスター/星6/水属性/戦士族/攻撃力2300/守備力1400
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
ブリューナクの影霊衣」以外のモンスターのみを使用した儀式召喚でしか特殊召喚できない。
ブリューナクの影霊衣」の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードを手札から捨てて発動できる。デッキから「ブリューナクの影霊衣」以外の「影霊衣」モンスター1体を手札に加える。
②:エクストラデッキから特殊召喚された、フィールドのモンスターを2体まで対象として発動できる。そのモンスターを持ち主のデッキに戻す。

 上記は「ブリューナクの影霊衣」のテキストとなります。【影霊衣】というテーマにおける中核的なカードであり、これなくして【影霊衣】は成り立たないと言っても過言ではないほどの重要サポートです。

 メインとなるのはもちろん前半のサーチ効果であり、なんと手札から自身を捨てることで任意の【影霊衣】モンスターをサーチすることができます。遊戯王における万能サーチの強さはあえて説明するまでもなく、これを持っている時点で無条件で合格点を出せるカードです。

 一方、後半のバウンス効果は若干使いどころを選ぶ性能ですが、上手く機能した時の威力は侮れません。特にこの時期は【シャドール】という強大な仮想敵が存在していたため、融合体のサルベージ効果を発動させずに処理できる点が高く評価されていました。

 しかし、こうした純粋なカタログスペックとは別の観点からの評価点として、このカードが【儀式召喚】という召喚法が根本的に抱える欠陥を解決し得る画期的なデザインとなっていたことに言及しておくべきでしょう。

 詳しくは上記関連記事で語っている通りですが、【儀式召喚】は長年に渡って欠陥メカニズムの一種と見なされており、遊戯王というカードゲームにおいては相当無理のあるデザインの召喚法と言われ続けていました。

 実際、設計的には「手札から出す融合モンスター」などと揶揄されるほどに扱いにくいカード群で、言ってしまえば召喚した時点で1枚分のディスアドバンテージを負ってしまうことは避けられません。つまり儀式モンスターというカード群には「手札に来た時点で実質1ディスアド」という意味不明のデメリットが常に生じてしまっていたわけです。

 ところが、「ブリューナクの影霊衣」は先述したように素でサーチ効果を内蔵しているため、手札にある時点でカード1枚分の仕事をこなすことができます。

 これは上記の儀式モンスターの欠陥を覆す革命的なデザインです。

 言うなれば【影霊衣】モンスターとは「魔法カードを内蔵した儀式モンスター」に他ならず、構造的には「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」などのペンデュラムモンスターとほぼ同じ設計であることが見て取れます。「手札に来た時点でアド損になるなら、代わりに別の分割効果を与えればいい」という逆転の発想からなる儀式サポートであり、これまで取り回しの悪さに悩まされていた儀式モンスターは実に15年越しにようやく実用レベルの性能を手にするに至ったのです。

 問題があったとすれば、それは分割効果だけでなく他の部分も全部盛りで強化した結果、当たり前のように強くなりすぎたという頭の悪い失敗だったのではないでしょうか。

 

【影霊衣】儀式魔法の常軌を逸したカードパワー

 中でも【影霊衣】の専用儀式魔法のカードパワーの高さは常軌を逸していたと言うほかありません。

影霊衣の万華鏡(ネクロスのまんげきょう)

儀式魔法
「影霊衣」儀式モンスターの降臨に必要。
影霊衣の万華鏡」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:儀式召喚するモンスターと同じレベルになるように、自分の手札・フィールドのモンスター1体をリリース、またはエクストラデッキのモンスター1体を墓地へ送り、手札から「影霊衣」儀式モンスターを任意の数だけ儀式召喚する。
②:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地からこのカードと「影霊衣」モンスター1体を除外して発動できる。デッキから「影霊衣」魔法カード1枚を手札に加える。

 上記は「影霊衣の万華鏡」のテキストです。どうにも見るからに訳が分からないことが書いてありますが、実際2014年当時としては完全に訳が分からないカードで、恐らく初見でテキストの意味を理解できたプレイヤーは当時存在しなかった(※)のではないでしょうか。

(※実際、情報判明当初は「コストにしたモンスターと同じレベルの【影霊衣】モンスターを好きなだけ儀式召喚できる」という解釈が主流でした)

 まずは固有効果にあたる前半の儀式召喚効果ですが、見ての通り「エクストラデッキのモンスターをコストに儀式召喚する」「儀式モンスターを任意の数だけ儀式召喚する」という2つの謎を秘めています。どちらも従来の儀式魔法から見れば異次元とも言える効果であり、この時点で宇宙的な何かを感じずにはいられません。

 とはいえ、ここに関しては冷静に見れば「儀式召喚のリリースを肩代わりする効果」の亜種に過ぎず、理屈の上では決して壊れているわけではないことが分かります。理屈の上ではと断っている通り、実際には普通に壊れているわけですが、それはそれとして効果のデザインそのものが破綻しているとは言えないわけです。

 しかし、そこに後半のサーチ効果を追加でカウントした場合、「影霊衣の万華鏡」は一気に壊れカードの様相を呈してきます。

②:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地からこのカードと「影霊衣」モンスター1体を除外して発動できる。デッキから「影霊衣」魔法カード1枚を手札に加える。

 見ての通り、墓地の自分自身と【影霊衣】モンスターを除外することで2枚目の【影霊衣】儀式魔法をサーチすることができます。つまり【儀式召喚】に消費した儀式魔法がそのまま返ってくる(※)ことになるため、リリース代替効果も合わせれば本当の意味でカード・アドバンテージを一切失わないデザインが取られているわけです。

(※一応の制約として「自分フィールドにモンスターが存在しない」という条件こそ要求されますが、そもそも後続が必要になるシチュエーションは盤面を返された不利な状況であることが多く、実質的にはリスクらしいリスクにはならないでしょう)

 何より、恐ろしいことにこのサーチ効果は【影霊衣】の儀式魔法が持つ共通効果であるため、事実上1枚引き込むだけでデッキの儀式魔法が尽きるまで芋づる式にサーチが連鎖し続けます。まさに儀式魔法版【ガジェット】さながらの驚異のリソース維持能力であり、【儀式召喚】も遂にここまで来たかと驚愕するほかありません。

 というより、正直ここまで来ると「テーマ専用の展開カードとそれに対応する専用モンスターで戦うデザイナーズデッキ」に近いものがあり、もはや儀式召喚である必要性がありません。

 当時の【影霊衣】が「儀式召喚のような何か」と揶揄されるに至った理由もこの辺りにあり、「9期」という時代の特徴をこれ以上なく分かりやすく示したテーマでもあったのではないでしょうか。

 

「ユニコールの影霊衣+万華鏡+アーデク」の黄金セット

 このように、共通効果の時点ですら既に「9期」の資格を満たしていた【影霊衣】というテーマですが、もちろん「影霊衣の万華鏡」の強みはこうした額面上のものだけではありません。先に述べた通り「影霊衣の万華鏡」の①の効果は「理屈の上では壊れていない壊れ効果」であり、要するにただの壊れカードだったからです。

 その主な要因となったのは、「虹光の宣告者」「ユニコールの影霊衣」らによる非常に強固なシナジーでした。

虹光の宣告者(アーク・デクレアラー)

シンクロ・効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻撃力600/守備力1000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いの手札・デッキから墓地へ送られるモンスターは墓地へは行かず除外される。
②:モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時、このカードをリリースして発動できる。その発動を無効にし破壊する。
③:このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから儀式モンスター1体または儀式魔法カード1枚を手札に加える。

ユニコールの影霊衣(ユニコールのネクロス)

儀式・効果モンスター
星4/水属性/魔法使い族/攻撃力2300/守備力1000
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
このカードは儀式召喚でしか特殊召喚できない。
ユニコールの影霊衣」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードを手札から捨て、「ユニコールの影霊衣」以外の自分の墓地の「影霊衣」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。
②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、エクストラデッキから特殊召喚されたフィールドの表側表示モンスターの効果は無効化される。

 これに関してはパッと見て分かるような見たままのシナジーですが、「ユニコールの影霊衣」の儀式召喚に「虹光の宣告者」を使用することで任意の儀式カードのサーチが無料でついてきます。つまり儀式召喚するとなぜかリソースが増えるということで、融合するとリソースが増える【シャドール】と同じ領域にいることが分かります。

 単純に考えてもユニコールの影霊衣」で制圧しつつ後続の「ブリューナクの影霊衣」を確保でき、盤面を返されたとしても墓地の「影霊衣の万華鏡」がそのまま次の儀式魔法に化けるとまさに良いことづくめです。それでも純粋なアドバンテージ獲得能力では流石に【シャドール】には及びませんが、墓地送り+サルベージなどの迂遠な動きを要求しない分妨害を受けにくく、また返しの対応力でもこちらが格段に優れています。

 

【シャドール】の苦境 上には上がいる

 加えて、根本的に「ユニコールの影霊衣」そのものが強烈なメタモンスターであることも「万華鏡ユニコール」ギミックの有用性を後押ししていました。

②:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、エクストラデッキから特殊召喚されたフィールドの表側表示モンスターの効果は無効化される。

 これが立っている限りエクストラデッキから出てきたモンスターは無条件でバニラに変わるという、【シャドール】とはまた別方向のエクストラメタ能力を秘めています。もちろん純粋なメタ性能に限れば「エルシャドール・ミドラーシュ」や「影依融合」を擁する【シャドール】の方が優れていますが、こちらは後出しであっても問題なく機能するほか、何よりその【シャドール】に対して全面的に有利を取れていることが最大の強みだったと言えるでしょう。

 一応、打点の関係で「エルシャドール・ネフィリム」などには戦闘破壊されてしまいますが、これも「クラウソラスの影霊衣」と併用することでカバーできます。というより、そもそも対処されてもアドバンテージを失わないため、返しのターンに「ブリューナクの影霊衣」などで切り返すだけで容易にマウントを維持できてしまうわけです。

 また、この頃は「エルシャドール・アノマリリス」も未登場、つまり【シャドール】最強の矛である「超融合」でも対処することができなかった(※)ため、その点においてもかなり難しい戦いを強いられていました。

(※その結果、「マスマティシャン」との併用を前提に「タックルセイダー」が使われるようになるといった出来事も起こっています)

 ただし、そんな「ユニコールの影霊衣」本体に耐性は一切なく、またスキドレ効果特有の抜け道なども存在したため、見た目ほど万能なカードだったわけではありません。特にチェーン途中でロックを解除されてしまうリスク(※)は案外馬鹿にできず、安易に制圧を任せきりにしていると痛い目に遭うこともありました。

(※例えば「①トリシュ→②シェキナーガ→③写し身エスケープ」などのパターンが典型例です)

 もっとも、やはり現実問題としてデッキレベルでの相性不利は如何ともし難く、やがてはメインから「ライオウ」や「手違い」が積まれるようになってしまうのですが……。

 

トリシューラの影霊衣 対象を取らない3除外のトラウマ再び

 しかしながら、当時の【シャドール】環境から【影霊衣】環境への移行を決定付けた最大の要因は、やはり「トリシューラの影霊衣」の存在に他ならなかったのではないでしょうか。

トリシューラの影霊衣(トリシューラのネクロス)

儀式・効果モンスター
星9/水属性/戦士族/攻撃力2700/守備力2000
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
レベル9以外のモンスターのみを使用した儀式召喚でしか特殊召喚できない。
トリシューラの影霊衣」の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドの「影霊衣」モンスターが効果の対象になった時、このカードを手札から捨てて発動できる。その発動を無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。
②:このカードが儀式召喚に成功した時に発動できる。相手の手札・フィールド・墓地のカードをそれぞれ1枚選び、その3枚を除外する。

 カード名から分かる通り「氷結界の龍 トリシューラ」をモチーフとしたデザインのカードであり、いわゆる「名前が強い」カードの一種です。こうしたリメイクカードは大抵厳しい弱体化が入るせいで名前負けする傾向にありますが、このカードに限ってはそのようなことはなく、むしろ部分的には本家を超えたパワーを持っていたと言っても過言ではありません。

 これまでの解説の通り、【影霊衣】はカード消費をほぼ気にせずに儀式召喚が行えるテーマです。もちろん実戦においては「どれだけ強いタイミングで召喚できるか」という駆け引きが重要になってくるわけですが、少なくともカタログスペック段階においては「いくら動いてもアド損をしない」と考えて差し支えないカード群であるわけです。

 つまり、分かりやすく言えば「トリシューラの影霊衣」は手札からノーコストで出せる「氷結界の龍 トリシューラ以外の何物でもなかったということで、これほど「露骨に強すぎるパワーカード」という評価がふさわしいモンスターも中々珍しいと言わざるを得ません。おまけに先述したように【影霊衣】自体が豊富なサーチ手段に恵まれたテーマでもあるため、取り回しに関しては明らかに本家を軽く超えています。

 まさしく現代に蘇った「対象を取らない3除外」の恐怖であり、シンクロ世代のプレイヤーはもちろん、9期世代のプレイヤーに対しても大いにトラウマを植え付けていくことになります。

 

トリシュケア必須の時代 手札0枚は基本

 結果として、これ以降環境全体に浸透したのが俗に「トリシュケア」と呼ばれる定石です。

 「トリシューラの影霊衣」は非常に恐るべきカードでしたが、本家の「氷結界の龍 トリシューラ」とは違って相手の手札・フィールド・墓地の全てにカードが存在していなければルール上効果を発動することができません。よってそのいずれかを空けておく(※)ことで「トリシューラの影霊衣」をバニラ化させ、実質的にその召喚を封じることができたため、これがそのまま「トリシュケア」として広まったというのが大まかな流れです。

(※もう少し詳しいことを言うと、「序盤は墓地にカードを置かず、墓地にカードが落ちた後はフィールドを空け、そして中盤以降は手札0枚をキープする」といったプレイングが該当します)

 また、効果発動時だけでなく効果処理時にカードが存在しなくなった場合も不発となってしまうため、「フリーチェーンで手札を減らせるカード」を構えておくプレイも同時に浸透していっています。汎用レベルでは「増殖するG」などが該当しますが、例えば【シャドール】であれば神の写し身との接触」などを構えておくことで最大2枚まで手札を処理できたため、比較的安定してトリシュケアをこなすことができました。

 その他の有名なケアとしては、もちろん「エフェクト・ヴェーラー」などで直接「氷結界の龍 トリシューラ」の効果を止めてしまうのも有効です。

 しかし、こうした無効化系カードは2枚目の「トリシューラの影霊衣」を手札に構えられると機能しなくなってしまう(※)問題があり、実際には見た目ほど信頼できるカードだったわけではありません。

(※初期の【影霊衣】では「トリシューラの影霊衣」は複数積みが主流でした)

 また、環境の変化により【影霊衣】側が「皆既日蝕の書」を標準搭載するようになると更に信頼性が低下していき、どちらかというと「最後の手段」的なニュアンスが強いカードと化していっています。

 

もう1つのトリシュケア シュリットのサーチにヴェーラー

 ちなみに、こうした3除外効果に対する「トリシュケア」とは別に、実はもう1つ「トリシュケア」が存在していたことは意外に知られていません。

①:自分フィールドの「影霊衣」モンスターが効果の対象になった時、このカードを手札から捨てて発動できる。その発動を無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 3除外効果ばかりが目を引く「トリシューラの影霊衣」ではありますが、手札効果側の対象効果無効も中々の性能であり、こちらもケアを怠っていると痛い目を見ることもままあります。例えば影霊衣の術士 シュリット」のサーチ効果を迂闊に見過ごしてしまうと「トリシューラの影霊衣」を確保されて手が出せなくなってしまうため、そういった状況ではサーチ前に「エフェクト・ヴェーラー」を投げておかなければなりません。

 もっとも、下手なタイミングで「エフェクト・ヴェーラー」を投げたところでサーチ先が「ブリューナクの影霊衣」に変わるだけで被害らしい被害は与えられないため、手札効果側のトリシュケアをするかどうかはプレイヤーによってまちまちでした。これが絶対に必要になってくるのは自分がエクストラモンスターをコントロールしている時に「ブリューナクの影霊衣」を出された時など、特に致命的な場面に限られていた印象はあります。

 

【影霊衣】全盛期 2014~2015年初頭環境の王者

 このように、2014年当時の水準において【影霊衣】のパワーは圧倒的で、この参入以降間もなく「青一色」環境が到来することになりました。

 

サンプルデッキレシピ(2014年10月11日)
モンスターカード(26枚)
×3枚 ヴァルキュルスの影霊衣
エフェクト・ヴェーラー
センジュ・ゴッド
ブリューナクの影霊衣
マンジュ・ゴッド
ユニコールの影霊衣
×2枚 クラウソラスの影霊衣
トリシューラの影霊衣
影霊衣の術士 シュリット
×1枚 儀式魔人リリーサー
ディサイシブの影霊衣
魔法カード(13枚)
×3枚 儀式の準備
サイクロン
影霊衣の万華鏡
×2枚 影霊衣の降魔鏡
×1枚 大嵐
増援
罠カード(2枚)
×3枚  
×2枚 強制脱出装置
×1枚  
エクストラデッキ(15枚)
×3枚    
×2枚 虹光の宣告者
×1枚 外神ナイアルラ
ガガガガンマン
恐牙狼 ダイヤウルフ
シューティング・クェーサー・ドラゴン
星態龍
ダイガスタ・エメラル
鳥銃士カステル
No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク
No.85 クレイジー・ボックス
No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ
M・HERO ダーク・ロウ
ラヴァルバル・チェイン
励輝士 ヴェルズビュート

 

 実際には「紫」や「緑」も存在したため一色というわけではなかったのですが、全体的には青色が最も濃い時代だったことは間違いありません。【儀式召喚】としては異例の環境トップであり、これは遊戯王始まって15年間一度として起こり得なかった(※)奇跡です。

(※環境を取った【儀式召喚】系デッキとして【デミスドーザー】が挙げられることもしばしばありますが、実際には地雷デッキの域を出ませんでした)

 このメタデッキとして「M・HERO ダーク・ロウ」を擁する【M・HERO】の活躍が期待された時期もありましたが、現実的には「M・HERO ダーク・ロウ」だけでは到底押さえ込むことができず、デッキ相性で有利を取れるほどの明確なメリットはありませんでした。むしろ後ろに罠を構えていてもダークロウ共々踏み越えてくることが多く、結局は永続メタを張れるかどうかが全てだったことは否めません。

 唯一の例外が【クリフォート】であり、元々メタが刺さらないこと、そして何よりスキルドレイン」「虚無空間」という2大永続メタを標準搭載していたこともあって一気に躍進を遂げています。

 しかし、【影霊衣】側もメインから「サイクロン」をフル投入していたこと、また「スキルドレイン」の影響下でも「月の書」や「皆既日蝕の書」を駆使して強引に「トリシューラの影霊衣」を捻じ込んでくることから安泰とは言い難く、見た目の印象ほど有利なマッチアップだったわけではありません。

 また、「ヴァルキュルスの影霊衣」や「ディサイシブの影霊衣」が最上級【クリフォート】の打点を超えてくるのも地味ながら厄介で、横の「ユニコールの影霊衣」などと合わせて一気にライフを取られてしまうことも多々あります。逆に【影霊衣】側は「ヴァルキュルスの影霊衣」とそれを再利用する「ユニコールの影霊衣」によって高いワンキル耐性を持っており、無理に勝負を急いだところで簡単にいなされてしまいます。

 そしてサイド後は「ツイスター」や「砂塵の大竜巻」などの大量のバック除去が立ち塞がる関係上、永続メタの信頼性は一戦目以上に低下します。それどころか、時には「妖精の風」「王宮のお触れ」辺りのピンポイントなカードが入ってくることすらあり、素直に永続メタを維持させてもらえることはほとんどありません。

 通常、こうした過剰なサイドはメインギミックの歪みを招く傾向にありますが、【影霊衣】のデッキ基盤は非常に強靭で、このような無茶を許すだけの余裕があります。

 要するに【影霊衣】はただシンプルに強いがゆえに順当に環境トップに立ったという、もはや純粋に「レベルが違う」としか言いようがない相手だったのです。

 

「マインドクラッシュ」「相乗り」がメインから積まれる世界

 その結果、これ以降の環境で大々的に流行したのが「マインドクラッシュ」です。

 ある意味では下手な禁止カード以上に悪名高いカードですが、それはさておきこのカードが【影霊衣】に対して有効であることは間違いありません。サーチを多用するというテーマ的な特性はもちろん、そもそも【儀式召喚】というアーキタイプ自体が宣言ハンデスを苦手としているため、どのようなタイミングで撃ってもほぼ確実にカード1枚分以上の働きをこなせます。

 もちろん、宣言ハンデスというやや特殊なカードゆえに使い方に若干癖があるという問題もないわけではありませんでしたが、とりあえず「影霊衣の万華鏡」に対して「ユニコールの影霊衣」を宣言しておくだけでもほぼ裏目にならないため、見た目に反して非常に丸い(※)メタカードとなっていました。

(※この頃はピーピングも同時に行えたため、情報アドバンテージを得るという意味でも優秀だったカードです)

 また、「マインドクラッシュ」は【影霊衣】だけでなく【クリフォート】に対しても有効で、上手く「クリフォート・ツール」を撃ち抜ければ大幅に相手の動きを鈍らせることができます。特に2枚以上まとめて落とせた時などはまさに宇宙であり、逆に【クリフォート】側は「クリフォート・ツール」を複数枚握らないように常に警戒する必要がありました。

 要するに「マインドクラッシュ」は当時の環境トップと2番手の両方に刺さるカードだったということで、これを使わないという手はありません。そうでなくともサーチやサルベージが飽和し切った9期環境では撃ちどころが全くないということはまずなく、最終的にはメインデッキからの投入(※)が浸透しています。

(※しかし、後期に入るとマイクラを撃っている場合ではなくなったため、最終的にはあまり見かけなくなりました)

 往年の2006年9月2007年3月の「ダストマイクラ」環境を彷彿とさせる状況であり、古参プレイヤーにとっては懐かしさを覚える状況でもあったのではないでしょうか。

 同様に、【影霊衣】を見据えたメタカードとして「相乗り」も流行しています。

相乗り(あいのり)

速攻魔法
このカードを発動したターン、相手がドロー以外の方法でデッキ・墓地からカードを手札に加える度に、自分はデッキからカードを1枚ドローする。
相乗り」は1ターンに1枚しか発動できない。

 サーチメタ版の「増殖するG」とでも言うべきカードであり、実質的には1ドローがついたターンスキップカードのように機能するメタカードです。

 もっとも、こちらは直接的な妨害能力がないため案外「マインドクラッシュ」よりも使用タイミングを選ぶカードでもあったのですが、何にせよ有効なメタカードであることは間違いなく、特に【影霊衣】ミラーでは必須に近い立ち位置を確立しています。

 その他、ごく短期間の話ではありますが、【クリフォート】において「魔導人形の夜」が使われた時期があったことにも触れておくべきでしょう。

魔導人形の夜(マドルチェ・ナイツ)

カウンター罠
自分の墓地にモンスターが存在しない場合に発動できる。効果モンスターの効果の発動を無効にする。
自分フィールド上に「マドルチェ・プディンセス」が存在する場合、さらに相手の手札をランダムに1枚デッキに戻す。

 一瞬「なぜ【マドルチェ】が?」と疑問に思ってしまいそうになりますが、このカードの発動条件は「墓地にモンスターが存在しない」ことだけであり、それさえ満たせるのであれば【マドルチェ】以外のデッキでも問題なく使用できます。当然ペンデュラムデッキである【クリフォート】も例外ではなく、主に「トリシューラの影霊衣」を見つつも使い勝手の良い汎用カウンター枠として声がかかった格好です。

 しかし、性質上「マインドクラッシュ」で「クリフォート・ツール」を落とされると巻き添えで腐ってしまう弱点があったため、環境的にはあまり噛み合っているとは言えない面もありました。加えて「影霊衣の術士 シュリット」をチェーン2に積まれて本命にカウンターできなくなるケースがあること、あるいは「エフェクト・ヴェーラー」がデッキに入っていないことが相手にばれてしまうといった対人面での弊害もあり、最終的にはほとんど使われなくなっています。

 

更なる駄目押し 壊れ新規「影霊衣の反魂術」ほか

 いずれにしても、2014年10月時点においては【影霊衣】を頂点としつつも【クリフォート】を筆頭とする各勢力がそれに食い下がる環境が成立していたことは間違いありません。

 ところが、2014年11月15日、レギュラーパック「ザ・シークレット・オブ・エボリューション」から強力な【影霊衣】新規サポートが現れたことにより、そうした微妙な勢力図に亀裂が走ることになります。

影霊衣の反魂術(ネクロスのはんごんじゅつ)

儀式魔法
「影霊衣」儀式モンスターの降臨に必要。
影霊衣の反魂術」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、自分の手札・墓地から「影霊衣」儀式モンスター1体を儀式召喚する。
②:自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地からこのカードと「影霊衣」モンスター1体を除外して発動できる。デッキから「影霊衣」魔法カード1枚を手札に加える。

 上記は「影霊衣の反魂術」のテキストです。

 なんと「墓地から儀式召喚」などという前衛的すぎる効果(※)を与えられています。もはや儀式とついていれば何でもいいと言わんばかりのやけくそ的なデザインですが、その甲斐あってきちんと壊れており、分かりやすいところでは「ブリューナクの影霊衣」と「影霊衣の術士 シュリット」のシナジーが少し変になるといった出来事が起こっています。

(※誤解されがちですが、「儀式召喚=そのモンスターによって決められた召喚条件」であるため、蘇生制限ルールには引っかかりません)

 具体的に何がどう強いのかは長くなるため割愛しますが、とりあえず「影霊衣の術士 シュリット」をリリースして墓地儀式を決めるだけで雑にアドバンテージを取れてしまうため、例えば「万華鏡ユニコール」から「ブリューナク→シュリット→反魂術」と繋ぐだけで勝手にカードが2枚増えます。もちろん既に他の【影霊衣】が墓地にあればそちらを儀式召喚することもできるため、これ以降は「トリシューラの影霊衣」を墓地に置くことすらも危険になってしまったわけです。

 当然、この時に現れた有力サポートは「影霊衣の反魂術」だけではなく、特に「グングニールの影霊衣」の参入は見逃せません。

グングニールの影霊衣(グングニールのネクロス)

儀式・効果モンスター
星7/水属性/魔法使い族/攻撃力2500/守備力1700
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
レベル7以外のモンスターのみを使用した儀式召喚でしか特殊召喚できない。
グングニールの影霊衣」の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、相手ターンでも発動できる。
①:このカードを手札から捨て、自分フィールドの「影霊衣」モンスター1体を対象として発動できる。このターンそのモンスターは戦闘・効果では破壊されない。
②:手札の「影霊衣」カード1枚を捨て、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 手札効果側の破壊耐性付与、そしてモンスター側のフリーチェーンの万能除去とどちらも高水準のスペックであり、1枚挿しておくだけでデッキが別物に変わります。見た目のインパクトでは「影霊衣の反魂術」ほどの強烈さはありませんが、このカードもまた【影霊衣】のデッキパワーを堅実に高めた優良サポートです。

 特に【クリフォート】に対しては先置きできれば1枚でゲームを半分終わらせるほどの威力があり、局所的ではあるもののデッキの相性差を逆転させるほどの作用をもたらしています。実際、これが成立するとハンド次第では「スキルドレイン」のケアに徹しているだけで詰みに追い込めてしまうことも多いため、このマッチアップにおいては「先攻グング」による詰みゲーム(※)をしばしば発生させていました。

(※そのため、「グングニールの影霊衣」対策として「帝王の烈旋」が【クリフォート】のサイドに、時にはメインから用意されることもありました)

 何にせよ、当パックのリリースによって【影霊衣】が大幅に強化されたことは間違いありません。

 一応、【クリフォート】側も「クリフォート・アセンブラ」「クリフォート・エイリアス」「機殻の再星」などの新規サポート、また「魂の転身」という噛み合い札(噛み合わない札)を得たことで前進はしていましたが、総合的には青色の侵略著しいメタゲームに移行してしまったことは確かです。

 

サンプルデッキレシピ(2014年11月15日)
モンスターカード(30枚)
×3枚 センジュ・ゴッド
増殖するG
ブリューナクの影霊衣
マンジュ・ゴッド
ユニコールの影霊衣
×2枚 ヴァルキュルスの影霊衣
クラウソラスの影霊衣
影霊衣の術士 シュリット
マスマティシャン
×1枚 儀式魔人リリーサー
グングニールの影霊衣
シャドール・ドラゴン
タックルセイダー
ディサイシブの影霊衣
トリシューラの影霊衣
影霊衣の舞姫
魔法カード(17枚)
×3枚 相乗り
儀式の準備
×2枚 皆既日蝕の書
影霊衣の降魔鏡
影霊衣の反魂術
影霊衣の万華鏡
×1枚 大嵐
おろかな埋葬
月の書
罠カード(0枚)
×3枚  
×2枚  
×1枚  
エクストラデッキ(15枚)
×3枚    
×2枚 虹光の宣告者
×1枚 外神ナイアルラ
ガガガガンマン
恐牙狼 ダイヤウルフ
シューティング・クェーサー・ドラゴン
深淵に潜む者
星態龍
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
ダイガスタ・エメラル
鳥銃士カステル
No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク
No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ
ラヴァルバル・チェイン
励輝士 ヴェルズビュート

 

サイドデッキ(15枚) 
×3枚 サイクロン
ツイスター
×2枚 アーティファクト-ロンギヌス
激流葬
砂塵の大竜巻
ダイヤモンド・ダスト
×1枚 王宮のお触れ

 

 いわゆる完全体【影霊衣】として有名な時代であり、1強環境特有の尖った構築に仕上がっていることが見て取れます。

 「相乗り」が当然のようにメインから3積みされていること、逆に以前は必須と言われていた「サイクロン」が抜けていることなど、もはや潔いほどミラーしか見ていないリストです。これは一見すると過剰な対策にも思えますが、過剰どころかむしろここに追加で「アーティファクト-ロンギヌス」が入ることすら珍しくなかったほどで、少なくともメインデッキに関してはぎりぎりまでミラーマッチに寄せた構築(※)が追求されていました。

(※代わりにサイドは【クリフォート】を強く意識する傾向にありました)

 当然ミラー以外のゲーム、特に最大の仮想敵である【クリフォート】に対して弱くなってしまう弊害もありますが、それを考慮した上でなおミラー意識が優先される状況にあったことは否定できません。

 というのも、一時期は半ば冗談抜きで「世界の7割は青」というような状況だったため、期待値的には狙いを【影霊衣】に絞ってしまうのが最も効率的だったのです。

 

「リリーサークラウソラス」ギミックの横行 猿ゲーム乱造機?

 中でも特筆すべきは「リリーサークラウソラス」ギミックの支配的な存在感だったのではないでしょうか。

 厳密には「影霊衣の反魂術」の参入以前から既に使われていたギミックですが、これまでとは決まりやすさが段違いになったため、これ以降は構築レベルで対処を意識せざるを得ないほどの脅威に成長しています。

 単純に考えても「相手だけ特殊召喚封じ+守備2300」という相当の馬鹿コンボであり、対策なしで直面すればまず詰みは免れません。場合によってはここに対象耐性や破壊耐性、1000打点パンプ、バトルフェイズ強制終了までついてくる始末であり、ある意味では【神判魔導】の「昇霊術師 ジョウゲン」以上に凶悪(※)な盤面封殺ギミックです。

(※もちろん、総合的には「神判ジョウゲン」ギミックの方が遥かに凶悪ではありますが……)

 「リリーサークラウソラス」の成立パターンはいくつかありますが、特に代表的なのは下記の2つの展開ルートでしょう。

・2枚パターン(「センジュ・ゴッド」+「ユニコールの影霊衣」など)

 

①:「センジュ・ゴッド」(または「マンジュ・ゴッド」)を召喚し、効果で「ユニコールの影霊衣」「クラウソラスの影霊衣」のうち足りない方をサーチする。(※つまり「ユニコール+万華鏡」の組み合わせを作る)

 

②:「影霊衣の万華鏡」を発動し、「虹光の宣告者」を墓地に落としつつ「ユニコールの影霊衣」を儀式召喚する。

 

③:「虹光の宣告者」の効果で「影霊衣の反魂術」をサーチする。(※「クラウソラスの影霊衣」をまだ経由していない場合はそちらをサーチする)

 

④:「センジュ・ゴッド」と「ユニコールの影霊衣」の2体を素材に「ラヴァルバル・チェイン」をエクシーズ召喚し、効果で「儀式魔人リリーサー」を墓地に落とす。

 

⑤:「影霊衣の反魂術」を発動し、「儀式魔人リリーサー」を除外しつつ「クラウソラスの影霊衣」を儀式召喚する。

 

・3枚パターン(「ユニコールの影霊衣」+「クラウソラスの影霊衣」+「影霊衣の反魂術」など)

 

①:「クラウソラスの影霊衣」の効果で「影霊衣の万華鏡」をサーチする。(※つまり「ブリューナクの影霊衣」を使わずに「ユニコール+万華鏡+反魂術+墓地にクラウソラス」の組み合わせを作る)

 

②:「影霊衣の万華鏡」を発動し、「虹光の宣告者」を墓地に落としつつ「ユニコールの影霊衣」を儀式召喚する。

 

③:「虹光の宣告者」の効果で「ブリューナクの影霊衣」をサーチする。

 

④:「ブリューナクの影霊衣」の効果で「影霊衣の舞姫」(または「影霊衣の大魔道士」)をサーチし、そのまま召喚する。

 

⑤:「ユニコールの影霊衣」と「影霊衣の舞姫」の2体を素材に「ラヴァルバル・チェイン」をエクシーズ召喚し、効果で「儀式魔人リリーサー」を墓地に落とす。

 

⑥:「影霊衣の反魂術」を発動し、「儀式魔人リリーサー」を除外しつつ「クラウソラスの影霊衣」を儀式召喚する。

 

 単純に2~3枚初動というだけでも2014年当時としては驚異の軽さですが、豊富なサーチカードによって内部的なパーツカウントを大幅に水増しできるため、コンボの成立条件は見た目以上の緩さです。実質的にはセンジュ・ゴッド」「マンジュ・ゴッド」さえ握っていれば十中八九リリクラに繋がるほか、ここに「マスマティシャン」などの外付けパーツも含めれば(※)確率はさらに上昇します。

(※とはいえ、「マスマティシャン」は逆に相手のリリクラ対処札として取っておいた方が良いことも多く、純粋に初動カウントできるカードだったわけではありません)

 もちろんリリクラ成立パターンは上記2つ以外にも存在していたため、カード消費にさえ目を瞑ればかなりの高確率で「リリーサークラウソラス」を決めることができました。

 

実は意外と使われず ほぼミラー専用

 もっとも、実を言うと「リリーサークラウソラス」ギミックが実戦において積極的に使われるケースは意外と少なく、巷で言われるほど環境全体で特殊召喚封殺による塩試合が横行していたわけではありません。

 これは単純にカード消費が激しいせいで後続を確保しにくいというリソース面の都合もありますが、そもそも環境的に「リリーサークラウソラス」が有効な仮想敵が限られていたからです。

 例えば対【シャドール】においては「ラヴァルバル・チェイン」を「エフェクト・ヴェーラー」で止められてしまった場合、「影依融合」ケアのために無理矢理にでも「ヴァルキュルスの影霊衣」を立てにいかなければなりません。逆に言えば、ヴァルキュルスの影霊衣」に繋がらないハンドを握ってしまった場合、その時点で自動的に「リリーサークラウソラス」が選択肢から除外されてしまうわけです。

 もちろん、リリクラが決まればそれだけで勝てるほどの優位性が得られるのであればケアをせずに突っ張る価値もありますが、苦労して出した割にはあっさり処理されてしまうことが多く、リスクに見合ったリターンはまず得られません。どちらかというと【シャドール】視点では「ディサイシブの影霊衣」で暴れられるのが一番辛いと言われており、わざわざ自分からリソースをすり減らしてくる「リリーサークラウソラス」はむしろ狩りやすい(※)という意見すらあったほどです。

(※何なら「ユニコールの影霊衣」を適当に置かれる方がよほど対処に困ります)

 では【M・HERO】はどうなのかというと、確かに刺さるかどうかで言えば刺さることは間違いありません。

 しかし、実はリリーサー効果がついていない素の「クラウソラスの影霊衣」だけでも普通に勝ててしまうため、そもそも「リリーサークラウソラス」を狙う意味がほとんどなかったというのが実情です。加えてこの頃は【M・HERO】のシェア自体が下火になっていたこともあり、【M・HERO】に対して「リリーサークラウソラス」を決めるというシチュエーションそのものが極々稀だった印象はあります。

 そして【クリフォート】に対しては言わずもがなであり、明らかに出すだけ無意味です。

 つまり、「リリーサークラウソラス」ギミックは当時の環境デッキ全般に対して上手く機能していなかったということで、闇雲にリリクラだけを狙いに来るようなプレイヤーはあまり見かけなかったと記憶しています。

 そんな「リリーサークラウソラス」が唯一輝くのが【影霊衣】同士のミラーマッチであり、むしろ【影霊衣】ミラーのためだけにこれが流行していたと言っても過言ではないでしょう。

 単純に特殊召喚メタが刺さるというのはもちろんですが、何より【影霊衣】は儀式召喚を経由せずに盤面に触れる手段をほぼ持っておらず、虚無空間」のような脆いロックですら1枚で完封されかねない危うさがあります。当然それ以上に強固な「リリーサークラウソラス」に対してはメインギミックでは実質打つ手なしであり、この突破には「皆既日蝕の書」などの汎用除去、あるいは「マスマティシャン」+「タックルセイダー」などの外付けのギミック(※)に頼るほかありません。

(※ただし、「トリシューラの影霊衣」を構えられると通らなくなってしまうため、これ単体では回答としてはやや不十分でした)

 もっとも、そうした弱点は【影霊衣】側も当然認識しており、やがてメインデッキの段階から「リリーサークラウソラス」の対策を固めていったことで詰みゲームの発生は次第に減っていっています。

 実際、「リリーサークラウソラス」を決めたはいいものの除去1枚で早々に突破され、リリクラで手札が減ったところを「トリシューラの影霊衣」が直撃してほぼ詰んでしまうなど、むしろ「リリーサークラウソラス」を仕掛けた側が詰みゲームに陥ることもしばしばありました。

 

舞姫ディサイシブパンチ リリクラ粉砕娘

 とはいえ、【影霊衣】ミラーにおいて「リリーサークラウソラス」の成立がゲームの終わりを意味することに変わりはありません。

 こうした流れの中、次第に注目を増していったのが「影霊衣の舞姫」などの下級【影霊衣】です。

影霊衣の舞姫(ネクロスのまいひめ)

効果モンスター
星4/水属性/魔法使い族/攻撃力1600/守備力800
影霊衣の舞姫」の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、「影霊衣」儀式魔法カードの発動に対して相手は魔法・罠・モンスターの効果を発動できず、自分フィールドの「影霊衣」儀式モンスターは相手の効果の対象にならない。
②:このカードが効果でリリースされた場合、「影霊衣の舞姫」以外の除外されている自分の「影霊衣」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 カタログスペックは弱くも強くもない平均的な水準ですが、重要なのは各種【影霊衣】サポートに対応する下級モンスターであるという事実です。つまりディサイシブの影霊衣」と併用することで儀式ギミックに頼らず2600打点を作れるため、1枠取っておくだけで「ブリューナクの影霊衣」+αという比較的緩い条件からリリクラへの突破口を見出せます。

 性質上、仮に相手が「グングニールの影霊衣」などを握っていたとしてもダメージステップ前に投げざるを得ないため、結果的に「ディサイシブの影霊衣」を温存したまま次のターンに勝負を持ち越せるのも利点の1つです。もちろん返しのターンに「トリシューラの影霊衣」を貰ってしまってどうしようもなくなることもありますが、本来勝てないはずのところに勝ち筋を作れる(※)というだけでも及第点の働きでしょう。

(※その他、【クリフォート】以外のデッキが使う虚無空間」への間接的な回答になるというメリットもありました)

 なお、同様の役割を持たせられるカードには「影霊衣の大魔道士」も存在しますが、当時はどちらかというと「影霊衣の舞姫」を採用する型が主流でした。

 理由としては、天敵である「ナチュル・エクストリオ」の回答になること、先出し+後出しの両方で「マスマティシャン」に強いこと、対象除去をケアしつつライフを取りにいけること、あるいはゲームが長引いた時のささやかな保険になることなど、環境的に「影霊衣の舞姫」の方がより合致していた(※)ことが挙げられます。

(※とはいえ、「影霊衣の大魔道士」側にも「影霊衣の舞姫」にはない利点は多く、構築によってはそちらが選択されるケースもありました)

 いずれにしても、2014年末のOCG環境が【影霊衣】とそれを取り巻く「リリーサークラウソラス」によって支配されていたことは否定できません。

 世に言う「儀式詐欺天下」の始まりであり、これ以降【影霊衣】は盤石の地位を保ったまま2014年最後の1ヶ月間を独走することになります。

 

【まとめ】

 全盛期の【影霊衣】についての話は以上です。

 情報判明当初こそ【儀式召喚】の色眼鏡が災いして過小評価されることも多かったテーマですが、蓋を開けてみれば順当に【シャドール】から環境トップを奪い去り、間もなく「青一色」環境への移行を決定的にしています。それでも10月時点では【クリフォート】に苦戦するなど多少のつけ入る隙はありましたが、その直後に現れた新規サポートが駄目押しとなり、最終的には【影霊衣】1強時代へと行き着いてしまうことになりました。

 その結果、2015年1月の制限改訂では【影霊衣】関連カードに対して非常に厳しい規制が入り、理不尽な儀式地獄環境は一応の収束に向かっています。

 しかし、弱体化後は「虹光の宣告者」のシンクロ召喚ギミックを軸にコンセプトを立て直し、引き続き主流デッキとして環境の柱を担っていました。むしろその後の4月の規制すら乗り越えてしまったほどであり、テーマとしての地力の高さは9期勢の中でも群を抜いていたと言うほかありません。

 もちろん、流石に全盛期のように1強と呼べるほどの勢いではなくなりましたが、それでも全体的な使用率では依然トップであり、7月に【魔術師】が入ってくる頃までは常に環境の王者として君臨し続けていました。

 また、2015年の世界大会でも準優勝に輝くなどの大きな実績(※)を残しており、まさに「9期第1世代」の最後を飾るにふさわしい偉大なテーマだったのではないでしょうか。

(※もっとも、その後は初期形態の【EMEm】に瞬殺されて終わっていますが……)

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

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著者情報:遊史
【※次回更新予定日 11月】
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Posted by 遊史