デビフラ1キル 原初の後攻1キルデッキ
【前書き】
【第2期の歴史9 制限改訂2000/7/15 墓守の使い魔なぜか準制限に】の続きとなります。ご注意ください。
「ハンデス三種の神器」の規制によって環境は健全化し、理不尽な手札破壊に悩まされることは少なくなりました。
しかし、代わりに【デッキ破壊】が勢力を増していったことで、【グッドスタッフ】を始めとしたビートダウンデッキは何らかの対応を余儀なくされることになります。
そうしたコントロール優勢の環境に、突如としてビートダウンの期待の星が現れました。
【デビフラ1キル】の誕生
2000年8月10日、「PREMIUM PACK 3」が販売されました。通常のパックと異なり1パック200円、またレアリティも全て「スーパーレア」仕様、稀に「パラレルレア」での収録と豪華な内容となっています。
その内の8種類は1999年8月26日に開催された全国大会の賞品として贈られたカードであり、事実上それらの再録パックとなっていました。
しかし、いずれも数が少なく、特に「青眼の究極竜」は世界に2枚しか存在していなかったことから、ほとんどのプレイヤーにとっては新規カードと扱って差し支えないカードでもありました。そのため、これらのカードに関しましては、誠に恐縮ながらこの日に誕生したものとして扱わせていただきます。
巨大化する青眼の究極竜
さて、ここで生まれたカードのうち、特に注目を集めていたのは「青眼の究極竜」です。
星12/光属性/ドラゴン族/攻撃力4500/守備力3800
一番の特徴はまさしくその圧倒的なステータスにこそあるでしょう。攻撃力4500と類を見ない数値であり、現在においてすらトップクラスの打点の高さを誇っています。
しかし、3体融合モンスターであることに加えて、融合素材にも最上級モンスターの「青眼の白龍」を要求される関係上、正規召喚は非常に難しいと言わざるを得ません。現在では様々な手段によってコストを軽減できますが、当時は融合素材代用モンスターを使う程度しかなく、正攻法での融合召喚は無謀とされていました。
言い換えれば、違法な手段によってコストを踏み倒すことは可能であったということです。
「青眼の究極竜」の最高の相棒として、「デビル・フランケン」が浮上しました。
5000ライフポイントを支払う事で、自分の融合デッキからモンスターを1体フィールド上に出す事ができる。
5000ライフコストを払うことで、任意の融合モンスターを特殊召喚する効果を持っています。当然、「青眼の究極竜」であっても問題なく呼び出すことが可能です。
従来の「ブラック・デーモンズ・ドラゴン」などの融合モンスターとは文字通り一回りサイズが違うモンスターとなっています。第1期と比べて除去の層が厚くなっていることを踏まえてもなお強烈な打点であり、主に打点計算を狂わせるカードとして恐れられました。
これだけであっても十分に強力なギミックですが、実際には「巨大化」との組み合わせによってこそ真価を発揮します。
自分のライフポイントが相手より下の場合、このカードは装備モンスター1体の攻撃力を倍にする。自分のライフポイントが相手より上の場合、このカードは装備モンスター1体の攻撃力を半分にする。その攻撃力とは装備モンスターの元々の攻撃力である。
【第2期の歴史7 遊戯王最弱テーマ【トゥーン】誕生 「デッキとして成立しない」の衝撃】の記事で詳しく取り上げている通り、装備モンスターの攻撃力を倍化または半減させる装備魔法カードです。つまり、「デビル・フランケン」の莫大なライフコストを払うリスクを逆手に取り、「巨大化」の倍化条件をほぼ確実に満たすという使い方となっています。
そして、これを「青眼の究極竜」に装備させれば、攻撃力9000という前人未到の超打点に到達し、ワンショットキルに手が届きます。
【デビフラ1キル】の誕生です。
攻撃力9000 脅威のワンショットキル
【デビフラ1キル】は、「デビル・フランケン」と「巨大化」の2枚コンボ成立に狙いを定め、速やかにゲームを終わらせることを目的としたデッキとなります。
この内「デビル・フランケン」は「クリッター(エラッタ前)」「黒き森のウィッチ(エラッタ前)」でサーチ可能であり、「巨大化」に関しても「苦渋の選択」などで墓地に落として「聖なる魔術師」でサルベージするなど、第2期出身のコンボとしては成立条件が比較的緩めであることも特徴の一つとなっています。
そのため、ワンショットキルも現実的な確率で実現でき、遅くとも数ターン以内にはコンボを成立させることが可能です。
ただし、確実なキルを狙う場合、「大嵐」などの伏せ除去が必須となることから、実際には額面以上に達成が難しいコンボでもありました。仮にワンショットに失敗してしまった場合、ライフが危険域の状態で棒立ちの「デビル・フランケン」を残す形となり、返しの反撃で逆にゲームを落としてしまう可能性が非常に高いためです。
そうした事情から、実際のゲームではいつでもコンボを行える状態を維持しつつ、隙を見てワンショットを狙いにいくというプレイングが取られていたと記憶しています。
当然のことながら、このコンボの誕生は当時の環境に多大な影響を及ぼしました。
当時のゲームスピードは現在と比べて緩やかであり、ライフが半分以上残っている状況からゲームを落とすケースは限られていました。そのためライフに余裕がある場合は、多少遠回りであってもリソースの維持を優先しながら動くなど、盤面全体を意識したプレイングが選択されていました。
