【クリフォート】全盛期 初代ペンデュラム環境デッキの貫禄

2020年7月24日

【前書き】

 【第9期の歴史8 制限改訂2014年7月 【征竜】の最期(後に復活)】の続きとなります。ご注意ください。

 制限改訂によって【征竜】という巨頭が遂に倒れ、以降のメタゲームは9期勢によってほぼ完全に制圧されました。第8期からの目ぼしい生き残りは【ヴェルズ】や【インフェルニティ】程度しかおらず、それも(特に後者は)少数勢力の域を出ない存在感しか示せていません。

 圧倒的なジェネレーションギャップによって強引な世代交代が行われる中、9期世代第2弾となるレギュラーパックが販売されることになります。

 

【クリフォート】爆誕 ペンデュラムテーマの革命児

 2014年7月19日、レギュラーパック「ネクスト・チャレンジャーズ」が販売されました。新たに90種類のカードが誕生し、遊戯王OCG全体のカードプールは6577種類に増加しています。

 身も蓋もない言い方をするのであれば、「9期」という言葉から受ける印象そのままの内容にまとまったパックです。【シャドール】を完成させた「神の写し身との接触」「エルシャドール・シェキナーガ」の2枚を筆頭に、【テラナイト】最強のエースモンスター「星輝士 トライヴェール」、【M・HERO】の地力を堅実に高めた「E・HERO ブレイズマン」など、デザイナーズデッキ全盛期の時勢を象徴するようなラインナップに仕上がっています。

 加えて、「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」「邪竜星-ガイザー」といった次世代級の汎用エクストラモンスターも現れており、シンプルにカードパワーが露骨なインフレを起こしていることは明らかです。前弾と違い禁止カードこそ輩出していませんが、逆にその事実が環境全体のインフレを物語っていることは言うまでもありません。

 

クリフォート・ツール 最強の通常モンスター(大嘘)

 中でも衝撃だったのは、当パック出身の新テーマにしてペンデュラムテーマの草分け的存在となった【クリフォート】の誕生です。

システムをレプリカモードで起動する準備をしています…
C:\sophia\sefiroth.exe 実行中にエラーが発生しました。
次の不明な発行元からのプログラムを実行しようとしています。
C:\tierra\qliphoth.exe の実行を許可しますか? …[Y]
システムを自律モードで起動します。

 上記は「クリフォート・ツール」のテキストとなります。一瞬ブログの表示バグか何かを疑ってしまいそうなテキストですが、これは間違いなくカードに記された正確なテキストであり、早い話が単なるフレーバーテキストです。

 これだけでは何が何だか分からないため、ペンデュラム側のカードテキストを下記に示します。

ペンデュラム・通常モンスター
星5/地属性/機械族/攻撃力1000/守備力2800
【Pスケール:青9/赤9】
①:自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。この効果は無効化されない。
②:1ターンに1度、800LPを払って発動できる。デッキから「クリフォート・ツール」以外の「クリフォート」カード1枚を手札に加える。

 「フーコーの魔砲石」と系統を同じくする通常ペンデュラムモンスターの一種であり、ざっくり言えば「ペンデュラム効果を持った通常モンスター」とでも言うべきカードです。詳しいルールの解説はここでは省きますが、基本的にはP効果を持っていることを除けば従来のバニラと大差ないスペックであるため、どちらかと言うとP効果目当ての運用が主となるカードでしょう。

 とはいえ、ここで重要になるのはそうした額面上の特徴ではなく、単純にカードそのもののカードパワーが非常に高いという事実です。

 上記関連記事でも取り上げている通り、この時期の【ペンデュラム召喚】は新召喚法でありながら非常に不遇なポジションに置かれており、環境はおろかカジュアルレベルにおいてすら弱小デッキの名声をほしいままにしていました。これは簡単に言えば【ペンデュラム召喚】という召喚法そのものが「弱いコンボの条件」を一通り満たしてしまっていたからですが、それゆえにこの問題を解決できない限りどう足掻いても【ペンデュラム召喚】に未来はないと言われていたわけです。

 翻って「クリフォート・ツール」に目を向ければ、このカードがそうした【ペンデュラム召喚】の脆弱性を部分的に解消できていることが見て取れます。

 ライフコスト800と引き換えに任意の【クリフォート】カードをサーチする効果を持っているため、実質的にこれ1枚でペンデュラム召喚の準備が整います。これまで初期投資として2枚のカードを要求されていたことを思えば相当大きな進歩であり、【ペンデュラム召喚】にとってはまさに革命的なデザインであると言うほかありません。

 また、単純に考えても毎ターンアドバンテージを稼げるカードが弱いはずがなく、そもそもペンデュラム云々以前にパワーカードであることは明らかです。あまり言いすぎても少々くどくなってしまいますが、このカードもまた「9期」という時代が生んだ次世代兵器であることは間違いないでしょう。

 もちろん、サーチ先の【クリフォート】もパワーカード揃いであり、当パックだけでも下記のカードが誕生していました。

・「クリフォート・ツール
・「クリフォート・アーカイブ
・「クリフォート・ゲノム
・「クリフォート・ディスク
・「クリフォート・シェル
・「アポクリフォート・キラー
・「機殻の生贄
・「機殻の要塞
・「隠されし機殻
・「起動する機殻

 【クリフォート】の心臓である「クリフォート・アーカイブ」「クリフォート・ゲノム」を筆頭に、展開要員を兼ねる重量級アタッカー「クリフォート・ディスク」や、地味に書いてあることがおかしい「機殻の生贄」など、現在の【クリフォート】でも必須と言われる面々が出揃っていることが分かります。

 また、今では評価が振るわない「起動する機殻」などの専用サポートも当時としてはまずまずの性能であり、参入直後においてはトーナメントレベルでも一定の採用実績を残していました。特に「アポクリフォート・キラー」は当時のカードプールでは一旦着地してしまうと対処不可能なデッキも多く、海外では一時期禁止カードにも名を連ねていた(※)ほどです。

(※しかし、日本国内ではオーバーキル系のカードという意見が多く、採用率は低めでした)

 

ツール12枚体制の脅威 9期テーマの香り

 しかしながら、やはり【クリフォート】最大の強みはこうしたテーマ自体の層の厚さではなく、メインエンジンである「クリフォート・ツール」を確実に手札に引き込む盤石のサーチ体制にこそあったのではないでしょうか。

 上述の通り、「クリフォート・ツール」はペンデュラムモンスターでありながら通常モンスターでもあるという性質を持っています。

 よって「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」などのペンデュラムサポートはもちろん、バニラ専用のサーチカードである「召喚師のスキル」にも対応するため、極めて安定して初手に確保することができます。第9期のトレンドである「サーチカードをサーチするカード」の皮切りとも言える状況ですが、ここに追加で「機殻の生贄」などの受動サーチもカウントすれば驚異の12枚体制となり、これは当時の水準(※)においてはトップクラスの初動率です。

(※むしろ逆に多すぎるせいで最終的には1周回ってオッドアイズが抜けてしまっています

 また、既に述べたように「クリフォート・ツール」でサーチ可能な「機殻の生贄」は「クリフォート・ツール」をサーチ可能であるため、実質的に自分自身をサーチ範囲に含んでいる点も見逃せません。これにより、一度でもサーチ効果を通せれば芋づる式に後続を確保できるため、疑似的な除去耐性すら備えていると見ることもできるわけです。

 要するに【クリフォート】とは「同名カードにも対応する専用サーチエンジンを12枚搭載したデッキ」であり、この恐ろしさについてはもはや語るまでもないでしょう。

 

クリフォート・トランポリンクス(大嘘その2)

 その他、忘れてはならないのが同パック出身の「EMトランポリンクス」の存在です。

ペンデュラム・効果モンスター
星2/地属性/獣族/攻撃力300/守備力300
【Pスケール:青4/赤4】
EMトランポリンクス」のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:自分がP召喚に成功した時、自分または相手のPゾーンのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。
【モンスター効果】
①:このカードが召喚に成功した時、自分または相手のPゾーンのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。

 P効果及びモンスター効果の2種類の条件によってペンデュラムゾーンのカードをバウンスする効果を持っており、いわゆるセルフバウンス要員として優秀なペンデュラムモンスターです。代わりにPスケールが4と使いにくい数値に設定されているため、P召喚そのものの補助には向かないという弱点があります。

 しかし、これは【クリフォート】においてはほぼ無視できるリスクでしかありません。

 元々上級モンスター主体の【クリフォート】ではレベル8~5のモンスターをP召喚できれば十分であり、「Pスケール9+Pスケール4」の組み合わせであっても問題なくP召喚の準備が整います。つまり「クリフォート・ツール」のスケール9と合わせて自然にスケールが揃うため、「P召喚の補助ができない」という「EMトランポリンクス」本来の弱点が完全に相殺されるわけです。

 もちろん、このカード最大の強みであるセルフバウンス効果も【クリフォート】では最大限に活用できます。

 分かりやすいところではクリフォート・ツール」のサーチ効果を1ターンに2回使用できるほか、【クリフォート】共通のデメリットである「クリフォートしか特殊召喚できない」制約も簡単に踏み倒せるようになります。おまけにP召喚した【クリフォート】モンスターは共通効果により自動的にレベル4になるため、上級主体デッキでありながら「ランク4モンスターズ」の恩恵を享受できる利点も見逃せません。

 唯一の弱点があるとすれば、カード名の関係で【クリフォート】のサポートに対応しないことくらいですが、単純に汎用枠として見るだけでも十分な強さです。また、もちろん「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」のサーチには問題なく対応するため、とりあえずピン挿ししておくだけで手軽に4枚体制を作れる取り回しの良さも大きな魅力となっていました。

 このように、「EMトランポリンクス」は【クリフォート】と複数のシナジーを形成していたため、これ以降は【クリフォート】の準必須枠として定着するに至っています。むしろあまりにも相性が良すぎて「クリフォート・トランポリンクス」なる異名すら手にしてしまったほどであり、本家である【EM】以上に(※)キーカードとしての地位を築いていました。

(※というより、この頃は【EM】が弱すぎて純構築ではまともに戦えなかったのですが……)

 

【クリフォート】が強かった時代 環境デッキの一角に

 当然のことながら、【クリフォート】の参入は当時のメタゲームに大きな影響を及ぼしました。

 

サンプルデッキレシピ(2014年7月19日)
モンスターカード(16枚)
×3枚 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン
クリフォート・アーカイブ
クリフォート・ゲノム
クリフォート・ツール
×2枚 クリフォート・ディスク
×1枚 EMトランポリンクス
クリフォート・シェル
魔法カード(12枚)
×3枚 強欲で謙虚な壺
機殻の生贄
召喚師のスキル
×2枚 ナイト・ショット
×1枚 大嵐
罠カード(12枚)
×3枚 虚無空間
強制脱出装置
スキルドレイン
×2枚 奈落の落とし穴
×1枚 起動する機殻
エクストラデッキ(15枚)
×3枚    
×2枚    
×1枚 インヴェルズ・ローチ
CNo.39 希望皇ホープレイ
ガガガガンマン
恐牙狼 ダイヤウルフ
ジェムナイト・パール
迅雷の騎士ガイアドラグーン
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
鳥銃士カステル
No.16 色の支配者ショック・ルーラー
No.39 希望皇ホープ
No.61 ヴォルカザウルス
No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク
No.82 ハートランドラコ
No.101 S・H・Ark Knight
No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ

 

 この頃はクリフォート・アセンブラ」「クリフォート・エイリアス」などの重要なサポートカードが誕生しておらず、テーマとしては未完成の状況にありましたが、その状態であってもデッキパワーが「9期」の水準に到達していることは明らかです。ペンデュラムテーマとしては初の実戦級デッキという話題性も手伝い、間もなく環境の一角に躍り出ています。

 とはいえ、そんな【クリフォート】も当初から順風満帆の状況にあったわけではありません。むしろどちらかと言うと若干苦しいポジションに置かれており、参入直後は「トーナメントレベルには手が届きそうで届かないのではないか」という懸念も散見されていました。

 これは単純に【シャドール】が強すぎる環境だったという割とどうしようもない事情もありますが、そもそも【クリフォート】というアーキタイプ自体が見た目ほど強いデッキではなかった(※)ことが大きな原因だったと言えます。

(※もちろん、「見た目ほど強くはない」というのは裏を返せば「基本的には普通に強い」ということを意味するため、やはり他のデッキと比べれば高い地力を持っていたことは間違いありません)

 というのも、【クリフォート】は「クリフォート・ツール」の存在によってカード消費の激しさという問題からは解放されたものの、逆にそれ以外の弱点は依然として克服できておらず、結局【ペンデュラム召喚】の呪縛から逃れることはできなかったからです。

 よって【シャドール】のように特別なメタカードを用意されるまでもなく、奈落の落とし穴」辺りの汎用除去を貰うだけで普通に苦しくなってしまいます。特に生命線である「クリフォート・ツール」を直接止められてしまうと最悪であり、下手をすると本当に「サイクロン」1枚で負けかねない脆さを抱えていました。

 さらに、序盤の立ち上がりに関しても9期勢とは思えないほどに鈍重で、エースモンスターである「クリフォート・ディスク」をアドバンス召喚するのに平均3ターン前後はかかってしまいます。これはアドバンス召喚系列デッキであることを差し引いても数世代前のスピードであり、具体的には【黄泉帝】並の展開速度です。

 また、序盤からライフを詰められると「クリフォート・ツール」のライフコストを賄えなくなってしまい、真価を発揮し切れないまま押し切られてしまうシチュエーションも決して珍しくありません。つまり上級モンスター主体のパワータイプ的な外見とは裏腹にビートダウン耐性はさほど高くなく、そのことは「【クリフォート】の初期ライフは4000」という言葉にもよく現れています。

 このように、【クリフォート】はその外見のインパクトほどには強いデッキとは言えず、【シャドール】のようにデザイナーズデッキ本来の動きをなぞるだけで勝てるほど恵まれた潜在能力はなかったのです。

 

スキルドレイン+虚無空間 2014年の【スキドレバルバ】

 結果として、これ以降【クリフォート】は制圧系の永続罠を各種取り揃える構築、つまりは事実上の【メタビート】へとコンセプトを寄せていくことになります。

 中でもよく採用されていたのが「虚無空間」及び「スキルドレイン」の2枚です。何とも見るからに性格が歪みそうな組み合わせではありますが、それはそれとしてこれらが【クリフォート】と強いシナジーを形成していることも間違いありません。

 とりわけ「スキルドレイン」との相性の良さは抜群であり、当時の【クリフォート】はこれを強く使うために【メタビート】に行き着いたと言っても過言ではないでしょう。

ペンデュラム・効果モンスター
星7/地属性/機械族/攻撃力2800/守備力1000
【Pスケール:青1/赤1】
①:自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。この効果は無効化されない。
②:自分フィールドの「クリフォート」モンスターの攻撃力は300アップする。
【モンスター効果】
①:このカードはリリースなしで召喚できる。
②:特殊召喚またはリリースなしで召喚したこのカードのレベルは4になり、元々の攻撃力は1800になる。
③:通常召喚したこのカードは、このカードのレベルよりも元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果を受けない。
④:「クリフォート」モンスターをリリースしてこのカードのアドバンス召喚に成功した時に発動できる。デッキから「クリフォート」モンスター2体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。

 上記は「クリフォート・ディスク」の当時のテキストです。前置きでも軽く触れたように、アドバンス召喚時に【クリフォート】モンスター2体を自壊デメリット付きでリクルートする効果を持っており、【クリフォート】ではこれを通せるか否かがゲームの行方を左右します。

 しかし、ここで重要になるのはそうした固有効果ではなく、単に【クリフォート】カテゴリに共通する妥協召喚能力を持っているという事実です。

①:このカードはリリースなしで召喚できる。
②:特殊召喚またはリリースなしで召喚したこのカードのレベルは4になり、元々の攻撃力は1800になる。

 見ての通り、ステータスの弱体化と引き換えにリリースなしで召喚できる性質を持っており、上級枠でありながら下級枠としても運用することができます。早い話が「神獣王バルバロス」などと同系統のカードですが、これは要するに往年の【スキドレバルバ】ギミックをテーマ単位で再現可能であることを意味するわけです。

 流石に第9期当時において【スキドレバルバ】を環境レベルで見かける機会はほぼ皆無となっていましたが、それでも「相手の行動を封殺しつつ上級打点を並べていく」というコンセプトの有用性は決して色褪せていません。むしろかつてと比べて更にモンスター偏重のゲームバランスに移行したことで「スキルドレイン」の制圧力は相対的に上昇しており、これをメインギミックに組み込めることは非常に大きな武器となり得ます。

 加えて、ペンデュラム最大の天敵である「M・HERO ダーク・ロウ」対策として流用可能だったというメリットも見逃せません。

 極悪非道のペンデュラムキラーも効果を無効化してしまえば単なる帝打点に過ぎず、特に2400打点がデフォルトとなる【クリフォート】ではほぼノーリスクで処理できるほどに容易い相手に変わります。先出しの場合はもちろん、後出しであってもどうにか間に合う(※)ことが多いため、3積みを前提にすれば3~4割の確率で相性差を逆転させることができるわけです。

(※逆に「サイクロン」を持たれていると敗色濃厚ということでもありますが、その辺りは素直に割り切るしかありません)

 このように、スキルドレイン」は【クリフォート】というアーキタイプにおいてはこれ以上ないほどの噛み合い札であることが見て取れます。

 その一方、片割れである「虚無空間」には「スキルドレイン」のような目に見えたシナジーはなく、むしろP召喚を利用することから一見するとアンチシナジーであるようにも思えます。

 しかし、実際にはスロースターターの関係で序盤からP召喚を連発できることの方が少ないため、相対的にはリスクは小さめです。少なくとも相手より困ることはまずあり得ない以上、むしろ実質的にはノーリスクであるとすら言えます。

 また、ペンデュラムモンスターはフィールドで破壊されても墓地へは行かずにエクストラデッキに送られるため、普通のデッキと比べてロックを維持しやすいという利点もありました。特にバックを「虚無空間」1枚のみにするプレイングは地味ながら非常に厄介で、ナイト・ショット」が通じなくなることはもちろん、「サイクロン」なども1:1交換の弱い使い方を強要されてしまいます。

 加えて、将来的に参戦する「クリフォート・エイリアス」とも一定のシナジーを形成しており、例えば自壊効果にチェーンしてセルフバウンスすることで自分だけが特殊召喚を利用するなど、ある種の【フィフティ・フィフティ】的な動きも取れるようになっていました。

 何より、こうしたシナジー云々以前に虚無空間」自体がそもそもパワーカードである以上、当時の環境でこれを使わないという選択肢はなかったのではないでしょうか。

 

【テラナイト】の厳しい苦境 右も左も天敵

 一方で、こうした【クリフォート】の台頭を受けて苦境に陥った勢力も存在します。

 中でも【テラナイト】が被った被害は深刻で、この使用者にとっては相当に厳しい大打撃となっていました。

 単純な話、メインギミックの大半がモンスター効果に依存している【テラナイト】は「スキルドレイン」1枚でほぼ完全に機能停止してしまうため、これを張られた瞬間に【バニラ罠ビート】という冗談のようなデッキと化すことは避けられません。頼みの「鳳翼の爆風」も相手がサーチを控え始めると実質無力化されてしまい、事実上「サイクロン」が無いと生きていけないレベルにまで追い詰められてしまっています。

 しかし、【シャドール】や【M・HERO】を意識するとどうしても「ナイト・ショット」を優先せざるを得ず、メタゲームにおいてはかなり厳しい板挟みの状況に置かれていました。

 その結果、苦肉の策として「スキルドレイン」の影響下でも3000打点を作れる「No.85 クレイジー・ボックス」が取り入れられるなどの抵抗運動も起こっていましたが、これも「機殻の生贄」やP効果の300補正であっさり返されてしまうことが多く、あまり有効ではなかったというのが実情です。

 まさに「右も左も天敵」と言うべき状況であり、それを裏付けるようにこれ以降【テラナイト】のシェアは急激に縮小に向かうことになります。

 

リンク世代のクリフォート ゲニウスワンキル(大嘘)

 第9期初頭の【クリフォート】に関しては以上ですが、ここからは番外編としてリンク世代以降の【クリフォート】についても軽く触れておきます。

 

サンプルデッキレシピ(2020年4月1日)
モンスターカード(18枚)
×3枚 クリフォート・アーカイブ
クリフォート・エイリアス
クリフォート・ゲノム
クリフォート・ツール
増殖するG
×2枚 クリフォート・ディスク
×1枚 クリフォート・アセンブラ
魔法カード(14枚)
×3枚 強欲で金満な壺
機殻の生贄
召喚師のスキル
帝王の烈旋
×2枚  
×1枚 機殻の要塞
ハーピィの羽根帚
罠カード(8枚)
×3枚 群雄割拠
スキルドレイン
×2枚  
×1枚 虚無空間
機殻の再星
エクストラデッキ(15枚)
×3枚 クリフォート・ゲニウス
混沌の戦士 カオス・ソルジャー
トロイメア・フェニックス
×2枚 I:Pマスカレーナ
双穹の騎士アストラム
×1枚 ヴァレルソード・ドラゴン
ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム

 

 と言っても、結論としては環境レベルでの活躍を期待するのは流石に無理があるというのが現実ですが、それでもリンク世代初期の段階で新規サポートを貰うという好待遇を受けていたことには言及しておくべきでしょう。

リンク・効果モンスター
リンク2/地属性/機械族/攻撃力1800
【リンクマーカー:左下/右下】
機械族モンスター2体
①:リンク召喚したこのカードは魔法・罠カードの効果を受けず、このカード以外のリンクモンスターが発動した効果も受けない。
②:1ターンに1度、このカード以外の、自分及び相手フィールドの表側表示のカードを1枚ずつ対象として発動できる。そのカード2枚の効果をターン終了時まで無効にする。
③:このカードのリンク先にモンスター2体が同時に特殊召喚された時に発動できる。デッキからレベル5以上の機械族モンスター1体を手札に加える。

 上記は「クリフォート・ゲニウス」のテキストです。色々な意味で有名な「LINK VRAINS PACK」シリーズ第1世代出身のリンクモンスターであり、実質的には新ルールで弱体化した各種デザイナーズデッキ救済の意図のもとに印刷されたカードです。

 第10期出身カードの例に漏れず色々と効果が盛り込まれていますが、最も重要なのは【クリフォート】というカード名を含んでいることでしょう。

 具体的には、【クリフォート】共通の特殊召喚不可の制約にかからない現状唯一のリンクモンスターであるため、単にリンク先を確保するカードとだけ考えても3積み確定クラスのキーカードです。むしろ現在の【クリフォート】では「クリフォート・ゲニウス」以外のカードを出せる機会がほぼなく、実質的には強欲で金満な壺」の餌としてしかエクストラを使わない(※)ため、極端に言えば残りの12枠は「カルボナーラ戦士」辺りの融合バニラで固めてもさほど支障はありません。

(※「魔封じの芳香」などを警戒する場合、流石に「トロイメア・フェニックス」くらいは用意しておいた方がいいとは思いますが……)

 もちろん、「クリフォート・ゲニウス」の強みはこうした額面上のスペックだけではなく、効果についても比較的優秀なところでまとまっています。

 ①の耐性効果は打点の低さを考慮すればオマケに近い性能ですが、後半2つの効果はどちらも実用的な性能です。②の無効化効果は言わずもがな、③のサーチ効果も地味ながら堅実にアドバンテージを取れる効果であり、【クリフォート】の専用サポートとしてはまずまずの働きが期待できます。

 また、このサーチ効果には回数制限が設けられていないため、「機殻の要塞」があれば下記のような動きを取ることも可能です。

 

①:「クリフォート・ゲニウス」でリンク先を確保しつつ、「クリフォート・ツール」「クリフォート・アセンブラ」でPスケールを揃える。

 

②:「クリフォート・ゲニウス」のリンク先に【クリフォート】モンスター2体をペンデュラム召喚する。

 

③:「クリフォート・ゲニウス」の効果で「クリフォート・ディスク」をサーチする。

 

④:手順②で出した【クリフォート】モンスター2体をリリースして「クリフォート・ディスク」をアドバンス召喚し、その効果で「クリフォート・ゲニウス」のリンク先に「クリフォート・ゲノム」「クリフォート・アーカイブ」を計2体リクルートする。

 

⑤:「クリフォート・ゲニウス」の効果で「クリフォート・ディスク」をサーチする。(※「クリフォート・エイリアス」でも可)

 

⑥:「機殻の要塞」の効果により、追加で「クリフォート・ディスク」をアドバンス召喚し、リンク先に【クリフォート】をリクルートする。(※リリースされた「クリフォート・ゲノム」「クリフォート・アーカイブ」の除去効果を使用する)

 

⑦:「クリフォート・ゲニウス」の効果で任意の【クリフォート】モンスターをサーチする。

 

⑧:エンドフェイズに「クリフォート・アセンブラ」の効果で4ドローする。

 

 簡単に言えばクリフォート・ゲニウス」で持ってきた「クリフォート・ディスク」をそのまま「クリフォート・ゲニウス」のサーチ効果のトリガーにし、追加の召喚権で再度それを繰り返す(※)という動きです。リリースされた上級クリフォートによって盤面を掃除できるほか、エンドフェイズには「クリフォート・アセンブラ」による4ドローがもたらされるため、上手く決まった時の威力は中々侮れません。

(※なお、これを応用すれば「アポクリフォート・キラー」を安定的に召喚することもできますが、どのみち適当な汎用リンクに処理されるのが関の山であるため、やるだけ損なコンボです)

 このように、「クリフォート・ゲニウス」は【クリフォート】とは一定のシナジーを形成していることが見て取れます。

 しかしながら、実を言うとそんな「クリフォート・ゲニウス」も現役時代にはもっぱら【芝刈ABC】で「メガキャノン・ソルジャー」をサーチするためだけに使われており、【クリフォート】の専用サポートとはほぼ見なされていない不遇な立場にありました。

 もう少し具体的なことを述べると、ワンキルパーツである「キャノン・ソルジャー」が禁止カードとなった後の代替カードとして「メガキャノン・ソルジャー」が使われていた時代、つまり2018年7月~2018年10月までの3ヶ月間に脚光を浴びていたコンボです。レベルの関係上「ギアギガント X」にはこなせない役割であり、一見ピンポイントな「クリフォート・ゲニウス」のサーチ範囲が上手く嵌った事例であると言えるでしょう。

 ……確かに「クリフォート・ゲニウス」が活躍していることには間違いないのですが、【クリフォート】愛好家にとってはそこはかとなく腑に落ちない話でもあったのではないでしょうか。

 

【まとめ】

 【クリフォート】についての話は以上です。

 ペンデュラム系列デッキとしては史上初となる環境クラスのテーマであり、当時不遇の立場にあった【ペンデュラム召喚】に一種の革命をもたらしています。ただし、全体の流れとしてはやはり【シャドール】優勢の時代だったというのが実態なのですが、それでも2番手であった【テラナイト】をメタゲームから蹴り落とすといった戦果も上げており、第8期以前と比較して世代交代のスピードが高速化していることは疑いようもありません。

 もちろん、【クリフォート】が環境で存在感を示していたのは2014年内だけではなく、2015年以降も引き続き環境デッキの一角として実績を残していっています。

 その結果、2015年4月改訂では「機殻の生贄」が制限カードに、「クリフォート・ツール」が準制限カードに規制されて少なくない打撃を被っていますが、その後もしばらくの間はメタゲームに踏みとどまるなど、細く長く健闘を続けていました。

 また、リンク世代においても「クリフォート・ゲニウス」という新規サポートを早々に獲得するなど、開発側からも何かと愛されているテーマではあったのではないでしょうか。

 ここまで目を通していただき、ありがとうございます。

 

著者情報:遊史

Posted by 遊史