しかし、この【デビフラ1キル】を相手にした場合、隙を見せた瞬間にワンショットを決められることを常に覚悟しておかなければなりません。
まだ序盤だと油断して除去を温存した結果、コンボを決められて唖然とするというのはその最もたるシチュエーションです。たとえライフが無傷の状態であっても常に即死の危険が付き纏うようになったことから、いわゆる「ライフで受ける」といった選択を取りにくくなりました。
また、【デビフラ1キル】のコンボパーツが【グッドスタッフ】のデッキパーツと一部共通していたため、【グッドスタッフ】にこのコンボを搭載するプレイヤーも現れています。その場合、デッキ単位でコンボに特化するわけではなく、サーチを前提に(※)「決まれば良し」という程度の意識で出張的にタッチすることが多かったと記憶しています。
(※「巨大化」の方はサーチが難しいため、2~3枚採用される傾向にありました)
もちろん、この影響を受けたのは【グッドスタッフ】だけではなく、【デッキ破壊】などのコントロールデッキも対策に追われる形となります。
「クリッター(エラッタ前)」で「デビル・フランケン」をサーチされた瞬間に敗北が頭をよぎるようになるなど、この【デビフラ1キル】というデッキは当時の環境では非常に大きな存在感を示していました。
【当時の環境 2000年8月10日】
「青眼の究極竜」の誕生により【デビフラ1キル】が成立し、瞬く間に環境を席巻しました。
しかし、実際に支配的な地位を築いていたわけではなく、プレイヤーの意識に対して存在感を示していたというのが実情となっています。実体以上にその脅威が一人歩きしていた印象はあり、率直に申し上げますと、強いを通り越して「ズルい」と言われてやや疎まれていたコンボでもありました。
現実的には、上記の通りコンボ成立までに一定の手間を要し、また妨害手段も多いなど弱点のはっきりしたコンボです。しかしながら、そうした過程とは裏腹に結果だけを見れば非常にインパクトが大きく、余計に悪目立ちしてしまっていた部分があったのかもしれません。
とはいえ、【デビフラ1キル】自体が強力なコンボであることは間違いなく、それに対する警戒が求められていたのも事実です。
私の場合は「和睦の使者」をお守りにデッキに積んでいました。できれば「万能地雷グレイモヤ」の方を用意したかったのですが、ゲーム同梱カードという高嶺の花ゆえに中々手が出ず、指をくわえてショーケースを眺めていたことを覚えています。
また、「神の宣告」や「マジック・ジャマー」などのカウンター罠が本格的に使われ始めたのもこの頃からであったと記憶しています。これ以前にも細々と使われることはありましたが、即死コンボという「マストカウンター」が環境に現れたことにより、多くの場面でその必要性を認識する形となりました。
ちなみに、私は「マジック・ジャマー」を愛用しており、「神の宣告」の方はあまり使っていませんでした。これは当時デッキに「デビル・フランケン」を採用していた都合もありましたが、純粋に「マジック・ジャマー」の方が強いと考えていたことも影響しています。
言い訳をさせていただきますと、手札コストで「キラー・スネーク(エラッタ前)」を捨てるのが気持ちよかったもので……。
【エクゾディア 夢の再録】
また、この同日に「幻の召喚神-PHANTOM GOD-」が販売され、「Vol.2」「Vol.3」から合計65種類のカードが再録されたことを補足いたします。
更に、「遊戯王デュエルモンスターズⅢ 三聖戦神降臨」の攻略本下巻も販売され、同梱カードとして新規カードが1種類誕生しています。新たに生まれたカードはこの同梱カード1種類のみであり、遊戯王OCG全体のカードプールは837種類と微増する形となりました。
何と言っても、このパックの特徴は「エクゾディアパーツ」が再録されたことです。しかも第1期のように単体パーツごとの収録ではなく、このパックだけで全てのパーツが入手できるようになっていました。
とはいえ、流石に当時はもうパーツは全て揃えていたのですが、まだ集めきっていないというプレイヤーも多く、特に第2期開始以降に参入したプレイヤーにとっては必須とも言えるパックとなっていました。
もちろん、当時の環境においては【エクゾディア】が活躍できる土壌は整っていませんでしたが、やはり【エクゾディア】の持つネームバリューは圧倒的であり、当時はエクゾディアパーツを揃えていることが一種のステータスとなっていたほどです。
全デュエリストの憧れとも言える存在に手が届くようになったことから、この時の再録パックは非常に高い評価を受けていました。
【まとめ】
原作漫画においても象徴的なモンスターである「青眼の究極竜」が生まれたことで、【デビフラ1キル】というデッキが成立するようになりました。
デッキ単位ではなくギミック単位での出張も多く、【グッドスタッフ】などで採用されるケースも少なくなかったと記憶しています。
しかし、ワンショットキルという衝撃的な結末をもたらすこのコンボは悪い意味で人目を引きやすく、その結果一部のプレイヤー達から強いヘイトを集めてしまう形となっていました。
ここまで目を通していただき、ありがとうございます。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません